※本記事は、World Economic Forum Annual Meeting 2026(ダボス会議2026)のセッション「Is Everyone Falling Behind?」の内容を基に作成されています。動画はhttps://www.youtube.com/watch?v=WZaB7qnVvCM でご覧いただけます。
登壇者は、Scott Galloway氏(マーケティング学教授・著述家)、Alice Evans氏(ジェンダーと開発を専門とする研究者)、Christy Hoffman氏(国際労働組合総連合・UNI Global Union事務局長)、Michael Ensser氏(エグゼクティブサーチの専門家)の4名です。なお、Alastair Campbell氏(元英国首相顧問)も登壇者として告知されていましたが、当日はAlice Evans氏がモデレーターを務めました。
本記事では、セッションの内容を要約・再構成しております。原著作者の見解を正確に反映するよう努めていますが、要約や解釈による誤りが生じている可能性もありますので、正確な情報や文脈についてはオリジナルの動画をご視聴いただくことをお勧めいたします。World Economic ForumのウェブサイトはHttp://www.weforum.org/ でご覧いただけます。
1. オープニングと登壇者紹介
1-1. セッションの概要とモデレーター(Dr. Alice Evans)
Alice Evans: 本日はダボスへようこそ。セッションのテーマは「Is Everyone Falling Behind?(誰もが取り残されているのか)」です。まず一点お断りしておかなければなりません。私は英国首相の元顧問ではございません。私はDr. Alice Evansです。本日は質問をする側と答える側、両方を務めさせていただきます。
1-2. 登壇者それぞれの立場と専門領域
Alice Evans: 本日のパネリストをご紹介します。まずScott Galloway氏、そしてChristy Hoffman氏、Michael Ena氏です。それぞれ異なる視点からジェンダーギャップという複雑な問題に切り込んでいただきます。
Scott Galloway: 私は主にアメリカのデータをもとに、教育・経済・精神的健康という三つの軸から、若年男性と女性それぞれが直面している構造的な問題を論じます。
Christy Hoffman: 私は労働組合運動の立場から、特に低・中技能労働者が直面している経済的現実と、ジェンダーがその中でどのように作用しているかをグローバルな視点でお話しします。
Michael Ena: 私はエグゼクティブサーチの専門家として、取締役会や経営幹部レベルにおける女性登用の現状と、企業がタレント獲得競争の中でどのような取り組みをしているかをお伝えします。
2. ジェンダーギャップの現状——データと構造的分析
2-1. 男性の二極化:高収入エリート層と低学歴・経済的不活性層
Alice Evans: まず、データが示すジェンダーギャップの全体像について私の見解をお伝えします。男性については、一枚岩で語ることはできません。重要なのは男性内部の階層化です。一方には、AI・STEM・金融・ウォール街といった分野で最も革新的で起業家精神旺盛な男性たちが最高水準の報酬を得ています。しかし同時に、低学歴の男性たちはほぼ普遍的に教育面で遅れをとり、建設・製造業、あるいは経済的不活性という三つのセクターに集中する傾向があります。そしてまさにそれらのセクターで、賃金と地位の低下が起きているのです。
Scott Galloway: Alice Evansの指摘に同意します。私はさらに教育・経済・精神的健康という三つの軸で整理したいと思います。教育面では、女性が男性を圧倒しています。40年前のアメリカでは大学進学者の男女比は女性40・男性60でしたが、今やそれが完全に逆転しました。州によっては女性対男性の卒業者比率が2対1になりつつあるものもあります。男性は女性よりも中退率が高く、サービス・イノベーション経済への移行が進む中で、これは女性にとってより良い職へのスライドを生み出す一方、男性には不利に働いています。K-12教育においても男子は不利な状況に置かれており、同じ行動をとっても男子は女子の2倍の確率で停学処分を受けます。黒人の男子に至っては5倍です。
2-2. 女性の分岐点:母性・職業選択・賃金格差
Alice Evans: 女性については、西洋社会における主要な変動要因は母性です。女性は母性と両立しやすい、より柔軟な職業を選ぶ傾向があり、これが西洋社会における賃金格差の主要因となっています。30歳未満の男女間賃金格差はほぼ解消されていますが、女性が出産すると賃金格差が再び拡大します。
Christy Hoffman: 私が労働運動に携わってきた50年間を振り返ると、女性の賃金は男性の75セントから今日80セントに上がりました。50年でたった5セントの進歩です。これはまったく不十分です。仕事自体が依然として強くジェンダー化されており、女性は柔軟な働き方やパートタイムを好む傾向があります。コロナ禍の後、多くの女性が職場に戻りたくないと感じ、労働市場から離脱しました。そして育児責任の大部分は依然として女性にかかっています。これは変わっていません。例外は存在しますが、あくまで例外です。育児や介護へのアクセスが不十分であることも、ジェンダーギャップを温存する構造的な問題の一つです。
Scott Galloway: 経済面ではより複雑です。30歳未満では賃金格差はほぼ解消されていますが、子どもを持った後に格差が再浮上するというAlice Evansの分析は正確です。また世界全体を見ると、高等教育を求める女性の数は男性を上回るようになっています。しかし若い男性に目を向けると、25歳以下の3人に1人しか交際相手がおらず、25歳以下の3人に1人が親元で暮らし、30歳時点で5人に1人が一人で生活しています。若年男性はあらゆる世代の中で最も急速に、最も大きく転落しているコホートだと私は考えています。
2-3. 教育格差の逆転と精神的健康の格差
Scott Galloway: 精神的健康については、女性と男性で異なるかたちの苦しみが現れています。女性、特に若い女性においては、うつ病・自傷行為のデータが深刻です。これは主にソーシャルメディアによるものだと私は考えており、過保護な育て方も一因として挙げられています。なお余談ですが、もしMetaのカフェでラテを注文したら、その日の終わりまでに6人に1人が自傷を始める可能性があります——これは9人しかいないこの会場向けのジョークですが。一方で男性、特に年齢が上がるにつれて、自殺の問題が際立ちます。遺体安置所で自殺による死者が5人いれば、そのうち4人は男性です。精神的健康と教育の問題は切り離せません。学校という場で男子が体系的に不利な扱いを受けていることが、その後の経済的不活性や孤立へとつながる一連の流れを作り出しているのです。
Alice Evans: そしてOECD全体を見渡すと、若い男性の孤独の拡大という現象が顕著です。Gallupのデータによれば、アメリカの若い男性の29%が孤独を感じていると答えています。アメリカやヨーロッパでは、20代の若い男性が70代の男性と同程度の時間を一人で過ごしているというデータもあります。この孤立は、異性への共感を育む機会を奪い、女性の友人を持つことで得られるはずの異なる視点への理解を妨げます。その結果、人々は各自のエコーチェンバーに閉じこもるようになります。
3. 政治的影響——男性の置き去りと反動的政治運動
3-1. トランプ当選の構造的要因としての若年男性の疎外
Alice Evans: 若年男性の経済的・社会的な置き去りが政治的にどのような結果をもたらすかという問いに対して、Scottはどうお考えですか。
Scott Galloway: 一言で言えば、ドナルド・トランプです。私は文字通り、トランプが大統領になったのは若年男性の失敗が原因だと考えています。2020年から2024年にかけて最も大きく青から赤へ転じた三つのグループを見ると、一つ目はラテン系アメリカ人です。ただし彼らをひとつのグループとして括ることにはもはや無理があり、私たちはそれをやめるべきでしょう。二つ目は40歳未満の若者で、彼らは40年前と比べて24%も資産が少ない状況にあります。対照的に平均的な70歳は72%も資産が増えています。そして三つ目は45歳から64歳の女性です。私の仮説では、これは息子や夫が苦しんでいるのを目の当たりにしている母親たちです。アメリカにはまだ、自分の夫や息子にとって最善と思われる候補者に投票する女性が多く存在しており、これは不快な事実ではありますが、直視しなければなりません。トランプ陣営の選挙戦略は天才的でした。テストステロン、Joe Rogan、暗号資産、ロケット、粗野さ、下品さ——こうした要素を前面に出し、民主党が長年無視してきたグループに真正面から訴えかけたのです。
Alice Evans: 私も完全に同意します。民主党全国大会に行ったとき、さまざまな特定利益団体がそれぞれの苦境を訴えるパレードが延々と続きました。しかし最も急速に、最も大きく転落しているグループ——若年男性——については一言も触れられませんでした。若年男性が失敗すると、彼らは非常にナショナリズム的なコンテンツ、女性嫌悪的・反移民的なコンテンツに引き寄せられやすくなります。誰か別の者を責めたいからです。若年男性の失敗こそが、好き嫌いはさておき、トランプを当選させた最大の理由だと私は確信しています。
3-2. 孤独・マノスフィア・エコーチェンバーが生む排外主義とグローバルな並行現象
Alice Evans: この問題をより広くグローバルな文脈に置くと、同様の現象は世界各地で見られます。男性がある組織から地位・敬意・承認を得られないと感じたとき、それを与えてくれる別の組織に引き寄せられていきます。ムスリム同胞団であれ、韓国の反フェミニスト的な大統領を支持する「男性連帯」のような運動であれ、これは明確なグローバルトレンドです。その背景にあるのが孤独とエコーチェンバーの問題です。アメリカの若い男性の29%が孤独を感じていると答えており、20代の男性が70代の男性と同程度の時間を一人で過ごしているというデータもあります。この孤立した状態では、異性との交流を通じた共感の構築も、女性が直面する異なる困難への理解も育まれません。
Scott Galloway: 加えて、スマートフォンと超高エンゲージメントアプリの問題があります。経済的に苦しく、社会的スキルの発達も遅れがちな男性ほど、スマートフォン依存に陥りやすい。スクリーンに費やす時間が増えれば、カップリングに必要な対人スキルを磨く時間は減ります。一方で女性は経済的に自立し、選択肢が増えたことで基準を引き上げています。もはや妥協する必要がなくなったのです。その結果、アメリカでは35歳未満の55%がシングルであり、交際・婚姻の減少は最も学歴の低い層で最も急速に進んでいます。こうした男性たちがマノスフィアに流れ込み、「すべては女性優遇のせいだ」「社会が自分たちを差別している」という不満の物語を消費し続けることで、女性嫌悪と排外主義がさらに深まっていきます。これは個人の問題ではなく、構造的に生み出されているサイクルです。
Alice Evans: そしてこのサイクルを断ち切るためには、文化的なキャンペーンだけでは不十分です。1970年代のフェミニスト革命の時代には、人々は同じ4チャンネルのテレビを見ていました。しかし今日、文化的エンジニアリングははるかに困難になっています。プラットフォームが無数に分裂し、アルゴリズムがそれぞれのエコーチェンバーをさらに強化する構造の中では、文化的介入の効果は限定的です。だからこそ、教育・雇用・制度設計という構造的な次元での対応が不可欠なのです。
4. グローバル経済トレンドとジェンダー——製造業の衰退とケア経済の台頭
4-1. 製造業・建設業の崩壊と男性労働者の喪失
Alice Evans: Christy、グローバルな経済的ボラティリティや世界経済のトレンドが、こうしたジェンダーダイナミクスにどのような影響を与えているとお考えですか。
Christy Hoffman: 若年男性が一定程度置き去りにされている理由の根本は、かつて男性に開かれていた仕事が消滅したことにあります。私自身の経験からお話しすると、私はジェットエンジンを製造する工場で働き始めました。そこにいた理由は、連邦政府が契約企業に女性を雇用することを義務付ける大統領令があったからです。中程度のスキルを要する仕事でしたが、組合があり、まともな賃金があり、年金があり、健康保険がありました。私が1978年に受け取っていた給与を今日のドルに換算すると、約9万ドルに相当します。当時の同僚はほぼ全員が男性で、家を所有し、車を持ち、中には小さなボートを持っている人もいました。若い人も多かったですが、多くはそこでキャリアのほとんどを過ごしました。「妻を働かせなくても済む」と誇らしげに語る人もいました。しかしそうした仕事は1980年代から90年代にかけてほぼ消えてしまいました。家族を養える賃金水準の、組合のある製造業の雇用が消えたのです。
Scott Galloway: Christyの指摘は的確です。今のアメリカでは製造業に対する一種のフェティシズムがあります。アメリカ人の80%が製造業をもっと増やすべきだと考えている一方で、実際にその仕事に就きたいと思っているのはわずか20%です。工場の床に犬を連れてくることはできません。医療・ヘルスケア産業は製造業に取って代わりつつありますが、医療系の学校には今や女性の方が多く進学しており、男性はヘルスケア分野への参入に依然として消極的です。今日残っている製造業の雇用は、かつてのような強い条件を備えていません。非組合の仕事がほとんどで、産業自体が縮小しています。
Christy Hoffman: 低学歴の男性が今日直面している現実に、私は深く共感します。私には30歳になる息子がいます。彼は何とかうまくやっていますが、Scottの著書で語られていることの多くは本当にそのとおりだと思います。大学に行かない若い男性に残された選択肢とは何か、という問いを私たちは真剣に考えなければなりません。女性側についても言えば、50年間この仕事をしてきて、女性の進歩がこれほど遅いことにいまだに憤りを感じます。50年前、女性は男性が稼ぐ1ドルに対して75セントしか得られていませんでした。今日それは80セントです。同じ仕事であれば露骨な差別は見られなくなってきましたが、仕事そのものが依然として強くジェンダー化されており、育児や介護へのアクセス不足という構造的問題が解決されない限り、このギャップは埋まりません。
4-2. ケアセクターの拡大と男性参入の困難、グローバル南半球の無償労働問題
Alice Evans: 高齢化社会と人口動態の変化を踏まえると、多くの国で介護労働への需要が高まっていくのは明らかです。男性をケアセクターに誘導する文化的キャンペーンという方向性について、私は二つの懸念を持っています。一つは、女性的とされる職業は男性にとってスティグマを伴うという現実です。世界で最も進歩的な国の一つであるスウェーデンでさえ、看護師の88%は女性です。もう一つは、文化的エンジニアリングが今日ではるかに難しくなっているという点です。1970年代のフェミニスト革命の時代には、社会全体が同じ数チャンネルのテレビを見ていましたが、今日の情報環境はまったく異なります。
Christy Hoffman: 炭鉱が閉鎖されていたウェストバージニア州で、「介護施設で働くための訓練をしましょう」という取り組みが行われたことを私は今でも覚えています。1年間の訓練を経て、結果は完全な失敗でした。ケア労働への需要が高まることは確かで、私たちも多くの時間をこの問題に費やしてきました。しかし男性にその仕事を取ってもらうことは非常に難しい。そして賃金水準が改善されない限り、男性は動きません。ケア労働には医師から介護助手、在宅介護ワーカーまで幅広い職種がありますが、最も低賃金の職種はほぼ99%が女性で、男性を見つけることは極めて稀です。これらのワーカーに対してもっと尊厳と地位を与えなければなりません。コロナ禍の時期、こうした労働者は不可欠な存在だと声高に称えられました。介護施設で高齢者の世話をし続け、毎日病院に通い続けた人たちです。しかしコロナが明けた後、彼らへの地位と敬意は結局与えられませんでした。
Alice Evans: グローバルな視点で見ると、問題はさらに深刻です。南アジアでは、医療関連の多くの仕事がコミュニティ・ヘルスワーカーによって担われています。彼女たちはボランティアであり、世界全体で数百万人規模に上ります。ランダムに集められた人々ではなく、担当地域と任務を持つ組織化された存在ですが、報酬はほとんど支払われていません。わずかなスティペンドが支給されることもある程度です。これが女性に対する「社会的義務」として位置づけられている現実があります。これは国際労働運動における最大の課題の一つです。ケアセクター全体の底上げ——賃金・地位・社会的認知の向上——なくして、男性の参入促進も、女性の不払い労働からの解放も実現できません。
5. 企業レベルでの対応——トップ層におけるジェンダーギャップと文化変革
5-1. 取締役会の女性比率の変化とタレント獲得競争の論理
Alice Evans: Michael、新しい経済学の論文によれば、ジェンダー賃金格差の大きな部分は、女性が母性と両立しやすいより柔軟な企業に選択的に集まることに起因しているとされています。優秀な母親たちを企業が引きつけ、確保するために何ができるとお考えですか。あるいはより広く、女性を企業のリーダーシップ層へ引き上げるために何が必要でしょうか。
Michael Ena: 私が専門とするエグゼクティブや経営幹部レベルでは、過去10年から12年の間にジェンダーギャップは確かに存在しつつも、着実に縮小してきました。取締役会における女性比率の数字を見ると、過去12年間で倍増しています。現在、グローバルな主要企業の96%が少なくとも1人の女性取締役を擁しており、女性の取締役比率は30%に達しています。ただし1人では十分ではないことははっきり申し上げておきます。それでもこの変化は劇的なものです。
私たちエグゼクティブサーチの立場からすれば、これは課題であると同時に、私たち自身の意志と確信の表れでもあります。私たちは男性と同様に、できる限り多くの女性候補者を発掘してクライアントに提示するよう努めています。ただし最近は、ジェオポリティクスや地政学的な気候変動の影響もあってか、以前ほどには積極的に求められなくなってきているという変化も感じています。
しかし私のクライアントであるトップリーダーたちは、女性リーダーシップをニュートラルな目で見るか、あるいはそのギャップをさらに埋めるために女性を積極的に求めるかのどちらかです。そしてその根本には、今まさに私たちは人材獲得競争の真っ只中にいるという認識があります。25年前にも「タレントウォー」という言葉が使われていましたが、今日それはより切実な現実です。適切なスキルと潜在能力を持ち、企業の成功や変革に最大限貢献できる人材であれば、男性か女性かは問題ではありません。希少な人材をいかに確保するかという問いに対して、もはや好みを言っている余裕はないのです。
5-2. 技術職パイプラインの構造的不足・母性によるキャリア断絶・企業文化の変革
Alice Evans: コロナ禍とリモートワークの普及が、女性のトップ層への参入を後押ししたとお考えですか。
Michael Ena: 正直に言えば、そこに相関関係は見出せません。私が実感しているのはむしろ人材不足です。私たちは適切な候補者を探すことを自分たちに対して簡単にしすぎないよう心がけており、男性を選べば楽という誘惑に抗うようにしています。
具体的な例として、エンジニアリングや技術分野全体において、大学での女性学生数が統計的に少なく、それが企業に入社する若手人材の少なさに直結し、最終的にリーダー候補の絶対数の少なさへとつながっています。自動車会社や鉄鋼会社、製造業の企業では、財務・マーケティング・人事部門で働く女性人材を探すことで、工学系の女性不足を補おうとする一種の「逃げ戦略」が生まれています。
さらに、大学卒業後にキャリアを積んでいた女性が出産のために2〜3年間離脱すると、その間に男性中心のネットワークが築かれ、昇進の機会を逃してしまうという現実があります。復帰後には既に形成された「ボーイズクラブ」の中で追いつくことを強いられます。これを補うためには、その事実を認識し、積極的に是正しようとするリーダーシップのマインドセットが必要です。良いリーダーシップは違いを生み出します。悪いリーダーシップは生み出しません。
Scott Galloway: 企業文化の問題で言えば、私はリーダーシップと身長・声の低さを結びつけるという無意識の偏見の問題を強調したいと思います。IQが140あっても身長が157センチで声が高ければ、その人はせいぜい副経済大臣か教育委員会の議長止まりです。一方でIQが110でも身長が193センチで立派な髪の毛があれば、民主党の大統領候補になれます。私たちは選出されたリーダーについては依然として非常に性差別的であり、これは特にアメリカ人がリーダーシップを身長と声の低さと無意識に結びつける傾向に顕著です。取締役会では進歩が見られますが、政治の世界では女性リーダーに対する性差別は根強く残っています。2年前の時点では、Bobという名前のCEOの数が女性CEOの総数を上回っていました。これは機会の平等が存在しないことを意味します。
Michael Ena: 企業文化という点では、コロナ禍が一つのターニングポイントになりました。法律事務所やコンサルティング会社など私の同業者に近い業界では、適切な人材の確保に苦労しているところが増えています。新しい世代は、単に給与や肩書きではなく、仕事の意味や自己成長、そしてワークライフバランスを求めています。「ハムスターホイールの中で回り続けること」への拒絶感は世代を超えて広がっており、企業はハードなインセンティブだけでなく、文化的な側面でも応えていかなければなりません。これは男性にも女性にも共通する変化であり、この変化に対応できる企業が優秀な人材を引きつけられる時代になっています。
6. 教育制度の再設計と社会政策の提言
6-1. K-12の問題:男子の発達遅延・ロールモデル不足・教育環境の再設計
Alice Evans: ダボスでは多くのパネルがAIの台頭と、それに対応するための教育の在り方について議論しています。AIが計算やコーディングといったタスクをこなす時代に、学校は好奇心・問題解決力・社会的スキルを育む場であるべきという声が高まっています。Scottさん、K-12教育が若い男性の才能を伸ばすために何ができると思いますか。また男子が直面している課題についてどうお考えですか。
Scott Galloway: K-12については、私はまず男子の就学開始年齢を6歳に遅らせる「レッドシャーティング」を提唱します。5歳の時点で、男子の前頭前野の発達は女子より18ヶ月遅れています。7歳から10歳の間、学年首席はほぼ女子です。大学受験において男子と女子の2人のシニアが競っている場合、男子は実質的に10年生の女子と競っているようなものです。この発達の非対称性を無視したまま同じ年齢で入学させることは、最初から男子に不利な競争を強いることになります。
また、K-12における男性教師の不足は深刻です。現在、K-12の教師は女性対男性の比率が3対1に達しています。人は自分に似た人を自然に応援するものです。女性教師が大多数を占める環境では、教育システムが意図せず「女性化」される傾向があります。実際、男子校では数ヶ月のうちに休憩時間が倍に増え、粗野で活発な遊びも取り入れられるようになります。男性教師を増やすことは、男子の学習環境を根本から変える可能性を持っています。
Alice Evans: 英国のある都市での経験をお話しします。かつてそこには若い不遇な男性たちが利用できるユースコミュニティクラブがありました。メンターのいる安全な環境の中で、ある程度の活発な遊びを楽しみながら、指導やサポートを受けられる場所です。ところが緊縮財政によってそれらのクラブが閉鎖されると、若年男性の経済的成果と教育的成果が悪化し、犯罪率も上昇したというデータがあります。制度的なサポートの喪失が、いかに男性の人生軌道に直接的な影響を与えるかを示す具体例です。
Scott Galloway: 男性ロールモデルの問題は、データが示す結果として非常に明確です。少年が軌道を外れる瞬間を一点に遡ると、それは男性のロールモデルを死別・疾病・遺棄によって失った瞬間です。若い男の子が男性ロールモデルを失った瞬間から、彼は大学を卒業するよりも収監される可能性の方が高くなります。興味深いのは、女子はひとり親家庭でも大学進学率や収入において同様の結果を示すという点です。つまり、男子は女子に比べて身体的には強くとも、感情的・神経学的にははるかに脆弱なのです。このギャップを埋めるためには男性によるメンタリングが不可欠であり、だからこそ男性教師を増やすことが重要です。
6-2. 大学改革と義務的国民奉仕制度——シンガポール・イスラエルの実証的知見
Scott Galloway: 大学については、AIへの対応として何を教えるべきかという議論が盛んですが、私はそれよりも根本的な問題があると考えています。ギリシャ語を学ぶべきかプログラミングを学ぶべきかという話よりも、そもそも「誰を入学させるか」ではなく「何人入学させるか」という問いを立て直すべきです。私の業界、すなわち高等教育は希少性という幻想に酔いしれています。NYUは応募者の91%を不合格にし、ダートマスは96%を不合格にしています。ダートマスは80億ドルの基金を持ち、人里離れた場所に位置しながら、入学させる新入生はわずか1,100人です。しかし11,000人を入学させることは十分に可能なはずです。誰を入学させるかという議論は間違った議論です。正しい問いは何人入学させるかです。
具体的な政策提言として、私は10億ドル以上の基金を持ちながら人口増加率を上回るペースで新入生の定員を増やしていない大学については、非課税ステータスを剥奪すべきだと考えています。もはやそれは公益に奉仕する機関ではなく、ヘッジファンドです。また職業訓練プログラムの拡充も不可欠です。大学進学を選ばない若者に対して、尊厳ある生活を可能にする別のルートを整備することが、若年男性の問題の多くを構造的に解決します。
Alice Evans: 男性をケアセクターへ誘導するという文化的アプローチについても触れておく必要があります。Scottが提唱している解決策の一つが、まさにこの問題に対する回答にもなっています。
Scott Galloway: カリフォルニア州知事に「一つだけ社会プログラムを実施できるとしたら何を選ぶか」と問われたとき、私は迷わず義務的国民奉仕制度と答えました。これは方程式の両面に同時に対処できる施策だからです。世界で若年層のうつ病率が最も低い国はシンガポールとイスラエルです。両国に共通しているのは義務的国民奉仕制度の存在です。国民奉仕では軍を選ぶこともできますが、高齢者介護やヘルスケアを選択肢として積極的に設けることもできます。重要なのは、重い装備を扱い、文字通り命を預け合うような経験の中では、相手の性別や父親が誰かや性的指向など考えている暇はないということです。幼い頃からそのような経験を積むことで、男性も女性もヘルスケアや高齢者介護をジェンダーで色分けされた仕事とは感じなくなります。
Alice Evans: さらに重要な副次的効果があります。イスラエルとシンガポールは、選出されたリーダーに占める女性の割合が比較的高い国でもあります。国民奉仕という共通体験を通じて、リーダーシップそのものがジェンダーで色付けされることなく評価される土壌が育まれるのです。直接的な文化的エンジニアリングを試みるよりも、義務的国民奉仕という制度設計によって、教育格差・男性の孤立・ケア労働の担い手不足・女性リーダーへの偏見という複数の問題を一度に解決できる可能性があります。私がこのセッションで最も強調したいのは、これらの問題はすべて構造的に絡み合っており、単一の文化的キャンペーンや単発の政策では解決できないという点です。男性と女性がそれぞれ異なる、しかし等しく深刻な課題に直面している今、制度の根本的な再設計こそが求められています。
