※本記事は、The Hinduが公開した動画「OpenAI CEO Sam Altman addresses India AI Impact Summit at Bharat Mandapam in New Delhi」の内容を基に作成されています。この動画では、OpenAIの最高経営責任者であるSam Altman氏が、ニューデリーのBharat Mandapamで開催されたIndia AI Impact Summit 2026に登壇し、Narendra Modi首相をはじめとする世界の技術リーダーたちとともに、AIがもたらす機会とリスク、そしてグローバルサウスにおけるイノベーションとガバナンスに向けた協調的な道筋について議論を交わしました。動画の詳細情報は https://www.youtube.com/watch?v=UInwDQ4VSVA でご覧いただけます。本記事では、講演の内容を要約しております。なお、本記事の内容は登壇者の見解を正確に反映するよう努めていますが、要約や解釈による誤りがある可能性もありますので、正確な情報や文脈については、オリジナルの動画をご視聴いただくことをお勧めいたします。また、配信元であるThe Hindu(https://www.thehindu.com/ )の関連情報もあわせてご参照ください。
1. インド訪問の挨拶とインドにおけるAI普及の現状
1.1 インド訪問の所感と、前回訪問からの1年間で見られた進歩の速さ
Sam Altman: 本日はインドにお招きいただき、大変光栄に思っております。この国が先進的なAIの分野でリーダーシップを発揮している様子を目の当たりにできることは、私にとって大きな喜びです。前回インドを訪れたのはちょうど1年ほど前のことでしたが、その間にどれほどの進歩があったかを実感するたびに、驚きを禁じ得ません。当時のAIシステムは高校レベルの数学すら苦手としていましたが、今では研究レベルの数学をこなし、理論物理学の分野で新たな発見を導き出せるまでになりました。わずか1年という期間でここまでの飛躍が起きたという事実は、私たちが立っている技術的な転換点の速さを何よりも雄弁に物語っていると考えています。
1.2 インドのソブリンAI・インフラ・SLM開発への評価
Sam Altman: インドがより多くの人々のためにAIを役立てようとしてきた取り組みの進展にも、同じくらい驚かされております。インフラの整備や、小規模言語モデル、いわゆるSLMの開発を土台としたソブリンAIの構築において、インドが見せてきたリーダーシップは、私たちが注視し続けてきたものです。
1.3 ChatGPT週間利用者数1億人超(うち3分の1が学生)とCodexの急成長という具体的数値
Sam Altman: 実際の利用状況を見ても、その広がりは明らかです。インド国内では、週に1億人を超える方々がChatGPTを利用してくださっています。これほどの規模でAIが日常生活に浸透している事例は、世界的に見ても際立ったものだと私は捉えています。さらに申し上げますと、このChatGPTの利用者のうち、3分の1以上を学生が占めているという点も見逃せません。学びの現場においてAIがすでに欠かせない存在になりつつあることを示す数字だと思います。加えて、私たちが提供しているコーディングエージェントのCodexについても、インドは現在、世界で最も急速に成長している市場となっています。ソフトウェア開発をより速く、より良いものにするためのツールとして、インドの開発者コミュニティに急速に受け入れられていることを大変嬉しく感じています。
1.4 世界最大の民主主義国インドが「AIを作るだけでなく形作る」立場にあるという位置づけ
Sam Altman: 世界最大の民主主義国であるインドは、AIを単に作り上げるだけの立場にとどまらず、それをどう形作り、私たちの未来をどう決定づけていくかを主導するにふさわしい位置にあると、私は確信しております。
2. 超知能到来のタイムラインと信念①「AIの民主化」
2.1 数年以内に超知能の初期形態が到来するという予測と、2028年末までにデータセンターが世界の知的能力の大半を担いうるという仮説
Sam Altman: ここからは重要な話をさせてください。私たちの現在の進捗の軌道を踏まえますと、真の超知能の初期バージョンが登場するまでには、あとわずか数年しか残されていないと私たちは考えております。もし私たちの見立てが正しければ、2028年末までに、世界の知的能力のうち人間の外側、つまりデータセンターの内部に存在する割合の方が大きくなっている可能性すらあるのです。これは非常に大胆な発言であることは私自身も承知しておりますし、もちろん私たちが間違っている可能性も十分にあります。ですが、これは真剣に検討に値する仮説だと私は考えています。
2.2 超知能がCEOや科学者以上の仕事をこなせるようになるという見立て
Sam Altman: その発展の道筋のどこかの時点で、超知能というものは、どのような経営者よりも、もちろん私自身よりも優れた形で大企業のCEOという役割を果たせるようになるでしょうし、私たちが抱える最も優秀な科学者たちよりも優れた研究を行えるようになるはずです。私たちはこうした可能性に備えるにあたって、3つの核となる信念に導かれております。
2.3 信念①:AIの民主化こそが唯一公正で安全な道であり、集中化は「破滅」を招きうるという考え
Sam Altman: 第一の信念として、私たちはAIの民主化こそが、唯一公正かつ安全な道であると考えております。AIの民主化は、人類が繁栄していくための最善の方法だと私は確信しています。その一方で、この技術が一つの企業、あるいは一つの国家に集中してしまうことは、破滅につながりかねません。
2.4 望ましい未来像(自由・民主主義・繁栄・人間の主体性)と、「がんの治療と引き換えの全体主義」という誘惑への拒否
Sam Altman: 数十年後に私たちが望むべき未来の姿というのは、自由と民主主義があり、人々が広く繁栄し、そして人間の主体性が増している世界でなければならないと私は考えております。中には、がんの治療法と引き換えに、実質的な全体主義を受け入れてもよいと考える人もいるかもしれません。しかし私は、そのような取引を私たちが受け入れるべきだとは思いませんし、そもそもそうした取引を受け入れる必要すらないと考えています。AIというものは、個人の意志を拡張するものであるべきです。おそらく私たちは、超知能そのものの力を借りて、こうした恩恵が大規模な形で公平に行き渡るような、新しい統治の仕組みを構築していく必要があるでしょう。それは同時に、計算資源へのアクセスが極端に偏ってしまうといった問題を避けるためでもあります。
3. 信念②「AIレジリエンス」と信念③「予測不可能な未来」
3.1 信念②:AIレジリエンス(社会全体の耐性)を安全戦略の柱とする考え方
Sam Altman: 続いて第二の信念についてお話しします。私たちは、AIレジリエンス、つまり社会全体としての耐性を高めていくことが、安全戦略の中核をなすものだと考えております。誤解のないように申し上げますと、これが唯一の安全戦略だと言うつもりはありません。私たちは今後も、安全なシステムを構築し続け、技術的に困難なアライメントの課題にも取り組み続けていく必要があります。ただ、それだけでは不十分であり、私たちはこれからますます、安全というものの捉え方を広げ、社会的なレジリエンスというものをその中に含めて考えていく必要があると感じています。
3.2 オープンソースのバイオモデルが新病原体を生み出しうるという具体的懸念
Sam Altman: どのAI研究機関も、どのAIシステムも、単独で良い未来をもたらすことはできません。分かりやすい例を挙げるとすれば、今後、非常に高い能力を持つバイオ分野のモデルがオープンソースの形で公開され、それを使って新たな病原体を作り出せてしまうような事態が想定されます。私たちは、こうした脅威に対してどのように防御していくかを、社会全体として考えていく必要があります。
3.3 信念③:AIの未来は誰にも予測できず、多くの人が結果形成に関与すべきという考え
Sam Altman: そして第三の信念です。AIの未来というものは、誰かが予測した通りには決して展開しないだろうと私たちは考えています。だからこそ、多くの人々がその結果の形成に関与すべきだと私たちは信じています。AIの発展はこれまでにも数々の驚きをもたらしてきましたし、これからさらに大きな驚きが待ち受けているだろうと私自身も想定しています。これほど強力な技術を前にすれば、人々が明確な答えを求めたくなる気持ちは理解できます。ですが、私たちがまだ分かっていないことについては謙虚である必要がありますし、時には私たちの最善の推測ですら誤っているということを、常に忘れないようにしなければなりません。重要な発見の多くは、技術と社会が出会い、時には摩擦を起こしながら、共に進化していく過程で生まれるものです。
3.4 超知能と独裁国家・新型戦争・新たな社会契約という「まだ答えのない問い」
Sam Altman: 例えば、超知能が独裁国家や全体主義国家と結びついた場合にどう向き合うべきか、私たちにはまだ分かっていません。国家同士がAIを使って新しい形の戦争を戦うようになった場合、どう考えればよいのかも分かっていません。また、各国が新しい形の社会契約について検討せざるを得なくなるかどうか、そしてそれをいつ、どのように検討すべきなのかということも、まだ答えが見えていません。ですが、私たちが皆この点について驚かされてしまう前に、より深い理解と社会全体を巻き込んだ議論を進めておくことが重要だと考えております。
3.5 段階的展開(iterative deployment)という戦略的知見が「これまでのところ驚くほどうまく機能している」という経験則
Sam Altman: ここまで申し上げた3つの信念すべてに関連する、特筆すべき点として申し上げたいのが、段階的な展開、いわゆるイテレーティブ・デプロイメントという戦略的な知見の重要性です。私たちは、社会がAIの能力が新たな段階に上がるたびに、それに向き合い、実際に使いながら、それを取り込んで理解し、次にどう進むべきかを判断していく時間を持つ必要があると、一貫して考えてきました。そしてこの考え方は、これまでのところ驚くほどうまく機能してきています。
4. AIがもたらす経済変化と雇用の未来
4.1 AI進展によるコスト低下と経済成長への期待、ロボットによる物理的コスト削減の予測
Sam Altman: もし私たちの見立てが正しく、AIシステムがこのままのペースで進化を続けるとすれば、非常に多くのものの経済構造が変わっていくことになります。AIの進歩がもたらす本当に素晴らしい点の一つは、多くのものごとがはるかに安価になり、経済成長がより速いペースで実現していきそうだということです。すでに私たちは、質の高い医療や教育へのアクセスといった領域において、AIがもたらしている効果を目の当たりにしています。今後数年のうちには、サプライチェーンの自動化が進むにつれて、ロボットが多くの製品や物理的な財を、より安価に作り出すようになっていくと私たちは見込んでいます。このコスト削減がどこまで進むかについては、その限界を決めるのはもはや技術そのものではなく、政府の政策次第になってくるかもしれません。
4.2 雇用破壊とGPUに対する人間の「働きにくさ」、他者への共感という人間の特性
Sam Altman: ただし、このコインには裏側もあります。AIが今日の経済を動かしている物事をますます多くこなせるようになるにつれて、現在存在している仕事が破壊されていくことになるのです。多くの面で、GPUを相手に人間が働きで対抗するのは非常に難しくなっていくでしょう。一方で、逆に人間の方が有利な面も残ると考えています。例えば私たちは、機械に対してよりも、他の人間に対してはるかに強く関心を持つように、生まれつきできているように思われます。長期的な未来については、私たちはそこまで強く懸念していません。技術というものは常に既存の仕事を破壊してきましたが、私たちは常に新しく、より良いことを見つけ出してきました。
4.3 500年前・500年後の人々からどう見えるかという比喩による技術進化の位置づけ
Sam Altman: 500年前の人々が今の私たちの仕事を見たら、それはしばしば、単に自分たちを楽しませたり、あるいはストレスを生み出したりするためだけの、ばかげた行為のように映るのではないかと思います。そして500年後の人々が私たちを見たときには、遊びに興じ、時間の過ごし方を探しているだけの、途方もなく豊かな人々のように見えることを願っています。ただし私としては、彼らが今の私たち以上に、はるかに大きな充実感を感じていてほしいと願っています。私自身は、私たちがこれからも、互いに役立つこと、自分自身の創造性を表現すること、地位を得ること、競い合うこと、そしてそれ以外の様々な動機によって突き動かされ続けるだろうと確信しています。ただし、日々具体的に何をして過ごすかという中身については、今とはまったく違ったものになっていく可能性が高いと思います。
4.4 世代を超えて積み上げられる「集合的な外部の足場(collective external lattice)」という考え方
Sam Altman: それぞれの世代は、その前の世代が積み重ねてきた仕事の上に、さらに自分たちの成果を築き上げてきました。そして新しい道具を手にするたびに、その足場は少しずつ高くなっていきます。私たちが自分たちの周りに築き上げてきたこの道具の集合体、いわば集合的な外部の足場とも呼ぶべきものは、実に驚くべきものです。私たちは今、私たちの曽祖父母の世代が夢にも思わなかったようなことを、成し遂げられるようになっています。私たちの子孫が、同じように私たちについて言えるようにしておくことは、道義的な責務であると私は考えています。そして技術、とりわけAIこそが、そこに至るための手段になるのです。
5. 民主的なAIの未来のための権力分配と国際協調
5.1 民主的なAIの未来に必要な「主体性と力」の分配、一極集中か分散化かという二者択一
Sam Altman: 民主的なAIの未来を実現するためには、人々に道具や富を与えるだけでは十分ではありません。私たちは同時に、人々に主体性と力を与える必要があります。AI企業が描いているビジョンというものは、突き詰めれば、一方的な統制か、あるいは権力の分散化か、そのどちらかに帰結するものだと私は考えています。
5.2 権力共有の代償(小さな失敗の許容)と全体主義的統制の回避という民主主義的トレードオフ
Sam Altman: 権力を共有するということは、何か一つの物事が取り返しのつかないほど大きく失敗してしまう事態を避ける代わりに、いくつかの小さな失敗が起きることを受け入れるということを意味します。それは、固定化された全体主義的な統制とは対極にあるものです。これはまさに民主主義そのものが抱える根本的なトレードオフであり、私たちは、これこそが未来に対する集合的な主体性をすべての人々に与えるための方法であると、強く信じております。もちろんこれは、規制や安全策が一切不要だということを意味するものではありません。私たちは他の強力な技術に対してそうしてきたのと同様に、当然ながら緊急に規制や安全策を必要としています。
5.3 IAEA(国際原子力機関)に類する国際的なAI協調機関の必要性という提言
Sam Altman: 具体的には、私たちは世界が、AIの国際的な協調のために、国際原子力機関、いわゆるIAEAのような組織を必要とするようになるだろうと考えています。特に重要なのは、そうした組織が、変化する状況に対して迅速に対応できる能力を持つことです。今後数年間は、この技術が急速なペースで進歩を続ける中で、世界社会全体が試されることになるでしょう。
5.4 結びの言葉:「人々に力を与えるか、権力を集中させるか」という選択
Sam Altman: 私たちには選択肢があります。人々に力を与えるか、それとも権力を集中させるか、そのどちらかを選び取ることができるのです。ご清聴ありがとうございました。