※本記事は、Duncan Crabtree-Ireland氏、Janine Berg氏、Pawel Gmyrek氏が登壇したAI for Good主催のセッション「AI in Hollywood: A conversation with Duncan Crabtree-Ireland, Chief Negotiator, SAG-AFTRA」の内容を基に作成されています。動画の詳細情報は https://www.youtube.com/watch?v=6uTuwWT9i4c でご覧いただけます。本記事では、セッションの内容を要約しております。なお、本記事の内容は原著作者の見解を正確に反映するよう努めていますが、要約や解釈による誤りがある可能性もありますので、正確な情報や文脈については、オリジナルの動画をご覧いただくことをお勧めいたします。
登壇者:Duncan Crabtree-Ireland氏(SAG-AFTRA、全米執行ディレクター兼主席交渉人)、モデレーター:Janine Berg氏(国際労働機関(ILO)、上級エコノミスト)、Pawel Gmyrek氏(国際労働機関(ILO)、上級研究員)。本セッションはITU(国際電気通信連合)が主催し、40の国連関連機関およびスイス政府と共催するAI for Good Global Summitの一環として開催されました。AI for Good Global Summitは、健康・気候・ジェンダー・包括的繁栄・持続可能なインフラなど、世界的な開発課題の達成に向けてAIを活用することを推進する、国連の主要な行動志向プラットフォームです。
1. はじめに:SAG-AFTRAとDuncan Crabtree-Irelandの紹介
1-1. SAG-AFTRAの概要と歴史
Janine: 本日のセッションにお越しいただいたDuncan Crabtree-Irelandさんをご紹介します。彼はSAG-AFTRA(Screen Actors Guild・American Federation of Television and Radio Artists)の主席交渉人を務めています。SAG-AFTRAは1930年代に設立された組合で、長い歴史のなかで組合員の権利保護に向けた交渉を積み重ねてきました。現在、この組合が代表する職種は非常に幅広く、俳優、アナウンサー、放送ジャーナリスト、ダンサー、DJ、ニュースライター、ニュースエディター、そしてパペティア(人形遣い)に至るまで、約16万人の人々が加盟しています。彼らの仕事は映画館、テレビ、ラジオ、音楽録音、インターネット、ゲーム、モバイルデバイス、そしてホームビデオと、あらゆるメディアにわたっています。
1-2. Duncan Crabtree-Irelandの経歴と主席交渉人としての実績
Janine: Duncan Crabtree-Irelandさんは、SAG-AFTRAにおいて数々の重要な局面を主導してきた人物です。2012年にはSAGとAFTRAという二つの組合の合併を成功に導いた主要なリーダーとして活躍し、その後もパンデミック時の安全対策と現場復帰に向けたイニシアティブの立案において中心的な役割を果たしました。また、彼のキャリアを通じて、テレビ、映画、ストリーミング、ビデオゲーム、コマーシャル、音楽、ネットワークテレビ、スペイン語放送など、多岐にわたる契約交渉を自ら主導、あるいは監督してきました。そして本日の主題でもある、2023年のTV・シアトリカル契約交渉とストライキを歴史的な形で主導したのも彼です。今日はAIがエンターテインメント産業に与える影響、2023年のストライキ、ゲーム産業との現在進行中の交渉、そしてメディア・文化産業のビジネスモデルの変化について、幅広くお話を伺いたいと思います。
Duncan: Janineさん、そしてPavelさん、このような場にお招きいただきありがとうございます。本当に魅力的なテーマだと思いますし、先進的な生成AIツールがエンターテインメント産業に導入されていくこの最初の数年間がいかに難しい時期であるかを、まさに浮き彫りにしているテーマでもあります。しかし同時に、この問題を正しく扱うことができれば、AIの実装をより人間中心的で、人々を高める方向へ導く大きな機会でもあると思っています。もちろん、AIがすでに引き起こしている混乱は今後も続くという現実を最初から認め、正直に向き合うことが不可欠だとも考えています。今日はその点も含めて率直にお話しできればと思います。
2. AIをめぐる交渉の背景と準備
2-1. ChatGPT登場以前からの約10年にわたるAI研究と問題意識
Duncan: 私たちがAIを真剣に研究し始めたのは、世間一般でこの話題が盛んに語られるようになるはるか以前のことです。実際、AIについては約10年前から調査・研究を続けており、2023年の交渉に向けた準備を本格化させたのは2022年の秋頃のことでした。当時の技術的な文脈を整理しておくと、その時点ではOpenAIがChatGPTを一般向けに公開する前であり、生成AIをめぐる社会的な議論はまだ今日のような熱量には達していませんでした。それにもかかわらず、私たちはすでにAIが組合員の働き方に深刻な影響を及ぼすと確信し、次の交渉サイクルに向けて具体的な準備を進めていたのです。
私たちがAIに関する最初の公開プレゼンテーションをエンターテインメント産業への影響というテーマで行ったのは、2022年12月の第一週のことです。これはOpenAIがChatGPTの最初のバージョンを一般公開したわずか2週間後のことであり、生成AIをめぐる文化的な議論が一気に爆発的な広がりを見せるのとほぼ同じタイミングでした。この偶然の一致は、私たちが問題の深刻さをいかに早い段階から認識していたかを示すものだと思っています。
2-2. CGI・初期AI技術による「デジタル複製」の先行事例
Duncan: 交渉の準備を進めるなかで私たちが最初に直面したのは、「人間のパフォーマーのデジタル複製」という問題でした。これはChatGPTの登場以前から、CGIやその他の技術的な手法を使って実際に試みられていたことであり、決して仮定の話ではありませんでした。当時すでに、比較的高知名度のパフォーマーを対象に、主として出演が不可能な状況、たとえば故人であるなどの理由から、デジタル複製が用いられていたのです。
代表的な事例として、映画「ワイルド・スピード」シリーズにおけるPaul Walkerの複製や、「スター・ウォーズ」シリーズにおけるCarrie Fisherの複製が挙げられます。これらは当時の技術水準では比較的限定的なものでしたが、私たちが強く認識していたのは、こうした技術が急速に経済的にもアクセスしやすくなっていくという事実でした。つまり、ごく一部の高知名度パフォーマーにだけ関係する特殊なケースではなく、やがて業界全体に広く使われるようになることは明らかだったのです。組合員たちもこの流れに対して当然ながら深刻な懸念を抱いており、私たちはその懸念を交渉の場で具体的な保護につなげなければならないという強い使命感を持って準備に臨みました。
2-3. 交渉方針として定めた「インフォームドコンセント」と「公正な報酬」という2つの柱
Duncan: 数ヶ月にわたる検討を経て、私たちは交渉に臨むにあたっての基本的な哲学を2つの柱として定めました。第一の柱は、パフォーマーのデジタル複製やデジタルアイデンティティのいかなる使用に対しても、インフォームドコンセント(十分な情報に基づく同意)を得る契約上の権利を確立することです。これはパフォーマーが「イエス」または「ノー」を言える権利、しかも何に同意しているのかを十分に理解したうえで意味のある判断ができる権利を保障することを意味します。
エンターテインメント産業、そしておそらく他の多くの産業においても、同意書は長らく形骸化してきました。「私は、現在知られているまたは今後考案されるあらゆる技術手段により、宇宙全体にわたって永続的に、自身のイメージ、肖像、および声を使用する権利を付与します」という一文に署名させられるだけで、その同意が具体的に何に使われるのかについての説明は一切ない、というのが業界の慣行だったのです。私たちの見解では、これは真の意味での同意ではありません。何に同意しているのかわからない状態では、「イエス」か「ノー」かを本当の意味で選択することができないからです。この「透明性のある環境におけるインフォームドコンセント」、つまりアーティストや労働者が真に意味のある「イエス」または「ノー」を言える権利という概念は、その後の私たちのすべての交渉の礎となっており、さらには公共政策の領域にも影響を与えるものとなっています。
第二の柱は、公正な報酬の原則を確立することです。誰かのイメージ、肖像、あるいは声、つまりそのデジタルアイデンティティを使用するのであれば、たとえ本人が物理的に何かを行って成果物を生み出したわけでなくても、その人物は相応の報酬を受け取る権利があるという原則です。私たちの組合員の多くは、キャリア全体を通じて自身のペルソナ、イメージ、肖像、声の経済的価値を築き上げてきた人々です。その価値を公正な対価なしに取り上げることは許されないという考えを、私たちは強く主張しました。何が「公正」であるかは状況によって異なりますが、その基本原則は契約に明確に組み込むべきものとして私たちは交渉に臨みました。
3. 2023年TVシアトリカル・ストライキの経緯・成果・影響
3-1. 2023年7月の交渉決裂からストライキ突入までの経緯
Duncan: 私たちが2023年の交渉に臨んだのは、AIに関する詳細かつ具体的な提案書を携えてのことでした。私の知る限り、エンターテインメント産業において組合がこれほど詳細なAI提案を交渉の場に持ち込んだのは、私たちが初めてだったと思います。交渉の相手は、米国の主要なスタジオおよびストリーミング各社が加盟するAMPTP(Alliance of Motion Picture and Television Producers)です。
交渉は2023年初頭から始まりましたが、7月12日に最初の交渉ラウンドが不成立という形で幕を閉じました。その最大の理由の一つが、AIをめぐる問題で実質的な進展がまったく得られなかったことでした。AIに関する私たちの要求は組合員にとって譲れないものであり、この問題が解決されない限り、最後の手段であるストライキに踏み切らざるを得ないということは、交渉の経緯を見れば組合員にとっても明らかでした。そしてまさにその通りの事態が起きました。
Janine: ストライキに至るまでの流れはよく理解できました。ただ、そのストライキは118日間という非常に長期にわたるものでしたね。
Duncan: そうです。118日間のストライキでした。その期間中、産業に携わる多くの労働者が長期にわたって仕事を失い、深刻な打撃を受けました。これは決して軽く見てはならない現実であり、ストライキという手段がいかに重大な決断であるかを物語っています。しかし同時に、それだけの犠牲を払ってでも守らなければならない原則があるという確信が、私たちを動かしていました。
3-2. 118日間のストライキが産業・労働者に与えた打撃
Duncan: ストライキの影響は、AIの問題だけにとどまりませんでした。AIが中心的な議題として注目を集めたのは、それが最も広く一般の人々にとっても関連性のある問題として映ったからですが、実際にはほかにも重大な争点がありました。たとえば、インフレに見合った報酬の引き上げ、そしてストリーミング産業の台頭によって大きく変化したビジネスモデルに対応できていなかった報酬体系の見直しです。ストリーミングの普及によって組合員が取り残されていたという現実は、交渉の場でも強く訴えた点でした。
産業全体への打撃という意味では、映画・テレビ制作が長期間にわたって停止したことの経済的損失は計り知れないものがありました。しかし私が強調したいのは、その痛みを最も直接的に受けたのは、現場で働く一般の組合員たちだったということです。仕事を失い、収入が途絶え、生活への不安を抱えながらも、彼らは信念を持って戦い続けました。そしてそのことが、最終的に歴史的な合意を引き出す力になったと私は確信しています。
3-3. 合意内容の詳細(デジタル複製保護・インフォームドコンセント・補償構造・合成パフォーマーへの対応)
Duncan: 最終的に2024年に発効したこの合意において、AIに関して達成できた内容をご説明します。まず第一に、デジタル複製に関するパフォーマーの権利の保護です。これは、複製がどのような方法で作成されたかに関わらず適用されます。たとえば、仕事の一環としてスキャンやその他の物理的な行為を通じて作成された複製であっても、あるいは第三者のベンダーなど外部から独立して取得された複製であっても、この合意による保護が適用されます。
これが重要である理由は、一見当然のことのように思えるかもしれませんが、労働の観点からは非常に本質的な問題を含んでいるからです。私たちが懸念していたのは、一部の企業が従来の雇用関係を迂回するために、パフォーマーからデジタル複製のコンテンツをライセンス契約という形で直接取得したり、第三者ソースから入手したりすることで、労働契約上の保護を回避しようとするのではないかという点でした。この合意によって、そのような雇用関係の再構築が行われたとしても、契約上の保護が確実に適用されることになりました。
第二に、詳細なインフォームドコンセントの要件を盛り込みました。実際の合意文書をご覧になれば、「インフォームドコンセント」という言葉そのものは登場しません。代わりに「合理的に具体的な使用目的の説明(reasonably specific description of intended use)」という表現が使われています。これがインフォームドコンセントという概念の契約上の定式化です。つまり、意味のある同意を与えるためには、同意を付与する時点で使用目的についての合理的に具体的な説明が必要であり、もしそれを超えた使用を望む場合には、再度あなたから追加の同意を得なければ進められないということです。
第三に、詳細な報酬構造です。ここでは具体的な数字には踏み込みませんが、どのような状況においても最低限「公正」とみなされる補償の定義が、合意のなかに組み込まれています。
第四に、生成AIと合成パフォーマーに関する条項です。これはデジタル複製とは別の問題であり、私たちがこの交渉に臨む前から抱えていたもう一つの大きな懸念でした。それは、企業が新しい生成AIツールを使って、現実の人物とはまったく似ていない、過去にも現在にも存在しない合成パフォーマーや合成パフォーマンスを作り出した場合、同意はどのように機能するのか、そしてそれはどういう意味を持つのかという問いです。
この問題については、交渉がおそらく最も難航した部分でもありました。企業側も、私たちとの合意内容が急速に発展するこの業界における自社の競争力にどう影響するかを当然ながら心配していたからです。それでも最終的に確立できたのは、生成AI技術を使って合成パフォーマーを作成しようとする場合、署名企業すべてに私たちへの事前通知を義務づけるという契約上の要件と、そのような使用に対する経済的な対価・報酬について交渉する権利の確立です。
この条項の目的は二つあります。一つは、合成パフォーマーや合成パフォーマンスが職場を混乱させる事態が生じた場合に、何らかの緩和措置のための財源を確保すること。もう一つは、この産業の仕事が持つ本質的な価値——すなわち人間固有の創造的貢献——を常に念頭に置き続けることです。エンターテインメント産業はビジネスであり、大きなビジネスですが、その根本は人間のユニークな創造的貢献に基づいています。AIの「良い使い方」とは、人間の仕事を補完・拡張し、これまでなかったツールを創造的なアーティストに提供することだと私たちは考えています。人間の創造性をアルゴリズム処理で置き換えることを奨励したいわけではなく、経済的な仕組みを使ってそのような方向性を思いとどまらせることができると考えており、この合意はその第一歩です。
3-4. ゼロから16ページへ——契約条項の急速な進展
Duncan: この合意が2023年11月に組合員によって承認されたことを踏まえて、一つ個人的な感想を述べさせてください。このストライキの期間中、米国内だけでなく世界中の仲間の組合や労働運動、そして私たちが達成しようとしていることの意義に共感してくださった一般の方々からの支持が、良い結果を出すうえで極めて重要でした。そのことには今も深く感謝しています。
そして、この合意が持つ意味を改めて考えるとき、私はこう自分に言い聞かせるようにしています。わずか2年前、映画・テレビにおけるAIとデジタル複製の使用に関する契約上のルールは、ページ数にしてゼロでした。それが今や16ページになっています。そしてこれは始まりに過ぎません。先はまだ長いと感じることもありますが、短期間でどれだけの距離を歩んできたかを意識することが、前に進み続ける力になっています。実際、この合意から1年強が経った今、私たちはすでに次のスタジオ・ストリーマーとの交渉に向けた準備を始めており、そこでも間違いなくAIに関するさらなる議論が行われることになるでしょう。
Janine: ここまでの成果は本当に驚くべきものだと思います。16万人の組合員だけでなく、クリエイティブ産業全体、そして世界中の人々にとっても意義のあることですね。
Duncan: そう願っています。そしてそうなりうると思っています。私たちがFIA(国際俳優連盟)を通じて世界中の俳優組合と対話するなかで、互いの成果の上に積み上げていくという姿勢が共有されています。各組合が私たちの成果を活かし、さらにその上に積み上げてくれれば、私たちもまた彼らの成果から学ぶことができる。この持続的な前進の力こそが、この取り組みの根本にあるものだと感じています。
4. ビデオゲーム産業との現行ストライキと声優問題
4-1. 2024年7月末開始の第二のストライキとAI問題への争点の絞り込み
Janine: Duncan、現在もビデオゲーム会社との間でストライキが続いていると伺っています。昨年のストライキと同様の成果を求めているということでしょうか。それともビデオゲーム産業特有の問題があるのでしょうか。
Duncan: 非常に良い質問です。そうです、私たちは2024年7月末からビデオゲーム産業に対してストライキを続けており、これもすでに非常に長期にわたるストライキになっています。この交渉において特筆すべきは、AI問題がさらに純粋な形で争点として結晶化しているという点です。昨年のテレビ・映画産業とのストライキでは、AIが中心的な議題として注目を集めましたが、それ以外にもインフレへの対応や、ストリーミング産業の台頭に対応できていなかった報酬体系の見直しといった重要な争点が並存していました。
しかしビデオゲーム産業とのこの交渉では、AI以外のすべての経済的な問題はストライキが始まる前にすでに解決されていました。つまりストライキ開始以降、私たちが交渉しているのはAIの実装という一点のみです。私たちが求めているのは、昨年確立したインフォームドコンセントと公正な報酬という基本原則、まさにその同じ原則をビデオゲーム産業においても実現することです。
そして私が非常に歯がゆく、かつ挑戦的だと感じているのは、私たちが交渉している先のビデオゲーム会社以外の多くの企業、つまりスタジオやストリーマー、テレビアニメーションの制作会社、主要なレコードレーベル、そして個別に合意を結んだ数多くの企業が、すでにインフォームドコンセントと公正な報酬というコアコンセプトを受け入れ始めているという事実です。さらにこの概念は法律としても成立しており、カリフォルニア州とテネシー州ではすでに法制化され、連邦議会でも法案が審議されています。つまり業界全体でも公共政策の分野でも、このコンセプトをめぐるコンセンサスが明確に形成されつつあるのに、ビデオゲーム会社だけがそれに抵抗しているという構図になっています。ストライキが長引くにつれて、彼らはますます孤立した立場に置かれていると感じています。
私たちとしては、すべての組合員を置き去りにするわけにはいきません。ビデオゲーム会社が一部のパフォーマーに対してインフォームドコンセントと公正な報酬の一部を提示してきたことはあります。しかしすべての労働者が基本的なAI保護を受ける権利があり、すべてのパフォーマーが同様にその基本的な保護を受けるべきだというのが私たちの立場であり、それが現在もストライキを続けている理由です。
4-2. 声優が最前線に立つ技術的理由とゲーム会社が孤立しつつある現状
Janine: 声優の方々については、Etherevoxやnarrativとの合意があるとも聞いています。ビデオゲームにおける声優の立場には何か特別な事情があるのでしょうか。
Duncan: ビデオゲームの契約は、その大部分が声優の仕事で占められています。ビデオゲームという媒体においてボイスアクティングが大きな比重を持つことを考えれば、この契約が解決されるまで声優たちが困難な状況に置かれていることは言うまでもありません。
そして私がすべての演技の形態のなかで声優が最もAIの影響の最前線に立っていると言うのには、明確な技術的理由があります。純粋に技術的な観点から言えば、音声のみの環境ではAI技術の実装がはるかに容易だからです。映像を伴う環境ではデジタル複製の実装にはまだ一定の複雑さが伴いますが、音声に特化した場合、その技術は驚くほど速いペースで進化し、すでに広く実用化されています。これがビデオゲーム産業における交渉をこれほど重要かつ緊急性の高いものにしている理由の一つです。
ビデオゲーム会社の姿勢についていえば、私たちが粘り強く交渉を続けているあいだにも、ほかの多くの企業が私たちの求める方向に向かって動いている現実があります。そのなかでビデオゲーム会社だけが抵抗を続けているのは、私の目にはもはや業界の孤島のように映ります。おそらく彼らなりのいくつかの理由があるのだとは思いますが、その抵抗の姿勢は月を追うごとにますます正当化しにくいものになっていると感じています。
4-3. ゲーム開発者への組合拡大の動き
Pavel: ビデオゲーム産業における組合組織率についても教えていただけますか。
Duncan: ビデオゲーム産業は、映画・テレビ産業と比較すると、組合に加入している労働者の密度という意味では、少なくとも米国においてはまだそれほど高くありません。カメラの前でのパフォーマンスやボイスパフォーマンスを行う私たちの組合員については、業界全体にわたって広く組合に加入しており、現在ストライキを行っている主要なビデオゲーム会社のプロジェクトもすべて組合加入のパフォーマーが担っています。
しかし、ビデオゲーム会社の労働力の大きな部分を占めるゲーム開発者については、伝統的に組合に加入してこなかったという現実があります。ただしこの点については現在変化が起きており、米国の主要な組合がいくつかの大手ゲーム会社の開発者を組合に組織しようとする積極的な運動が進行中です。こうした動きが生まれた背景には、開発者たちがいわゆる「クランチ」と呼ばれる極端な長時間労働を強いられることがあまりにも多く、それが到底許容できる水準ではないという問題意識があります。私たちはそうした組合化の取り組みを全力で支持しています。
ビデオゲーム産業のすべての職種にわたって組合員の密度が高まっていくことを強く望んでいますし、私たち自身もパフォーマーのためにAIからの保護とその他の職場問題について引き続き戦っていきます。まだ道半ばではありますが、前に進んでいることは確かです。
5. 先進的な個別合意事例:倫理的AIモデルの実践
5-1. Etherevox社との合意——完全同意済みデータのみで構築する世界初の倫理的基盤モデル
Janine: EtherevoxやNarrativとの合意についても触れていただけますか。これらは大手スタジオやストリーマーとの合意とは性質が異なるものでしょうか。
Duncan: はい、これらは私たちが「専門的合意(Specialized Agreements)」と呼んでいるもので、スタジオやストリーマーとの幅広い包括的な合意とは異なり、AIに特化した形で個別企業と締結したものです。どちらも非常に興味深い事例ですが、まずEtherevoxからお話しします。
Etherevoxは私たちの最も新しい合意の一つで、ちょうど先月末に締結したものです。この会社が目指しているのは、世界で初めて完全にドキュメント化された倫理的なAI基盤モデル、すなわちトレーニングデータのすべてが完全に同意を得た入力のみで構成される基盤モデルを構築することです。これは非常に重要な意味を持ちます。
AIをめぐる大きな課題の一つは、技術を前進させようとする熱意と競争上の焦りから、多くのAI企業がオンライン上やあらゆるソースから無断でコンテンツを取り込み、同意も補償もライセンスもなく、ただそれをトレーニングデータに投入し、後で問題が起きれば対処すればいいという姿勢で動いてきたという現実です。人生をかけて卓越した芸術作品や文化への独自の貢献を生み出してきた人々の立場からすれば、そのような形で自分の作品が同意も関与もなく使われるという発想は根本的に間違っていると言わざるを得ません。
Etherevoxはこれとはまったく異なるアプローチをとっています。現時点での彼らの取り組みは声優モデルに特化しており、基盤モデルに使用されるすべての声は、同意を与えた声優のものです。その声優たちは付与している同意の範囲を正確に把握しており、その使用に対して報酬を受け取り、さらに基盤モデルの開発への継続的な参加についても一定の時点で改めて同意を求められる権利を持っています。
一点補足しておきたいのは、Etherevoxのアウトプットは一般ユーザー向けの最終製品ではないという点です。彼らが生み出すのは基盤モデルそのものであり、それをほかの企業がさらに特定の用途向けにトレーニングして使用することができます。しかし、これはある意味でさらに重要なことでもあります。なぜなら、ほかの企業が倫理的な形でこれを正しくやるためのインフラを提供しているからです。完全に同意を得たAIツールの基盤を築くということは、その上に構築されるすべてのものが同様に倫理的な土台の上に立てることを意味します。この合意を締結するまでには非常に長い時間がかかりました。技術的に複雑であり、かつ前例のない取り組みだったからです。しかし私たちはこの合意を誇りに思っており、この会社が声優自身によって率いられているという事実も、この取り組みをより特別なものにしていると感じています。
5-2. Narrativ社との合意——俳優が自身のデジタル複製を管理するオンラインマーケットプレイス
Duncan: もう一つのNarrativは、デジタル用途の音声コマーシャルを制作するためのオンラインプラットフォームです。この合意が特に興味深いのは、その仕組みの独創性にあります。
俳優がこのプラットフォームに参加する際にはまず登録を行い、自身の声をトレーニングするための一定量のデータを提供します。それによって自分の声のデジタル複製がシステム内に構築されます。次に、音声コマーシャルを制作したい広告主がこのプラットフォームを訪れ、利用可能な声優の一覧を確認し、特定のキャンペーンに起用したい声優を選択します。広告主がキャンペーンの内容をシステムにアップロードすると、それが俳優本人に送られ、そのキャンペーンへの参加に同意するかどうかを判断することができます。
この同意のプロセスには二つの重要な特徴があります。一つは、俳優が自分のデジタル複製が何を語るのかを完全なスクリプトとして事前に確認できること。もう一つは、実際にデジタル複製によって生成されたパフォーマンスをシステム内で試聴し、その出来栄えを確認したうえで「イエス」か「ノー」かを判断できることです。これらすべてが自動化されたオンラインプラットフォームを通じて処理されます。
さらにこの合意は組合の団体交渉協定のもとで運用されているため、俳優は健康保険や退職金などのベネフィットを受け取ることができます。加えて、俳優は自身の報酬レートを自分で設定する権利を持っており、起用を希望する広告主がそのレートに合意するかどうかを決めるという、組合の最低報酬基準を前提としたオンライン上の交渉が行われる仕組みになっています。これは俳優が自分のデジタル複製をいつ、どのように、どのような目的で使うかを、非常に具体的な形でコントロールできる仕組みです。
そしてこの合意においてとりわけ重要だと思うのが、退会時の権利です。もし俳優がある時点でこのデジタルマーケットプレイスにもはや参加したくないと判断した場合、プラットフォームから離脱する権利を持っており、その際には会社がこれまでに作成したデジタル複製に関するすべての素材を破棄する義務を負います。すでに支払いが完了し公開されているキャンペーンについてはその限りではありませんが、将来のデジタル複製素材の作成に関してはすべて削除・消去されなければなりません。つまり俳優はいつでも「もうやめたい」と決断し、自分の同意なしに誰かが自分の複製を作り続けるという心配をせずに、安心してプラットフォームを去ることができるのです。この仕組みは、パフォーマーの自律性と権利の保護という点で、私たちが目指してきたものを非常に具体的な形で実現していると思います。
6. 業界の技術変遷とAI戦略の哲学
6-1. 過去のストライキ(1960年・1980年)との比較と技術革新の歴史
Janine: 今回のストライキについて調べていたとき、ハリウッドの俳優たちが最後にストライキを行ったのは1980年だったということを知りました。実に43年ぶりのことだったわけですが、その1980年のストライキもビデオカセットや有料テレビという技術的な変化をめぐるものでした。今回のAIによる変化は、ストリーミングへの移行といったほかのデジタル技術の変化と比べて、最も大きな影響を持つものだとお考えですか。
Duncan: 自分たちが生きている時代の課題こそが史上最大のものだと考えたくなるのは、非常によくある人間の傾向だと思います。ですから、その誘惑には気をつけなければなりません。ただ、歴史的な文脈を整理してみると、映画・テレビの分野で私たちが経験してきた大きなストライキは、いずれも重大な技術的変化を契機としていたことがわかります。
1980年のストライキはまさにビデオカセットと有料テレビをめぐるものでした。そしてその前の1960年のストライキ、これはライターズ組合とSAGが映画・テレビ産業に対して同時にストライキを行った最後の機会でしたが、このときの争点は「テレビ放送」という新しい技術でした。私たちが今では当然のように思っているテレビという媒体も、かつては存在しなかったのです。Screen Actors Guild(SAG)はもともと映画俳優の組合として発足し、私たちのもう一方の前身であるAFRAはラジオパフォーマーの組合として始まりました。1950年代から1960年にかけて、映画とラジオを組み合わせたようなテレビという新しいメディアの台頭が、激しい対立を生んだわけです。
さらに時間を遡れば、舞台俳優として19世紀後半に活躍していた人々にとって、映画の誕生は自分たちのキャリアへの存亡の危機として映ったに違いありません。しかしブロードウェイは今日も栄え、ライブパフォーマンスはその後に生まれたどの技術によっても置き換えられることなく、エンターテインメント産業の重要な一翼を担い続けています。このより長期的かつ大きな視点で見れば、AIテクノロジーの適切かつ有益な使い方は、産業と産業内のクリエイティブな仕事を補完・拡張することであり、置き換えではないということが見えてきます。
社会的なインパクトという観点では、AIはおそらくこれまでの技術革新よりも広範かつ深い変化をもたらすものだと思います。世界経済フォーラムが「第四次産業革命」と呼んでいるのも、そういった認識からでしょう。私たちの組合員の多くが、昨年の交渉においてもそして今も、AIを自分たちのキャリアの将来に対する実存的な脅威として捉えていることは事実です。かつてテレビの登場が映画俳優にとってそう映ったように、Motion Picturesの誕生が舞台俳優にとってそう感じられたように、それは理解できる感覚です。しかし歴史は、技術革新が必ずしも既存の表現形式を消滅させるわけではないことを繰り返し示してきました。
6-2. 映画「Here」に見るAIエイジング技術と雇用代替問題
Janine: AIによる技術変化の具体例として、最近Tom Hanksが出演した映画「Here」のことを読みました。AIを使って彼と共演者が20歳から80歳まで年齢を変えて演じるという作品で、一方ではそれが素晴らしい技術的成果である一方で、従来であれば異なる年齢の俳優が起用されたはずの役が失われたという雇用上の問題もあるかと思います。こうした使われ方についてSAG-AFTRAはどのようにお考えですか。
Duncan: まさに核心をついた例だと思います。最善の団体交渉の成果が得られたとしても、あるいはどれほど優れた公共政策のルールが整ったとしても、AIテクノロジーをエンターテインメント産業に統合していくプロセスが無痛で済むと思ってはいけない、ということを示しているからです。これは確実に混乱を伴うプロセスです。私たちの責任は、その混乱を可能な限り抑制し、チャンネリングし、人間のアーティストにとってできる限り支持的なものにしていくことだと思っています。
「Here」の例で言えば、もちろん一つの見方としては、Tom Hanksの異なる年齢を描くために別の俳優が起用された可能性があったということです。ただ同時に、AI以前の時代でも、メイクアップや特殊効果を使って別の俳優を起用せずに同様のことを表現しようとした映画はすでに存在していました。ですから、これが純粋にAIによって初めて可能になった代替なのかという点はやや推測の域を出ない部分もあります。
また見落とされがちなのは、俳優だけでなく、メイクアップアーティスト、ヘアの専門家、あらゆる種類のクルーといった人々も、AIが彼らの仕事のあり方を変えていくなかで影響を受けるという点です。これは私たちの産業だけではなく、アルゴリズムによる従業員の管理、AIによる従業員活動の監視など、あらゆる形の実装が労働者の仕事の経験、雇用の存否、あるいは雇用の形態に影響を与えるという、産業横断的なより大きなパターンの一部です。
6-3. 「AI禁止」ではなく「チャンネリング」という戦略的判断
Duncan: 私はよく、「なぜ企業と交渉しているのか、なぜルールを作ろうとしているのか、AIは禁止すべきではないのか、使うべきではない、恐ろしいものだ」と問われます。そうした見方をされている方々の気持ちは理解しますし、AIを産業に使うべきではないという意見は尊重します。しかし現実として、インターネットの発明も、映画の発明も、電力の発明もそうであったように、これらはすでに存在する技術です。歴史が繰り返し示してきたのは、技術の進歩を止めることにすべてのエネルギーを注いだ組合は、第一に敗北し、第二に——これがさらに重要なことだと思いますが——その技術がどのように実装されるかという議論に影響を与える機会を失うということです。
私たちが技術の進歩を認めたうえでその実装をどうチャンネリングするかに集中している最大の理由はここにあります。その議論と、技術がどのように実装されるかに影響力と発言力を持ち続けることこそが、単に反対するよりもはるかに重要だと考えているからです。
6-4. アルゴリズムによる凡庸コンテンツへの警鐘と人間固有の創造性
Duncan: そしてこれは私がスタジオのCEOたちに対しても直接言ってきたことですが、アルゴリズムが生成した凡庸なアウトプットを一般の人々が熱狂的に受け入れるよう過度に促すことは、大きな間違いだと思います。人生で最も心に刻まれているパフォーマンスを思い浮かべてください。音楽でも、ライブシアターでも、映画でも、テレビでも構いません。それらのパフォーマンスにはそれぞれに固有の何かがあります。これまでに見たものと同じではない、その唯一無二の何かがあります。それこそが特別な理由です。そしてそれは、AIが得意としないものです。AIは多くのことが得意ですが、人間が持つ固有の創造性、おそらくは私たちが人生で積み重ねてきた固有の経験から生まれるもの、それは本当の意味では複製できませんし、おそらく永遠にそうであり続けるでしょう。
昨年のライターズ組合のストライキの際、ピケラインで見かけたサインのなかで今も強く心に残っているものがあります。「ChatGPTには幼少期のトラウマがない」という言葉です。これは真実だと思います。私たちが人間として経験することの一つひとつ、それが喜びであれ悲しみであれ、それこそが私たちの創造する作品を特別なものにしているのです。それはいかなるアルゴリズムシステムや生成AIプロセスによっても再現できないものであり、おそらく永遠にそうであり続けるでしょう。
7. ユーザー生成コンテンツ・インフルエンサーと集団交渉の意義
7-1. TikTok・YouTubeクリエイターへの組合開放とインフルエンサー協定
Janine: SAG-AFTRAのウェブサイトを見ていたところ、インフルエンサーへの組合加入やサービスの提供についての記載がありました。TikTokやYouTubeといったプラットフォームのユーザー生成コンテンツについて、SAG-AFTRAはどのようにお考えですか。
Duncan: 私たちはまず、こうした新しいプラットフォームが、私たちの組合員が行っていることと本質的に同様のクリエイティブな表現の場として機能しているという現実を認識しなければなりません。もちろん、TikTokやYouTube上のすべてのコンテンツがそうだとは言いません。正直に言えば、私自身もこれらのプラットフォームをよく利用しますが、そこには凡庸で繰り返しの多いコンテンツも確かに存在します。しかし同時に、これらのプラットフォームが提供するツールを巧みに使い、自分の創造性を実験し表現している、本当に才能あふれるアーティストやパフォーマーたちもいます。私たちはその現実をしっかりと認識しています。
そうした認識のもと、私たちはインフルエンサー協定を設けました。これはコンテンツクリエイターやインフルエンサーを対象としたもので、現時点ではまだ初期段階にあります。この協定が現在フォーカスしているのは、企業がクリエイターやインフルエンサーをスポンサーとして起用するブランドディールです。そうしたブランドディールを、組合の団体交渉協定のもとで、健康保険や退職金などのベネフィットへの拠出を含む形で行えるようにすることが現在の枠組みです。しかし長期的なビジョンはより大きなものです。ブランドコンテンツにとどまらず、こうしたプラットフォーム上で体現されているあらゆる形のクリエイティブな表現を包括していくことを目指しています。
7-2. ストライキ中の連帯と個人アーティストと巨大企業の力の非対称性
Duncan: 昨年のストライキにおいて、私たちはクリエイターやインフルエンサーのコミュニティに積極的に働きかけました。彼らの才能を認めていたからですし、実はスタジオやストリーマー側も同様に認識していたからです。私たちが2023年7月12日にストライキに突入した瞬間、組合員が映画やテレビシリーズのプロモーション活動を行えなくなると、スタジオとストリーマーが最初にしたことは何だったか。それはクリエイターやインフルエンサーたちに即座に連絡を取り、ストライキ中の組合員の代わりとしてリリース予定の映画やプロジェクトのプロモーションをしてもらえないかと働きかけることでした。
そのような状況のなかで、何百人ものインフルエンサーやクリエイターが、ときには自分たちにとって大きな代償を払いながらも、そうした誘いを断り、私たちの戦いを支持してくれました。私はその連帯に対して、今も変わらず深く感謝しています。
そして、このストライキが改めて浮き彫りにしたのは、個人のアーティストと巨大企業との間にある圧倒的な力の非対称性です。どれほど知名度があり、才能にあふれたパフォーマーであっても、大手スタジオや多国籍企業と一対一で対等に戦うことは非常に難しい。歴史が繰り返し示してきたのは、その力の不均衡を是正する最善の方法は、アーティスト同士が一緒になり、集団として交渉し、誰もが守られるべきルールを共同で確立していくことだということです。今日の世界では、企業はますます巨大化し、多国籍化し、莫大な力を持つようになっています。労働者がその力に対抗して自分たちの立場を守るためには、一つの声として団結して発言しなければなりません。昨年のストライキは、その団結と連帯がいかに大きな力を生み出すかを、改めて世界に示したものだったと思います。
8. 著作権・知的財産権と労働者の権利の調和
8-1. 米著作権庁の2023年ガイダンスとHuman Artistry Campaign
Pavel: 2023年の交渉においてライターズ組合が成功を収めた背景には、2023年3月に米国著作権庁が発表したガイダンス、すなわち著作権は人間の創造性の産物である素材のみを保護できるという見解が大きく影響していたとも言われています。この原則は他の国々にも当てはまるのでしょうか。また、この原則が適用されない地域においてはどのような影響が生じると思いますか。
Duncan: 人間のクリエイターにとっての朗報は、これが現在世界的に発展しつつある規範のように見えるということです。世界中の著作権当局を見渡してみると、主として人工知能によって生成された作品は著作権保護の対象とはならないという見解が、現時点では支配的なものになっているように思います。そしてこれは非常に重要なことです。
私たちが取り組んでいるのは「Human Artistry Campaign(ヒューマン・アーティストリー・キャンペーン)」という活動です。これは知的財産権に特化したキャンペーンであり、著作権や特許といった知的財産の根底にある原則として、人間の創造的貢献という要素が必要不可欠であるという主張を核としています。著作権の基礎にある原理、そして特許の原理を実際に見てみると、保護の対象となるためにはその創造性の要素と独自性が必要であることがわかります。米国の著作権庁はこれを明示的に述べており、さらにこれは著作権法上の原則であるだけでなく、米国における知的財産法の概念をその発足時から定めた米国憲法によっても裏付けられていると指摘しています。
このキャンペーンの重要な点は、参加しているのが組合やクリエイティブな労働者だけではないということです。創設パートナーの一つは米国の主要なレコードレーベルです。レコードレーベルは著作権で保護された作品のビジネスを営んでいますが、彼ら自身も、自分たちのビジネスの根本はアーティストが持ち込む人間の創造性との関係に基づいているということを認識しています。アルゴリズムによって生成されたコンテンツが人間の創造的なアウトプットと同等に扱われるようになれば、それは産業全体の長期的な利益にも、そこで働く人々の利益にもならないという認識が、業界の垣根を超えて共有されているのです。
8-2. WIPO条約を踏まえた労働権・著作権の両立論と「保護のモザイク」アプローチ
Pavel: 著作権と労働者の保護を調和させるために、政策立案者や業界の関係者はどのような戦略をとるべきでしょうか。特に、知的財産権と労働権が乖離してしまうことなく、クリエイターや文化的な専門職の人々全員にとって有益な包括的枠組みを作るためにはどうすればよいでしょうか。
Duncan: これは本当に素晴らしい質問です。私もその問いが指摘している本質的な点に完全に同意します。私たちはこれを「保護のモザイク」と表現しています。AIが深く関与する世界において、アーティストや私たち全員が必要とする包括的な保護と確信をもたらすのに、単一のソースだけで十分ということはありません。私たちにとってそれは、団体交渉と公共政策と組合員および一般市民への教育・啓発、この三つが組み合わさって初めて成立するものです。
具体的な例を挙げましょう。私たちはインフォームドコンセントの概念を表す言語を非常に苦労して作り上げました。次にその言語を業界の関係者と交渉し、団体交渉協定に盛り込みました。そしてその後、その言語は私たちの団体交渉協定から切り出され、複数の法律に組み込まれることになりました。私たちが起草に関わったものもあれば、他の人々が私たちの関与なしに作成したものもあります。現在、「合理的に具体的な使用目的の説明」という概念は、私たちの団体交渉協定の中だけでなく、その空間をめぐる公共政策の規範として確立されつつあります。これが、労働権と知的財産権の調和という課題をどう交渉するかの一例です。
著作権と関連権利の両方に関わりながらも、音楽と映像パフォーマンスの両分野において労働者とその創造的貢献を保護するWIPO条約の存在も重要です。2012年に最終化された視聴覚実演の保護に関する北京条約、そしてそれ以前のWPPT(WIPO実演・レコード条約)、これらはいずれも知的財産権と関連権利を扱いながら、労働者の保護という観点も組み込んでいます。労働権と著作権の間には根本的な対立はないと私は確信しています。必要なのは、その実装をめぐる議論において労働者のニーズと懸念が確実に考慮されることです。それが実現できれば、両者は絶対に調和できます。
そして労働代表者が重要な議論の場に参加し続けることが、この調和を実現するために不可欠です。私が世界経済フォーラムへの参加について組合員から「なぜそんな場所に行く必要があるのか」と問われたとき、私はこう答えます。AIテクノロジーを実装している企業や政府の政策立案者が集まるフォーラムで重要な決定が下されているのであれば、その議論に労働者や労働者代表が参加し、その一部となることが必要不可欠だと。その対話への参加こそが、これらの権利が一貫した形で実装されることを確保するための手段なのです。
8-3. オプトイン対オプトアウト論争
Pavel: 同意のシステムについて、オプトインとオプトアウトという概念をもう少し具体的に説明していただけますか。俳優として同意しないことを選んだ場合、何を失うことになるのか、また簡単にオプトインやオプトアウトができるものなのか、それとも一度決めたら変えにくいものなのかという点も含めて教えてください。
Duncan: 私たちはオプトインまたはオプトアウトという言葉を使って枠組みを設計したわけではありませんが、おっしゃる通り、私たちが団体交渉で確立した同意システムは本質的にオプトインの仕組みです。プロデューサーや雇用者、あるいはプロジェクトを制作する人物は、デジタル複製やAIツールを通じてパフォーマーを使用する前に、あなたの同意を積極的に取得する義務を負っています。ただし、従来の編集方法でも可能だったような軽微な変更や、その類の小さな加工については、別途の同意なしに行えるものとして合意しました。しかし主要な使用については、本質的にオプトインの仕組みになっています。
同意を拒否した場合の結果としては、プロデューサーが判断を迫られることになります。AIテクノロジーをあなたのパフォーマンスに使用する能力なしに進めることができるのか、あるいは進めたいのかということです。もし彼らがそれを望まない、あるいはできないということであれば、同意を与えることができる別の俳優を起用するという選択をするかもしれません。これは契約批准の際にも大きな議論になりました。「雇用主は同意をデジタル複製のための雇用条件にすることができるのか」という問いに対する答えはイエスです。もしデジタル複製を使用する正当な理由があれば、それを雇用条件にすることができます。ただし、それは最初の雇用交渉の時点でなされなければなりません。
もし誰かが映画やテレビプロジェクトに起用された後で、会社が後からデジタル複製によるこれこれの追加的なことをしたいと言い出した場合、あなたがその同意を断ったとしても、会社がその役を別の方向に進めることを決めたとしても、私たちの契約のもとでは、会社はあなたにその仕事の報酬を支払わなければなりません。これはつまり、この契約の枠組みが雇用主に対して計画を前もってしっかり立て、キャスティングを検討している俳優に対して、その特定の役においてデジタル複製に関してどのような期待があるかを最初から明確にコミュニケーションすることを促しているということでもあります。
EUのAI法は、基本的にはオプトアウトの仕組みに近いものだと言えます。アーティストや人間のクリエイティブな才能の代表者として言えば、私は明らかにオプトインのアプローチを好みます。なぜなら、誰かがあなたのイメージ、肖像、声、あるいはあなたのこれまでのクリエイティブな貢献を使いたいと思っているなら、その立証責任はあなたに積極的に来てあなたの同意を得るという義務を負う側、つまり使用者側にあるべきだと思うからです。アーティストが自分の権利を守るために能動的にオプトアウトしなければならないという発想は、その負担の方向が逆だと考えています。ただし公平に言えば、何らかの形での同意の要件が存在するというだけでも、大きな前進です。4年前にはほとんど何もなかったということを私たちは忘れてはなりません。多くのことが短期間で達成されたのです。
