※本記事は、Virginia Doellgast氏(コーネル大学教授)、Janine Berg氏(国際労働機関(ILO)シニアエコノミスト)、およびPawel Gmyrek氏(国際労働機関(ILO)シニアリサーチャー)による講演「AI, job quality and worker voice: Conditions for mutual gains in the digital economy」の内容を基に作成されています。本講演は、国際電気通信連合(ITU)が主催し40の国連機関およびスイス政府と共同開催するAI for Good Global Summitのセッションとして公開されており、動画はhttps://www.youtube.com/watch?v=ewmoMwmwq3U でご覧いただけます。本記事では講演の内容を要約しております。なお、本記事の内容は登壇者の見解を正確に反映するよう努めていますが、要約や解釈による誤りがある可能性もありますので、正確な情報や文脈については、オリジナルの動画をご視聴いただくことをお勧めいたします。また、AI for Goodのコミュニティプラットフォーム「Neural Network」(https://aiforgood.itu.int/neural-network )もあわせてご参照ください。
1. イントロダクション:研究の背景と問い
1-1. セッションの位置づけと登壇者紹介
Janine Berg: 本日はITUのAI for Goodシリーズの一環として、ILOとの共同企画である「AIと仕事」シリーズへようこそ。私はILO調査部のシニアエコノミスト、Janine Bergです。ILOの研究が示しているように、AIが労働の世界にもたらす変化の大部分は、仕事そのものの中身を変えるという形で現れます。一部の職が失われることはあっても、最も大きな変化は仕事のやり方が変わることです。そしてこれは自動的に起きることではなく、雇用主や労働者・労働組合がどのようにこの変化に向き合うかという意思決定の結果として生じるものです。本日は、AIが雇用の質にどう影響するか、そのプロセスはどのように管理できるか、そして異なる労使関係制度がこの変化にどのような文脈を与えるかについて研究されているVirginia Doelgaard教授をお招きしています。Virginia教授はコーネル大学ILRスクールの雇用関係・紛争解決担当のAnne Evans Ebes特別教授であり、労働市場と労働組合の比較政治経済学、不平等、不安定雇用、職場における民主主義を研究されています。オックスフォード大学出版から『Exit, Voice and Solidarity』を、コーネル大学出版から『Disintegrating Democracy at Work』(2012年)を上梓されており、『International Comparative Employment Relations』および『Reconstructing Solidarity』の共同編者でもあります。またILRレビューの共同編集長を務め、社会経済学の振興学会(SASE)の会長でもあります。それでは、どうぞよろしくお願いします。
1-2. 研究の問いと結論の予告
Virginia Doelgaard: Janineさん、お招きいただきありがとうございます。私はこの5年間、デジタル化とAI、そして情報通信技術産業について研究を続けてきました。本日の発表は、その研究から得られた知見をまとめたものです。私が中心的に問い続けているのは、「なぜ新しいデジタルツールやAIベースのツールは、似たような仕事であっても職場によって異なる使われ方をするのか」、そして「管理職がこうしたツールをどのように使うかを決める要因は何か」という問いです。さらに、どのような条件のもとでこれらのツールが、労働者・企業・社会にとって相互に利益をもたらす良質な雇用を支える形で活用されるのか、ということに強い関心を持っています。
特に私が注目しているのは、こうした意思決定のプロセスにおける労働者の声の役割です。組合や事業所委員会などの労働者代表が、ツールの使い方に関する意思決定に実質的に参加できている場合、その職場ではどのような結果が生まれるのかを明らかにしたいと思っています。本発表では、まずコールセンターを中心にAIツールの具体的な使われ方を整理し、次に私たちが実施した調査に基づく労働者の体験を報告し、最後にドイツの事業所委員会が労働者の声をAI導入の意思決定に活かした事例を紹介します。結論を一言で先取りすれば、「これらのツールは良い結果にも悪い結果にも使われうるが、労働者の声がその分岐点において決定的な差をもたらす」ということです。
2. デジタル化の歴史的文脈と現在のAI
2-1. 第一次デジタル革命(2000年代)とテレコム産業の研究
Virginia Doelgaard: デジタル化とAIの何が新しくて何が新しくないのかを整理するところから始めましょう。デジタル化自体はすでに長い歴史を持っています。私は博士課程の研究を始めた2000年代初頭から、ドイツと米国のテレコム産業の構造転換を研究してきました。当時この産業は第一次デジタル革命の中心にあり、マイクロプロセッサ、インターネット、携帯電話という技術を軸に動いていました。これらの技術は、それまで紙や対面でおこなわれていた多くのことをデジタル化する新しいツールを企業に与えました。つまり、デジタル技術が仕事に与える影響を考えること自体は、決して新しいことではありません。
私の著書はおよそ2010年から2015年の研究に基づいており、AT&T、Deutsche Telekom、France Telecomといった大手テレコム企業を対象にしています。これらの事例を横断的に分析すると、労働組合や事業所委員会が労働者の声を活かして技術の使われ方や雇用への影響を形作る上で、非常に異なる結果を生み出していることが明らかになりました。私が特に注目したのは、自動化による人員削減、業績管理における新しい監視ツールの活用、そして業務を派遣会社や外注先に移す「フィッシャリング(fissuring)」という3つの領域です。第一次デジタル革命のこれらの技術は、まさにこの波の構造転換の中心にあり、労働者の処遇に大きな影響を与えていました。
2-2. 第二次デジタル革命とAIの新たな能力
Virginia Doelgaard: 私たちは今、第二次デジタル革命の只中にいます。これはさらに高速なインターネット、クラウドベースのデータストレージ、そして人工知能を基盤としており、ChatGPT、DALL-E、GitHub Copilotといった自律型・生成型AIの最近の進化については皆さんもよくご存じのことと思います。これらのツールはすべて、企業が仕事を再編成するための新たな機会と能力を提供しています。確かにこれらのツールには多くの新しい点があります。しかし仕事の再編成にどのように使われているかという観点から見ると、第一次デジタル革命のときと大きく異なる傾向があるわけではありません。私が2000年代初頭から2010年代にかけて研究していたことと、構造的には重なる部分が非常に多いのです。
2-3. 第一次・第二次に共通する3つの構造転換パターン
Virginia Doelgaard: 私の最近の研究でも、AIをめぐる対立や選択は第一次デジタル革命のそれと実によく似ていることがわかっています。3つのカテゴリーは先ほどのスライドのものとほぼ対応しています。
第一は、人員削減のカテゴリーに対応する「労働代替か労働補完か」という問いです。報道ではしばしば「オートメーションか、それともオーグメンテーション(人間の能力拡張)か」という議論が展開されますが、これはAIベースのツールが仕事やタスクを自動化するために使われるのか、それとも労働者のスキルを補完・強化するために使われるのかという根本的な問いに他なりません。
第二は、業績管理の新形態としてのアルゴリズム管理ツールです。これらが、労働者への管理を強め声と力を奪う方向で使われるのか、それとも意思決定の権限を与え、スケジュールやトレーニング・スキル開発においてより大きな自律性を与える方向で使われるのか、という問いです。
第三は、アウトソーシング・オフショアリング・フィッシャリングへの懸念に対応するもので、AIが仕事を組織の外に移したり分散させたりする「労働の外部化」の手段として使われる場合と、社会的保護を伴う良質な雇用を組織内に埋め込む形で使われる場合の対比です。
この3つのカテゴリーを念頭に置きながら、次にコールセンターを中心とした具体的なAIツールの使われ方に移りましょう。
3. AIが職場に与える影響の3類型
3-1. 労働代替か補完か:コールセンターにおけるAIツールの具体例
Virginia Doelgaard: ここからは、AIベースの技術が実際にどのように使われているかについて、私が最もよく知っているコールセンターの事例を中心に具体的にお話しします。コールセンターにはAIの応用事例が非常に多く存在しており、労働代替と労働補完の両面を考える上で格好の題材です。
まずチャットボットと音声ボットについてです。これはすでに普及して久しいものですが、最近では従来型の単純な質問応答システムの上に生成AIが重ね合わされるようになっており、これらのツールは時間とともに学習し、より洗練された回答やより細やかな対応が可能になっています。その結果、より多くの問い合わせがチャットボットや音声ボットに振り向けられるようになっており、同時にセルフサービス化も進んでいます。つまり、顧客が自分で問題を解決できる仕組みが整備されることで、人間のエージェントへの接続自体がさらに減少しています。この方向性は明らかに労働代替的なものと言えるでしょう。
次にインテリジェント・コールルーティングです。従来から通話をエージェントに振り分けることは行われてきましたが、今では顧客が電話の目的を告げなくてもAIがバックグラウンドで予測し、最も適切なエージェントに自動的につなぐことができます。たとえば顧客が最近請求書を受け取っていれば、請求関連の問い合わせをする可能性が高いと判断されて即座に該当担当者に回されます。あるいは、特定の顧客タイプへの販売実績が高いエージェントがいれば、そのエージェントに優先的に顧客が割り当てられます。このマッチングのプロセスはAIによって精度が高まっています。
続いてエンドツーエンド診断ツールです。これはエージェントがAIツールの誘導に従って一連のステップを踏むことで、ネットワークや機器の障害を発見・修復できるようにするものです。これにより、以前は技術者でなければ対応できなかったより複雑な作業を、コールセンターのエージェントが担えるようになっています。仕事の範囲が広がるという意味では補完的な側面も持っています。
そしてエージェント・アシスタントツールです。これはいわばエージェント向けのチャットボットであり、実際には顧客向けのチャットボットと同じ技術や回答システムが使われています。統合システムが多くの機能を一度にこなすこともあり、エージェントは通話中や顧客とのチャット中に自分専用のチャットボットから製品情報や顧客情報をリアルタイムで引き出せます。検索やフォーム入力が簡略化され、顧客へのフォローアップが自動化されることもあります。Sophie AIはその一例で、顧客向けの仮想エージェント(チャットボット・音声ボット)としての機能と、人間のエージェントへのアシスト機能を一つのプラットフォームで統合しており、データ収集、通話のビデオ化、多様なアクション実行を視覚的なインターフェースで提供しています。このようなツールは労働代替と労働補完の両方の役割を持ちうることが見て取れます。
3-2. アルゴリズム管理ツール:業績監視・感情分析・自動コーチング
Virginia Doelgaard: 次のカテゴリーは、仕事を補助したり置き換えたりするツールではなく、その仕事をしている労働者を管理するプロセスを自動化するツールです。
まず予測分析を活用した労働力管理・アルゴリズム管理ツールがあります。これらは採用、業績評価、トレーニングの必要性の特定とその実施、そして業務の割り当てやシフト・休憩のスケジューリングといった管理職の仕事を代替します。
次にAI対応の監視ツールです。コールセンターの労働者が自宅で仕事をするケースが増えた今、これらの監視ツールはカメラを通じてワークスペースを常時スキャンし、子どもが映り込んだり机の上に不適切なものが置かれていたりすると管理者に警告し、従業員にペナルティを与えることができます。
自動コーチング・フィードバックツールについては、コールセンターの現場で最も多く耳にした、そして最も議論を呼んでいるものです。音声分析とデータ分析を使い、全通話のデータをマイニングすることで、エージェントの業績パターンを把握し、継続的な問題や異常を検出してフィードバックを行います。もちろん、これは給与の減額やコーチングの推奨にも使われます。
中でも特に興味深いのが感情分析ツールです。EUのAI法のもとでは現在EU域内での使用が禁止されているカテゴリーに該当すると考えられますが、Cogitoをはじめとするツールはリアルタイムで音声のトーンを分析し、スクリプトに沿っているかどうかをチェックし、エージェントに即座にフィードバックを返します。Cogitoの広告には、画面左下に「エネルギーを上げて」「ポジティブなインタラクション」「より多くの共感を示すべき」といったキューが表示される様子が示されています。このツールは感情AI、会話AI、生成AIなど複数のAIを組み合わせたものとして宣伝されています。ただし私がコンピューターサイエンス分野の同僚と話したとき、彼はコールセンターで感情分析がこれほど広く使われていることに驚いていました。感情分析は開発の初期段階にある技術の一つだからです。私がインタビューした従業員や組合代表者の多くも、これらのツールが宣伝通りには機能しないことを実感していると話していました。
3-3. 労働の分散化か埋め込みか:在宅勤務・クラウドソーシング・グローバルバリューチェーン
Virginia Doelgaard: 3番目のカテゴリーは、AIが仕事の場所や組織の境界に与える影響です。まだこの方向性がどうなるかは定まっていない部分もありますが、いくつかの重要な動向が見えています。
在宅勤務への大規模な移行はAIベースの監視技術やビデオ通話、アルゴリズム管理ツールによって可能になりました。私がパンデミック期間中にドイツでインタビューを行った際、外注されたコールセンター労働者の80%が在宅勤務に移行しており、企業がオフィスを閉鎖して全員を在宅契約に移す動きが起きていました。米国の大手テレコム企業でも多くの従業員が恒久的な在宅勤務契約に移行していました。そしてこうした状況が労働者に「在宅になったということは、次は別の国の下請けに移されるのではないか」という不安を生み出しています。遠隔管理が可能なら、地理的な制約はもはや障壁にならないからです。
クラウドソーシングというモデルもあります。たとえばマーケティング業務を全面的に請け負うと広告する企業が、実際には世界各地の自宅にいる多数の人々をアウトソース先のデジタルマーケティングチームとして活用するという形態です。
さらに視野を広げると、AIツールの開発・運用に関わるバリューチェーン全体が、どこでどのような条件のもとで仕事が行われているかという問題を提起しています。私が今読んでいる『Feeding the Machine』という本は、アフリカのケニアをはじめ世界各地でAIのバリューチェーンを支える仕事をしている人々に光を当てており、非常に示唆に富んでいます。データのラベリング、コンテンツモデレーション、コーディングといった仕事が世界のさまざまな場所で行われており、その労働条件は決して均一ではありません。こうした仕事の分散化は、組織内に良質な雇用を「埋め込む」方向とは対極にある動きと言えるでしょう。
4. 調査結果:コールセンター労働者のAI体験(米国・カナダ)
4-1. 調査の概要と労働補完的ツールへの評価
Virginia Doelgaard: ここからは、私たちが実施した調査の結果をご紹介します。Shana BradyとJanghun Kimとの共同研究として、米国とカナダの組合加入コールセンター労働者を対象にアンケート調査を行いました。米国側の調査はCWA(通信労働者組合)、カナダ側はUniforとの連携のもとで実施しています。今回ご紹介するのは主に米国の調査結果です。
調査では、エージェントに対してAIまたはアルゴリズムベースのツールが職場で使われているかどうかを、コールルーティング、ネットワーク・機器の障害発見と修復支援、製品・顧客情報の検索支援など、先ほど紹介したカテゴリーごとに尋ねました。回答はそれぞれ「労働代替・補完」と「労働管理・エンパワーメント」の二軸に分類しています。結果を見ると、多数ではあるものの全員ではない割合の従業員がこれらのツールの存在を認識しており、これは従業員が導入されているツールを必ずしも把握していない場合があること、あるいは企業間での活用状況に差があることを示しています。
次に労働補完的なツールについての体験を見ていきましょう。調査では最も影響を受けたと感じる技術を自由記述で答えてもらい、そのインパクトについて尋ねました。多くのインタビューと並行して得られたこの定性的な回答から、効果が相反する形で現れていることがわかりました。ポジティブな面としては、仕事の多様性・複雑性・バリエーションの増加が報告されており、より良い顧客サービスを提供するためのツールとして機能しているという認識もありました。特に組合代表者を含む多くのエージェントが、企業のコスト削減圧力、つまり問題を本当に解決しないまま素早く通話を終わらせようとする圧力に対して、AIツールを使ってより丁寧に顧客の問題を解決できることに満足感を覚えているという声が聞かれました。
一方ネガティブな面も明確に存在しています。簡単な問い合わせはボットが処理するようになったため、エージェントが対応するのは複雑な案件ばかりになり、業務の負荷が高まっています。また、AIツールは通話と通話の間のダウンタイムを大幅に削減し、業務を高密度化することに非常に長けており、業績の良いエージェントにはより多くの通話が割り当てられるという状況も生まれています。さらに、誰もが経験のあることですが、テクノロジーにはシステム障害がつきものであり、それに起因する顧客の怒りがエージェントのストレスにつながっています。そして雇用削減への恒常的な不安も浮き彫りになりました。私たちの調査では技術による雇用代替への懸念が高まっていることが確認されており、アウトソーシングとオフショアリングが引き続き大きな脅威であると感じている回答者が過半数を占め、今後数年でこれらの技術とアウトソーシング・オフショアリングによって雇用削減が起きると考えている人が多数に上っています。
4-2. アルゴリズム管理ツールへの評価:監視強化・差別懸念と一部の肯定的側面
Virginia Doelgaard: アルゴリズム管理ツールに関しては、労働補完的なツールと比べてより否定的な評価が目立ちました。まずデータプライバシーの問題です。通話が録音・分析されることへの懸念が広く共有されており、監視の強化という体験も多く報告されました。また意思決定が人間から切り離されることで、不当な判断に対して異議を申し立てたり苦情を言ったりする手段が失われるという問題も指摘されています。
特に感情分析ツールに関しては、差別的な使われ方への懸念が強く示されました。エージェントの声のトーンを分析する際に、性別や人種によって「元気よく話しているか」「顧客に友好的か」が異なる形で評価・誤分類される可能性があるという懸念です。これらのツールは宣伝通りには機能しないという認識が、従業員と組合代表者の双方から数多く寄せられました。
一方で、アルゴリズム管理ツールに肯定的な側面を見出す声もありました。よりきめ細やかなトレーニングやコーチング、スケジューリングへの活用については比較的好意的な意見が聞かれました。また興味深いことに、「コンピューターが決定を下すことで、管理者が個人的な好き嫌いでえこひいきをする余地がなくなる」という声もありました。AIによる意思決定が、むしろ公平性をもたらす可能性があるという観点です。ただしこれはあくまで一部の見方であり、全体的な傾向としてはより否定的な評価が上回っています。
4-3. 調査結果の定量的パターン:組合の有効性と良好な職場体験の相関
Virginia Doelgaard: 定量的な結果についても詳しく見ていきましょう。各ツールが使われていると答えた回答者に対して、そのツールが従業員の作業スピードを上げるか、仕事を楽にするか、ストレスを増やすか、仕事を面白くするか、あるいは顧客サービスを向上させるかを尋ねました。グラフでは黄色・オレンジが「強く反対・反対」、青が「どちらでもない」、紫が「賛成・強く賛成」を示しています。
労働補完的なツールについては全体的により肯定的な評価が得られましたが、それでも意見は大きく分かれています。たとえば「作業スピードを上げる」という項目では、反対が33%、賛成も33%という拮抗した結果が出ています。「顧客サービスを向上させる」については54%が何らかの改善を認めており、これは比較的高い肯定評価です。一方、アルゴリズム管理ツールについてはより否定的な傾向が明確で、自動コーチングツールが仕事をよりストレスの多いものにするという意見が多数を占め、意思決定を公平にしたり顧客サービスを向上させたりするという評価は限定的でした。ただし紫の部分、つまり肯定的な評価も一定数存在しており、一部の職場ではこれらのツールがよりエンパワリングな形で使われている可能性を示しています。
Janine Berg: 賛否がそれぞれ3分の1ずつに分かれているというのは非常に興味深い結果ですね。雇用主の種類や働いている企業の形態によって何らかのパターンが見られましたか?そこから学べることはあるでしょうか。
Virginia Doelgaard: まさにそれが今まさに論文を書いている問いです。どのような要因がこれらの結果と関連しているのかを掘り下げているところです。興味深いことに、雇用主間での一貫したパターンはそれほど明確には見られませんでした。一方で明確な差異が見られたのは、従業員が組合の有効性や組合による代表機能についてどのように評価しているかという点に関連していました。Shana BradyとJanghun Kimが現在共同で執筆している論文では、AIに関してより良い結果とよりポジティブな体験を持っている労働者は、実効的な労働者の声と強く結びついているということが示されています。つまり、プライバシーとデータを守り、ツールがより良い形で使われるよう交渉しているという実感が持てる組合が機能している職場では、ツールに起因する労働者のストレスや燃え尽き症候群も少なくなっているのです。このことは米国という文脈においても、労働者の声がポジティブな役割を果たすという仮説を支持するデータとなっています。
5. 相互利益が生まれる条件:理論的枠組みとドイツの事例
5-1. 労働者・顧客・企業の利害一致と「生産的制約」としての労働者の声
Virginia Doelgaard: では、どのような条件のもとでポジティブな結果が生まれるのか、あるいはネガティブな結果が生まれるのかという問いに移りましょう。私はこれを「相互利益のための条件」と呼んでいます。
第一の動態として、労働者と顧客・サービス利用者の間に連携が生まれる可能性があります。特にサービス業の職場では、技術が顧客サービスの質に与える影響について、労働者と顧客の間に共通の利害が存在します。そして双方にとって本当にサービスの質を高める形でAIを活用する解決策を見つけたいという強い動機があります。実際に私がインタビューした米国のある管理職はこう言っていました。「私たちはコスト削減と合理化の短期的な財務成果を示さなければならないという圧力のもとで、顧客サービスの質という長期的な観点に集中し続けることがとても難しい」と。そこで組合がサービス品質への注目を促す役割を果たすことで、管理職が長期的な視点で経営判断を行うことを後押しする効果があります。これは結果的に企業のパフォーマンス向上にもつながります。労働者はまさに最前線にいる存在であり、「AIをとにかく導入して顧客の問い合わせをまともに解決しないチャットボットに任せるようなやり方は困る。私たちは顧客が満足できるよう問題を解決したいし、そのためにツールを本当に役立つ形で導入してほしい」という声を上げることができます。これはすべての関係者にとって利益になるアプローチです。
第二の動態として、組織行動論や経営学の多くの研究が示しているように、労働者の知識とスキルはAIベースの技術の重要なインプットであり、アウトプットでもあります。AIツールのパフォーマンスを時間とともに向上させるためには、労働者とツールとの協働が不可欠です。しかし私が米国でおこなった数多くのインタビューでは、コールセンターの仕事だけでなくより高度なIT・技術系の仕事においても、企業がコスト削減と業務の自動化・合理化に向けた圧力にさらされている実態が浮き彫りになりました。こうした利益を実際に引き出すためには、企業に対する「生産的制約」が必要です。
ここで私が労働者の声、すなわち団体交渉権や労働者の権利、さらには最低基準・プライバシー・データ管理を保護する法制度に強い関心を持つ理由があります。こうした制度的な仕組みがあることで、長期的な視点でAI投資を考えたいと思っている管理職が、実際にそのような議論をせざるを得ない環境が生まれます。Deutsche Telekomの管理職は私にこう語りました。「これらのツールはものすごいスピードで次々と出てきて、私たちは飛びつきたくなる。でも事業所委員会との労働協定というプロセスがあることで、立ち止まってきちんと考える機会が生産的な形で与えられる。そして結果としてより良い意思決定ができる」と。もちろんこうした取り組みは自発的にも行えます。従業員との対話を積極的に促す高関与型の職場を自ら構築することもできますし、参加型設計(Participatory Design)に関するHCI分野の研究が示すように、システムを最もよく知っているのは実際に使う労働者自身ですから、新しいシステムの導入時に労働者が設計に関与できれば、それはより良い結果をもたらすことが実証的にも示されています。しかし多くの企業がそれをしないのは、コスト削減のプレッシャーが非常に強いからです。だからこそ組合や事業所委員会のような組織化された労働者の声が、管理職が本来やりたいと思っている長期的な視点での投資判断を後押しする「生産的制約」として機能するのです。
5-2. ドイツの法的基盤:共同決定権・事業所委員会近代化法・データ保護権
Virginia Doelgaard: では具体的な事例として、私が2021年から2022年にかけて約1年間にわたって現地調査を行ったドイツの状況をご紹介します。ドイツで重要なのは、特に技術が業績管理や行動管理に使われる場面において、労働者に非常に強い共同決定権が法的に保障されているという点です。これは事業所委員会がそうした具体的な用途に関して協定を交渉できる強力な法的権利であり、他のヨーロッパ諸国と比べても相対的に強い権限となっています。
加えて2021年には事業所委員会近代化法が施行され、事業所委員会はAIの導入計画について情報提供を受け協議する権利を持つようになりました。また企業費用負担でAIに関する変更について専門家を雇って助言を求める権利も与えられています。これは非常に重要な点で、今では事業所委員会を対象に活動するコンサルティング会社が成長しており、企業を横断してベストプラクティスを普及させる役割を担っています。さらにドイツには非常に強力なデータ保護の権利も存在しており、これらの法的基盤が企業と事業所委員会の交渉の土台となっています。
5-3. Deutsche Telekomの取り組み:協定群とAI倫理マニフェスト
Virginia Doelgaard: 私が2000年代初頭から継続して研究しているDeutsche Telekomの事例を詳しくご紹介しましょう。まず出発点となったのは、事業所委員会と経営陣の間で結ばれた雇用保障協定です。技術を活用して業務を合理化・効率化する際には、まず外注の割合を削減することに優先的に充てるという合意でした。実際にコールセンターでの外注比率はほぼゼロに近いところまで縮小しています。
並行して事業所委員会は「全従業員と顧客サービスのための展望」と名付けたプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトでは、AIとデジタル化が現在および将来においてスキル・業務組織・プライバシー問題にどのような影響を与えるかを調査し、経営側と労働者が複数のレベルで共同参加する形で一連のアクションプランを策定し、それが労働協定として結実しました。
中核となるデジタル化労働協定では、経営陣と事業所委員会が共同で今後数年間に予定されているデジタル化・AI施策を洗い出した「デジタルロードマップ」を作成し、それが雇用・職務・スキル・業務組織など広範な領域にどのような影響を与えるかを評価した上で、その解決策を共同で設計することが義務付けられています。
また労働力分析協定では、企業による労働力分析ツールの使用に明確な制限を設けつつ、労働者のトレーニング支援や共同利益になる形でのスキル向上に使われるツールについては迅速な導入を可能にする仕組みを整えています。個人データは集計レベルでのみ報告されるというルールが長年確立されており、これはモニタリングツールの使われ方や従業員の昇進・懲戒への活用を大幅に制限する効果をもたらしています。
さらにAI倫理マニフェストでは、明確な禁止事項と一連の原則が定められており、その遵守状況を監督し倫理的な問題を含む可能性があるAI施策を審査するための経営側と労働者代表で構成する倫理委員会が設置されています。モニタリング・音声分析・労働力管理に関する協定の制限の具体例として、個人データは集計レベルでしか報告できないというルールが徹底されており、これはモニタリングツールを個人への制裁や評価に使う余地を狭める重要な取り決めとなっています。
5-4. 成果と限界:顧客サービス向上・生産性改善と人員削減・オフショアリングの再燃
Virginia Doelgaard: このドイツの事例から得られた知見をまとめると、経営陣・従業員代表の双方がAIに関する共同決定のプロセスから強い相互利益を感じているということです。
従業員側の成果としてまず挙げられるのは、エージェントアシストツールを使うかどうかを自分で選択できるようになったことです。強制されないため心理的負担が少なく、しかし実際には多数の従業員がツールが役立つと感じて自ら使うようになりました。個人データが特定の目的には使えないというルールがあることで、データプライバシーへの安心感と信頼が生まれています。スキルアップがこの協力関係の中に組み込まれており、高いサービス品質モデルを支えるために従業員のスキルがAIツールと連携して向上する仕組みが整っています。そして高水準の賃金・雇用保障・柔軟なスケジューリングも実現しています。
企業・経営側の成果として最も印象的なのは顧客サービスの向上です。Deutsche Telekomが顧客サービスの主要指標として重視している「初回通話解決率(first call resolution)」が、これらの協定を導入して以降、劇的に向上したと管理職は語っています。一部の業務を自動化しつつも残る業務の質と技能水準を高く保ち、よく訓練されたエージェントが顧客の複雑な問い合わせに真に良い回答を提供できるようにするというアプローチが奏功したのです。私がこの話をすると米国の聴衆からは驚きの声が上がることが多いのですが、Deutsche Telekomはこのアプローチで顧客サービスを本当に向上させることに成功しています。同時に生産性の向上とコスト削減も実現し、労使の協力関係は良好でコンフリクトも低水準に抑えられています。
ただし、この事例にも限界と新たな緊張が生じています。私がここ数ヶ月でおこなった最新のインタビューでも、Deutsche Telekomではエンパワリングで補完的な取り組みが続いている一方で、労働代替と労働の外部化も同時に進行しています。外注の合理化がほぼ限界に達した後、Deutsche Telekomは今度は正社員を年間約1,000人規模で削減するようになっており、事業所委員会の担当者たちはこれをAIツールによる効率化の直接的な結果と見ています。また多くのICT企業においてロボティックプロセスオートメーションとAIの組み合わせにより、バックオフィス業務が長年にわたって大規模に自動化されており、中東欧のデータセンターが丸ごと閉鎖されるという事態も起きています。さらに最近ではAIベースの翻訳ツールの普及により、残存するバックオフィス業務がインドやアフリカにオフショアリングされ始めており、新たな交渉ラウンドが引き起こされていると聞いています。
結論として言えることは、AIが職場に与える影響は技術の必然的な特性ではないということです。経営の選択が決定的に重要であり、労働者の声は相互利益を促進し顧客・サービス利用者にとっても良い結果をもたらしうるものです。しかし自動化とオフショアリングの大きな可能性は依然として存在しており、誰が利益を得て誰がコストを負担するのかは、政策と戦略によって大きく左右されます。
6. 質疑応答:政策・規制・スキル・グローバル課題
6-1. コールセンター職の将来と労働市場の変容
Janine Berg: あなたはコールセンターを長年研究されてきましたが、Deutsche Telekomが雇用を削減しているという話もありましたし、AIが職務に与える影響の推計でも、コールセンターは多くのタスクが自動化可能という意味でリスクの高い職種として挙げられることが多いです。一方で私が話を聞いた業界関係者の中には、Eコマースの拡大やさまざまなプロセスのデジタル化によって顧客サービスへの需要自体が増えているため、むしろ市場全体は拡大しているという見方をする人もいます。この職種が今後どうなるか、最終的には消滅してしまうのか、それとも一定の労働力は残り続けるのか、どのようにお考えですか。
Virginia Doelgaard: 良い質問ですね。最近ジャーナリストからも何度か同じことを聞かれています。近中期的には、コールセンターの仕事は消えないと思います。顧客サービスにおいては、より複雑な問い合わせや関連する問題への対応は引き続き人間のエージェントが必要とされますし、企業側もエージェントによるクロスセルやアップセルから大きな利益を得ています。特に優秀な販売員は、顧客が電話をかけてきた際にバンドルや新製品の提案を促す上で非常に重要な存在であり、そうした役割と仕事はなくなりません。ただし業務の「剥ぎ取り」は確実に進んでいます。エージェントの生産性が上がることで必要な人員は減り、先ほど述べたように複雑な案件や販売対応に集中するためより業務は高密度になります。感情的な負荷も大きく、単純に電話を受けるよりも何かを売り込むほうがはるかに消耗します。私がドイツのコールセンター外注業者の雇用主団体の代表者と話したところ、多くの企業がアウトバウンドマーケティングへとシフトしており、まさにそこに成長の余地があると認識していると言っていました。人間が機械よりも明らかに優位性を発揮できるのはその領域だからです。つまり多くの仕事は消えるのではなく、別の種類のタスクへと変容していくということです。
6-2. 非組合職場への提言と参加型設計の有効性
Janine Berg: より難しい質問になりますが、非組合職場に対してはどのような提言ができるでしょうか。企業レベルでできることはあるとして、もし政策立案者の立場であれば、AI時代の雇用の質を確保するためにどのような規制やガバナンスを推奨しますか。
Virginia Doelgaard: 労働者の声のための場を制度的に設けることが重要だと思います。企業レベルでは、Microsoftのように自社のAI倫理声明を策定して積極的に取り組んでいる例があります。私がMicrosoftの経営代表者とパネルを共にした際、彼らが社内での倫理的なAI推進と労働者の声の尊重に向けて多くの取り組みをしていることを話していました。ただし私が主張したいのは、組合が唯一の解決策だということではありません。多くの企業にはコスト削減への圧力が非常に強くかかっており、組織化された労働者の声があることで、長期的な視点でAI投資を考えたい管理職が実際にそうした議論をせざるを得ない環境が作られるという点が重要なのです。Deutsche Telekomの管理職が語ってくれたのは、「私たちは必ずしも自分からこれらのツールの使い方を計画しているわけではない。次々と新しいものが出てきて、とにかく導入したくなる。でも事業所委員会との対話のプロセスがあることで、ステップを踏んでより良い意思決定ができるようになっている」ということでした。もちろんこれは自発的にもできます。従業員との対話を重視する高関与型の職場を自ら構築することもできますし、参加型設計(Participatory Design)に関するHCIの研究が示すように、新しいシステムを最もよく理解しているのはそれを実際に使う労働者自身ですから、設計段階から労働者を巻き込むことで通常より良い結果が生まれることが実証されています。組合の有無にかかわらず、従業員が不安なくツールに向き合い、自分の仕事への影響について発言できる環境があれば、個人レベルでもツールへの向き合い方がより前向きになり、パフォーマンスの向上にもつながるという実証的な根拠も蓄積されています。
6-3. スキリング問題:生成AIへの依存とプログラマーのスキル劣化リスク
Janine Berg: 政策議論の中でよく取り上げられるのがスキリングの問題です。労働者がシステムを使いこなすためのスキルを持つこと、またシステムを理解することの必要性、さらには管理職がAIシステムを理解することの重要性が言われますが、あなたが研究されたコールセンターの文脈ではこの問題はどのように見えましたか。スキルの欠如あるいはスキルの必要性は重要な課題でしたか。
Virginia Doelgaard: コールセンターの文脈については、ツールが仕事の設計をより広範にすることを可能にし、そのためにある程度の追加スキルと経験が必要になるという側面はありました。ただしこのスキルの問題をより深く掘り下げるには、私がより最近研究しているゲーム開発や高度なICT専門職の事例を参照する方がより適切かもしれません。販売の領域では、優秀な営業担当者が持つ内発的なスキルはAIでは代替できない一方で、AIを活用してそうしたスキルを向上させる余地も確かにあります。
より高度なICTやソフトウェアエンジニアの職種では、AIが一部の基本的なプログラミング作業を代替することで短期的には楽になる反面、長期的には問題解決能力が育ちにくくなるという懸念が実際の現場から聞こえてきています。私がゲーム開発会社のソフトウェアエンジニアと話した際、彼はこう語っていました。「スタンフォードから来る新入社員は全ての課題に生成AIツールを使っているため、プログラミング作業はこなせる。しかしゲーム開発や実際のコード修正で直面するような現実の問題に取り組む段になると、本当の意味での準備ができていない」と。人々がどのように教育されているかと、AIが実際の職場でのスキル形成にどう影響するかの間に、明確なギャップが生じているというわけです。これは今後ますます重要になる問題領域であり、異なる職種・文脈によって現れ方が異なりますが、いまだ明確な答えが出ていない問いでもあります。
6-4. EU規制(GDPR・AI法)の評価と限界、グローバルサウスへの示唆
Janine Berg: チャットからの質問です。EUのAI法やGDPRは職場でのAI活用を規制する上で最も有用な枠組みと言えるでしょうか。あるいは途上国が自国の法的枠組みを設計する際に参照すべき他のモデルはあるでしょうか。
Virginia Doelgaard: GDPRとAI法の中には、特にデータ保護やアルゴリズム管理的・労働者管理的なツールの使用に関して、非常に参考になるモデルが多く含まれていると思います。ただし最近私が話をしたドイツの大手製造・技術系企業の事業所委員会委員が非常に示唆に富むことを言っていました。彼によると、会社の経営陣は今後のAI投資によって30%の効率化を達成すると伝えてきており、彼の見立てでは、それは30%の人員削減と劇的な業務再編を意味するということです。彼はこう言っていました。「私たちドイツの事業所委員会はこのパフォーマンス管理の問題に非常に注力しており、その点については交渉する権利と能力を持っている。しかし自動化の波、特に高スキルのエンジニア職への影響が見え始めているこの問題に対処するための権利や良いモデルは、GDPRにもAI法にもまだ十分に含まれていない」と。つまり自動化による雇用への影響にどう対処するかという点では、AI法も十分とは言えないというのが彼の率直な評価でした。これを解決するには、組合や事業所委員会がそうした根本的な意思決定により深く関与できるようにする、より強力な労働者の組織権と労働者の声の権利を強化する法的変更が必要だということです。
グローバルサウスについては、おそらく優先すべき課題は組織権や労働者の声に関するより基本的な権利、つまりILOが長年推進してきた結社の自由の権利という根本的なところにあると思います。また変位の問題については、フィリピンの例が参考になります。フィリピンでは、コールセンター・BPO部門で大規模な雇用喪失が見込まれる一方、AIバリューチェーンにおけるデータのコーディング、コンテンツモデレーションといった新しい仕事が生まれています。多くの国でかつて自動化された仕事に代わる新たなバリューチェーンの仕事が生まれつつありますが、それらの仕事の労働条件の問題や、労働者のエンパワーメントと発言権という基本的な課題は変わらず残り続けます。適切な賃金と良好な労働条件を確保することが依然として核心的な問題です。
Janine Berg: 最後にもう一つ聞かせてください。あなたの研究では職を失った労働者のその後について見た部分はありましたか。
Virginia Doelgaard: ドイツのコールセンター外注業者の代表者と話した際、彼らのセクターは縮小しているかマーケティング寄りにシフトしており、大規模な人員削減があったという話は聞きました。ただし実際に解雇された労働者に直接インタビューはしていません。最近インタビューをした各社の事業所委員会担当者たちは、社会的に許容できる条件のもとでの人員削減を確保すること、つまりそれを交渉プロセスの一部にすることが優先課題になりつつあると話していました。AIの波を止めることも、異なる形での使われ方を交渉することも、あまりにも強力で企業の関心が集中しすぎているためにもはや難しいという認識があり、むしろ人員削減が「社会的な条件のもとで」起き、より良いセクターへの移行が支援されることを確保することに注力しているというわけです。AIによる雇用喪失が現実のものとなった場合にどのような公共政策が必要か、また集団的交渉がどのように調整されるべきかという議論はまだ始まったばかりで、私自身の研究でも今後より重要になっていくテーマだと感じています。
Janine Berg: あなたの研究は、これらのプロセスがいかに管理可能であるか、そして労働者と企業の双方にとってどれほど多くの利益が生まれうるか、またAIの導入は自動的に起きるものではなく私たちが実際にコントロールできるということを示してくれています。本日はご参加いただきありがとうございました。なお次回のAIと仕事シリーズは11月13日水曜日のジュネーブ時間午後4時に、全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)の全国事務局長兼首席交渉担当者であるDuncan Crabtree-Irelandをゲストにお迎えし、Screen Actors Guildsが職場においてどのようなAI交渉を行ったかについてお話しいただく予定です。ぜひご参加ください。
