※本記事は、2025年1月6日(月)17:00(現地時間)/1月7日(火)10:00(日本時間)に米国・ラスベガスおよびデジタルで開催された「CES 2025」におけるソニーグループのプレスカンファレンスの内容を基に作成されています。 プレスカンファレンスでは、ソニーグループの長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」に基づく、クリエイターとの協働による革新的技術開発、コンテンツIP価値最大化の取り組み、スポーツエンタテインメントとモビリティ分野における最新事例が紹介されました。 本記事では、プレスカンファレンスの内容を要約・構造化しておりますが、詳細な情報や正確な文脈については、ソニーグループ公式サイトや関連資料をご参照ください。 なお、本記事の内容は筆者の解釈を含んでおり、ソニーグループの公式見解と異なる可能性があることをご了承ください。
1. イントロダクション
1.1 十時裕樹氏による開会挨拶
十時裕樹(ソニーグループ代表取締役社長 COO兼CFO):本日、CES 2025に参加できることを光栄に思います。ソニーが境界を超えて進めている様々な取り組みについてお話しできることを大変嬉しく思います。ここ数年、「感動」を世界に広めたいという私たちの想いを皆様にお伝えしてきました。感動は、幸せを広げ、感嘆を呼び起こし、コミュニティを創り上げます。
クリエイティブエンタテインメントカンパニーである私たちのPurpose(存在意義)は「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」ことです。人と人を結びつけ、心を動かす新しいアイデアを実現したいと考えています。このPurposeは、ソニーの全ての活動の原動力であり、後ほどお話しするCreative Entertainment Visionの中心に据えるものでもあります。
クリエイターやコミュニティとともに新たな領域を開拓する中で、想像力と好奇心こそが私たちを突き動かしています。映画やテレビ、アニメで魅力的なエンタテインメントを生み出し、卓越した才能をもつミュージシャンとコラボレーションをして彼らの作品を更に広げ、同時に、仮想空間での可能性を模索しています。
また、「Game of the Year」を受賞した『アストロボット』、『FINAL FANTASY VII REBIRTH』、『The Last of Us Part II Remastered』など、70以上の対応タイトルが加わったPS5 Proなど、最高クラスのゲーム体験を提供しています。PS5 Proの機能に対応するタイトルは今後も追加予定です。
エンタテインメントのコンテンツ自体でなく、次の分野にも注力しています。ミュージシャンからゲームデザイナーをはじめ、物語を紡ぐ全てのクリエイティブな才能を持つ人々を支援し、彼らの夢を後押しすること。例えば、アニメ制作スタジオと共同開発中のソフトウェア「AnimeCanvas」のように、クリエイターがより自由に新しいストーリーを生み出すためのツールを開発することです。そしてそのストーリーを体験する方法や場所を進化させ、クリエイターとファンが現実世界でも仮想世界でも集える新しい空間を創出することに力を入れています。
この開会の挨拶を通じて、ソニーが技術とクリエイティビティの融合により、エンタテインメントの新しい可能性を追求していることを強調し、続くプレゼンテーションへの期待を高めることができたと考えています。
1.2 ソニーのPurpose(存在意義)の説明
十時裕樹(ソニーグループ代表取締役社長 COO兼CFO):私たちは、エンタテインメントのコンテンツ作りに留まらず、より広い視野で活動を展開しています。特に注力しているのは、ミュージシャンからゲームデザイナーまで、物語を紡ぐ全てのクリエイティブな才能を持つ人々への支援です。彼らの夢を後押しし、より自由な創造活動を可能にするためのツール開発に取り組んでいます。
その一例が、アニメ制作スタジオと共同開発中のソフトウェア「AnimeCanvas」です。このツールは、クリエイターがより自由に新しいストーリーを生み出すことを可能にします。また、物語を体験する方法や場所も進化させ、クリエイターとファンが現実世界でも仮想世界でも集える新しい空間の創出を目指しています。
ゲーム分野では、「Game of the Year」を受賞した『アストロボット』をはじめ、『FINAL FANTASY VII REBIRTH』、『The Last of Us Part II Remastered』など、70以上の対応タイトルが加わったPS5 Proを通じて、最高クラスのゲーム体験を提供しています。PS5 Proの機能に対応するタイトルは今後も続々と追加される予定です。
私たちのPurposeは、単なる企業理念ではありません。クリエイターとファンをつなぎ、新しい体験を創造し、感動を共有する。このビジョンは、Creative Entertainment Visionの核心であり、ソニーグループ全体の活動を導く原動力となっています。クリエイターやコミュニティとともに新たな領域を開拓する中で、想像力と好奇心こそが私たちを突き動かしているのです。
2. スポーツエンタテインメントの進化
2.1 NFLとの協力関係
十時裕樹(ソニーグループ代表取締役社長 COO兼CFO):スポーツエンタテインメントとテクノロジーの分野における新たな可能性について、ソニー・エレクトロニクス プレジデント兼COOのニール・マノウィッツと、世界屈指のスポーツエンタテインメント組織であるナショナル・フットボール・リーグのコミッショナー、ロジャー・グッデル氏にお話を伺いたいと思います。
ニール・マノウィッツ(ソニー・エレクトロニクス プレジデント兼COO):NFLとソニーは、長年にわたって緊密に協働してきました。NFLの放映パートナーは何十年にもわたりソニーの放送用カメラを使用しており、直近のスーパーボウルでは、160台以上のソニー製のカメラがその模様をお届けしました。また、ソニーグループのHawk-Eyeは、NFLの試合の審判判定をサポートし、効率的な試合運営に貢献してきました。さらに、NFLの公式画像を配信するAP通信は2020年からデジタル一眼カメラ「α」を全面的に使用しています。
ロジャー・グッデル(NFLコミッショナー):その通りですね。私たちはまた、ファンエンゲージメントを強化し、新たな視聴者層を開拓するための新しい方法も模索しています。その実現に向けた最も注目すべき取り組みの一つが、NFLのNext Gen Statsとソニーのグループ会社であるBeyond SportsとHawk-Eye Innovationsのテクノロジーを活用したリアルタイムアニメーション放送の制作です。このコラボレーションは、従来のスポーツ中継の概念を一新する革新的な試みとなっています。
ニール・マノウィッツ:このような長年の協力関係を基盤に、私たちは常に新しい技術やサービスの開発に取り組んできました。特に、Next Gen Statsとの連携は、スポーツ観戦の未来を切り開く重要な取り組みだと考えています。今後も、NFLとの協力関係をさらに深め、より革新的なスポーツエンタテインメント体験を提供していきたいと考えています。
2.2 アニメーション放送技術の革新
ニール・マノウィッツ(ソニー・エレクトロニクス プレジデント兼COO):2023年に初めて配信されたNFLの番組『Toy Story Funday Football』は、スポーツエンタテインメントの新しい形を示す画期的な取り組みでした。ソニーのチームは、NFLとDisney及びESPNと協力し、NFLの試合をトイ・ストーリーの世界でリアルタイムに再現することに成功しました。この番組は、今もDisneyで最大の視聴者数を誇る生中継イベントとなり、スポーツ・エミー賞の3部門で受賞するという成果を上げています。
ロジャー・グッデル(NFLコミッショナー):この成功を受けて、私たちは先月、ディズニーと再び手を組み、『The Simpsons Funday Football』という新たな番組を配信しました。ESPN+及びDisney+で世界中に配信されたシンシナティ・ベンガルズ対ダラス・カウボーイズの試合を、シンプソンズの世界観でアニメーション化することに成功しました。
ニール・マノウィッツ:この革新的な技術について補足させていただきます。私たちのシミュレーションはすべてポジショントラッキングデータに基づいており、Hawk-Eyeとの緊密な連携が不可欠です。バーチャルでのシミュレーションにより、どのようなIPとも組み合わせることが可能になりました。これはまさにビデオゲームのような新しいタイプの制作手法であり、より幅広いオーディエンスの開拓につながっています。
ロジャー・グッデル:その通りです。次世代のファンは従来のような方法ではスポーツを観戦しません。彼らはよりインタラクティブで、パーソナライズされたコンテンツを求めています。このアニメーション放送技術は、そうしたニーズに応える重要な革新だと考えています。NFLとソニーの協働により、今後さらに多様な展開が期待できると確信しています。
2.3 新型コーチ用ヘッドセットの発表
ニール・マノウィッツ(ソニー・エレクトロニクス プレジデント兼COO):競技場では、選手、コーチ、スタッフに最高のツールを提供する方法を常に模索しています。コーチ間のコミュニケーションは試合において最も重要な要素の一つであり、フィールドでの結果に大きな影響を与える可能性があります。今日は、NFLと共同開発中の新しいコーチ用ヘッドセットのプロトタイプをご紹介します。
このヘッドセットは、業界をリードするノイズキャンセリング機能と圧倒的な音質が特徴で、Verizon 5Gネットワークを通じて通信を行います。2025年シーズンでの導入を予定しています。
ロジャー・グッデル(NFLコミッショナー):このヘッドセットが実際に使用されるのが待ち遠しいですね。ソニーとの協働と、それがNFLの将来にもたらす可能性を大いに期待しています。特に、試合の重要な局面での迅速かつ正確なコミュニケーションが可能になることで、ゲームの質が向上すると確信しています。
ニール・マノウィッツ:NFLと協働できることを光栄に思います。このヘッドセットの開発は、スポーツテクノロジーにおける私たちの取り組みの一例に過ぎません。今後も、競技現場のニーズに応える革新的な製品を提供し続けていきたいと考えています。
この新型ヘッドセットは、スタジアムの喧騒の中でも明瞭なコミュニケーションを実現し、Verizon 5Gネットワークの活用により、低遅延かつ安定した通信を確保します。これにより、NFLのゲーム運営の効率性と質の向上に貢献できると確信しています。
3. モビリティの革新:AFEELA
3.1 AFEELA 1の紹介
十時裕樹(ソニーグループ代表取締役社長 COO兼CFO):AFEELAは、人とつながり、楽しませ、感動をもたらす全く新しい移動体験を創り出す、モビリティにおける革新的な一歩です。このワクワクするような進化について、ソニー・ホンダモビリティのCEO 水野泰秀さんから詳しくお話しいただきたいと思います。
水野泰秀(ソニー・ホンダモビリティ CEO):CES2023でのプロトタイプお披露目から2年も経たないうちに、今日はAFEELAのほぼ最終版をお見せすることができます。これも、私たちの多様なパートナー、クリエイター、開発者、メディア、そして何よりもすべての関係者の皆様の支えなしには実現できなかったことです。心より感謝申し上げます。
こちらがAFEELA 1です。人々とモビリティの関係を再定義するという私たちのビジョンを体現した初の製品です。今日は、初回予約の開始に関するお知らせや主要な機能や仕様に関するアップデートを皆様に共有できることを大変嬉しく思います。
この音声によるリモート運転は今回のショーケースのための技術モデルですが、ご覧のとおり、自動運転は、例えばステアリング、加速、ブレーキといったルーティンタスクを減らすために欠かせない要素です。モビリティを創造的なエンタテインメント空間にするために重要な役割を果たすのです。これこそが、私たちが目指すAFEELAの本質的な価値提案なのです。
3.2 AFEELAインテリジェントドライブの特徴
水野泰秀(ソニー・ホンダモビリティ CEO):目的地を設定すると、AFEELAのADASがシームレスなエンド・ツー・エンドの運転サポートを提供します。このone-tap ADASを、私たちは「AFEELAインテリジェントドライブ」と呼んでいます。800TOPSの演算能力と40個のセンサーを搭載したAFEELAのAI認識システムは、周囲の環境を正確に認識します。そして、そのAIプランナーは最適な運転計画を作成します。
ドライバーは、ADASの状況や周囲の状況をリアルタイムで分かりやすいビジュアルを通して確認することができます。「AFEELAインテリジェントドライブ」を起動すると、お客様はAFEELA 1とコミュニケーションを取ることでエンタテインメントを楽しむことができます。
これを実現するための鍵は「AFEELAパーソナルエージェント」です。私たちのエージェントは会話に重点を置くため、車両の設定を管理するだけでなく、積極的に会話を行い、お客様のニーズに基づいた有益な情報を提供することで、移動時間を最大限に活用できるようサポートします。
私たちは、全体のUIをシンプルで使いやすく、美しくデザインしました。ADASビュー、マップ、ホームUIなど、様々なビジュアライゼーションにおいてUnreal Engineをフル活用しています。エンタテインメントパートナーの強力なサポートのおかげで、現在利用可能なアプリのセレクションも充実しており、その数は今も増え続けています。
3.3 価格と予約開始の発表
水野泰秀(ソニー・ホンダモビリティ CEO):では、最も期待されているニュースに移りましょう。ついにAFEELA 1の予約受付が始まります。この製品はOriginトリムが8万9900ドルのスターティングプライスで提供され、Signatureトリムが10万2900ドルで提供されます。両トリムともに、価格には特定の機能と装備に対して3年間の無料サブスクリプションが含まれています。
このプレスカンファレンスの後から予約受付を開始します。全ての予約は公式ウェブサイトを通じてオンラインで受け付けております。予約金200ドルは全額返金可能です。ここラスベガスにお越しの皆様が昨晩負けた額よりもお安いですね。もちろん、それも返金可能ですが、当初はカリフォルニア州の住民に限定して予約を受け付け、今後、他の州へ拡大を順次進めてまいります。
明日は、私たちソニー・ホンダモビリティのブースでプレスカンファレンスを行います。そこで、製品やサービスネットワークに関する詳細をお伝えする予定です。ぜひ、皆様にお越しいただきたいと思います。AFEELAは、ワクワクする驚きに溢れた未来へと向かっています。
4. クリエイティブエンタテインメントの展望
4.1 クリエイター支援の取り組み
スカウト・イーズリー:世の中はたくさんの音楽であふれています。日々新曲がどんどんリリースされています。その中で存在感を示すには作品に強い個性を持たせる必要があります。私たちが見つけたい物語の紡ぎ手、本当に伝えたい想いを伝えたい人の、そのとても具体的でパーソナルな、そして同時に普遍的な物語です。
クリスティーン・ベルソン:私たちが情熱を注ぐのは、アーティストにツールやテクノロジーを提供し、彼らの思い描くビジョンを実現してもらうことです。アニメーションほど強く共創が求められるメディアはありません。それはクリエイターが技術者と、ストーリーテラーがアーティストとともにテクノロジーをツールとして活用し、自らの創造性を引き出す機会です。
ミッシェル・グレーディー:ソニーのソングライターキャンプはアーティストにとって素晴らしい機会です。創造性を育み、新たな出会いを生み出します。ここからどのようなつながりや曲が生まれていくのか見るのは本当にワクワクします。私がLENSプログラムの価値を実感するのは、その意義だけでなく実際に生み出してきた機会を目の当たりにするからです。次世代の映画製作者たちに業界トップのアーティストと共に作品を制作したり、最高のツール、テクノロジーを作品づくりにいかしたり、さまざまな機会を提供しています。このプログラムでは収益や達成すべき指標はありません。純粋に創造的な試みなのです。
ベルソン:今は技術の進歩により、映画製作者やクリエイターが思い描く物語の世界をより柔軟に伝えることができるようになってきました。作品づくりがかつてないほどしやすくなっています。以前は、アニメ映画を制作する際には多くの制約がありました。しかし、新しいツールやテクノロジーの登場により、多くの制約が取り除かれました。
グレーディー:これからの映画制作は、共創の機会が増え、より革新的なものになっていくでしょう。そして、さまざまなストーリーテラーが独自の視点を持ち込むことで、ますます豊かな作風が見られるようになるでしょう。
イーズリー:人々が自分の音楽に全力を注ぐのをいつもそばで見ているので、これからもそうやって音楽が紡ぎだされていくことにとてもワクワクしています。今後も感動がうまれる現場に携わっていきたいです。クリエイティビティが私たちのビジネスの道しるべです。今も私たちのビジネスの中心にあるのはクリエイティビティで、これからもずっとそうです。
4.2 PXO AKIRAの発表
ジョニー・スロー(Pixomondo CEO):Pixomondoは最先端のテクノロジーと卓越した表現力を融合させることで、ワークフローの効率化・品質の向上を実現し、映画製作者を支援しています。私たちは説得力のある移動体シーンの撮影がいかに大変か理解しています。現行手法は、高コスト・複雑で天候に左右され安全上の懸念もあり、創造性を妨げています。そこでPXOのイノベーションラボは、革新的なツールを開発してこうした課題の解決を目指しました。
総力を挙げた開発と検証の成果である究極の移動体撮影システム「PXO AKIRA」は、5つの革新的な要素から成り立っています。まず、独自設計のモーションプラットフォームは、自動車から宇宙船まであらゆる移動体に対応でき、360度回転が可能で、LEDパネル内で再現された仮想空間とリアルタイムで同期してリアリスティックな移動体の動きを実現します。
次に、プログラム可能なロボットカメラは、高精度・柔軟性と移動体の全方向からのカメラワークの完璧な再現性を実現しています。また、Unreal Engineベースのプリビジュアライゼーション・プラットフォームは、プリプロダクション工程でスタジオの完璧なデジタルツインを構築し、現場での最終的な撮影へビジュアル・アセットをスムーズに移行できるようにします。
さらに、ドライビングシミュレーターにより、撮影開始前にドライバーが仮想空間で走行ルートをテストし改良できるようにしています。最後に、拡張性の高い3Dコンテンツライブラリにより、実写・仮想空間を問わず3Dの背景を無限にダイナミックかつ即座に作り出すことができます。
LEDスタジオのコンテンツと組み合わせると、PXO AKIRAはカメラの動きとモーションプラットフォームとが完璧に同期した最高クオリティのインカメラVFXを実現し、ポストプロダクションの時間と複雑さを大幅に減らします。ソニーブースの入口付近へお越しいただき、仮想とリアルの制作工程の融合をぜひご覧ください。
4.3 XYN空間キャプチャーソリューションの紹介
山村タイザ(ソニー・エレクトロニクス XR事業開発 統括責任者):ソニーは、3DCGの制作と質の向上にも貢献し、効率的で円滑な制作フローを実現してきました。そして本日、より幅広いクリエイター向けに展開する新たな3DCG制作ソリューション「XYN」(ジン)を発表します。XYNは、ソフトウェアとハードウェアが統合されたソリューションで、映画、ゲーム、メタバースなどのクリエイターが現実世界を驚くほどに忠実に捉え、作品の中で再現することを可能にします。
開発中のXYN空間キャプチャーソリューションは、ミラーレスカメラで撮影した画像を使用して実在する物体や空間を高品質な3D CGアセットに変換します。ソニー独自のアルゴリズムを使って簡単な操作で生成時間を最適化します。新アプリ「XYN Motion Studio」では、クリエイターがモーションデータを簡単に編集でき、「トゥイーニング」機能により複数のモーションデータ間をシームレスに補間できます。さらにモバイルモーションキャプチャ mocopiの12個のセンサーとの接続により、モーションキャプチャの精度が向上しました。また、「XYN Headset」も開発中です。このヘッドセットは3D表現と直感的な操作性により、空間コンテンツ制作のワークフローを効率化します。
イオティス・カサンバス(ソニー・ピクチャーズ アニメーション テクノロジー担当Vice President):アニメーション映画の制作における最大の挑戦は、魅力的で視覚的に美しいストーリーを作り上げることです。ほとんどの場合、私たちは2Dから絵を描いた後、3Dに移行します。私たちは、アーティストがこれらの環境や3DCGアセットをできるだけ簡単に探索し微調整できるツールを常に探しています。
私たちは、mocopiのチームとは長い間一緒に仕事をしてきました。このたび、XYN Motion Studioとmocopi 12個のセンサーモードを発表できたことを大変うれしく思います。早い段階でアイデアを検討するのにとても役立っています。mocopiは簡単に装着でき、数分でアクションをキャプチャすることで、プリビズや参考用に使用できます。自社開発のFlixiverseをソニーのヘッドマウントディスプレイのプロトタイプに接続しました。まず画質が素晴らしいのです。ヘッドマウントディスプレイで3Dの制作環境を見て膝をついてアップショットを撮ると、まるで実写映画のように撮影することができ、非常に印象的な体験でした。
山村タイザ:XYNはあらゆる面で空間コンテンツをサポートし、さらに多くのデジタルコンテンツクリエーションツールとの互換性も備えており、一貫した制作環境を実現します。ソニーは、今後もクリエイターに革新的なソリューションを提供していきます。
5. アニメビジネスの展開
5.1 『鬼滅の刃』の世界展開
岩上敦宏(アニプレックス執行役員社長):アニプレックスでは、オリジナルIPやサードパーティのマンガ、小説のアニメ化作品の開発や制作をしています。21年の歴史の中で350以上の作品を制作してきました。そのうちの一つ、2019年に公開されたアニメ作品が歴史的な大ヒットになりました。それが『鬼滅の刃』です。
集英社『週刊少年ジャンプ』連載の吾峠呼世晴による漫画を原作とした『鬼滅の刃』は、主人公・竈門炭治郎の物語を描いた美しい作画や感情豊かなストーリーで視聴者を魅了してきました。炭治郎は家族を殺された復讐を果たし、妹を人間に戻すために鬼殺隊に入隊します。このシリーズはアニメスタジオufotableが作り出す迫力のあるハイクオリティーな映像も高く評価されて、数々の賞を受賞しました。
ラウール・プリニ(クランチロール プレジデント):その成功を受けて2020年に公開された劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』は日本国内で歴代1位の興行収入を記録しました。その後、アメリカで公開され初週末興行成績1位を獲得し、さらに、45以上の国と地域で劇場公開がされました。
岩上敦宏:3シーズン分のテレビアニメを経て、今年、『劇場版 鬼滅の刃 無限城編』三部作の1作目が全世界で劇場公開されます。物語は、炭治郎たち鬼滅隊士と鬼舞辻無惨をはじめとした強力な鬼たちとの無限城での最終決戦を描きます。三部作では、アニメーション技術の限界に挑戦したさらに緊迫感あふれるストーリーと息をのむようなビジュアルが見どころです。
ラウール・プリニ:アニプレックスは、グループ会社のソニー・ピクチャーズとクランチロールと連携し、この映画を世界中のポップカルチャーファンに届けます。私たちは、心待ちにしている世界中の何百万人ものファンに劇場版『鬼滅の刃』無限城編三部作をお届けするのを楽しみにしています。
5.2 クランチロールの戦略
ラウール・プリニ(クランチロール プレジデント):アニメに興味を持つ人が10億人に迫る中、そのストーリーやキャラクター、世界観はアニメらしさを失わず、ファンとのユニークなつながりを保っています。私たちはアニメがポップカルチャーに与える影響は今後も増大し続けると確信しています。
アニメについて、知っておくべき重要なことが3つあります。まず、アニメはジャンルではなく媒体です。アニメの中にはロマンス、コメディ、SFなどのよく知られたジャンルが数多くある一方、アニメ特有のジャンルも含まれています。次に、アニメはエンタテインメントの中で最も急速に成長している分野の1つです。日本と中国以外の地域の市場規模として、アニメ関心層は合計で2030年までに15億人になると予想しています。そして、アニメはサブコミュニティとのより深いつながりやリアルで斬新なストーリーを求めている多様なZ世代やα世代のより若い視聴者に深く共感されるため、今後も人気であり続けるでしょう。
岩上敦宏(アニプレックス執行役員社長):クランチロールはファンダムとその情熱を高めるビジネスを展開しています。その強みは、さまざま体験を360度から提供する点にあります。
ラウール・プリニ:ストリーミングを中心にしながら、映画、イベント、ゲーム、eコマース、音楽、フィギュアやおもちゃなどの他のファンとの接点も強化しています。我々のストリーミングサービスは1500万の会員にご利用頂いており、世界クラスです。最大級の専用ライブラリを誇り、12以上の言語と字幕吹き替えをサポートし、ゲームコンソールやスマートテレビ、モバイル端末、エンタテインメントプラットフォームなど20以上のプラットフォーム向けに作品を配信しています。
このように、私たちは単なるコンテンツ配信プラットフォームではなく、アニメファンのためのグローバルなエンタテインメントエコシステムを構築しています。アニメの持つ可能性を最大限に引き出し、世界中のファンに新しい体験を提供し続けていきます。
5.3 新規アニメプロジェクトの発表
ラウール・プリニ(クランチロール プレジデント):まず、いくつかのプロジェクトに関するエキサイティングなニュースをお伝えします。アニプレックスとの連携による『俺だけレベルアップな件 Season 2』が土曜日に初公開されました。最初のシーズンはすでに私たちのサービス上で2024年に最も視聴されたアニメですが、第2シーズンも大変好調なスタートをきりました。
さらに、ゲームとアニメはともにファンにとって特別な存在であり、ここでクランチロールとアニプレックスがプレイステーションの人気ゲーム『Ghost of Tsushima』をベースにしたテレビアニメシリーズの制作を発表できることを嬉しく思います。
岩上敦宏(アニプレックス執行役員社長):この発表は、私たちがいかにゲームIPとアニメの融合に力を入れているかを示す良い例です。『Ghost of Tsushima』のような深い物語性を持つゲームは、アニメ化に最適なコンテンツだと考えています。
ラウール・プリニ:そして最後に、クランチロールは日本の数多くの出版社と協力し、今年後半より、会員の皆様向けに電子コミックサービスを提供します。これにより、アニメファンはより包括的なコンテンツ体験を楽しむことができるようになります。アニメへの冒険に皆さんを連れて行けることを楽しみにしています。
これらの新規プロジェクトは、私たちのプラットフォームをさらに豊かにし、アニメファンのエンゲージメントを高めていくことでしょう。アニメ、ゲーム、マンガの垣根を越えた展開により、より多様で魅力的なコンテンツ体験を提供していきます。
6. ソニー・ピクチャーズの戦略
6.1 PlayStation Productionsの展開
ラヴィ・アフジャ(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 社長兼CEO):私はまさに本日、正式にソニー・ピクチャーズのCEOに就任し、ソニーのグローバルなエンタテインメントとイノベーションの素晴らしいエコシステムと輝かしい歴史に大いに刺激を受けています。視聴者はかつてないほど多様な形でコンテンツに触れられるようになっており、これは私たちにとって非常にエキサイティングな状況です。
アサド・キジルバッシュ(PlayStation Productions 統括責任者):PlayStation Productionsでは、PlayStation Studiosが生み出す感動的なストーリーテリングと没入感のあるゲーム体験を活かすとともに、ソニー・ピクチャーズと連携のうえ、そのDNAを映画やテレビ番組、アニメーションに昇華させ、大小さまざまなスクリーンにおいて命を吹き込んでいます。
アシュリー・ブルックス(Screen Gems プレジデント):ソニー・ピクチャーズでは、全世界の興行収入が4億ドルを超えた『アンチャーテッド』や『グランツーリスモ』などの映画、高評価を受けるとともに数々の賞に輝いた『The Last of Us』、『Twisted Metal』などのテレビシリーズを通じて、ゲームの持つパワフルなストーリーをさらに拡張してファンを魅了するとともに、新しい視聴者に生き生きとした世界を紹介することに成功しています。
アサド・キジルバッシュ:PlayStation Productionsによるゲーム作品の映像化は始まったばかりです。そして今後についてですが、ソニー・ピクチャーズとともにPlayStationで大人気のゲーム『Helldivers 2』の映画化に着手したことをお知らせします!我々は、ゲームの持つ魅力を最大限に活かしながら、新たな視聴者層にも訴求できる作品作りを目指していきます。
6.2 『Until Dawn』映画化プロジェクト
アシュリー・ブルックス(Screen Gems プレジデント):今年4月25日に公開される『Until Dawn』は、PlayStationのホラーゲームを映画化する初の試みですが、Screen Gemsプレジデントとしてこの作品に取り組めることを楽しみにしています。こうしたゲームの映像作品化を成功させるための鍵はただ一つ、それは原作を尊重することです。
PlayStation Productionsとの緊密な協力関係により、私たちと映画制作者には、ゲームのクリエイターと直接作業できるという利点があります。ゲームとその体験に関してファンが愛するものを特定して取り入れることと、新たな観客を惹きつけるために新鮮でエキサイティングなものを提供することとのバランスを、慎重に取っています。
監督のデビッド・F・サンドバーグがこのゲームの大ファンであり、ゲームの素晴らしい要素を抽出したうえで、ファンにとって最も重要な要素と考えられるものを選択し、正しい形で原作に敬意を表した作品となっています。そして私たちは、友人グループがさまざまな恐ろしい脅威に直面するという基本設定のもと、『Until Dawn』の世界観を構築し、本能的に恐ろしいと感じるような新たなストーリーを作りました。
ピーター・ストーメア(俳優):「UNTIL DAWN」に原作の素晴らしく恐ろしいホラーゲームから参加できたことは幸運でした。ゲーム内でドクター・ヒルの声を担当し、今回この映画にも出演できることにとてもワクワクしています。この作品全体がホラーへのラブレターであり、原作ゲームの精神を尊重したものになっています。映画には新たなキャラクターや犠牲者が多く加わり、ひねりの効いた全く新しいストーリーが展開されますので、長年のファンの方も、初めての方も、これまでにない「UNTIL DAWN」にご期待ください。
6.3 『Horizon』シリーズの展開
アサド・キジルバッシュ(PlayStation Productions 統括責任者):ゲーム分野における数多くのコンテンツ制作を通じて、私たちは創造的そして文化的な影響力を高めることができます。新しいカテゴリーやジャンルへと広がる可能性に満ちたIPのひとつがHorizonです。直近では、その世界にインスパイアされ、すべてがLEGOの要素で作られた遊び心満載のストーリーを楽しめる『LEGO® ホライゾン アドベンチャー™』を11月に発売しました。
mxmtoon(アーティスト):本作の主題歌として『post-post apocalyptic dance party』を制作できたことを嬉しく思います。ゲームへの情熱を曲作りに活かして、ゲームの主題歌をつくるのは本当に楽しかったです。いちゲームファンとしてHorizonの世界にずっと親しんできたので、曲作りではHorizonシリーズのいろんな要素にたくさん影響を受けました。主題歌のミュージックビデオを作ることを知ったときはとってもワクワクしました。この曲自体、まさにアニメーションでミュージックビデオを作りたくなるようなものだったので、それが実現できたらなと夢見ていたんです。
アサド・キジルバッシュ:このビデオは、Unreal Engineで制作されたゲームのアセットを活用して制作したもので、ゲームからアニメーションへとHorizonの世界をさらに広げています。そして今日は、Horizonに関係するプロジェクトとしてもうひとつ、発表したいことがあります。コロンビア・ピクチャーズとPlayStation Productionsは、数々の受賞歴を誇る『Horizon Zero Dawn』の映画化に向け、制作を開始しました。機械獣が闊歩する遠い未来の世界で活躍するアーロイの物語を映画館のスクリーンにお届けします。
mxmtoon:ソニーが、そのゲームや物語世界を本当に愛するファンとの共創に積極的なのはとても嬉しいですね。今回その仲間になれたのにワクワクしていますし、これからもぜひコラボレーションできればと思います。
6.4 『The Last of Us』新展開の発表
ニール・ドラックマン(Naughty Dog スタジオヘッド):10年以上前の発売以来、『The Last of Us』がこれほどまでに愛されていることに圧倒されています。常に新しいエンタテインメントの形を探求し、各フランチャイズからどのように特別な物語体験を創出できるのかを考えている私たちは、ここCESの会場で新たなロケーションベースの体験展示をご紹介できることに興奮しています。
来場者の皆さんは『The Last of Us』の世界に入り込み、インフェクテッドがうごめくシアトルのトンネルの中へと足を踏みいれることができます。このすばらしい新技術はまだ概念実証の段階ですが、あらゆる感覚を通じて、かつてない体験をうみだし、『The Last of Us』の世界へとあなたを誘います。
そして、『The Last of Us』といえば多くの方がHBOの実写ドラマのシーズン2を楽しみにされていることでしょう。ここでワクワクするお知らせです。『The Last of Us』シーズン2がこの4月よりHBOから公開され、MAXで配信されることをお知らせします!
Naughty Dogとソニーから今後もたくさんのニュースをお届けする予定です。私たちは、単なるゲームやドラマシリーズを超えて、ファンがより深く作品世界に没入できる新しい体験の創造に挑戦し続けていきます。このロケーションベース体験展示は、その第一歩に過ぎません。
7. Creative Entertainment Visionのまとめ
7.1 未来のエンタテインメントビジョン
十時裕樹(ソニーグループ代表取締役社長 COO兼CFO):私たちは、感動を創り、クリエイターを支援することに注目していると先ほどお話ししました。クリエイティビティへの情熱を持つ組織として、未来がもたらす可能性を探求する中で、私たちは本質的な問いに向き合いました。10年後の「感動」はどのようなものになるのだろうか?
ソニーグループ各社から、また、グループを越えてクリエイティブな人材が集まり、この重要な問いについて議論しました。そのねらいは、人々の生活に感動をさらに届けていけるような、より共創的な未来をデザインすることでした。Creative Entertainment Visionにおいては、クリエイティビティとテクノロジーのシナジーを生み出していきます。
私たちは、未来はワクワクする世界になると信じています。クリエイティビティとテクノロジーのレンズを通して描く世界は、物理的な現実と仮想現実が境界なく重なり合う、さらに多層的な体験をもたらすでしょう。このビジョンを実現するために、私たちはクリエイターとの強固な関係の構築を継続しています。ソニーはこれからも、人々の創造力を刺激し、無限の感動を生み出していきます。
7.2 技術とクリエイティビティの融合
十時裕樹(ソニーグループ代表取締役社長 COO兼CFO):エンタテインメントのコンテンツ自体でなく、次の分野にも注力しています。ミュージシャンからゲームデザイナーをはじめ、物語を紡ぐ全てのクリエイティブな才能を持つ人々を支援し、彼らの夢を後押しすること。アニメ制作スタジオと共同開発中のソフトウェア「AnimeCanvas」のように、クリエイターがより自由に新しいストーリーを生み出すためのツールを開発すること。そしてそのストーリーを体験する方法や場所を進化させ、クリエイターとファンが現実世界でも仮想世界でも集える新しい空間を創出することです。
このビジョンの実現に向けては、クリエイター、パートナー、そしてソニーの社員を含む仲間と共に取り組んでいきます。私たちは、新しい物語に命を吹き込むことでクリエイティビティを高めること、愛される物語の世界を結びつけ拡大すること、そしてIPをユニークで魅力的な体験に拡張することを目指しています。
これがソニーのCreative Entertainment Visionです。ソニーはこれからも、人々の創造力を刺激し、無限の感動を生み出していきます。