※本記事は、安野貴博氏のYouTubeチャンネル「安野貴博の自由研究チャンネル」で公開された記者会見動画を基に作成されています。本記事では、記者会見の内容を要約・構造化しております。なお、本記事の内容は原発言内容を正確に反映するよう努めていますが、要約や解釈による誤りがある可能性もありますので、正確な情報や文脈については、オリジナルの動画をご覧いただくことをお勧めいたします。
<安野貴博 プロフィール> 「テクノロジーを通じて未来を描く」活動をしてきたエンジニア&起業家&SF作家。1990年、東京生まれ。東京都文京区育ち。開成高校を卒業後、東京大学工学部システム創成学科へ進学。「AI戦略会議」で座長を務める松尾豊教授の研究室を卒業。外資系コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループを経てAIスタートアップ企業を二社創業。デジタルを通じた社会システム変革に携わる。日本SF作家クラブ会員。デジタル庁デジタル法制ワーキンググループ構成員、英国王立美術院にて準修士、未踏スーパークリエイター、ハヤカワSFコンテスト受賞、星新一賞受賞、アジアデジタルアートアワード・インタラクティブ部門大賞、M-1グランプリ出場などの経歴を持つ。 チームみらい公式サイト: https://team-mir.ai/
1. 安野貴博氏による発表
1.1. 新党「チームみらい」結党と参院選出馬の宣言
安野貴博:この度私安野貴博は新たに政党チームみらいを結党し、来る7月の参議院選挙に全国比例で出馬することにいたしました。昨年夏の都知事選挙出場と同様に組織票やあるいは後ろが全くない、いわば自盤も看板も鞄もないチャレンジではありますが、勝機は十分にあると考えております。本日は私の参戦に向けての思いと、新党チームみらいが目指すところをお伝えできればと思っております。
1.2. 参院選出馬を決めた理由
まず今回私が参院選への出場を決めた理由についてお話しさせていただきます。昨年の都知事選で私はテクノロジーで誰も取り残さない東京を作ると掲げておりました。都知事選以降、その目的のために自分が何ができるかというそういった検討を進めてまいりました。自治体の首長あるいは国あるいは民間の立場、そういった様々な選択肢がありました。検討の結果、今最速で政治をアップデートするには自ら国政政党を立ち上げることが最適だという結論に至りました。
1.3. 過去1年間の活動と経験
この1年間、地方自治体の皆様や各政党の議員の皆様とお仕事をする機会に恵まれました。例えばガブテック東京の外部アドバイザーを拝命したり、あるいは衆議院のAI推進法案での参考人質疑の場で意見陳述をさせていただいたり、デジタル民主主義2030というプロジェクトを立ち上げてオープンソースソフトウェアを開発する活動を行ったりしておりました。特にデジタル民主主義2030においては、議員、自治体の皆様とコラボレーションしながら3つのプロダクトについて開発を進めてまいりました。
● 1つ目は多様で複雑な意見をAIが分析整理する広聴AI、広く聞くAIと書いて広聴AIです。ブロードリスニング実現するこのツールにより様々な声を集約し政策決定の質を高めるために使うことができると思っております。
● 2つ目はオンライン上で熟議ができる井戸端システムでございます。井戸端会議をするようにAIを活用しながら1億2000万人が一緒に熟議をできる、そういった仕組みを目指しております。広聴AIがブロードリスニングだったとすれば井戸端システムはAIによってさらに能動的にいろんな意見を聞くことができるダイナミックブロードリスニングだと考えております。
● 3つ目は政治とお金の流れを透明化するシステムのポリマネー、英語で「P-Money」と書いてポリマネーです。政治家が自分の意思で政治資金の出所を透明化して見せられる仕組みを用意することで、政治に対する信頼回復を目指しております。
1月の記者会見の場ではこれらの構想をお話しさせていただきましたが、現在これら3つのプロダクトについては順調に開発をデジタル民主主義2030コミュニティにて進行中でして、実際にいくつか導入事例も出てきております。
これらの経験は、それまで地方自治体であるとか議員とは遠く、自分一緒に働く機会があまりなかった自分にとっては大変に貴重な経験でございました。関わっていただいた全ての方には感謝を申し上げたいと思っております。
1.4. 政治・行政の現場での3つの所感
1.4.1. デジタルリテラシー平均レベルの低さ
一方で私はこうした経験をもとに3つの所感を持ちました。まず第1にあの議員の方あるいは行政の現場におけるデジタルリテラシー、その平均レベルの低さでございます。もちろん中には個別にすごくキャッチアップをされてる議員の方、行政職員の方もおられます。ですがやはり平均の水準あるいは実務経験を持ちの方というのはあまりおらず、デジタルを使いこなそうとする意識、これも民間と比較するとはるかに低い状況だと感じました。ITやAI、こういったものは大事である、そういう認識をお持ちの方は多いものの、それはただ自分が触るようなものではないし、専門家に任せておけばその必要もないのだと、そういう認識の方は大変多い状況だったと思います。そうした状況では単にこれはデジタルテクノロジーを使わない、単に物事を推進する速度に差がつくというだけではなく、政策を立案するう仕組みを考える際の発想を広げられないということがあると思います。これは危機的な状況だなと感じました。
1.4.2. 意欲ある人材と構造的問題
そして所感の2つ目です。私とこの1年間の間に関わっていただいた議員の方、官僚の方、行政職員の方、これらの方々は総じて皆意欲があって真面目に頑張っていただいてる、頑張っておられる方だと思ったことです。これはある意味グッドニュースでほっとすると同時に、しかし問題の根の深さも感じました。悪意があったりやる気がないのであれば、これは改善がしやすいと思います。しかし熱意もやる気もある人が揃っている中で現状の停滞感が生まれているのだとすれば、それは構造的な問題だなと感じました。
1.4.3. 外部からの変革の困難さ
第3に感じたのは外から何かを変えることの困難さです。やはり政治の世界では議員とそれ以外の人に大きな線が引かれてるように感じました。国会では議員でないと聞いてもらえない話があるそういう風に感じました。そうであるならば政治や行政に何かテクノロジーを持ち込もうとした場合、自ら議員になることが必要不可欠であると感じました。外部のアドバイザーという立場ではできることに限界がある。国会を変えるには国会に入るしかない、そういう風に考えております。
1.5. 新党設立の決断理由
これらの理由からテクノロジーで日本を良くしていくための最短経路であり最善の道は、自ら国会議員として入っていくことであるう。ただし既存政党に入るような形では、これはよくも悪くも様々な既存の利害関係がございますので、我々の考える改革これを早いスピードで進められないのではないかと思いました。ゆえに厳しい道だと理解しつつも、自ら政党を立ち上げることにいたしました。
2. 新党「チームみらい」のビジョンと政策
2.1. 「テクノロジーで誰も取り残さない日本」の実現
次に新党チームみらいの目指す姿と訴える政策についてお話ししたいと思います。新党チームみらいの目指すところは、テクノロジーで誰も取り残さない日本を作ることです。名前の通り未来を作るための政党になります。テクノロジーそれはですね難解な専門技術ではなく、できなかったことをできるようにする具体的なツールだと考えています。私たちはこのテクノロジーを通じて政治への参画を促進し、国民1人1人の生活を改善し、国民の皆さんの未来を明るくするための活動をしていきたいと考えております。
2.2. テクノロジーの位置づけと活用方針
テクノロジーを正しく活用すれば複雑な仕組みを効率化し、無駄を削減し、手続きをスマートにすることができます。チームみらいはメンバー1人1人が手を動かし、テクノロジーを駆使して政治をアップデートすることを目指します。現在、世代間や国家間の対立が激化し、またAIは指数関数的にその能力を伸ばしています。このような中で将来の不安を覚えておられる方たくさんいらっしゃると思います。現在、政治の話題はお金の再配分、再分配に偏り、未来の成長を生むという議論が不足しているように感じます。もちろん再分配の議論も重要です。重要ですが、場当たり的なその場の対応だけでは進行する物価高やインフレに対する根本的な解決策にはならないと考えています。
2.3. 国家課題と未来志向の成長戦略
予測困難なこの時代に今必要なのは成長戦略と、柔軟かつ迅速に変化に対応できる社会システムだと考えてます。チームみらいは変化に対応をし続けられるための、しなやかな社会を目指していきたいです。そして私たちはAI時代にふさわしい成長戦略を掲げ、子育て、教育、科学技術への投資、新産業の育成、文化の進行、これを進めてまいりたいと考えております。
2.4. 国政政党として取り組みたいこと
2.4.1. 国会にエンジニアチームの設立
次に国政政党として取り組みたいことについてお話ししたいと思います。チームみらいが国政政党として要件を満たした後、最初に取り組みたいことは次のような取り組みになります。まず年1億円以上ある政党交付金を用いて国会にエンジニアチームを作ります。従来の国政政党では党によっては政党交付金の多くが選挙に使われておりますが、チームみらいは自らの選挙のためだけではなく、政治のデジタルトランスフォーメーション、政治のDXを進めるための活動に使いたいと考えています。このチームは約10名規模の優秀なエンジニア、リサーチャーで構成するものとし、アウトプット、作ったものは全てオープンソースで公開をして、どなたでも参加、貢献できるような形にしたいと考えております。
2.4.2. 政治のDXを推進する活動
このように国会でエンジニアチームを立ち上げることができれば、例えば民意を政策に反映する仕組みとしてオンライン上で大規模な熟議を行えるシステムを実装して、集まった意見を論点整理して可視化し、建設的に議論を国会の場で進めることができるようになると考えております。また国会にAI・DXの専門家を送り込むことには意味があると思っております。国会議員の中でAIエンジニアの方はまだいらっしゃらないと認識しておりますが、この人数が0から1に変わることこれは非常に大きな違いになると思います。
2.4.3. 「ユーティリティ政党」の概念
チームみらいは他の議員とも是非で政策に関して議論しながらも、他党の政策立案や他党のテクノロジー活用・DXは積極的に支援したいと考えております。我々はこのあり方をユーティリティ政党と呼んでおります。このような動き、これを当選後すぐに始めることは既存の政党に入ることではどうしても難しいと考えたことも、自ら新党を立ち上げようと思った理由の1つでございます。
3. 選挙戦略と目標
3.1. 参議院選挙比例区での立候補表明
夏の参院選では私安野貴博は比例区での立候補を通じて全国の皆様に訴えていきます。チームみらいは比例区に加えて選挙区も含めて10名以上の候補者を擁立いたします。すでに候補者としてたくさんの方と調整をしておりますが、今回の発表の後に、自分を推薦したいという方がいましたら、そういった方に出ていただくことも検討したいと考えております。
3.2. 10名以上の候補者擁立計画
チームみらいは比例区に加えて選挙区も含めて10名以上の候補者を擁立いたします。すでに候補者としてたくさんの方と調整をしておりますが、今回の発表の後に、自分を推薦したいという方がいましたら、そういった方に出ていただくことも検討したいと考えております。そして今回の選挙では複数議席の獲得とチームみらいの国政政党を目指したいと思います。
3.3. 国政政党要件の達成目標
チームみらいが国政政党の要件を満たすためには有効投票数の2%以上を得る必要があります。これは今の、昨今の投票率を踏まえると約120万票、そしてそれは1億2000万人の人口の1%にあたる規模間になります。私たちはこの一連の取り組みを「1%の革命」と名付けました。これは1%の新しいことにチャレンジする人々が世界を変えるんだという私の考えを込めております。歴史を振り返ってみても、最初の1%のイノベーティブなアイデア、行動、チャレンジが人々の暮らしに大きな変化をもたらしてきたことは数多くあると思います。
3.4. 「1%の革命」コンセプト
私たちはこの一連の取り組みを「1%の革命」と名付けました。これは1%の新しいことにチャレンジする人々が世界を変えるんだという私の考えを込めております。歴史を振り返ってみても、最初の1%のイノベーティブなアイデア、行動、チャレンジが人々の暮らしに大きな変化をもたらしてきたことは数多くあると思います。
3.5. 都知事選の経験と成果(15万4638票)
昨年の都知事選では15万4638票をいただきました。つまり1400万人いる都民の1%の方から票を託していただきました。もちろんこの都知事選で当選が叶わなかったこと、これは残念ではありますが、この1%のおかげでこの1年間非常に多くのことを前に進めるべきことができたと考えております。例えば当時私が訴えていたコンセプトの1つ、ブロードリスニングというコンセプト、これは今や東京都や各政党が当たり前に実行する標準戦略になりました。ある意味謎の無名候補だった私の主張を多くの国会議員の方に聞いていただくことができたのは、1人の選挙で1%の支持を得ることができたからだと考えております。あの時私に票を投じていただいた15万4638人の皆さんには改めて心から感謝を申し上げたいと思っております。そして今度は国政政党というより大きな目標に向かって社会を前進させたいと考えております。
4. 活動方針と支援募集
4.1. ボランティア募集とゲーミフィケーションプラットフォーム
戦後の日本、30代の当事者が0から国政政党を設立できた例、これはかつてありません。今回1%の革命が実現することは国会の新陳代謝を促し、硬直化しているシステムを進化させるきっかけにもなると考えております。今回も組織票や後ろ盾が全くない中での選挙戦、自盤も看板も鞄もない中での挑戦になります。生まれたばかりの政党には皆様からのご支援が不可欠です。チームみらいは情報発信や政策研究を担ってくださるボランティアの方々を全国から広く募集したいと思っております。そのためチームみらいの政党としての活動を楽しみながらできるようなゲーミフィケーションプラットフォームを開発することにいたしました。このプラットフォームの上で情報発信のための動画編集や制作、提言など様々な活動に参加しやすくなる予定です。活動内容の詳細はチームみらいの公式サイトをご覧ください。ご興味のある方のご参加を歓迎いたします。
4.2. マニフェスト作成の参加型アプローチ
都知事選に引き続き、私たちは一方的に自分たちの考えを伝えるものではなく、みんなで政治について考えるコミュニティ、未来について考える機会にしたいと思っております。具体的には、チームみらいのマニフェストは全国の皆さんの声、知恵、意見を聞きながら一緒に政策を作り上げていきたいと考えております。
4.3. デジタル民主主義ツールの活用計画
デジタル民主主義2030のコミュニティが開発した熟議ツール、井戸端システムによって多くの声を政策に取り込むことが技術的に可能になったと考えています。これらのシステムは私の当選後ももちろん継続して活用していきたいと考えておりますし、他の政治家の方にも積極的に使っていただきたいなと感じております。チームみらいはテクノロジーの力を信じ、皆様と共に新しい未来を実現したいと願っております。
5. 質疑応答
5.1. 既存プロジェクトとの整合性
日本テレビ記者:今の発表の中で安野さんご自身が政治家や行政の方と仕事した中で問題点に気づいたというお話がありましたが、現在も政治家や政党、自治体、国を含めた行政のプロジェクトは続いているものもあるかと思います。安野さんが出馬することによって、そのプロジェクトの進行にも影響が出てしまうのではないかという懸念もあるのですが、現在進行中の政党や自治体のプロジェクトとの整合性などはどのように捉えていらっしゃるのでしょうか。
安野貴博:ありがとうございます。2つご説明させていただければと思います。まずは行政との契約関係についてです。具体的には現在、一般財団法人ガブテック東京の外部アドバイザーを務めておりますが、この契約は元々3ヶ月ごとの更新になっており、次の更新が5月12日となっています。私としては5月12日をもって任期満了とさせていただく予定です。ガブテック東京とは出馬の可能性についても事前に相談しており、支障なく進行できると考えています。
次に他の党との関係についてお話します。他党との関係は主にデジタル民主主義2030というプロジェクトを通じて一緒に活動することが多かったです。このプロジェクトは当初、政治的中立を保った団体として立ち上げましたが、私が政党を立ち上げることで政治的中立性の説明が難しくなるため、昨日付でボードメンバーを退任し、新体制に移行しました。新体制ではAIガバナンス協会代表理事の大島工人さん、一般社団法人コード・フォー・ジャパン代表理事の関さん、慶應大学教授の中室さんにボードに加わっていただき、今まで以上に強力な体制で政治的中立を保ちながらプロジェクトを継続できるよう引き継ぎを行っています。
さらに、チームみらいの今後の活動においても、テクノロジー面では他の政党との政治的中立性を保ちつつ協力体制を築いていきたいと考えており、今後様々な方々と相談を進めていく予定です。
5.2. オープンデータ活用の課題と対策
質問者:日本には2016年ぐらいのデータ推進本部、あとはその頃にオープンデータを使った「私の税金どこに行った」プロジェクトがあったりしてるんですけど、あんまりこの10年でそのオープンデータを使ったデータ活用の仕組みが進まなかった。そのステップ自体はすごく素晴らしいなと思っているので、これまでとの違いをもう少し伺いたいなと思いました。
安野貴博:ありがとうございます。コンセプトとしてオープンデータの活用というところに関して言うと、進まなかった理由はできる団体というのがなかなかなかったということだと私は理解しています。これをもう少し言うと、まずこれは営利活動にするには儲からなさすぎるプロジェクトだと思っていますので、ビジネスとしてそこに参入することはまずできないということが1つです。
2つ目に、行政がやるかというと、行政はそこまでソフトウェアを開発するリソースというのもそこまで大きくはないですし、また、こういう不確実性の高い、どういう風に使えばいいかを事前に定義することが難しいようなソフトウェアを作るのはなかなか今のやり方では難しいんですよね。つまり今はその仕様を事前に完全に確定させてから、その仕様を持って発注をして、そこで実際に出来上がってきたものを見て「これはちょっといまいちだからここの仕様を変えよう」と言ってもなかなかそれができないような開発プロセスになっていると思います。いわゆるウォーターフォールとアジャイルという話がありますが、アジャイル的にどういう風な課題が出てくるかをどんどん見ながら仮説修正してやっていくやり方というのは、今までの行政が苦手としてきたところだと思います。
3つ目にNPOのような団体がこういったものを作るというやり方があると思います。ただここもやはりサステナブルなファンディングが日本のNPOだと集めるのがなかなか難しいという状況があると思います。これは今のNPOの皆さんも非常に頑張っておられる、例えばコード・フォー・ジャパンさんとかはかなり活発に活動されていると思いますが、やはりファンディングの面で潤沢かと言うと私はそうではないと思っています。
我々チームみらいはそれら3つともどれとも違う形になると思います。例えば国会にエンジニアチームを作ることができれば、これは6年間政党交付金でサステナブルなファンディングを確保した状態であり、かつ機動的に行政と比べても動けるような組織であり、しかも国会にいるといろんな行政と連絡調整をしながら進めることもできると思っていますので、今までできていなかったようなデジタル公共財を開発していくというのが我々の考え方で十分にできるんじゃないかと思っています。
5.3. デジタルトランスフォーメーションの推進方法
白坂氏(フリーランス):安野さんが提唱している国会エンジニアチームで政府のデジタルトランスフォーメーションを進めるために活動するとおっしゃられたんですけど、例えば初春井(厚生省)では未だにファックスを使っているとか、メディア関係の方もファックスを使っている価値が結構多いって話を聞いて衝撃的でした。特にコロナ禍においては保健所もかなりの拠点でファックスを使ってたと。ファックスって今ちょっと象徴的に言ったんですけども、デジタルトランスフォーメーションという領域にはなかなかこうそこまで追いついていない現状があって、それは人々の気持ちの面でもかなり影響してるんじゃないかと思っています。その状況を踏まえて、安野さんはどのように例えば人の気持ちも含めて日本のデジタルトランスフォーメーションを進めていこうと考えてますか。特に日本の致命的にダメなところがあったら教えてください。
安野貴博:すごくいい質問というか的確な質問だなと思っております。私の考えでは2つあると思っています。日本においてデジタルトランスフォーメーションを進めていく時にやらなければいけないこと、これは1つはトップの意思だと思っています。つまりこのケースで言うと日本のある種政治的中枢の人たちがやはりテクノロジーは大事なんだと、しかもそれを言うだけじゃなくて実際に実行している、手を動かしている人たちがいる状態にする、これは非常に大きなメッセージになるのではないかと思っています。
2つ目に重要なのがやはりこれはリスクをしっかり取っていくということだと思います。つまり現状を維持することにすごく大きな、なんでしょうね、現状を維持するようにこう今の仕組みってのが作られていると思いますが、現状を維持し続けるというのもそれも選択の1つであって、ある意味リスクを取っているわけですよね。しっかりと適切な形で社会の変化に合わせて変わっていくということをやっていかないといけないわけです。なので我々みたいなスタートアップ政党、新しく立ち上げた政党の人たちがこう成熟のところに入っていくことによって、そのシステム全体としての新陳代謝を上げていく、これは1つのデジタルトランスフォーメーションを推進するための力になるんじゃないかと思っています。
5.4. 目指す国家像について
畑山道義氏(フリーランスライター):国政政党になってエンジニアチームを立ち上げるという具体的な説明があったんですけれども、国家観とか憲法観とかどのような国にしたいのかというのを教えていただきたいと思います。安野さん自身はどのような国を目指しているのか、それから世の中の人はどのような国であることを求めていると安野さん自身は捉えているのか。それともその国の形についてもこれから広く意見を聞いてみて合意形成を図っていく、つまりその安野さん自身の価値観というのもこれから変わっていく可能性があるのかというところを教えてください。
安野貴博:ありがとうございます。まず最後のご質問からお答えすると、皆様のご意見というのを聞きながらどんどん政策はブラッシュアップしていきたいとは思っておりますが、それは私の意見がないということを意味してるのではなくて、我々の方でまず叩き台のマニフェスト政策というものを公表しようと思ってます。それそういったですね大きな方向性がないと、いきなり1億2000万人で議論をしようと言ってもできないと思っているので、我々の仮説「こう考えているんだ」というバージョン0.1をしっかりとお示しして、その上でも「あなたの言ってることは間違ってるよ」という意見があったら、それを踏まえて「確かにそうだったね」「こっちの方がいいよね」という建設的な話し合いをしていくというのが重要だと思っています。それが最後のご質問でして。
まず私の大きな国家観としましては、「テクノロジーで誰も取り残さない日本を作る」ということを掲げています。これはいろんな人の選択肢がたくさんある状態が私は望ましい社会なんじゃないかなと思っています。「こういうことを本当はしたかったんだけどできない」であるとか、そういったことがなるべく起きないような社会というのが1つの理想系だと思います。それを作るためには何が必要かと言うと、やはり長期での経済成長がしっかりとできるようになることだと思っています。やはりその再分配を仮にものすごく議論し100点のものを作ったとしても、パイ自体がどんどんどんどん大きくなっていかない限りは、すごく贅沢なままあのどんどんどんどん状況は悪くなってしまうわけですよね。私はしっかりと長期でこうやっていけば成長できるんだっていうその戦略を持つことが大事だと思います。
ではどうやったらその今の日本で長期の成長ができるんだって話になるわけですが、これは3つやるといいと思ってることがあります。1つ目はさっきファックスのお話もありましたけど、今ITとAIというところに関しては現状を出遅れてる状態です。出遅れてるというのはよく言えば伸び代がすごいあるということなので、当たり前のIT・AI活用をしていきましょうというその伸び代をまず確保して速攻性のある手を打っていきましょう、というのがやらなくちゃいけないこと1つかと思います。
2つ目が変化に対応できるしなやかな社会作りということだと思ってます。これは今までの世界と比べてもはるかにこれから世界が変化するスピードというのはどんどんどんどん高まっていく、不確実性がどんどん高まっていくと思っています。それは戦争であったり、いろんな海外のブロック経済が進行するという話であったり、あるいはAIが指数関数的に能力が上がっていくという話、これらはものすごくどれも社会の構造を大きく変えていく話だと思うんですよね。現状その変化のスピードにそもそも対応できているかというと対応できていないと思います。いろんな社会システムがあるので、それを変化に柔軟に対応できるようなシステムを作っていくというのが2つ目にやんなくちゃいけないことです。
3つ目が長期の成長に対して全力で投資をするという話だと思います。例えば教育人づくりというところに関しては、子育ても含めますけど、人づくりということに関してはやはり将来、未来を作るものだと思いますので、今まで以上に大胆にそこにお金を投資していくことが必要だと思いますし、その他にも科学技術であるとか産業、新産業を作っていく、そういったことも未来を作る活動のとして非常に重要だと思ってます。最後に重要なのが文化振興だと思っています。これはやはりAIが人間の知性を超えるかもしれないと言われてきている状況の中で、それでも人間が尊厳を持って人生を生きていくためには、やはり文化というものは非常に重要なものだと思ってますので、文化振興も長期の未来のために投資すべきところだと思っているということで、この3つをしっかりやっていくというのが我々の戦略だと思っています。
憲法、そういう意味で言うと我々のチームみらいに関してはこれはシングル・イシュー政党ではないですね。シングル・イシューではなく、かと言ってフルパッケージでもないという状況です。マルチイシュー・パーティーというか重点特化した政党だと思って、我々が特に訴えていきたいのは未来をどう作るか、テクノロジーをどう活用するか、そこに関して重点的に議論を呼び起こしていきたいと思っています。その他の項目についてはある種非重点、我々の政党としては非重点の事項という風に整理をしようと思ってました。ここは細かく縛らない形でその各個人個人の考えることについて進めていくという形かなと思います。その上で個人の考えというのがあるかというと、もちろん個人の考えはあって、例えば憲法に関しては平和主義みたいな非常に重要なものを尊重しつつですね、ただ時代に合わせて変えていくというのは、これを私は柔軟に考えていくべきだろうという風に思ってます。
5.5. 減税政策と民意の取り入れ方
毎日新聞記者:今の安野さん自身が政策についてどう考えるかというところなんですけれども、今の国政では減税が争点になっていて、この参議院選挙でもそうだと言われています。消費税含めて安野さん自身は減税していくべきなのかどうかというお考えと、もう1つはこのブロードリスティング的な手法で政策を作っていかれるということですけれども、多分世の中に「減税してほしいか」と聞いたら減税を求める人の方が多いんじゃないかと思います。私も生活者として税金は少なくなった方がいいですし、でも一方で財政規律を保つべきだという意見もある中で、安野さんの考えとは別にブロードリスニングの意見を聞いた時に、減税の意見が多かった時に、どういう尺度で判断されるのかという、この2点についてお伺いします。
安野貴博:ありがとうございます。まず足元の経済環境においてですね家計を支援するための対策というのは、これはもう一定必要だと私は思っております。ただやはりより重要なのはこの環境というのもどんどん変わっていくわけですよね。コロナ禍みたいなものがあるかもしれないし、今回みたいな物価高があるかもしれない、お米の値段がものすごい急激に上がるかもしれない。こういった時にいちいちですね長い時間の議論をしないと何かの値を変えられないというこの構造自体が非常に問題だと思っています。よって、より重要なのがその変化に対応できるための経済財政システムの構築だなと。必要なタイミングで柔軟に税制の変更をしたりであるとか、困ってる人に困っているタイミングで即座に給付ができるような仕組み、そういった仕組みを作っていくことが重要だと思ってます。それが前半の話です。
後半のブロードリスニングで一緒にこう政策を作っていく時にどういう風に作っていくのかという話ですが、これはおっしゃる通り、おそらくその税金が減った方が嬉しいかどうかというアンケート単体で取ると、明らかに多くの人は減った方が嬉しいと思いますので、そうおっしゃると思います。ただ我々はですねその数の多さ、意見の数の多さで、数が多いからこっちにすべきだよねとは全く思っていなくて、数の多さは1つのあの考える材料ではあるものの、それは他の政策であるとか例えば今回の例で言うと財源問題というところとどういう風にバランスを取るかという全体のバランスの問題になると思っています。そういう意味で我々はこのチームみらいの中でこういった声があるというのは認識しつつ、それはある種までよりも高く認識することができると思いますが、認識しつつどうすべきかというのはある種の中で意思決定をしていくと。人間が意思決定をしていく形で進めると思います。
毎日新聞記者:前半なんですけれども、柔軟な税制を作っていくべきだというお考えだと思うんですけども、減税そのものに対してはまだどちらか明確な立場はまだしていないということでしょうか。
安野貴博:減税で言うとま例えばガソリン税、所得税、消費税とか色々あると思うんですけど、まず私の意見を申し上げるとガソリン税は暫定税率撤廃には賛成です。所得税に関しては103万円の壁を引き上げるということはこれは賛成をしてます。ただ財源を考える必要はある。財源を考える必要あるんですけど、理想的にはその最低賃金の上昇に合わせるということは私はすごくロジックがあると思うので、財源を考える必要はあるが理想的には178万円まで上げるというのは1つの考え方だと思ってます。消費税に関してはこれは短期的には家計を支えるためにですね減税、給付合わせて今合意可能なものというのを探っていくべきだなと思っていますが、先ほど申し上げた通り中長期で見たら柔軟にできる体制というのを、システムというのを作っていくべきだろうなと、そういう考えです。
5.6. 候補者擁立と選挙区について
松氏(名新聞):選挙戦略のところでお伺いしたいんですけども、まず今回比例に加え選挙区も含め10名以上の候補者を擁立するとのことですが、これすでに候補者の目処はついているのかどうかというところと、あと具体的に比例になる選挙区はどことどこになるという予定が何かあるのかということと、あとこの国会にエンジニアのチームを送り込むということでしたけれども、このエンジニアチームの方々は候補者という理解なのか、もし候補者ではなく別にそういった方を雇う予定であれば、というところをちょっとお伺いします。
安野貴博:ありがとうございます。まず候補者に関して言うと10名は調整ができておりますが、ここからさらに増やしていくかどうかというのは現状調整中です。これはお伝えできるタイミングでお伝えしたいなと思っております。あと比例と選挙区どちらがどれくらいの配分なのかということですが、現状ですね比例は3名出る予定です。選挙区が7名程度出るという調整をかけているところです。こちらもあの正確にお伝えできるタイミングでまたお伝えできればと思います。
国会エンジニアチームの10名と候補者が重なるのかというと、重なる部分はありうると思うものの、現状ではまだ重ならない部分もあるし重なる部分もあるだろうというお答えだと思います。
松氏(名新聞):大都市中心なんでしょうか?
安野貴博:それもこちら今後調整をした上であのお伝えできるタイミングでお伝えさせてください。
5.7. 記者会見の反響と選挙戦略
沢氏(読売新聞):2点ありまして、まず1点がこれだけ報道人が集まっていること、つまり安野さんライブがどれだけのものかという率直な受け止めをお伺いしたいと。もう1点は実際の選挙戦となると有権者にどういう風に訴えかというところが焦点になると思うんですけれども、無党派層へのアプローチとして何か考えられているものがあるのか。それと既存の政党の支持者からも一定票を取らなきゃいけなくなるんですけど、その辺りどのようにお考えか、現時点で選挙戦略についてお伺いできればと思います。
安野貴博:そうですね、まず1点目のこれだけ多くの方にまず記者会見で集まっていただいたというのは、率直に去年の都知事選との違いをすごく感じますね。去年の都知事選の時は本当に私全く無名でして、報道もほぼ一切なされていなかった状況ですので、ある意味その後に様々な訴えをしてきたこと、そして1%の15万人の方が投票いただいたことでここまで私から見えてる景色が変わったというのはある種感慨深いだという風に思っております。これはある種期待が大きいということだと受け止めておりまして、それに答えられるように頑張っていきたいなと思う次第です。
2つ目の今後の選挙戦略のアプローチということですが、これは昨年度と同様、ある意味我々の考える王道をきちんとやっていくということかなと思っています。つまり政策で何がいいんだろうかというのを一方的に我々が発信していくだけではなくて、いろんな人がいろんなことを考えてる内容をなるべくブロードリスニングして、受け止めた上で我々が見えてなかったことに関しては率直にそのフィードバックというのをありがたく頂戴して、どんどん考えを進化させていく。このプロセスがきちんと回っていること自体が、その後のこの政党は今後国会に行った時にうまくやってくれるのかということ、ある種の実力を示すことにも直接繋がると思いますので、その応答をきちんとやっていきたいと思っています。
5.8. 長田町エンジニアチームの人選基準
張島氏(日本経済新聞):先ほど国会エンジニアチームということでエンジニアとリサーチャーのお話あったと思うんですけども、「優秀なエンジニア、リサーチャー」という「優秀」という基準、もし今お考えであればどのような基準を元にしてそのチームに配属をする人を決めるのかというのを、もし今お伝えできる範囲で教えてください。
安野貴博:そうですね、やはりいくつかの要素あると思うんですけども、実際にもちろん技術的な知見があって何かをこなせるということは前提だと思います。コンピューターサイエンスの知識があるであるとか、そういったことは前提だと思いますが、やはり今までに解いたことのない問題を解くチームになると思いますので、そういった意味でその問題解決能力であるとか、あるいはその新しいことに対する知的好奇心みたいなものがあること、そして1番重要なのがガチでやる気があることだと思います。
5.9. 政治判断とAI活用の関係性、クローズドシステムへの対応
佐藤氏(日本経済新聞):これだけ報道陣が集まっているということは期待の高さを示していると思います。私も期待していますが、安野さんがおっしゃるように政治は最終的に人間が決断するものです。AIの専門家が国会に存在することは重要ですが、安野さんご自身の考え方がまだよく見えてこないのが気になります。民主主義では多数意見に流されやすい側面もあり、例えば戦前に同様のシステムがあれば、もっと早く戦争に突入していたかもしれません。そこで安野さんの基本的な考え方をお聞きしたいというのが1点目です。
2点目は、オープン性についてです。公務員のデジタルリテラシーの話がありましたが、国会や霞が関の現状はクローズドなシステムです。そこにオープンな形で入っていくのは非常に困難です。このクローズドな環境をどう変えていくお考えでしょうか。
最後に、政治資金の透明化についてですが、例えば文春が報じた石破氏の3000万円のような収支報告書に載せていない「闇献金」のケースでは、いくら公式なシステムを導入しても対応できないのではないでしょうか。このような限界についてどうお考えですか。
安野貴博:まず、政治資金の透明化(ポリマネー)について。確かに全く別の口座に資金を隠す場合は対応が難しい面があります。しかし、通常の政治資金口座で意図的に不透明にしている部分については、クラウドサービスを活用して透明化することで大幅に改善できると思います。100%の解決は難しくても、現状より大きく前進できる意義は大きいと考えています。
次に、クローズドシステムの変革についてですが、これは企業の世界でも似た状況があります。情報を統制する大企業に対して、スタートアップが開かれた形で挑戦し変革をもたらすという流れが、ソフトウェア業界では過去20年続いてきました。このアプローチが政治にも適用できると考えています。既存政党の中では様々な制約があり変革が難しいですが、しがらみのない新党であれば、これまでにない開かれた戦略が可能です。そして市民がこの方式を支持すれば広がっていく。つまり、「大企業政党」に対する「スタートアップ政党」として、オープンな情報公開で政治全体の空気を変えていきたいと考えています。
最後に、私の基本的な考え方については、テクノロジーはあくまでツールだと考えています。同じブロードリスニングの仕組みがあっても、誰がどう使うかで結果は大きく異なります。現在、多くの政党が意見募集をしていますが、各党のやり方や結果の活用法は様々です。テクノロジーがどれほど発展しても、最終的な判断は国民一人ひとりが下すべきものです。ただ、私たちのようなシステムを使えば、政治家や政党がどのように提案に反応し、どのような判断をしてきたかの記録が蓄積され、有権者が政治家の判断傾向をより正確に把握できるようになると思います。
5.10. 「チームみらい」の英語表記
産経新聞記者:基本的な質問になってしまうんですけど、弊社は英語で記事を配信しなければいけないので、チームみらいを英語表記にあの公式に決めていらっしゃる方があればあの教えてください。
安野貴博:はい、決めておりまして、チームは「TEAM」ですね、でみらいは「MIRAI」ですね。
産経新聞記者:大文字ですか?
安野貴博:大文字か小文字かは決めてなかったかもしれない。また後ほどご連絡させていただきます。
産経新聞記者:今決めていただいてもいいんですか?
安野貴博:考えてから熟慮の末決めます。
5.11. 東京選挙区と選挙区選定の観点
中山氏(日刊スポーツ):選挙戦略について確認したいのですが、選挙区は7人程度立てることで調整されているということですが、今年の参院選では東京選挙区にも候補者を擁立されるのでしょうか。昨年都知事選に立候補された安野さんご自身が東京から出馬する可能性はあるのでしょうか。また、どういう観点で選挙区を選んでいるのかについてもお聞かせください。
安野貴博:ありがとうございます。東京選挙区は検討すべき重要な選挙区の一つだと考えています。選挙区を選ぶ際の観点としては、複数の要素を考慮しています。例えば候補者との相性や関係性といった要素もありますし、チームみらいの政策に共感していただける層がどの地域にどれくらいいらっしゃるかという点も重要な判断材料です。具体的な選挙区については検討結果がまとまり次第、しかるべきタイミングでお知らせしたいと思います。
5.12. 候補者10人の背景
鈴木氏(東京新聞):候補者10人の方のことで、どういった方なのかをもう少し具体的に教えていただけると幸いです。皆さんエンジニアのお仕事されてるか、そういった部分でお願いします。
安野貴博:そうですね、候補者に関してはエンジニアの方もいらっしゃいますが、基本的には第一線で活躍されている方が多いと思いますし、エンジニアでなかったとしてもテクノロジーに明るい方というのは多いと思っております。
5.13. 立法府を選んだ理由と参議院の特性
後藤氏(日本放送):会見を聞いていて気になっていたことがあります。参院選に出馬されるという選択ですが、おっしゃっていることは素晴らしいと思いますし、本来は行政がやるべきことだと思います。ではなぜ立法府、特に参議院なのでしょうか。衆議院ならまだ統治の仕組みを変える強い発言力がありますが、参議院選挙を選ばれた理由は何でしょう。今はいろんな方と関わりがあるので行政からもアプローチできると思います。「自ら議員となることが必要不可欠」とおっしゃっていますが、本当に他の道ではできないものなのか、なぜこの道を選ばれたのかをお聞かせください。
安野貴博:ありがとうございます。まず、なぜ行政ではなく立法府を選んだかについてですが、行政には素晴らしい方々がたくさんいらっしゃいますが、組織構造上、不確実性を伴うソフトウェア開発や新しい施策を打ち出すことに対して保守的にならざるを得ない面があります。いわゆる「行政の無謬性」と言われる、間違いが許されないという圧力があるのです。どんな組織でも完璧なものはないはずですが、行政は国民との関係上、失敗が許されない構造があり、それが新しい試みを難しくしています。
この1年間、様々な自治体や行政機関に外部から貢献しようと努力してきましたが、外部からできることには明らかな限界を感じました。実際に変革を起こすには、自ら内部に入る必要があるという結論に至ったのです。
次に、なぜ衆議院ではなく参議院なのかという点ですが、大きな理由の一つは参議院の6年という任期です。衆議院はいつ解散するかわからないため、常に選挙を意識せざるを得ません。一方、参議院では6年間じっくりと政策立案や活動に集中できます。選挙活動ではなく、実質的な政策実現に全力を注げるのです。「良識の府」と呼ばれる参議院の特性は、テクノロジーを活用した政治改革という私たちの目指す方向性と非常に相性が良いと考えています。
5.14. 政権との関係性と他の小党との違い
朝日新聞記者:参議院選挙は通常、政権選択選挙ではないんですけど、今衆議院が少数との状況で少数与党政権が成立する可能性もあります。こうした今日ご説明いただいた政策を実現する上で、今の自民党公明党による石破政権とかはどういう姿勢で望まれるのか、非自民党政権での政策実現を目指すのか、そこにこだわらないのか、理由も合わせて伺いたいのと、ミニ党と呼ばれる勢力が次の参院選での政党化を目指すところも含めて出てきてると思うんですけれども、今日立ち上げた理由として、そういったところにどういうチャンスみたいなものを感じているのか伺えますか。
安野貴博:国政政党になった場合にどういう風に政権との政策的な関係を築いていくのかということだと思いますが、これは私はフラットに考えておりまして、選挙後の状況には大きく左右されると思いますが、結局我々のやりたいこと、特に未来をどう作っていくのか、テクノロジーをどう活用していくのかという我々のやりたいことが1番できる場所を選ぶ。その人たちと一緒に頑張っていくということだと思っています。
それは例えば今の他の政党さんが我々の政策見た時にどう感じられるのかというところに大きく依存する話だと思うので、今私からは「この党と組みたい」とかそういうことは申し上げられないかなと思ってます。というのが1つですね。
もう1つが「ミニ政党の動き」ということだと思います。他のミニ政党さんがどういうお考えでどう立ち上げられているのかというのはあまり我々も感知するところではないかなと思っていて、私はその政党を作る、選挙に出るというのは国民の権利の選挙権という権利なので、それを行使されることは全く問題がないかなという風に思っています。
5.15. 活動資金と資金調達方法
フリーランス記者:活動資金のことについてお伺いたいんですけど、自己資金なのかそれとも借入れなのかそれとも寄付なのか、その規模はどれくらいを用意していたり、それから寄付だったら目指しているのかということを教えていただきたいのと、結党大会とか資金のパーティーとかそういった予定はあるのか教えてください。
安野貴博:まず資金は借入れはしてないです。自己資金と寄付によって今後運営をしていきたいなと思ってます。希望はもう今回まだ立ち上げた直後ですので寄付がどれくらい集まるのかというところはまだ全然我々も読めていない状態だと思います。
フリーランス記者:目標とかは?
安野貴博:目標もまだ正直今日が初出しの場面ですので、これからちょっと数値化していきたいなと考えています。
フリーランス記者:最低限どれくらい?
安野貴博:最低限どれくらいかということに関して言うと、比例で10人候補者を出すというところでミニマム必要な額というのはありますよね。そこに関しては確保はできている状況ですので、出馬というところに関して言うと全く問題はないだろうと思います。ただ供託金払えたとしてもですね選挙活動、政治活動できないと意味がないですので、寄付というところは今後も皆さんに訴えかけていきたいなと思ってます。
6. まとめ
安野貴博氏が新党「チーム未来」の結党と参議院選挙への出馬を発表した本記者会見では、テクノロジーの力を政治に取り入れるという明確なビジョンが示されました。
「テクノロジーで誰も取り残さない日本」を実現するため、安野氏は単なる技術革新だけでなく、政治の仕組み自体をアップデートする必要性を強調されました。過去1年間のガブテック東京でのアドバイザー経験や「デジタル民主主義2030」プロジェクトを通じて、政治・行政の現場におけるデジタルリテラシーの低さや外部からの変革の困難さを痛感し、自ら国政に乗り出す決断に至ったことが語られました。
具体的な施策として注目されるのは、政党交付金を活用した約10名規模のエンジニアチームの設立です。このチームでは広聴AI、オンライン熟議システム、政治資金透明化システムといったオープンソースの政治DXツールを開発・提供していく「ユーティリティ政党」としての機能を果たすことを目指しています。
「1%の革命」と名付けられた今回の挑戦では、比例区を含め10名以上の候補者を擁立し、有効投票数の2%(約120万票)獲得による国政政党化を目標としています。また、ゲーミフィケーションプラットフォームを活用したボランティア募集や、マニフェスト作成への国民参加型アプローチなど、従来の政党にはない新しい活動方針も示されました。
質疑応答では、既存プロジェクトとの整合性や他政党との関係、デジタルトランスフォーメーションの推進方法、目指す国家像など多岐にわたる質問に対し、安野氏は「テクノロジーはあくまでツール」としながらも、「スタートアップ政党」として既存の政治構造に新陳代謝をもたらす可能性を強調されました。
テクノロジーの専門家が国政に挑戦するという前例のない試みは、日本の政治に新たな風を吹き込む可能性を秘めています。