※本記事は、AWS re:Invent 2024で発表されたグルポ・ボチカリオのAI活用によるeコマースアクセシビリティ向上の取り組みについてのセッション「Grupo Boticário's AI-accessibility journey for inclusive e-commerce (IDE202)」の内容を基に作成されています。 このセッションではブラジルの大手美容企業グルポ・ボチカリオが、Amazon BedrokとAnthropic Claude 3 Sonnetモデルを活用して製品画像の詳細な代替テキスト生成を自動化し、視覚障害ユーザーの体験を革新的に向上させた事例が紹介されています。
本記事では、セッションの内容を要約しておりますが、原著作者の見解を正確に反映するよう努めています。より詳細な情報については、オリジナルの動画(https://www.youtube.com/watch?v=9JZ8ZGfmEjg )をご覧いただくことをお勧めいたします。
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1. イントロダクション
1.1. プレゼンテーションの概要とスピーカーの紹介
Caio Monteiro: 皆さん、ようこそ。このセッションでは、Boticárioのインクルーシブなeコマース顧客体験に焦点を当てたAIアクセシビリティの取り組みをご紹介します。私はAWSのプリンシパルCSMを務めるCaio Monteiroです。本日は同僚のThiago、Leonardo、Williamとともに、Grupo Boticárioがどのように意図的にもう一つの顧客体験に感性をもたらしたのかというジャーニーについて説明します。
このプレゼンテーションでは、まずインクルージョンが重要である理由、生成AIがどのように我々の体験を支援するか、Grupo Boticárioがどのような企業であるか、具体的にどのような課題を解決したのか、そして最終的にその結果について詳しく見ていきます。私たちの目標は、AIとクラウドテクノロジーを活用してデジタル体験をよりインクルーシブにした実際の事例を皆さんと共有することです。
Thiago Couto: こんにちは。私はAWSのプリンシパルソリューションアーキテクトのThiago Coutoです。この発表では、私たちがテクノロジーをどのように活用して人々の生活を変え、特に障害を持つ方々のデジタル体験を向上させたかを共有します。
Leonardo: 皆さん、こんにちは。私はLeonardoと申します。見えない方のために自己紹介しますと、私は黒い髪の白人男性で、黒いTシャツ、青いパンツ、黒いスニーカーを履いています。身長は5フィート9インチ、38歳です。今日はGrupo Boticárioの会社概要と、私たちがどのようにインクルージョンを製品開発の中心に据えているかをお話しします。
William: こんにちは。私はWilliamです。私も見えない方のために自己紹介します。私は茶色の肌の男性で、身長5フィート10インチ、灰色の髪とあごひげがあります。今日はグレーと黒のカンファレンスパーカーと青いジーンズを着ています。Grupo Boticárioで9年間プリンシパルエンジニアとして働いており、今日はAmazon BedrockとAnthropicのClaude 3モデルを使って、どのようにeコマースプラットフォームをより多くの人々にアクセシブルにしたかを具体的に説明します。
Caio Monteiro: それでは、インクルージョンの重要性から始めましょう。ここでは、世界の障害者人口の現状、様々なグループの顧客体験における期待、そしてデジタルジャーニーでインクルーシブであることの難しさについて掘り下げていきます。その後、生成AIがどのようにこれらの課題を解決するのに役立つのかを見ていきましょう。
1.2. アジェンダの説明
Caio Monteiro: それでは、本日のアジェンダを簡単に説明します。まず、インクルージョンがなぜ重要なのかについて議論します。世界の障害者人口の統計から始め、インクルージョンがビジネスにもたらす具体的な利益について掘り下げていきます。
次に、生成AIがどのように私たちのジャーニーを支援できるのかを説明します。Thiagoが技術的な側面から、AIがどのようにスケーラビリティの課題を解決し、パーソナライズされた体験を大規模に提供できるようにするかを紹介します。
その後、Leonardoが登壇し、Grupo Boticárioの概要を説明します。彼らがブラジルの美容・小売業界でどのような位置づけにあるのか、そして彼らの企業としての価値観や戦略についての文脈を提供します。
Williamは、具体的に私たちが解決している課題―視覚障害者向けのeコマース体験の改善―に焦点を当てます。Amazon BedrockとAnthropicのClaude 3 Sonnetモデルを使用して、どのように製品画像の代替テキスト生成を自動化したかを技術的詳細とともに説明します。
最後に、この取り組みの結果と社会全体にとっての意義を振り返ります。内部検索の改善、SEOの向上、これまでに生成された画像説明の数など、具体的な成果について詳しく見ていきます。
これらのトピックを通じて、私たちは単なる技術的なソリューションの話ではなく、インクルージョンと多様性に対する意図的な取り組みが、よりアクセシブルでインクルーシブなデジタルエコシステムの構築にどのようにつながるかを示したいと思います。
皆さん、このセッションを通じて、自社のデジタル製品やサービスをよりインクルーシブにするためのインスピレーションを得ていただければ幸いです。では、早速インクルージョンの重要性について詳しく見ていきましょう。
2. インクルージョンの重要性
2.1. 世界の障害者人口の統計(16%、約13億人)
Caio Monteiro: ここで少し背景を説明したいと思います。世界保健機関(WHO)のデータによると、世界人口の16%が何らかの重大な障害を経験しています。これは約13億人に相当します。ざっと計算すると、私たちの6人に1人が何らかの障害を持っているということになります。
これは非常に重要な数字です。なぜなら、この統計はあらゆる種類の障害を含んでいるからです。私たちが提供するサービスやプロダクトを設計する際に、この大きな人口セグメントが利用できるかどうかを考慮することが不可欠なのです。
障害者にとって、物理的な体験や物理的なジャーニーが困難であることは明らかですが、デジタル顧客体験においては、意図的にインクルーシブであることを意識しなければ、さらに困難になります。デジタル空間では、アクセシビリティの課題が見過ごされがちなのです。
私たちは誰かが排除されるとどういう意味を持つのかについてはよく知っています。もし一人の人が不十分なサービスを受けたり、適切に対応されなかったりすると、その人は5〜10人にその悪い経験を伝え、そのビジネスとの関わりを断つでしょう。しかし、インクルージョンが何を意味し、それがビジネスにどのような利益をもたらすかについての研究はあまり多くありません。
Thiago Couto: そうですね、Caio。そして特にZ世代やミレニアル世代では、さらに悪い行動パターンが見られます。調査によると、Z世代やミレニアル世代の3分の1は、自分に近い誰かが悪い経験をした場合、たとえ自分自身が直接経験していなくても、そのブランドを避けるようになるそうです。これは企業にとって、意図的にインクルーシブであることがさらに重要になっていることを示しています。
Caio Monteiro: まさにその通りです。私たちが直面している課題は、単に障害者を配慮するというだけでなく、すべての顧客が歓迎され、価値を感じ、招かれていると感じるような体験を創出することなのです。これは物理的な店舗では難しいことですが、デジタル空間ではさらに意識的な努力が必要になります。今日のプレゼンテーションでは、特に視覚障害者のためのデジタル体験の改善に焦点を当てていきます。
2.2. 物理的体験とデジタル体験におけるインクルージョンの課題
Caio Monteiro: 物理的な経験やジャーニーにおいてインクルーシブであることは容易ではありません。しかし、デジタル顧客体験になると、意図的に取り組まなければさらに困難になります。物理的な店舗では、スタッフが顧客の特定のニーズに気づき、その場で対応できることがあります。一方、デジタル体験では、私たちが事前に設計した通りのものしか提供できません。設計段階でアクセシビリティを考慮していなければ、後から修正することは非常に難しいのです。
Thiago Couto: その通りです。デジタル体験は本質的にプログラムされたものであり、想定されていないユースケースに対応することが難しいんです。例えば、画像認識技術を活用したAIアシスタントが、視覚障害を持つユーザーにとっては完全に役に立たないということがあります。デジタルプラットフォームを設計する際には、多様なユーザーを考慮し、あらゆる人がアクセスできるようにする必要があります。
William: デジタル体験におけるインクルージョンの難しさを実感したのは、私がGrupo Boticárioのeコマースプラットフォームを担当し始めた頃でした。スクリーンリーダーを使用するユーザーがどのように私たちのサイトを体験しているかをテストしたとき、製品画像の説明がただ製品名を繰り返すだけで、実際の製品の外観や特徴についての情報がまったく伝わっていなかったのです。これは大きな機会損失でした。
Caio Monteiro: そうですね。排除がビジネスに与える影響についてはよく知られています。一人の顧客が不十分なサービスを受けた場合、その人は5〜10人にその悪い経験を伝え、そのビジネスとは関わらなくなります。しかし、インクルージョンがもたらす利益についての研究はまだ少ないのです。インクルーシブな体験を提供することで、私たちは新しい顧客セグメントにリーチできるだけでなく、すべての顧客に対してより良い体験を提供できます。
Leonardo: 私たちはGrupo Boticárioで、物理的な製品とデジタル体験の両方でインクルージョンを追求しています。上肢障害を持つ人々のためのアダプティブアクセサリーを開発するのと同様に、デジタル体験もすべての人にアクセシブルであるべきだと考えています。問題は、どのようにしてこれらの課題をスケーラブルな方法で解決するかということです。ここで生成AIの出番となります。
Thiago Couto: まさにその通りです。AIが解決できる課題の一つが、インクルーシブな体験をスケールすることです。カスタマイズされた個別の体験を一人一人に提供することは理論的には可能ですが、何百万もの顧客にそれを提供することは従来の方法では不可能でした。生成AIはこの問題に対する解決策を提供します。
2.3. 世代間の違い(Z世代とミレニアル世代の行動)
Caio Monteiro: インクルージョンの重要性を語る上で、世代間の違いについても触れておきたいと思います。特にZ世代とミレニアル世代の行動パターンは、ビジネスにとって重要な意味を持っています。従来の消費者行動では、自分自身が悪いサービスを経験した場合に、その企業との関係を断つ傾向がありました。しかし、現在の若い世代ではさらに厳しい行動が見られます。
調査によると、Z世代とミレニアル世代の約3分の1は、自分自身ではなく、自分に近い人が何らかの悪い体験をした場合でも、その企業との関係を断つという選択をします。これは非常に重要なポイントです。彼らは自分の友人や家族が排除されたと感じた企業からは、自分自身も距離を置くのです。
Thiago Couto: そうですね、Caio。これは企業にとって大きな影響を持つ変化です。若い世代はソーシャルメディアを通じて経験を共有し、企業の評判はかつてないほど速く広がります。一人の顧客が悪い体験をすると、その影響は何倍にも拡大される可能性があるのです。
Leonardo: Grupo Boticárioでは、この傾向を非常に真剣に受け止めています。私たちは若い消費者が企業の価値観や社会的責任に敏感であることを認識しています。そのため、単に魅力的な製品を提供するだけでなく、すべての顧客がインクルーシブな体験ができるよう努めています。
William: 技術者の視点から見ると、この世代間の違いはデジタルプラットフォームの設計にも影響を与えています。若い世代はデジタル体験に対する期待値が高く、アクセシビリティの問題にも敏感です。ソーシャルメディア上で私たちのEコマースサイトについて不満が共有されれば、その影響は一人の顧客をはるかに超えて広がります。
Caio Monteiro: まさにその通りです。だからこそ、インクルージョンは単なる社会的責任ではなく、ビジネス戦略の重要な要素になっているのです。特にZ世代とミレニアル世代が市場での影響力を増す中、すべての顧客が歓迎され、価値を感じられる体験を提供することが、ブランドロイヤルティを構築する上で不可欠になっています。
次に、小売業におけるインクルージョンの具体的な期待について見ていきましょう。異なるグループの顧客は、どのような体験を求めているのでしょうか。
2.4. 小売業におけるインクルージョンの期待
Caio Monteiro: ここで、小売業におけるインクルージョンの期待について具体的に掘り下げてみましょう。私たちが実施した調査によると、異なるグループ―アジア系、黒人、ラテン系、白人、LGBTQAI+、そして障害者を含む様々な顧客層―には共通の期待があることがわかりました。
テーブルで示したデータからは一目瞭然ですが、すべてのグループに共通するのは次の3つの期待です。彼らはどんな顧客体験においても「歓迎されたい」「価値を感じたい」「招かれていると感じたい」と望んでいます。これは物理的な店舗でも難しいことですが、デジタル体験ではさらに意識的な設計が必要になります。
Leonardo: その通りです。Grupo Boticárioでは、この研究結果を真摯に受け止めています。顧客が単に製品を購入するだけでなく、私たちとの関わりを通じて価値を感じられることが重要です。特に障害を持つコミュニティにとっては、企業の目的が自分たちの目的と一致していることが重要です。彼らは自分たちの課題が理解され、考慮されていると感じたいのです。
Thiago Couto: 興味深いポイントですね。この研究から、インクルーシブな顧客サービスとインクルーシブな製品提供の両方が重要であることがわかります。特に障害者コミュニティにとっては、企業の目的に共感できることが購買決定において重要な要素になっています。
William: 技術者の観点からすると、これはデジタルプラットフォームの設計に大きな示唆を与えます。例えば、私たちのEコマースサイトでは、製品が視覚的にどのように見えるかという情報が視覚障害者に伝わっていませんでした。彼らは製品の特徴や色、形状などの情報にアクセスできず、他の顧客と同じ購買体験ができていなかったのです。
Caio Monteiro: まさにその点が本日の主題です。特にブラジルでは、約600万人が何らかの視覚障害を持っており、そのうち約5,000人が全盲です。米国ではさらに多く、約700万人が視覚障害または失明に苦しんでいます。これは無視できない規模の顧客層です。
Leonardo: Grupo Boticárioでは、このような理解に基づいて、多様性と包括性の要素を取り入れた製品開発に力を入れています。現在、私たちの製品発売の63%が何らかの多様性とインクルージョンの要素を取り入れており、2030年までにはさらに高い割合を目指しています。顧客が私たちの製品を使用する際、人種、肌の色、障害の有無に関わらず、すべての人が同様の価値と満足を得られることが重要だと考えています。
これから、生成AIがどのようにしてこれらの課題解決に貢献できるのかを見ていきましょう。
3. ブラジルの視覚障害者の状況
3.1. ブラジルにおける視覚障害の統計(600万人)
Caio Monteiro: ここでは、私たちが今回特に焦点を当てている視覚障害について、ブラジルの状況を具体的に見ていきましょう。ブラジルには約600万人が何らかの視覚障害を抱えています。この600万人のうち、大部分は弱視の方々で、完全な失明状態にある方は約5,000人です。これは決して少ない数字ではありません。
Thiago Couto: 600万人というのは、ブラジルの人口の約3%に相当します。これだけの潜在顧客がいるにもかかわらず、多くの企業はこの市場セグメントを十分に考慮していません。特にデジタル体験においては、視覚障害者が取り残されがちです。
Leonardo: Grupo Boticárioとして、この600万人の視覚障害を持つブラジル人が私たちの製品や体験から排除されることがないよう、意識的に取り組んでいます。美容製品は非常に視覚的なものであり、色や形状、パッケージデザインなどが購買決定に大きく影響します。視覚障害者がこれらの情報にアクセスできないことは、彼らが他の顧客と同等の購買体験を得られないことを意味します。
William: 技術的な観点から言うと、600万人という数字は無視できないユーザーベースです。私たちのEコマースプラットフォームでは、月間数百万人のユニークビジターがあります。単純な計算でも、数万人の視覚障害者が私たちのサイトを訪問している可能性があります。彼らに適切な体験を提供できていないことは、ビジネス機会の損失であるだけでなく、インクルージョンの観点からも大きな課題です。
Caio Monteiro: その通りです。また、ブラジルの視覚障害者の状況は、グローバルな文脈でも考える必要があります。次のセクションでは、米国の状況と比較してみましょう。米国では、より多くの人々が視覚障害を持っており、このような取り組みがますます重要になっていることがわかります。
3.2. 米国の視覚障害の比較データ(700万人)
Caio Monteiro: ブラジルの統計を米国と比較してみると、さらに状況の重要性が明確になります。米国では約700万人が視覚障害や失明に苦しんでいます。これはブラジルの600万人よりもさらに多い数字です。
Thiago Couto: この比較は興味深いですね。米国の人口がブラジルより多いことを考慮しても、視覚障害者の絶対数が多いということは、グローバル企業として活動する上で非常に重要な情報です。Grupo Boticárioは米国でもeコマースを展開していますから、これらの市場でもインクルーシブな体験を提供する必要があります。
Leonardo: その通りです。Grupo Boticárioはブラジルを中心にしていますが、グローバルなプレゼンスも持っています。米国にもオフィスがあり、eコマースを通じて製品を提供しています。700万人という数字は、米国市場でも視覚障害者向けのアクセシビリティに注力する必要性を示しています。
William: 技術的な観点からすると、異なる国や地域でアクセシビリティのソリューションを実装する際に考慮すべき点があります。例えば、スクリーンリーダーのソフトウェアやアクセシビリティのガイドラインは国によって異なる場合があります。また、言語の違いもあるため、画像の代替テキストを生成する際には多言語対応も考慮する必要があります。
Caio Monteiro: まさにその通りです。これらの統計データは、インクルーシブなデジタル体験の提供が単なる社会的責任ではなく、ビジネス上の大きな機会でもあることを示しています。合計で1,300万人以上の視覚障害者がブラジルと米国に存在し、彼らはすべて潜在的な顧客です。彼らに適切な体験を提供することは、新たな顧客セグメントを開拓することにつながります。
次に、Thiagoから人類の技術的発展と生成AIがどのように人々の生活を変革する可能性があるかについての話を聞きましょう。
4. 人類と技術の進化
4.1. 印刷技術から生成AIまでの技術革新
Thiago Couto: 皆さん、私たちが今日直面している問題と、それを解決するために活用できるテクノロジーについて考えてみましょう。朝起きたとき、「印刷技術に感謝」などと考えることはないと思います。私たちは人類がこれまでに達成した技術的マイルストーンについて、日常的に意識することはほとんどありません。
例えば、印刷技術を考えてみてください。また、電気、パーソナルコンピューティング、スマートフォン、特にインターネット、クラウドコンピューティングなど、私たちが今日享受している技術革新を考えてみてください。これらすべての革新が、今日私たちが生きている世界を形作っています。
特にクラウドコンピューティングは、一般の人々が問題について考え、解決策を思いつき、それを実装して本番環境に投入し、人々とビジネスを支援することを可能にしました。通常、私たちはこれについて考えませんが、今日私たちが経験していること、そして皆さんが他のセッションですでに聞いたかもしれないように、AIと生成AIは問題解決に役立つ可能性を秘めています。
Leonardo: それは非常に興味深い視点ですね、Thiago。Grupo Boticárioでも、テクノロジーの進化とともに私たちのビジネスも進化してきました。1977年に1つの薬局として始まった私たちは、今では14のブランドを持つグローバル企業になりました。この成長と変革は、テクノロジーの進化なしには不可能だったでしょう。
William: 技術者として、私はこの進化の加速度に常に驚かされます。特にAIの分野では、過去数年間で驚異的な進歩を遂げました。私がGrupo Boticárioで働き始めた9年前には、今日私たちが実装しているような高度な画像認識と生成AIのソリューションは、SF小説の領域でした。
Caio Monteiro: その通りです。技術の進化は人類の歴史を通じて絶えず加速しています。そして今、私たちは生成AIという新たな変革的技術に直面しています。次のセクションでは、この技術がどのように人々の生活を変える可能性があるのかを探っていきましょう。
Thiago Couto: 確かに、通常私たちはビジネスの変革について考えますが、今日は人々の問題を解決する方法について考えてみましょう。ビジネスの成功は重要ですが、その背後には常に人間がいます。生成AIの真の可能性は、人々の生活を真に改善できることにあると思います。
4.2. クラウドコンピューティングの民主化
Thiago Couto: クラウドコンピューティングの登場は、技術革新の歴史において重要な転換点となりました。以前は、新しいアイデアを実現するためには、高価なハードウェア、専門的な知識、そして多額の初期投資が必要でした。しかし、クラウドコンピューティングはそれを根本的に変えたのです。
通常、私たちは朝起きて「クラウドコンピューティングに感謝」などとは考えませんが、この技術は民主化の観点から革命的でした。なぜなら、普通の人々、一般の人々が問題について考え、解決策を思いつき、それを実装して本番環境に投入し、人々とビジネスを支援することを可能にしたからです。
Caio Monteiro: Thiagoの言う通りです。クラウドが革命的だったのは、テクノロジーを民主化し、誰もがアイデアを実現できるようにしたことです。Grupo Boticárioのような企業でさえ、10年前には今日のようなテクノロジー活用は想像できなかったでしょう。
William: 実際、私がGrupo Boticárioで働き始めた9年前は、インフラストラクチャの制約が常に存在していました。新しいアイデアを試すためには、ハードウェアの調達、設定、維持に数週間から数ヶ月かかることもありました。しかし今日では、AWSのようなクラウドサービスを使えば、数分でリソースをプロビジョニングし、新しいアイデアを試すことができます。これは私たちがAIのような最先端技術を採用する上で非常に重要でした。
Leonardo: クラウドコンピューティングの民主化は、Grupo Boticárioのような企業にとって、イノベーションの加速につながりました。私たちは47年の歴史を持つ企業ですが、クラウドテクノロジーのおかげで、スタートアップのような俊敏性を維持しながら、大企業としてのスケールメリットを活かすことができています。今回のAIアクセシビリティプロジェクトも、クラウドがなければ実現不可能だったでしょう。
Thiago Couto: そして今、私たちは生成AIという新しい技術革新の波の中にいます。クラウドコンピューティングが計算リソースを民主化したように、生成AIは知的作業を民主化する可能性を秘めています。例えば、専門的な画像認識の知識がなくても、APIを呼び出すだけで高度な画像解析と記述が可能になります。これは技術者だけでなく、様々な背景を持つ人々がAIの力を活用できることを意味します。
Caio Monteiro: まさにその通りです。この技術の民主化が、今日私たちが話すAIアクセシビリティの取り組みの基盤となっています。次に、AIがどのように人々の生活を変える可能性があるのかについて詳しく見ていきましょう。
5. AIが人生を変える可能性
5.1. 生成AIのビジネス応用とソーシャルインパクト
Thiago Couto: 生成AIについて議論するとき、多くの場合はビジネスの問題や機会に焦点が当てられます。おそらく皆さんは他のセッションで、amazon.comの販売者を支援する「Rufusプラットフォームアシスタント」について聞いたことがあるでしょう。これは製品をより効果的に登録し、販売パフォーマンスを向上させるのに役立ちます。他にも様々な優れたユースケースがありますが、通常は人生を変えるという観点ではなく、ビジネスを変革するという観点から考えられています。
しかし、私たちは今日、ビジネスではなく人々の問題解決について考えたいと思います。取引の反対側には常に人間がいることを忘れてはなりません。昨日の基調講演でも、生成AIを活用して新薬開発のための粒子とタンパク質の接続を研究している薬局のケースが紹介されました。これは特定の疾患に対する新薬の研究や、より良い医薬品の生産方法を探るためのものです。
William: それは素晴らしい例ですね。技術者として、AIが単なるビジネスツールを超えて、人々の生活に直接影響を与える可能性に興奮しています。私たちのプロジェクトでは、視覚障害者がEコマースサイトで製品をより良く理解できるよう支援することで、彼らの生活の質を向上させることを目指しています。
Caio Monteiro: そうですね。そしてAIの人生を変える可能性は医療の分野でも見られます。例えば、先週Hopperという企業がLLMモデルをリリースし、医療従事者が病気の診断をより迅速に行えるよう支援しています。
Thiago Couto: その通りです。基本的に、X線画像などをアップロードしてLLMとチャットすることで、「これはおそらくこのタイプの病気です」という診断を得ることができます。これにより患者はより良い体験、より迅速な体験を得ることができ、最終的には命を救うことにもつながります。
Leonardo: Grupo Boticárioでは、AIが製品開発から顧客体験まで様々な領域で人々の生活を向上させる可能性を見ています。例えば、私たちが開発したスマートリップスティックは、AIを活用して視覚障害者が自分で化粧品を使用できるようにしています。これは単なる便利さを超え、自信と自立をもたらすものです。
Thiago Couto: まさにその通りです。今日私たちがここで話し合っているのは、生成AIが人々を助け、問題に対処し、人生を変えるという可能性についてです。次のセクションでは、生成AIの主な用途について詳しく見ていきましょう。
5.2. ホッパー社のLLMによる医療診断の例
Thiago Couto: 先週、興味深い発表がありました。Hopper社が大規模言語モデル(LLM)を活用して、医療従事者の診断をサポートするシステムをリリースしたのです。このシステムの素晴らしい点は、単に技術的な革新というだけでなく、実際に人命を救う可能性があることです。
このシステムでは、例えばX線画像をアップロードして、AIとチャットすることができます。AIは「これはおそらくこのタイプの疾患です」といった診断を提供し、患者により良い体験、より迅速な体験を提供します。診断の遅れが命取りになるような状況では、こうしたスピードの向上は文字通り命を救うことになるのです。
Caio Monteiro: その例は、AIが単なるビジネスツールを超えて、実際に人々の生活に直接影響を与える可能性を示していますね。医療診断の迅速化と精度向上は、特に医療リソースが限られている地域では非常に価値があります。
Leonardo: 美容と健康の企業として、Grupo Boticárioでも同様の可能性を模索しています。例えば、皮膚科関連の製品について、顧客の肌質や状態に基づいた適切な製品推奨ができれば、より効果的な体験を提供できるでしょう。もちろん、医療アドバイスとは一線を画する必要がありますが、パーソナライズされたアドバイスの可能性は大きいと考えています。
William: 技術的な観点からは、これらのシステムの背後にある課題も理解する必要があります。例えば、医療画像の分析には高い精度が求められ、誤診のリスクを最小限に抑える必要があります。私たちのEコマースでの画像認識プロジェクトでも同様の課題がありましたが、視覚障害者向けの情報提供では、情報の欠如よりも不正確な情報の方が問題になり得ます。
Thiago Couto: まさにその通りです。これらのAIシステムが人々の生活を変える可能性を持つ一方で、適切に設計、実装、検証する必要があります。Hopper社の例は、一般的なLLMから特定の医療用途に特化したモデルへの進化を示しています。同様に、私たちもAmazon BedrockとClaude 3 Sonnetを使用して、Eコマースにおけるアクセシビリティという特定の課題に取り組んでいます。
次のセクションでは、生成AIの主な用途について詳しく見ていきましょう。生成AIは創造、生産性向上、洞察の抽出、そして新しい体験の創出など、様々な領域で価値を提供しています。
6. 生成AIの主な用途
6.1. クリエイティブコンテンツの作成
Thiago Couto: 生成AIの最も顕著な用途の一つが、クリエイティブコンテンツの作成です。企業がキャンペーンを考え、ターゲットオーディエンスをより深く理解し、そのオーディエンスが興味を持つようなコンテンツを制作する場合に、生成AIは大きな力を発揮します。
例えば、従来のマーケティングキャンペーンを考えてみましょう。特定の顧客層向けのカスタマイズされたクリエイティブを作成するためには、写真家を雇い、場所をレンタルし、シナリオを設定し、その特定のキャンペーンを生成する必要がありました。しかし、これには大きな課題があります。スケールできないのです。Caioのために個別の体験を作ることはできても、Williamのためにもできるかもしれませんが、このホール全体の観客や全re:Invent参加者全員には対応できません。
Leonardo: その通りです。Grupo Boticárioでは、14のブランドと数百の製品があり、すべての製品について魅力的でパーソナライズされたコンテンツを従来の方法で作成することは現実的ではありません。生成AIを活用することで、基本的なテンプレートから始めて、様々な顧客セグメント向けにカスタマイズされたバリエーションを作成できるようになりました。
William: 技術的な観点からは、生成AIのクリエイティブ能力はプロンプトエンジニアリングの質に大きく依存します。例えば、私たちのEコマースプロジェクトでは、製品画像の代替テキストを生成するためのプロンプトの開発に何度も反復が必要でした。最初は単純なプロンプトから始めましたが、フィードバックに基づいて改良を重ね、現在ではより詳細で正確な説明を生成できるようになっています。
Caio Monteiro: クリエイティブコンテンツの生成において重要なのは、単に量を増やすことではなく、インクルーシブで多様な視点を取り入れることです。例えば、製品の視覚的特徴を言語で説明することは、視覚障害者だけでなく、すべての顧客にとってより豊かな体験を提供することにつながります。
Thiago Couto: このスライドで犬の写真の例を挙げていますが、これは生成AIの能力を示す良い例です。犬の品種、年齢、都市、公園、言語、季節などの情報を組み合わせることで、様々なバリエーションを生成できます。たとえば秋のある公園にいる特定の犬種の画像を作成し、それを他の犬種、他の場所、他の季節にも拡張できるのです。
今日私たちが取り組んでいるGrupo Boticárioのユースケースでも、同様の原理が適用されています。製品画像から始めて、その視覚的特徴を詳細に記述し、視覚障害を持つ顧客にも製品のイメージを伝えることができるようになりました。
次に、生成AIがどのように生産性を向上させるかについて見ていきましょう。
6.2. 生産性の向上
Thiago Couto: 生成AIの二つ目の重要な用途は、生産性の向上です。私たちが開発者として、より迅速かつ効率的にアプリケーションやプラットフォームを開発し、人々のニーズに適応し、より適切な方法で利用できるようにするために生成AIを活用できるのです。
例えば、Amazon Q Developerのようなツールを使用すると、開発者はコーディングの速度を向上させ、繰り返し作業を減らし、より創造的な問題解決に集中することができます。これはただ速く開発するというだけでなく、品質も向上させることができるのです。
William: 実際に私たちのプロジェクトでも、生産性の向上は大きなメリットでした。以前は製品画像の代替テキストを手動で書いていましたが、1つの画像につき20〜30分かかることもありました。製品ごとに複数の画像があることを考えると、これは非常に時間のかかるプロセスでした。Amazon BedrockとClaude 3 Sonnetモデルを使用することで、このプロセスを大幅に効率化し、より多くの製品をアクセシブルにすることができました。
Leonardo: 生産性の向上はビジネス面でも大きな影響があります。Grupo Boticárioでは、年間数千の新製品を発売します。すべての製品画像に対して手動で詳細な説明を書くことは、単に時間の問題だけでなく、コストの面でも大きな課題でした。AIを活用することで、リソースをより効果的に配分し、インクルーシブな体験の提供を大幅にスケールアップすることができました。
Caio Monteiro: また、生産性の向上は単に時間を節約するだけでなく、品質の向上にもつながります。手動のプロセスでは疲労や一貫性の欠如が問題になることがありますが、AIを活用することで、一貫した高品質の説明を生成できます。
Thiago Couto: その通りです。生成AIを活用することで、開発者やコンテンツクリエイターは反復的なタスクから解放され、より創造的で価値の高い作業に集中できるようになります。例えば、製品説明の基本的な部分をAIが生成し、人間はその上に専門知識や感情的な要素を加えることができます。これは人間の創造性とAIの効率性を組み合わせた理想的な協働モデルと言えるでしょう。
William: 技術的な観点からは、私たちが使用しているClaudeモデルは非常に効率的です。APIリクエストを送信してから詳細な製品説明を受け取るまで、わずか数秒しかかかりません。これにより、製品管理者はリアルタイムでフィードバックを提供し、必要に応じて説明を調整することができます。生産性の向上と品質の向上が同時に達成されているのです。
生成AIの次の重要な用途は、洞察の抽出です。データから意味のあるパターンや情報を引き出す能力について見ていきましょう。
6.3. 洞察の抽出
Thiago Couto: 生成AIの三つ目の重要な用途は、洞察の抽出です。人口動態や行動パターンを分析して、そこから意味を理解するという観点から考えてみましょう。例えば、顧客のクリック行動を観察し、それが何を意味するのかを理解することができます。これにより、プラットフォームの改善方法や顧客とのインタラクション方法を向上させることができます。
William: Grupo Boticárioでは、この能力が非常に価値あるものとなっています。例えば、私たちのEコマースプラットフォームで視覚障害者がどのようにサイトを操作しているかを理解するために、スクリーンリーダーの使用パターンを分析しました。その結果、製品画像の代替テキストが単に製品名を繰り返すだけでは、ユーザー体験を大きく損なっていることが分かりました。
Caio Monteiro: そのような洞察は、単なるアクセシビリティの問題を超えて、すべての顧客にとってより良い体験を創出するために役立ちます。例えば、製品の視覚的特徴をより詳細に説明することで、検索エンジン最適化(SEO)も向上し、すべての顧客がより簡単に製品を見つけられるようになります。
Leonardo: その通りです。私たちは市場調査データから、顧客が製品の外観、触感、香りに基づいて購入決定を行っていることを知っていました。しかし、視覚障害者はこれらの情報の一部にアクセスできないという洞察が、このプロジェクトの出発点となりました。生成AIを活用することで、これらの感覚的な情報を言語で伝えることができるようになりました。
Thiago Couto: 洞察の抽出はAIの力を活用する重要な方法です。データから単に情報を収集するだけでなく、それを分析して意味のあるパターンを見つけ出し、行動につながる洞察に変換することができます。例えば、顧客が特定の製品カテゴリーをどのように検索しているかを理解することで、より良い製品説明やナビゲーション体験を設計することができます。
William: 技術的な観点からは、生成AIと従来の分析ツールを組み合わせることで、より強力な洞察が得られます。例えば、Elastic Searchのログを分析して、視覚障害者が最も頻繁に検索する用語を特定し、その情報を使って画像の代替テキスト生成のプロンプトを改良しました。これにより、スクリーンリーダーユーザーのための検索体験が大幅に向上しました。
Caio Monteiro: 洞察の抽出は継続的な改善プロセスの一部でもあります。ユーザーからのフィードバックと行動データを分析することで、AIモデルのパラメータを調整し、より適切な説明を生成できるようになります。これは単なる一度きりのプロジェクトではなく、常に進化し続ける取り組みです。
Thiago Couto: 次に、生成AIの四つ目の重要な用途である「新しい体験の創出」について見ていきましょう。これは特に今日のテーマであるインクルーシブなEコマース体験の創出に直接関連しています。
6.4. 新しい体験の創出
Thiago Couto: 生成AIの四つ目の重要な用途は、新しい体験の創出です。創造性について話しましたが、ここでは顧客をより深く理解し、よりインクルーシブで適応的な新しい体験を創出するという観点に焦点を当てています。今日このセッションで私たちが話し合っている理由もこれです。
顧客や特定の問題に対してよりよく適応するような新しい体験を、どのように創出できるでしょうか。例えば、私たちが今日紹介しているGrupo Boticárioのケースでは、視覚障害者向けに全く新しいEコマース体験を創出しています。これまで彼らは製品の視覚的特徴にアクセスできず、限られた情報だけで購買決定を行わなければなりませんでした。
William: そのとおりです。私たちのプロジェクトでは、視覚障害者が製品の色、形状、パッケージデザイン、使用されている材料など、以前はアクセスできなかった情報を得られるような体験を創出しています。例えば、「赤い丸い香水ボトル」を探しているときに、その情報が製品名や標準的な説明には含まれていなくても、検索結果に表示されるようになりました。
Leonardo: この新しい体験の創出は、ビジネスの観点からも大きな価値があります。視覚障害者は600万人という大きな顧客セグメントであり、彼らに適切な体験を提供することで、新たな市場を開拓できます。さらに、製品の視覚的特徴の詳細な説明は、視覚障害者だけでなく、すべての顧客にとって有益です。
Caio Monteiro: また、新しい体験の創出は企業の社会的責任とも直接結びついています。Grupo Boticárioのように、すべての人に価値を提供するというミッションを持つ企業にとって、インクルーシブな体験を提供することは単なる利益追求を超えた価値があります。
Thiago Couto: まさにその通りです。新しい体験の創出は、テクノロジーが人々の生活を向上させる最も強力な方法の一つです。生成AIによって、以前は技術的に不可能だったり、コスト的に非現実的だったりした体験が可能になっています。
例えば、過去には各製品画像に対して人間が詳細な説明を書く必要がありましたが、それは時間とリソースの制約によりスケールできませんでした。生成AIを活用することで、何千もの製品画像に詳細な説明を提供し、視覚障害者にとってより豊かなショッピング体験を創出することができるようになりました。
William: 技術的な観点からは、この新しい体験の創出には継続的な改善が必要です。私たちは単純なプロンプトから始め、フィードバックに基づいて改良を重ねました。また、モデルのパラメータ(例えば「温度」設定)を調整して、より事実に基づいた説明を生成するようにしました。この継続的な最適化が、真に変革的な体験を創出するために不可欠だったのです。
Caio Monteiro: 次に、生成AIを活用する際の大きな課題の一つであるスケーラビリティについて詳しく見ていきましょう。
7. スケーラビリティの課題と解決策
7.1. パーソナライズされた体験のスケーリングの難しさ
Thiago Couto: 生成AIが解決できる大きな課題の一つが、パーソナライズされた体験をスケールすることの難しさです。AIが登場する前の世界では、どのような問題があったのでしょうか。例えば、マーケティングキャンペーンを考えてみましょう。個人向けにカスタマイズされた体験をCaioのために作ることができます。写真家を雇い、場所をレンタルして、シナリオを設定し、Caioのための特別なキャンペーンを生成することが可能です。
しかし、ここに大きな問題があります。スケールできないのです。Caioのためには可能かもしれませんし、おそらくWilliamのためにもできるでしょう。しかし、このホールの観客全員や、すべてのre:Invent参加者に対しては不可能です。このスケーラビリティの課題が、私たちが解決しようとしている問題です。生成AIは今日、これを可能にしました。
William: 具体的な例として、私たちのEコマースプラットフォームには何千もの製品があり、各製品に複数の画像があります。すべての画像に対して手動で詳細な説明を書くことは、単に人的リソースが足りないという理由で実現不可能でした。
Leonardo: Grupo Boticárioでは年間を通じて約2000の新製品を発売しています。各製品には平均で3〜5枚の画像があり、すべての画像に対して人間が詳細な説明を書いていたら、それだけで何人ものフルタイムの従業員が必要になります。コスト的にも時間的にも非現実的です。
Caio Monteiro: そして、単にリソースの問題だけではありません。人間が書く説明の質と一貫性も課題です。疲労や知識の差により、同じ製品カテゴリー内でも説明の質にばらつきが生じる可能性があります。
Thiago Couto: その通りです。従来の方法では、質の高いパーソナライズされた体験を大規模に提供することは困難でした。生成AIはこの課題に対するソリューションを提供します。次のセクションでは、そのソリューションについて具体的に見ていきましょう。
7.2. 生成AIによるカスタマイズのスケーリング(犬の写真の例)
Thiago Couto: 生成AIがどのようにスケーラビリティの課題を解決するかを説明するために、具体的な例を見てみましょう。このスライドには犬の写真があります。これは公園にいる犬の写真です。私も犬を飼っていますが、この例を使って、生成AIによるカスタマイズのスケーリングについて説明します。
この写真に対して、犬の品種、年齢、都市、公園の場所、言語、そして季節といった情報を組み合わせることができます。例えば「秋」といった情報です。そして、これらの要素を組み合わせることで、他の犬種、他の場所、他の季節など、様々なバリエーションを大規模に生成することができるのです。
William: これはまさに私たちがGrupo Boticárioのプロジェクトで行っていることと同じアプローチです。製品画像を入力として、AI(Claude 3 Sonnet)にその視覚的特徴を詳細に記述してもらいます。単一のプロンプトを使って、何千もの異なる製品画像に対して高品質な説明を生成することができるのです。
Leonardo: このアプローチの素晴らしい点は、ビジネスプロセスとの統合が比較的容易なことです。新製品が発売される際には、まず製品の写真撮影が行われます。その後、画像が私たちのシステムにアップロードされると同時に、自動的にAIに送信され、詳細な説明が生成されます。人間のレビュアーがその説明を確認し、必要に応じて調整した後、Eコマースサイトに公開されます。この全プロセスは、以前の手動プロセスと比較して10分の1の時間で完了します。
Caio Monteiro: そして重要なのは、AIが単に時間を節約するだけでなく、品質も向上させることです。AIは製品画像に含まれるすべての視覚的詳細を見逃すことなく記述できます。人間が行う場合、疲労や時間的制約により重要な詳細を見落とすことがあります。
Thiago Couto: まさにその通りです。生成AIの本当の価値は、パーソナライズされた高品質な体験を大規模に提供できることにあります。ここでのゴールは、インクルーシブで個別化された体験を生成し、スケールすることです。今日私たちが紹介しているGrupo Boticárioの取り組みも、まさにこれを実現しています。
William: 技術的な観点からは、このスケーラビリティを実現するための鍵はAPI統合の簡易さにあります。Amazon Bedrockを通じてClaude 3 Sonnetモデルを呼び出すことで、既存のワークフローに簡単に統合できました。これにより、技術的な障壁を最小限に抑えながら、AIの力を活用することができたのです。
Thiago Couto: 生成AIでスケーラビリティの課題を解決する方法について理解できたところで、次にAWSにおける生成AI実装方法について詳しく見ていきましょう。
8. AWSにおける生成AI実装方法
8.1. インフラストラクチャ層
Thiago Couto: ここで、実際にAWS上で生成AIを実装する方法について説明しましょう。まず、昨日は多くの新製品が発表されたため、このスライドの情報は少し古くなっていますが、基本的な考え方は変わりません。AWSを使って生成AIをビジネスに活用し、社会を支援し、アイデアを本番環境に実装する方法を見ていきましょう。
一番下の層はインフラストラクチャに焦点を当てています。ここではあまり技術的な話はしませんが、基本的にはインフラストラクチャに関するものです。新しいアイデアや新しいアルゴリズムがある場合、この層を見て、GPUやAWSのインフラストラクチャ層を使用してアルゴリズムを強化し実行することを検討するでしょう。
William: これは私たちのプロジェクトの初期段階で重要な考慮事項でした。生成AIモデルを自社で開発するか、それともAWSが提供するマネージドサービスを利用するかという選択肢がありました。モデル開発のためのインフラストラクチャを構築することは、特に初期段階では非常に複雑であり、GPUリソースの調達と管理だけでも大きな課題です。
Leonardo: ビジネスの観点からすると、生成AIの早期採用者として、私たちはリスクを最小限に抑えたいと考えていました。インフラストラクチャ層で自社開発することは、技術的な専門知識とリソースの両方を要求します。Grupo Boticárioは美容会社であり、AIインフラストラクチャ企業ではないので、この層での開発は私たちの強みではありませんでした。
Caio Monteiro: その通りです。インフラストラクチャ層は、主に生成AIの研究開発に焦点を当てている組織や、非常に特殊なユースケースを持つ企業に適しています。多くの企業にとって、より高いレベルの抽象化を提供するサービスの方が適切です。
Thiago Couto: まさにその通りです。この層は主に、自分自身のモデルやアルゴリズムを開発したい企業や研究機関向けです。例えば、特定の業界や用途に特化した独自のモデルを開発する場合、この層から始めることになるでしょう。しかし、多くの企業にとっては、次に説明するプラットフォーム層の方が適しています。
8.2. プラットフォーム層(Amazon Bedrock)
Thiago Couto: 真ん中の層は、より多くの企業に関連するプラットフォーム層です。ここではAmazon Bedrockを中心としたサービスについて説明します。これは最初は1つのサービスから始まりましたが、現在では複数のサービスに進化し、急速に拡大しています。このプラットフォーム層は、特定のユーザー層を対象としています。
プラットフォームについて考えるとき、あなたが開発者であり、生成AIやAI自体のモデルやアルゴリズムについてはあまり知らないけれど、APIを呼び出す方法を知っていて、プラットフォームに問題があり、生成AIと統合したいと考えている場合、これはまさにプラットフォーム層が対象としているユーザー層です。
William: 私たちのプロジェクトでは、まさにこのプラットフォーム層のアプローチを採用しました。Grupo Boticárioの開発チームは、モデルの微調整やトレーニングの専門家ではありませんでしたが、APIを呼び出してレスポンスを処理することに長けていました。Amazon Bedrockは、複雑さを抽象化し、APIという親しみやすいインターフェースを通じて強力なAI機能にアクセスできるようにしました。
Leonardo: ビジネスの観点からは、プラットフォーム層のアプローチには明確な利点がありました。私たちは最小限の投資とリソースで生成AIを活用し始めることができました。AI専門家のチームを雇う必要はなく、既存の開発者が新しいスキルを習得するだけで対応できました。これにより、アイデアから実装までの時間を大幅に短縮することができました。
Caio Monteiro: また、プラットフォーム層のもう一つの利点は、様々なモデルを簡単に試すことができる柔軟性です。同じAPIインターフェースを通じて、異なるモデルプロバイダーや異なるモデルバージョンにアクセスできるため、特定のユースケースに最適なモデルを見つけることができます。
Thiago Couto: まさにその通りです。Matt昨日も言っていましたが、私たちは「すべてを支配する1つのモデル」があるとは考えていません。異なるサイズ、異なる価格、異なるプロバイダーのさまざまなモデルがあり、あなたの問題やビジネスに最適なものを選ぶことができます。
Amazon Bedrockは単なるAPIインターフェースではなく、モデルの進化にも対応しています。例えば、AnthropicのClaude 2からClaude 3への進化には9ヶ月かかりましたが、Claude 3からClaude 3.5への進化はわずか3ヶ月でした。開発サイクルが加速しており、毎週新しいモデルがリリースされています。そのため、プラットフォームを変更することなく異なるモデルを使用できる「ラッパー」が重要なのです。
William: 技術的な観点からは、この抽象化レイヤーが非常に価値がありました。私たちは製品画像の代替テキスト生成というユースケースに集中し、モデルの内部動作について心配する必要はありませんでした。また、より良いモデルが利用可能になった場合、アプリケーションコードを変更することなく、新しいモデルに切り替えることができます。
この柔軟性により、実験と反復が可能になりました。最初はAnthropicのモデルを使用しましたが、他のモデルも試すことができ、私たちのユースケースに最適なモデルを選択することができました。プラットフォーム層は、技術的な詳細を抽象化しながら、ビジネス価値を迅速に実現するための理想的なバランスを提供しました。
8.3. エンドユーザー層
Thiago Couto: 最上位層は、エンドユーザー層に焦点を当てています。これは顧客やエンドユーザー、APIについて知らない、テクニカルな内容や統合プラットフォームの方法を知らないけれど、日常業務で生成AIのパワーを活用したい人々を対象としています。
例えば、契約書や画像をアップロードして解釈し、何が起きているかを理解し、システムとチャットできるようなケースが考えられます。これらがAWSと対話する方法です。
William: この層は私たちのプロジェクトの重要な部分でした。技術チームがバックエンドでAmazon BedrockとClaude 3 Sonnetを統合しましたが、実際にシステムを使用するのは製品管理者や非技術系のスタッフです。彼らはボタンをクリックするだけで、AIが製品画像の詳細な説明を生成します。その後、必要に応じて説明を編集し、承認することができます。
このユーザーフレンドリーなインターフェースにより、AIテクノロジーの複雑さを抽象化し、ビジネスユーザーが直接価値を引き出せるようになりました。API呼び出しやJSONレスポンスの処理について心配する必要はなく、彼らの日常業務の自然な一部となっています。
Leonardo: ビジネスの観点からは、このエンドユーザー層が実際の価値創出の場です。テクノロジーがどれほど優れていても、ビジネスユーザーが簡単に活用できなければ、その影響は限定的です。私たちのプロジェクトでは、製品管理チームが直感的なインターフェースを通じてAIと対話できるようにすることで、採用障壁を大幅に下げることができました。
特に興味深かったのは、このシステムを使用した後、多くのユーザーが「他にもAIを活用できる業務はないか」と自発的に考え始めたことです。AIへの容易なアクセスが、組織全体でのイノベーションの文化を促進しました。
Caio Monteiro: エンドユーザー層のもう一つの重要な側面は、ビジネスユーザーがAIの能力を実験し、新しいユースケースを発見できることです。最初は製品画像の説明生成から始まりましたが、ユーザーはすぐに他の可能性も見出しました。例えば、製品の物理的特性による検索機能の向上や、マーケティングコピーの生成などです。
Thiago Couto: まさにその通りです。エンドユーザー層は、技術的な専門知識がなくても、AIの力を活用できるようにすることで、組織全体でのAI採用を加速させます。私たちが目指すのは、技術者だけでなく、すべてのビジネスユーザーがAIツールを活用できるようにすることです。
William: 技術的な観点からは、このエンドユーザー層の構築には慎重な設計が必要でした。APIの複雑さを隠しながらも、ユーザーが必要な制御とカスタマイズのオプションを持てるようにする必要があります。私たちのケースでは、生成された説明をレビューし、必要に応じて編集できる機能が重要でした。これにより、AIと人間の強みを組み合わせ、最高品質の結果を得ることができました。
Thiago Couto: 次に、多くの企業が生成AIの採用を検討する際に懸念する重要なトピックであるセキュリティについて議論しましょう。Amazon Bedrockはどのようにデータのセキュリティとプライバシーを確保しているのでしょうか?
9. Amazon Bedrockのセキュリティ
9.1. データの非保存性
Thiago Couto: 生成AIを活用する際によく受ける質問の一つが、セキュリティについてです。「このプラットフォームは信頼できるのか?」「モデルの下にあるものを信頼できるのか?」という疑問です。これらは一般的な質問であり、Amazon Bedrockの特徴を通じて回答していきたいと思います。
まず第一に、Amazon Bedrockを使用する場合、様々なモデルから選択できますが、モデルとの対話は保存されません。もちろん、保存することも可能ですが、それはAmazon Bedrockの機能ではありません。あなたはモデルとプラットフォームを使用して対話し、それだけです。私たちはあなたのデータを他の目的には使用しません。例えば、あなたのデータをMetaに渡して新しいモデルを使用するということはありません。それはあなたのアカウントでの対話のためだけに使用されます。
William: これは私たちのプロジェクトにとって非常に重要な考慮事項でした。Grupo Boticárioでは、まだ発売されていない製品の画像も含め、多くの機密情報を扱っています。データの非保存性により、これらの画像がモデルのトレーニングに使用されないという安心感が得られました。
また、実装の観点からは、必要に応じて自社のデータベースにAIの出力を保存することができます。つまり、データ保持に関する完全な制御が私たちにあり、規制要件に準拠したデータ管理が可能になります。
Leonardo: セキュリティの観点から、これは経営陣を安心させる重要な要素でした。美容業界では新製品の開発に数年かかることもあり、製品情報の機密性は競争優位性を維持するために不可欠です。データが保存されず、他の目的に使用されないという保証があったからこそ、このプロジェクトを進めることができました。
Caio Monteiro: 規制の観点からも重要ですね。多くの国では、顧客データの取り扱いに関する厳格な規制があります。データの非保存性により、これらの規制要件への準拠が容易になります。
Thiago Couto: まさにその通りです。セキュリティに関する懸念は、生成AI採用の大きな障壁となることがあります。Amazon Bedrockは、これらの懸念に対処するために設計されています。次に、データの暗号化について見ていきましょう。これもセキュリティの重要な側面です。
9.2. 暗号化された通信
Thiago Couto: セキュリティに関する次の重要なポイントは、すべての通信が暗号化されていることです。AWSのAPIとの対話は常に、どのようなものであっても暗号化されています。これはAWSと対話する場合の要件の一つです。
私たちがAmazon Bedrockを利用する際、クライアントからAWSへの通信、そしてAWSからモデルプロバイダーへの通信、すべてが暗号化されています。これにより、通信が傍受されたり、データが露出したりするリスクを最小限に抑えることができます。
William: 実装の観点からは、これは特別な設定を必要とせず、自動的に提供される機能であることが素晴らしいですね。私たちはAWS SDKを使用してAmazon Bedrockと対話していますが、暗号化は標準で組み込まれています。これにより、セキュリティ対策を追加で実装する必要がなく、開発プロセスが簡素化されました。
また、Grupo Boticárioでは社内のセキュリティ監査が必要でしたが、AWSとの通信が暗号化されているという事実により、この監査プロセスがスムーズに進みました。
Leonardo: ビジネスの観点からは、データセキュリティは単に技術的な問題ではなく、顧客との信頼関係の問題でもあります。Grupo Boticárioの顧客は、私たちが彼らのデータを安全に扱うことを期待しています。暗号化された通信は、この信頼関係を維持するための基本的な要素です。
Caio Monteiro: また、規制遵守の観点からも重要です。多くの国や地域では、顧客データの転送に関して厳格な要件があります。暗号化された通信はこれらの規制要件を満たすために不可欠です。
Thiago Couto: そのとおりです。特に金融や医療など、規制の厳しい業界では、データセキュリティは生成AI採用の前提条件となります。Amazon Bedrockは、これらの厳格なセキュリティ要件を満たすように設計されています。
暗号化は多層的なセキュリティ戦略の一部であり、データの非保存性と組み合わせることで、高いレベルのデータ保護を提供します。次に、地理的な考慮事項について見ていきましょう。特に規制の厳しい業界では、データがどこに保存され、処理されるかが重要になります。
9.3. リージョンにおけるデータの保持
Thiago Couto: セキュリティに関する3つ目の重要なポイントは、データが移動して保存されるリージョンについてです。これは特に銀行やFSI(金融サービス業界)企業など、高度に規制された業界やビジネスにとって非常に重要なトピックです。
Amazon Bedrockを使用する場合、AWSはデータが同じリージョン内に留まることを保証します。例えば、バージニアリージョンで使用を開始し、その後サンパウロに移動するということはありません。これは保証されていて、同じリージョン内に留まります。この点は多くの企業にとって非常に重要です。特に特定の国や地域のデータ主権法に準拠する必要がある場合には必須の要件となります。
William: 技術的な観点からは、これは実装を簡素化します。私たちはブラジルを拠点とする企業ですが、特定のデータがブラジル国内に保持されなければならないという規制要件があります。Amazon Bedrockを使用する際、適切なリージョンを選択するだけで、データがそのリージョン内に留まることを確信できます。追加の設定や複雑なアーキテクチャは必要ありません。
Leonardo: ビジネスの観点からは、これはコンプライアンスの懸念を大幅に軽減します。Grupo Boticárioは世界中で事業を展開していますが、各国には独自のデータ保護法があります。データが特定のリージョン内に留まることで、これらの法令への準拠が容易になります。これは法務チームや経営陣にとって大きな安心材料となりました。
Caio Monteiro: また、パフォーマンスの観点からも利点があります。データが地理的に近いリージョンに保持されることで、レイテンシが低減し、ユーザー体験が向上します。特にリアルタイムのアプリケーションでは、これが重要な考慮事項となります。
Thiago Couto: その通りです。この「リージョンでのデータ保持」という機能は、単なるセキュリティの問題ではなく、コンプライアンス、パフォーマンス、そして全体的なサービス品質に関わる問題です。Amazon Bedrockでは、使用するリージョンを選択するだけで、データがそのリージョン内に留まることが保証されます。
このようなセキュリティ機能があることで、組織はより安心して生成AIを採用し、革新的なソリューションを構築することができます。次に、コンプライアンスに関する側面を見ていきましょう。
9.4. コンプライアンス認証
Thiago Couto: セキュリティに関する最後の重要なポイントは、コンプライアンスについてです。私たちは第三者機関と協力し、その知識を活用して証明書を発行しています。これらの証明書はコンプライアンス部門に提示することができます。
このスライドではいくつかの例を示していますが、AWSのArtifact内には完全なリストがあります。セキュリティについては、これらが重要なトピックです。私たちはセキュリティ、モデルの使用、AWSでこれらの種類の問題を解決するための層について説明しました。
William: 技術的な観点からは、これらの認証は導入プロセスを大幅に迅速化します。私たちのセキュリティチームは、AWSが提供する証明書のおかげで、長期にわたるセキュリティ評価を行う必要がありませんでした。既存の認証が彼らの要件を満たしていることを確認するだけで済みました。
特に興味深かったのは、これらの認証が継続的に更新されるため、新しいコンプライアンス要件が登場した場合でも対応できることです。これにより、長期的なコンプライアンスの維持が容易になります。
Leonardo: ビジネスの観点からは、これらの認証は私たちのステークホルダーに大きな安心感を与えました。Grupo Boticárioは上場企業であり、厳格なコンプライアンス要件に従う必要があります。AWSが提供する認証により、私たちの監査プロセスが大幅に簡素化されました。
特に重要だったのは、個人データの処理に関する認証です。視覚障害者向けのアクセシビリティを向上させるという私たちの目標を達成しながらも、データプライバシーに関する法的要件を確実に遵守することができました。
Caio Monteiro: コンプライアンスは生成AI採用の大きな障壁となることがありますが、これらの認証によりその障壁が大幅に低減されました。多くの組織では、新しいテクノロジーの導入前にリスク評価とコンプライアンスチェックが必要ですが、既存の認証があることで、このプロセスが迅速化されます。
Thiago Couto: その通りです。これらの認証は単なる書類ではなく、AWSがセキュリティとコンプライアンスに対するコミットメントを示すものです。次に、Amazon Bedrockで利用可能なモデルの選択肢と、それらのモデルがどのように進化しているかについて見ていきましょう。
10. モデルの選択肢と進化
10.1. 利用可能なモデルプロバイダー
Thiago Couto: セキュリティについて説明したので、次はAmazon Bedrockで利用可能なモデルプロバイダーについて見ていきましょう。このスライドも昨日4つの新しいモデルが発表されたため少し古くなっていますが、AWSと協力している企業とプロバイダーの例を示しています。これらはAmazon Bedrock内で使用できるモデルです。
現在、単一のAPIコールで同じプラットフォームから異なるモデルを呼び出すことができます。これは非常に重要なポイントです。なぜなら、私たちは異なるモデルに対して異なるユースケースがあると考えているからです。同じプラットフォーム上で異なるプロバイダーのモデルを利用できることは大きな利点です。
Matt昨日も言っていましたが、私も繰り返しておきます。私たちは「すべてを支配する1つのモデル」があるとは考えていません。異なるサイズ、異なる価格、異なるプロバイダーの様々なモデルがあり、問題やビジネスに最適なものを選ぶことができます。
William: 私たちのプロジェクトでは、この柔軟性が非常に価値がありました。最初はAnthropicのClaude 3 Sonnetモデルを選択しましたが、他のモデルも試すことができました。同じAPIインターフェースを通じて異なるモデルにアクセスできるため、アプリケーションコードを大幅に変更することなく、様々なモデルのパフォーマンスを比較できました。
特に画像理解と詳細な説明生成の能力が、私たちのユースケースには重要でした。Claude 3 Sonnetは、製品の視覚的特徴を正確に認識し、自然な言語で説明する能力に優れていました。また、プロンプトエンジニアリングが比較的容易で、少ない例示でも良好な結果を得ることができました。
Leonardo: ビジネスの観点からは、異なるモデルを試す柔軟性があることは、リスクを最小限に抑えるために重要でした。生成AIは急速に進化している分野であり、今日のベストなモデルが明日もベストであるという保証はありません。Amazon Bedrockを通じて複数のモデルにアクセスできることで、常に最新かつ最適なモデルを利用できるという安心感があります。
また、異なる言語や地域に対応する必要がある場合も、特定の言語に強いモデルを選択できる柔軟性があることは大きな利点です。Grupo Boticárioはブラジルだけでなく、ポルトガル、コロンビア、米国などでも事業を展開しています。
Caio Monteiro: また、コスト最適化の観点からも重要です。一部のモデルは高性能ですが高コストであり、他のモデルはコストパフォーマンスに優れています。ユースケースの重要度や要求される品質レベルに応じて、適切なモデルを選択できる柔軟性があることは、コスト効率の高いソリューションを構築する上で不可欠です。
Thiago Couto: まさにその通りです。この柔軟性がなぜ重要なのか、次のセクションでモデルの進化の速さについて見ていきましょう。技術の進化速度を考えると、複数のモデルにアクセスできることがいかに重要かがわかります。
10.2. モデル発展の速度(Claude 2から3へは9ヶ月、3から3.5へは3ヶ月)
Thiago Couto: この技術の進化について考えると、わずか数年前までは生成AIについてほとんど議論されていませんでした。論文は発表されていましたが、一般的な話題ではありませんでした。しかし、今では人々の生活を革命的に変えつつあり、その進化のスピードは加速しています。
このスライドを見ていただくと、AnthropicのClaude 2からClaude 3までの開発サイクルが9ヶ月だったことがわかります。これは小さなパッチではなく、モデルの行動や内容生成能力に関する真の革命的な変化を伴う新モデルについて話しています。それがわずか9ヶ月で実現しました。そして、Claude 3からClaude 3.5への進化はたった3ヶ月でした。
このペースは非常に速く、私たちは継続的に進化しています。毎週新しいモデルがリリースされ、今まさにリリースされ続けています。そのため、ITでは「ラッパー」という概念を使用する必要があります。これは基本的に、機能をパッケージ化し、プラットフォームを変更することなく、異なる方法でやり取りする方法です。
William: 技術的な観点からすると、この急速な進化は非常に重要な意味を持ちます。私たちがプロジェクトを開始した時点では、Claude 3 Sonnetが最適な選択でしたが、数ヶ月後には新しいバージョンがリリースされる可能性があります。Amazon Bedrockを使用することで、基盤となるアプリケーションコードを変更することなく、新しいモデルにシームレスに移行できます。
例えば、初期のプロンプトではある程度の詳細しか得られませんでしたが、モデルが進化するにつれて、同じプロンプトでより豊かで詳細な説明が生成されるようになりました。これは単にモデルをアップグレードするだけで実現しました。画像認識や言語理解の能力が向上するにつれて、生成される代替テキストの品質も向上し続けています。
Leonardo: ビジネスの観点からは、この進化の速度は戦略的な意思決定において重要な要素です。従来のITプロジェクトでは、導入するテクノロジーが数年間は最新であることを前提としていました。しかし生成AIの世界では、数ヶ月で大きな進歩が起こります。
私たちは柔軟なアーキテクチャを採用することで、モデルの進化に合わせて継続的に改善できるようにしました。例えば、初期段階では特定の製品カテゴリの説明に課題がありましたが、モデルが進化するにつれてその課題は自然に解決されました。
Caio Monteiro: この急速な進化は、生成AIプロジェクトを計画する際の考え方を変える必要があることを示しています。従来のウォーターフォール型の開発ではなく、継続的な改善と反復を前提としたアジャイルアプローチが必要です。
Thiago Couto: おっしゃる通りです。モデルは継続的に進化し続け、あなたはプラットフォーム自体を変更することなくモデルを変更できる何か、つまり「ラッパー」を使用する必要があります。これが重要な理由です。問題を解決するために必要なツールとして選択したモデルを変更することなく、プラットフォームを使用し続けられるのです。
次に、AnthropicのClaudeモデルが解決できる問題の例を見ていきましょう。
11. Claudeモデルの適用例
11.1. レポートの要約
Thiago Couto: AnthropicのClaudeモデルが解決できる具体的な問題の例を見ていきましょう。前のスライドはすでに古くなっていますが、Claudeモデルが解決できる一般的な例をいくつか示しています。
最初の例は、レポートの要約です。おそらく誰もが、読んで解釈しなければならない大量のメールや契約書を経験したことがあるでしょう。重要なポイントや注意すべき事項を把握する必要がありますが、これは時間がかかる作業です。Claudeモデルを使用することで、このプロセスを大幅に効率化できます。
William: 私たちのプロジェクトでも、この能力を活用しています。製品画像の説明を生成する際、単に視覚的な要素を列挙するだけでなく、重要な特徴を要約し、最も関連性の高い情報を優先的に示す必要があります。例えば、香水の画像では、ボトルの色や形状だけでなく、パッケージに表示されているブランドメッセージや製品の主要な特徴も抽出する必要があります。
Leonardo: ビジネスの観点からは、この要約能力は非常に価値があります。Grupo Boticárioでは、各製品に関連するマーケティング資料や技術文書が大量にあります。AIが画像から重要な情報を抽出し、簡潔に要約することで、製品マネージャーは製品の本質を素早く把握できます。
また、この能力は内部コミュニケーションの効率化にも役立ちます。例えば、製品開発会議の議事録を要約して、主要なポイントや次のステップを明確にすることができます。
Caio Monteiro: 要約能力は、様々なビジネスプロセスに応用可能です。顧客フィードバックの分析、市場調査レポートの要約、競合分析など、大量のテキストデータから重要な洞察を抽出する必要があるあらゆる場面で活用できます。
Thiago Couto: その通りです。レポートの要約は単なる時間の節約ではなく、大量の情報から本当に重要なものを見極める能力でもあります。次に、グラフの再作成という別の応用例を見ていきましょう。
11.2. グラフの再作成
Thiago Couto: Claudeモデルの2つ目の応用例は、グラフの再作成です。これは、グラフを見てプログラミング部分を行い、グラフを再作成したり、グラフを解釈したりする能力のことです。例えば、ビジュアルデータを分析して理解し、それをプログラムコードに変換することができます。
William: この能力は、私たちのプロジェクトでも間接的に活用されています。製品画像を解釈する際、AIはグラフィカルな要素を理解し、それを言語に変換する必要があります。例えば、パッケージに表示されたグラフや図表があれば、それも説明の一部として含める必要があります。
技術的な観点からは、これはマルチモーダル理解の一例です。画像内のテキスト、グラフィック、色、形状など、様々な要素を理解し、それらを意味のある説明に統合する能力です。Claude 3 Sonnetは、これらの複合的な視覚要素を理解し、適切に記述することができます。
Leonardo: ビジネスの観点からは、この能力は製品パッケージングに含まれる情報の伝達に役立ちます。Grupo Boticárioの製品には、効果を示すグラフや成分の配合比率を示す図表が含まれていることがあります。AIがこれらを理解し説明できることで、視覚障害者も同じ情報にアクセスできるようになります。
また、この能力はデータ分析にも応用できます。例えば、販売データのグラフを解釈し、トレンドや傾向を言語で説明することができます。これにより、データに基づいた意思決定がより多くの人にアクセスしやすくなります。
Caio Monteiro: グラフの再作成と解釈は、アクセシビリティを超えた価値も提供します。例えば、一般の顧客がデータを理解する手助けになったり、異なる言語間での情報の転送を容易にしたりします。
Thiago Couto: その通りです。視覚的な情報を理解し、それを別の形式に変換する能力は、多くのビジネスプロセスに適用できます。しかし、次の例はさらに興味深いものです。テキストだけでなく、画像の理解に焦点を当てています。
11.3. 画像認識(車の損傷、パッケージの状態)
Thiago Couto: しかし、本当に興味深くなるのは最後の2つの例です。なぜなら、ここではテキストではなく画像について話しているからです。例えば、車の写真を撮って、アップロードし、その車の状態や損傷があるかどうかを確認することができます。これはレンタカービジネスなどで活用できるでしょう。
もう一つの例は、パッケージの状態についてです。基本的に、パッケージがどのような状態にあるか、顧客のもとへ適切に到着したかどうかを確認できます。画像をアップロードしてモデルとチャットすることで、状態をより良く理解できます。そして、なぜ今日私たちがここにいるのか、これこそがGrupo Boticárioのユースケースで活用している方法です。
William: まさにその通りです。私たちのプロジェクトでは、この画像認識能力が核心です。製品画像をアップロードし、Claude 3 Sonnetモデルに製品の視覚的特徴を詳細に説明してもらいます。これは単なる物体認識ではなく、色、形状、材質、パッケージングデザイン、そして画像に表示されているテキストまで含む複雑な理解が必要です。
例えば、香水のボトルを認識する際には、そのボトルが「赤いガラス製で丸みを帯びたデザイン、ピンクがかった金属の蓋を持つ」といった詳細な説明を生成します。さらに、製品の周囲にある装飾的な要素、例えば花や果実なども認識し、それが製品の香りやコンセプトを表していることも理解します。
Leonardo: ビジネスの観点からは、この画像認識能力は製品体験の重要な部分を視覚障害者に伝えるために不可欠です。美容業界では、製品の視覚的魅力が購買決定において大きな役割を果たします。AIが製品の見た目を詳細に説明することで、視覚障害者も製品の美的価値にアクセスできるようになります。
また、この技術は品質管理にも応用できます。製品の外観に問題がないか確認したり、パッケージングの損傷を検出したりすることができます。特に国際配送では、製品が適切な状態で到着しているか確認することが重要です。
Caio Monteiro: 画像認識は、カスタマーサービスの向上にも貢献します。顧客が製品の問題を報告する際、画像をアップロードするだけで、AIが問題を自動的に分析し、適切な解決策を提案することができます。
Thiago Couto: そうですね。画像認識は単なるテクノロジーのデモンストレーションではなく、実際のビジネス課題を解決する強力なツールです。次に、Grupo Boticárioとはどのような企業なのか、Leonardoから説明してもらいましょう。
12. Grupo Boticárioの紹介
12.1. 会社の概要(47年の歴史、ブラジル最大の美容・小売業)
Leonardo: それでは、Grupo Boticárioがどのような企業なのかについてお話しします。見えない方のために自己紹介しますと、私は黒い髪の白人男性で、黒いTシャツ、青いパンツ、黒いスニーカーを履いています。身長は5フィート9インチ、38歳です。
Grupo Boticárioはブラジルの企業で、現在47年の歴史を持っています。ブラジルの美容・小売業界でマーケットリーダーの地位にあります。私たちは1つのブランド、Oboticarioからスタートしました。今日では14のブランドを持ち、そのうち10が自社ブランド、4つがパートナーシップによるものです。
2010年頃から、ブラジル市場でできるだけ多くの種類の人々に届けるために、このブランドポートフォリオを拡大し始めました。Oboticarioについて考えると、今日、Boticarioはブラジルで最も愛され、ギフトに選ばれるブランドです。誰かにギフトを贈る時に、真っ先に思い浮かぶブランドなのです。そのため、今日のブラジルの様々な階層の人々に対して大きな責任を持つブランドとなっています。
William: Grupo Boticárioの歴史は、美容業界における重要な存在への成長の物語です。私がGrupo Boticárioで働き始めたとき、すでに確立された企業でしたが、それ以来も継続的に成長を続けています。47年という歴史の中で、単なる化粧品会社から、包括的な美容エコシステムへと進化してきました。
Thiago Couto: 興味深いですね。Grupo Boticárioのようなブラジルの大企業が、インクルージョンと多様性に焦点を当てていることは素晴らしいことです。特に美容業界は、しばしば特定の美の基準を促進するという批判を受けることがありますが、Grupo Boticárioは幅広い顧客層に価値を提供することに重点を置いているようですね。
Leonardo: その通りです。私たちの成長と進化は常に、より多くの人々に価値を提供するという目標に導かれてきました。美容は単なる外見の問題ではなく、自己表現と自信の源でもあります。私たちは、すべての人が自分らしさを表現し、自分自身を大切にする手段として美容製品を利用できるようにしたいと考えています。
Caio Monteiro: Grupo Boticárioのようなブラジル企業が、アクセシビリティと包括性に焦点を当てたイノベーションを主導していることは、非常に喜ばしいことです。次に、会社の規模とリーチについてもう少し詳しく聞かせてください。
12.2. ブランドポートフォリオ(14ブランド)
Leonardo: Grupo Boticárioのブランドポートフォリオについて詳しくお話しします。先ほど述べたように、現在私たちは14のブランドを持っています。そのうち10が自社ブランド、4つがパートナーシップによるものです。
Oboticarioが最初のブランドであり、創業の基盤となりました。2010年頃から、私たちはブラジル市場のさまざまな層にアプローチするために、ブランドポートフォリオの拡大を始めました。各ブランドには独自のアイデンティティ、ターゲット層、そして価値提案があります。
例えば、Oboticarioは「最も愛され、ギフトに選ばれるブランド」として位置づけられています。ブラジルでは誰かに贈り物をする際に真っ先に思い浮かぶのがOboticarioです。これは大きな責任を伴うポジションです。他にも、より若い世代をターゲットとしたブランドや、自然派製品に特化したブランド、プレミアム市場向けのブランドなど、様々なセグメントに対応しています。
William: 技術的な観点からは、この多様なブランドポートフォリオは非常に興味深い課題を提示しました。各ブランドには独自のウェブサイトやEコマースプラットフォームがあり、それぞれに固有のデザイン言語や顧客体験があります。しかし、アクセシビリティに関しては、ブランド間で一貫したアプローチを取る必要がありました。
私たちのAIソリューションは、異なるブランドの製品画像に対して同様に機能する必要がありましたが、それぞれのブランドアイデンティティを尊重する必要もありました。例えば、高級ブランドの製品説明は、よりエレガントで洗練された言葉遣いで生成されるべきです。
Caio Monteiro: 14のブランドそれぞれに独自のアイデンティティがあることは、AIによる画像説明生成において追加の複雑さをもたらしますね。モデルはブランドの文脈やポジショニングを理解する必要があります。
Thiago Couto: まさにその通りです。これは単なる技術的な課題ではなく、各ブランドの個性とメッセージを保持しながら、アクセシビリティを向上させるという複雑な課題です。プロンプトエンジニアリングにおいては、ブランドの文脈を考慮に入れる必要があったのではないでしょうか?
Leonardo: おっしゃる通りです。14のブランドを持つことは、様々な顧客層にリーチできるという大きな利点がありますが、それぞれのブランドアイデンティティを維持しながらインクルージョンを推進するという複雑さも伴います。私たちはブランドの多様性を通じて、より多くの人々に美容体験を提供することを目指しています。
12.3. 販売チャネル(フランチャイズ、Eコマース、直販など)
Leonardo: 今日、Grupo Boticárioは製品を販売するためにあらゆる可能なチャネルを活用しています。まず、フランチャイズネットワークでは、私たちはブラジル最大のフランチャイズネットワークを持ち、約4,000店舗を展開しています。
また、Eコマースも重要なチャネルで、私たちが持つ各ブランドに対応する個別のEコマースサイトを運営しています。つまり、14のブランドに対して14の異なるEコマースプラットフォームがあるということです。これにより、各ブランドの独自性と顧客体験を維持しながら、オンラインでの存在感を確立しています。
さらに、直販、薬局、美容専門店、小売店、百貨店、そして美容サロンなど、他の販売チャネルも活用しています。特に美容サロンは、私たちのポートフォリオの中で最も新しいビジネスであり、数年前に始めたばかりです。
William: 技術的な観点からは、これらの多様な販売チャネルをサポートすることは大きな課題です。特にEコマースプラットフォームについては、14の異なるブランドサイトがあり、それぞれが独自のデザインと機能を持っていますが、バックエンドのインフラストラクチャと統合する必要があります。
私たちのAIアクセシビリティプロジェクトでは、この複雑性に対処する必要がありました。最初はOboticarioのメインブランドサイトから始め、成功した後に他のブランドのEコマースプラットフォームにも展開しました。APIとマイクロサービスアーキテクチャを活用することで、Amazon BedrockとClaude 3 Sonnetモデルの統合を各ブランドのサイトに効率的に実装することができました。
Caio Monteiro: これほど多様な販売チャネルがあると、一貫したブランド体験とアクセシビリティ基準を維持することは難しいでしょうね。特に物理的な店舗とデジタルチャネルの両方で、同レベルのインクルージョンを確保するのは容易ではないと思います。
Leonardo: おっしゃる通りです。各チャネルで一貫したブランド体験を提供しながら、チャネル固有の特性も活かす必要があります。例えば、実店舗では従業員が視覚障害のある顧客を直接支援できますが、Eコマースでは技術的なソリューションが必要です。私たちは「オムニチャネル」アプローチを採用し、すべてのタッチポイントで顧客に一貫した体験を提供することを目指しています。
Thiago Couto: 特にEコマースプラットフォームでは、アクセシビリティがこれまで以上に重要になっていますね。パンデミック以降、オンラインショッピングはさらに普及し、視覚障害者を含むすべての顧客が平等にアクセスできるようにする必要性が高まっています。
Leonardo: その通りです。私たちはすべての販売チャネルを通じて、顧客に選択肢を提供すると同時に、どのチャネルを選んでも高品質で包括的な体験を確保することを重視しています。
12.4. 業績(2023年50億ドルの売上、前年比30%増)
Leonardo: Grupo Boticárioの業績についてもお話ししましょう。2023年には約50億ドルの売上を達成しました。これは2022年と比較して約30%の成長を意味します。この成長率は美容・小売業界において非常に顕著なものです。特にブラジルや世界の他の地域で経済的な課題がある中での成長であることを考えると、非常に誇らしい成果です。
William: この成長の背景には、デジタル変革の取り組みも大きく貢献しています。パンデミック以降、私たちはEコマースプラットフォームに大規模な投資を行い、オンラインでの顧客体験を向上させることに注力してきました。アクセシビリティの改善プロジェクトもその一環であり、より多くの顧客層にリーチすることで、ビジネス成長を支援しています。
Thiago Couto: 30%という成長率は非常に印象的です。特に確立された企業でこの成長率を達成することは容易ではありません。テクノロジーとイノベーションへの投資が、このビジネス成功にどのように貢献しているのでしょうか?
Leonardo: その質問に答えると、私たちの成長の鍵は、テクノロジーを単なる効率化のツールとしてではなく、新しい価値を創造するための手段として捉えていることです。AIアクセシビリティプロジェクトはその良い例です。単にコンプライアンス要件を満たすだけでなく、新しい顧客セグメントにリーチし、すべての人により良い体験を提供することを目指しています。
また、オムニチャネル戦略も成長に大きく貢献しています。顧客がどのチャネルを選択しても、一貫した高品質な体験を得られるようにすることで、ブランドロイヤルティを高め、リピート購入を促進しています。
Caio Monteiro: 50億ドルの規模と30%の成長率は、Grupo Boticárioが単なるローカル企業ではなく、グローバルな影響力を持つ主要プレイヤーであることを示しています。このような規模と成長を維持するためには、持続可能なビジネスモデルと強力なテクノロジー基盤が不可欠です。
Leonardo: その通りです。私たちは単に売上を追求するのではなく、持続可能な成長とインクルーシブなビジネスモデルの構築を目指しています。多様なブランドポートフォリオと販売チャネル、そして最新テクノロジーへの投資が、この継続的な成長を支えています。これからも、イノベーションとインクルージョンを通じて、美容業界のリーダーとしての地位を強化していきたいと考えています。
12.5. グローバルプレゼンス(工場、物流センター、オフィス)
Leonardo: Grupo Boticárioのグローバルプレゼンスについても触れておきましょう。現在、私たちは14の工場を運営しています。そのうち3つはブラジル国内にあり、残りの11は世界各地のパートナーシップによるものです。これにより、私たちは効率的な生産体制を確保しながら、各市場の特性に適応した製品を提供できています。
また、7つの物流センターも運営しています。その中の1つはポルトガルにあり、ここではOboticarioの最大の店舗ネットワークも展開しています。適切な物流インフラを各地域に配置することで、製品をタイムリーに顧客に届けることができます。
さらに、7つのオフィスを持っており、そのうち3つはブラジル国内、そして中国、コロンビア、ポルトガル、そして米国にそれぞれ1つずつあります。特に米国では、現在Eコマースを通じて製品を提供しています。このグローバルなネットワークは、私たちがローカルな知見を活かしながら、グローバルなブランドとして成長するための基盤となっています。
William: このグローバルな展開は、技術的な観点からも興味深い課題を提示します。各地域には独自の言語、文化、規制要件があり、私たちのデジタルプラットフォームもそれに適応する必要があります。例えば、画像の代替テキスト生成では、ポルトガル語だけでなく、スペイン語や英語など複数の言語に対応する必要があります。
Thiago Couto: グローバルな事業展開において、AWS Bedrockのようなクラウドサービスの利点は何だと思いますか?特に異なる地域での運用において、どのようなメリットがありますか?
Leonardo: クラウドサービスの大きな利点は、グローバルでありながらローカルに対応できることです。AWS Bedrockを使用することで、各地域の規制に準拠しながら、一貫したサービスを提供できます。例えば、データ主権の要件に応じて、特定のリージョンでデータを処理することができます。
また、グローバルなスケールでビジネスを展開する際の俊敏性も重要です。新しい市場に参入する際に、インフラストラクチャを一から構築する必要がなく、クラウドサービスを活用して迅速に展開できます。これは特に、デジタルプレゼンスを確立する際に大きな利点となります。
Caio Monteiro: Grupo Boticárioは美容業界のグローバルプレーヤーとして、各地域の文化的特性にどのように対応していますか?特に製品やマーケティングメッセージの面で、ローカライゼーションはどのように行われていますか?
Leonardo: それは非常に重要な質問です。私たちは「グローバルに考え、ローカルに行動する」というアプローチを採用しています。ブランドの核となる価値観は共通していますが、製品フォーミュラ、パッケージング、マーケティングメッセージはそれぞれの地域の好みや文化的背景に適応させています。
このグローバルなプレゼンスは、私たちのミッションである「世界のための最大かつ最高の美容エコシステム」を実現するための基盤となっています。次のセクションでは、このミッションとインクルージョンへの取り組みについて詳しくお話しします。
13. インクルージョンへの取り組み
13.1. 「世界のための最大かつ最高の美容エコシステム」というミッション
Leonardo: 私たちのエコシステムについて考えるとき、会社のスローガンでありミッションでもある言葉を作りました。それは「世界のための最大かつ最高の美容エコシステムになる」というものです。ここで強調したいのは、「世界に向けて」ではなく、「世界のために」という点です。
これはどういう意味かというと、私たちが一つの店舗、一人の人、一人の従業員、あるいは私たちの製品を使用している誰かについて考えるとき、この価値連鎖の中で触れるすべての人について考える必要があるということです。つまり、私たちは製品の生産から、タイプにかかわらずすべての人がアクセスできるアクセサリーや製品の提供まで、すべてを考慮する必要があるのです。
Caio Monteiro: そのミッションは非常に包括的ですね。「世界のために」という言葉には、単に製品を世界に販売するという意味を超えた深い意味があるようです。それは地域社会への貢献や社会的責任、そしてインクルージョンへのコミットメントを含んでいるのではないでしょうか?
Leonardo: その通りです。私たちは美容製品の提供だけでなく、すべての人が価値を感じ、歓迎されていると感じられるエコシステムの構築を目指しています。これには、従業員、サプライヤー、フランチャイズパートナー、そして最終的には顧客まで、価値連鎖のすべての関係者が含まれます。
「世界のために」というのは、特定の地域や市場だけでなく、グローバルな視点で考え、多様な背景を持つ人々のニーズに対応することを意味します。これは私たちの製品開発、マーケティング戦略、そして今日議論しているようなテクノロジーイニシアチブにも反映されています。
William: 技術者として、このミッションは私の仕事に大きな影響を与えています。私たちはテクノロジーを単なる効率化の手段としてではなく、インクルージョンを実現するための手段として捉えています。例えば、視覚障害者向けのAIアクセシビリティプロジェクトは、まさに「世界のために」というミッションを具現化したものです。
技術的なソリューションを設計する際、私たちは常に「誰が排除されているか?」「どうすればより多くの人々に価値を提供できるか?」という質問を念頭に置いています。これがGrupo Boticárioの技術チームの思考方法の中心にあります。
Thiago Couto: このミッションは、イノベーションとインクルージョンを結びつけるユニークなアプローチですね。多くの企業がテクノロジーを活用して効率を高めることに焦点を当てていますが、Grupo Boticárioは明確な社会的使命を持ってテクノロジーを活用しているようです。
Leonardo: その通りです。私たちは、ビジネスの成功とポジティブな社会的インパクトは相互に強化し合うものだと信じています。インクルーシブな製品やサービスを提供することで、より多くの顧客にリーチし、より強固なブランドロイヤルティを構築することができます。同時に、社会をより良くする企業として認識されることは、長期的なブランド価値の構築にも貢献します。
「世界のための最大かつ最高の美容エコシステム」というミッションは、私たちのすべての意思決定を導く原則となっています。
13.2. 多様性と包括性を取り入れた製品開発(現在63%、2030年までに90%目標)
Leonardo: 現在、Grupo Boticárioでは製品発売の約63%が何らかの多様性とインクルージョンの要素を取り入れています。これは、私たちの製品開発部門が常にブラジルのあらゆる種類の人々に届く製品をどのように作れるかを考えているということです。障害のある人々、さまざまな肌の色や人種、さまざまな階層の人々に対して、製品の価格、質感、香りなど、あらゆる要素を考慮しています。
また、ブラジルでは2030年までにポートフォリオの約90%に多様性の要素を取り入れるという目標を公表しています。これは単に美容のための製品だけでなく、化粧品を塗布するための製品も含みます。例えば、リップスティック、香水、その他の美容製品を塗布するために使用できる支援製品なども含まれます。
Caio Monteiro: これは非常に野心的な目標ですね。製品開発プロセスにインクルージョンを組み込むために、どのようなアプローチを取っていますか?
Leonardo: 私たちのアプローチは、初期の製品コンセプトから始まります。新製品を開発する際、私たちは「この製品は誰が使えないか?」という質問をします。そして、その障壁を取り除く方法を考えます。例えば、上肢障害のある人々のために、特別なグリップを持つパッケージを設計したり、視覚障害者のために触覚マーキングを追加したりします。
また、製品開発プロセスの早い段階で、様々な背景を持つユーザーからフィードバックを求めることも重要です。実際のユーザーの声を聞き、彼らの具体的なニーズを理解することで、真にインクルーシブな製品を設計できます。
William: 技術的な観点からは、このインクルーシブな製品開発アプローチは、デジタル体験にも拡張されています。製品自体がアクセシブルであることと同様に、オンラインでの製品情報や購入プロセスもアクセシブルである必要があります。
私たちのAIアクセシビリティプロジェクトは、この物理的製品の包括性をデジタル領域に拡張するものです。視覚障害者が製品の視覚的特徴を理解できるようにすることで、より情報に基づいた購買決定ができるようになります。
Thiago Couto: インクルーシブな製品設計とデジタルアクセシビリティの組み合わせは、非常に包括的なアプローチですね。ビジネスの観点から見て、この包括的なアプローチはどのような結果をもたらしていますか?
Leonardo: ビジネスの観点からは、多様性とインクルージョンに焦点を当てることで、新しい顧客セグメントを開拓し、ブランドロイヤルティを高めることができています。例えば、私たちがアダプティブアクセサリーを発売した際、上肢障害を持つ顧客からの反応は非常に肯定的で、多くの人が初めてGrupo Boticárioの製品を購入しました。
また、この取り組みは従業員のエンゲージメントにも好影響を与えています。製品開発チームは、自分たちの仕事が単に美的または機能的な製品を作るだけでなく、実際に人々の生活に意味のある違いをもたらしていると感じることができます。
Caio Monteiro: 2030年までに90%という目標を達成するための具体的な戦略はありますか?
Leonardo: はい、いくつかの重要な戦略があります。まず、すべての新製品開発プロジェクトに「インクルージョンチェックポイント」を組み込んでいます。これにより、プロジェクトの各段階でインクルージョンの観点が考慮されます。次に、社内トレーニングを強化し、すべての製品開発チームがインクルーシブ設計の原則を理解し適用できるようにしています。
さらに、障害者団体や多様なコミュニティとのパートナーシップを拡大しています。彼らの専門知識と洞察を活用することで、より効果的なインクルーシブ製品を開発できます。そして最後に、私たちは成功事例を広く共有し、業界全体でインクルーシブな製品開発を促進することを目指しています。
14. アダプティブアクセサリーの開発
14.1. 上肢障害者向けの適応型アクセサリー
Leonardo: インクルージョンへの取り組みの一環として、私たちは上肢障害を持つ人々向けのアダプティブアクセサリーの開発に力を入れています。このプロジェクトは、Macroという教育・健康分野の製品を作る100年の歴史を持つ企業とのパートナーシップで実現しました。
私たちは一緒に、上肢障害を持つ人々が美容製品を使用できるよう支援するアダプティブアクセサリーを開発しました。これらのアクセサリーは、製品の適用を支援するためのアダプティブサポートとして機能します。また、製品を適用するための十分な力がない人々をサポートするアクセサリーも開発しています。これにより、彼らは安全性と精度を持ってGrupo Boticárioの製品を使用することができるようになりました。
William: 技術的な観点からは、これらのアダプティブアクセサリーの設計プロセスは非常に興味深いものでした。私たちは3Dプリンティング技術を活用して、様々な形状と機能を持つプロトタイプを迅速に作成し、テストすることができました。このアジャイルな開発アプローチにより、ユーザーからのフィードバックを迅速に取り入れ、デザインを継続的に改良することができました。
また、これらの物理的アクセサリーとデジタル体験の間には重要な接点があります。例えば、アクセサリーの使用方法を説明する動画には、詳細な音声解説を付けることで、視覚障害を持つユーザーにもわかりやすく情報を提供しています。
Caio Monteiro: これらのアダプティブアクセサリーは、具体的にどのような美容製品に使用できるのでしょうか?また、開発過程ではどのような課題がありましたか?
Leonardo: これらのアクセサリーは、リップスティック、アイライナー、マスカラなど、精密な適用が必要な製品に特に有効です。例えば、手の震えがある方や関節の可動域が制限されている方が、自分で化粧をする際に安定性と正確性を提供します。
開発過程での最大の課題は、障害の種類と程度が人によって大きく異なることでした。一人一人の特定のニーズに対応するためには、高度にカスタマイズ可能なソリューションが必要でした。そのため、基本的なデザインを作成した後、個々のユーザーの特定のニーズに合わせて調整できる要素を組み込みました。
Thiago Couto: このようなアダプティブアクセサリーの開発は、テクノロジーが社会的インクルージョンにどのように貢献できるかを示す素晴らしい例ですね。物理的な製品だけでなく、デジタル技術も含めた総合的なアプローチが重要だと思います。AIはこの分野でどのような役割を果たせるでしょうか?
Leonardo: まさにその通りです。私たちは物理的なアクセサリーとデジタル技術を組み合わせることで、より包括的なソリューションを提供できると考えています。例えば、AIを活用して、個々のユーザーの特定のニーズに基づいたカスタマイズされたアクセサリーのデザインを提案することができます。また、AIを使用して、使用方法の個別化されたチュートリアルを提供することも可能です。
これらのアダプティブアクセサリーは、私たちの「世界のための美容エコシステム」というミッションの具体的な実現です。美容は自己表現と自信の源であり、障害の有無にかかわらず、すべての人がアクセスできるべきだと考えています。次に、さらに革新的な取り組みであるスマートリップスティック技術についてお話ししましょう。
14.2. スマートリップスティック技術
Leonardo: 次に、100%ブラジル製技術で開発した革新的なスマートリップスティックについてお話しします。これは視覚障害や弱視の方、また上肢の障害を持つ方が自分自身でリップスティックを塗ることを可能にするデバイスです。
このデバイスはどのように機能するかというと、肌の色を認識し、顔の肌と口の間の違いを検出します。これにより、製品を使用している顧客の口に100%の精度でリップスティックを塗ることができるのです。これは非常に革新的なものです。
私たちは顔の要素を検出するために人工知能を使用しており、精度を保証し、ユーザーが安全に製品を使用して期待通りの結果を得られるようにしています。
William: 技術的な観点から見ると、このスマートリップスティックは視覚認識技術とAIの素晴らしい応用例です。デバイスに内蔵されたカメラとセンサーが顔の特徴を認識し、リアルタイムでフィードバックを提供します。特に興味深いのは、様々な肌のトーンや照明条件に対応できるよう、アルゴリズムが最適化されている点です。
開発過程では、様々な年齢、肌の色、顔の形状を持つ多様なユーザーグループでテストを行い、精度を向上させました。また、ユーザーが直感的に使用できるよう、触覚フィードバックも組み込みました。
Thiago Couto: これは生成AIの能力を直接的に人々の生活を向上させるために応用した素晴らしい例ですね。画像認識モデルはどのように訓練されたのでしょうか?また、エッジデバイスでこのような高度なAIを実行する際の課題はありましたか?
William: AIモデルのトレーニングは実際に大きな課題でした。多様なユーザーをカバーするために、様々な肌のトーン、照明条件、顔の特徴を含む大規模なデータセットが必要でした。プライバシーを考慮しながらこれらのデータを収集し、適切にラベル付けすることは複雑なプロセスでした。
また、エッジデバイスでAIを実行するためには、モデルを大幅に最適化する必要がありました。バッテリー寿命、処理能力、リアルタイムのパフォーマンスのバランスを取りながら、高い精度を維持することが重要でした。これを実現するために、モデルの量子化や軽量化など、様々な技術を適用しました。
Caio Monteiro: このスマートリップスティックは、実際にユーザーからどのような反応を得ていますか?また、この技術を他の美容製品にも拡張する計画はありますか?
Leonardo: ユーザーからの反応は非常に肯定的です。特に、これまで誰かの助けを借りずにメイクをすることができなかった視覚障害者から、「初めて自分で自分らしさを表現できる自由を感じた」という感想をいただいています。これは単なる美容製品を超えて、自立と自信を提供するものとなっています。
今後の計画としては、この技術を他の美容製品、例えばアイライナーやマスカラなどにも拡張していく予定です。また、スマートフォンアプリと連携させ、メイクのガイダンスや仕上がりのフィードバックを提供するなど、機能の拡張も検討しています。
このスマートリップスティック技術は、私たちのイノベーションとインクルージョンへのコミットメントを体現するものです。テクノロジーを活用して、すべての人が美しさを表現し、楽しむことができるようにすることが私たちの目標です。
14.3. アクセシブルなメイクブラシ
Leonardo: 今年、私たちはアクセシブルなメイクブラシも発売しました。これらのメイクブラシは、上肢に障害のある方が他の人の助けを借りずにメイクを塗ることができるように設計されています。
これらのブラシの特徴は、ブラシのベース部分に触覚マーキングが施されていることです。このマーキングにより、メイクブラシを使用する際にどれくらいの力を加えればよいかを識別することができます。これにより、私たちのポートフォリオで生産している基礎化粧品やその他のブランドの製品も使用できるようになります。これは、私たちがより多くの人々の生活を美容を通じて向上させるために取り組んでいる一例です。
William: 技術的な観点からは、これらのアクセシブルなメイクブラシの開発は非常に興味深いプロセスでした。触覚マーキングの設計では、様々なタイプの触覚フィードバックをテストし、最も直感的で使いやすいものを特定するために、実際のユーザーと密接に協力しました。
また、グリップの形状や重量バランスも重要な考慮事項でした。上肢の障害の種類や程度によって、最適なデザインが異なるため、モジュラー設計を採用し、個々のニーズに合わせてカスタマイズできるようにしました。
Thiago Couto: これらのアクセサリーは、インクルーシブデザインの素晴らしい例ですね。初めから多様なユーザーのニーズを考慮して設計されています。製品開発プロセスではどのようにユーザーフィードバックを取り入れましたか?
Leonardo: ユーザーフィードバックは開発プロセス全体を通じて不可欠でした。初期のコンセプト段階から、様々な障害を持つ人々と協力し、彼らの日常的な課題と必要なサポートを理解しました。プロトタイプ段階では、実際のユーザーテストセッションを行い、デザインを継続的に改良しました。
例えば、当初は単一の汎用デザインを考えていましたが、ユーザーテストを通じて、異なるタイプのメイクアップには異なる形状と触覚フィードバックが必要であることがわかりました。そこで、各メイクアップタスクに最適化された複数のデザインを開発することにしました。
Caio Monteiro: これらの製品は実際に市場でどのように受け入れられていますか?また、ビジネスの観点からは、このようなアクセシビリティ製品の開発はどのような価値をもたらしていますか?
Leonardo: 市場の反応は非常に肯定的です。これらの製品は、従来美容業界から排除されがちだった顧客セグメントに新たな可能性を開きました。特に興味深いのは、当初は上肢障害を持つ人々をターゲットとしていましたが、高齢者や一時的な手の怪我をしている人々など、より広い顧客層にも価値を提供していることがわかったことです。
ビジネスの観点からは、これらのアクセシビリティ製品は新しい市場セグメントを開拓するだけでなく、Grupo Boticárioのブランド価値を高め、社会的責任を果たす企業としての認識を強化しています。また、これらの革新的な製品は、メディアの注目を集め、オーガニックなPRの機会も創出しています。
William: ここで重要なのは、物理的な製品のアクセシビリティとデジタル体験のアクセシビリティの両方に取り組んでいる点です。次のセクションでは、EコマースプラットフォームでのBedrock活用についてお話しします。実店舗でのアクセシビリティ改善と同様に、オンラインでの体験も同じレベルでインクルーシブにすることが重要です。
15. EコマースにおけるBedrock活用
15.1. ソーシャルメディアでの画像説明の取り組み
William: Grupo Boticárioでは、Bedrockを活用したEコマースのアクセシビリティ向上に取り組む前から、ソーシャルメディアでの画像説明に力を入れてきました。例えば、Instagramの投稿では、ビデオや写真に何が起きているかを説明する取り組みを行っています。
私たちは「すべての人に見えるようにする」というハッシュタグを投稿に使用し、コンテンツを視覚的にアクセスできない人々のために説明を提供しています。これは非常に重要なことです。すべての人が同じ体験を得られるようにする必要があるのです。
Thiago Couto: ソーシャルメディアでの画像説明は、デジタルインクルージョンへの第一歩として非常に重要ですね。特に現代では、ブランドとのエンゲージメントの多くがソーシャルメディアを通じて行われています。ソーシャルメディアでのこの取り組みは、どのようにEコマースアクセシビリティプロジェクトにつながったのでしょうか?
William: その質問は非常に重要です。私たちは最初、ソーシャルメディア上での画像説明を手動で行っていましたが、その過程で視覚障害者がデジタルコンテンツとどのように関わるかについて多くのことを学びました。そして気づいたのは、自社のEコマースプラットフォームでも同様の取り組みが必要だということでした。
実際に特に重要だったのは、スクリーンリーダーを使用するユーザーからのフィードバックです。彼らは、ソーシャルメディアの投稿の説明は素晴らしいけれど、実際に製品を購入しようとするとき、製品の視覚的特徴について十分な情報が得られないという課題を抱えていました。
Leonardo: ビジネスの観点からも、これは単なる社会的責任ではなく、顧客体験全体の一貫性を確保する取り組みでした。ユーザーがソーシャルメディアで素晴らしい体験をした後、実際の購入プロセスでつまずくと、その良い印象が台無しになってしまいます。
また、ソーシャルメディアでの取り組みを通じて、視覚障害者コミュニティとの関係を構築することができました。彼らの具体的なニーズと期待を理解することで、Eコマースプラットフォームでより効果的なソリューションを開発することができました。
Caio Monteiro: ソーシャルメディアでの取り組みは、Eコマースでの本格的なアクセシビリティプロジェクトの良い基盤になったようですね。これらの初期の取り組みから学んだ主な教訓は何でしたか?
William: 最も重要な教訓は、アクセシビリティは後付けではなく、最初から考慮すべきだということです。ソーシャルメディアでは個々の投稿に対応できましたが、Eコマースプラットフォームでは何千もの製品画像があり、手動での対応は現実的ではありませんでした。そのため、スケーラブルなソリューションとしてAIの活用を検討し始めました。
また、視覚障害者のユーザーは単に「何かがそこにある」ということだけでなく、色、形状、質感、配置など、視覚的な詳細を知りたいということもわかりました。彼らは限られた情報ではなく、可能な限り豊かな体験を求めています。この理解がBedrockとClaude 3 Sonnetモデルを活用したEコマースソリューションの開発につながりました。
次のセクションでは、Eコマース製品の説明がいかに不十分であるかという具体的な問題について掘り下げていきましょう。
15.2. 製品説明の不十分さの問題(単なる製品名)
William: この部分に来ると、製品名だけでは情報が不十分である問題が明確になります。例えば、この製品名を見てみましょう。これはある種の保湿ボディローションで、コーヒーが入っていて、どこかフルーティーな香りがあり、容量は200ミリリットルです。しかし、これだけでは多くを語っていません。
実際には、背景にある画像の方がはるかに豊かな情報を含んでいます。製品の形状、ピンクのボトルと黒い蓋、さらに多くの成分など、画像には独自のストーリーがあります。しかし、私たちがこれに配慮せず、単に自動的に処理すると、HTMLのalt属性に製品名だけが入力されてしまいます。
このケースでは3つの画像があり、スクリーンリーダー(視覚障害者が使用するソフトウェア)は同じ情報を何度も繰り返すことになります。「保湿ボディローション、保湿ボディローション、保湿ボディローション」というように。これは決して良い体験とは言えません。
Thiago Couto: これは非常に重要なポイントですね。テクノロジーがアクセスを可能にするはずが、逆に孤立感を生み出す可能性があるということです。製品名だけでは、視覚的な要素や製品の特徴を伝えることができません。
William: まさにその通りです。もう一つの例を見てみましょう。これはペット用の製品で、400ミリリットルの5-in-1シャンプーです。しかし、このフレーズだけでは多くを語っていません。
実際の写真には、バスタブの中にいるチワワ、黄色いゴム製のアヒル、そして側面に製品が置かれています。ここには語るべきストーリーがたくさんあります。写真の構図やアイデアを伝える必要があります。私たちの目標は、HTMLのalt属性をこの情報で埋めることです。
Leonardo: ビジネスの観点からすると、これは単なるアクセシビリティの問題ではなく、製品のマーケティングと顧客体験全体の問題です。製品の視覚的魅力は購買決定において非常に重要です。視覚障害者がこの情報にアクセスできないということは、彼らが情報に基づいた選択をする機会を奪われているということです。
Caio Monteiro: また、この問題はブランドの価値伝達にも影響しますね。製品を単なる機能的なアイテムとしてではなく、感情や体験と結びつけて提示することができなくなります。
William: その通りです。私たちは、Bedrockを活用することで、製品画像に含まれるすべての視覚的要素を豊かに描写し、視覚障害者も同じレベルの情報と感情的な接続を得られるようにしたいと考えています。次に、画像のAlt属性におけるスクリーンリーダーの課題について、さらに詳しく説明します。
15.3. 画像のAlt属性におけるスクリーンリーダーの課題
William: 画像のAlt属性とスクリーンリーダーの課題についてもう少し掘り下げてみましょう。Eコマースサイトでは通常、製品ごとに3〜5枚、場合によってはそれ以上の写真があります。しかし、すべての人を包含することを意識していない場合、画像に含まれる情報がすべて伝わらないという問題が生じます。
製品名だけでは十分な情報が得られません。スクリーンリーダーを使用する視覚障害者にとって、同じ製品名が何度も繰り返されるだけでは、非常に貧弱な体験になってしまいます。例えば、3枚の製品画像があり、それぞれのAlt属性が単に「保湿ボディローション」となっている場合、ユーザーはスクリーンリーダーが「保湿ボディローション、保湿ボディローション、保湿ボディローション」と読み上げるだけを聞くことになります。
Caio Monteiro: それは確かに大きな問題ですね。視覚のあるユーザーは製品の外観や色、使用シーンなどを画像から直接理解できますが、スクリーンリーダーを使用するユーザーにはその情報が全く伝わりません。
William: そのとおりです。例えば、ペット用シャンプーの例では、画像にはバスタブの中のチワワ、黄色いゴム製のアヒル、そして製品が写っています。これは製品の使用シーンを示す重要な情報ですが、Alt属性が単に製品名だけだと、この豊かな文脈がすべて失われてしまいます。
Thiago Couto: スクリーンリーダーには技術的な制限もありますよね?例えば、画像に含まれるテキストを自動的に認識することはできないと思います。
William: その通りです。スクリーンリーダーは基本的にHTMLコードに含まれるテキスト情報だけを読み上げることができます。画像に含まれるテキストや視覚的要素を自動的に認識して説明することはできません。そのため、適切なAlt属性を提供することが非常に重要なのです。
Leonardo: ビジネスの観点からも、これは顧客体験と売上に直接影響する問題です。視覚障害者が製品の特徴や魅力を理解できなければ、購入に至る可能性は低くなります。ブラジルには約600万人の視覚障害者がいることを考えると、これは無視できない市場セグメントです。
William: まさにその通りです。さらに、スクリーンリーダーを使用するユーザーはページの構造を理解するためにTabキーやショートカットを使用してナビゲートすることが多いのですが、意味のある情報がない場合、彼らは必要な情報を見つけるために何度もTabキーを押さなければならず、ストレスフルな体験となります。
Grupo Boticárioでは、この課題を解決するために、Amazon BedrockとClaude 3 Sonnetモデルを活用して、製品画像の詳細で意味のある説明を自動生成する方法を開発しました。これにより、視覚障害者も製品の視覚的特徴を理解し、より情報に基づいた購買決定ができるようになりました。
次のセクションでは、BedrockとAnthropicの技術をどのように統合し、この問題を解決したかについて詳しく説明します。
16. BedrocとAnthropicの技術統合
16.1. Eコマースプラットフォームとの統合プロセス
William: それでは、Amazon BedrockとAnthropicのClaude 3 Sonnetモデルを私たちのEコマースプラットフォームにどのように統合したかについて説明します。スケーラビリティを実現するために、私たちはEコマースプラットフォームと統合しました。ただし、すべての画像を自動的に処理するのではなく、管理パネルにログインした人が手動でレビューするワークフローを構築しました。
具体的な統合プロセスはこのようになっています。管理パネル(CMS)にログインしたユーザーがボタンをクリックすると、Lambda関数にHTTPリクエストが送信されます。このLambda関数は、Base64でエンコードされた画像をモデル、つまりBedrockに送信します。私たちはAnthropicのClaude 3 Sonnetを使用しています。そして、画像で何が起きているかについての提案が返ってきます。
Thiago Couto: 技術的な観点から見ると、なぜLambda関数を使用する選択をしたのですか?また、Base64エンコーディングを使用する理由は何でしょうか?
William: Lambda関数を選択した主な理由は、スケーラビリティとコスト効率です。このプロセスは必要に応じて実行されるため、常時稼働するサーバーを維持する必要がありません。また、Lambda関数は需要に応じて自動的にスケールアップするため、多くの製品が同時に処理される場合でも対応できます。
Base64エンコーディングに関しては、HTTPリクエストを通じてバイナリデータを安全に送信するための標準的な方法です。画像ファイルをテキスト形式に変換することで、APIを通じて簡単に送信できます。Bedrockの画像理解APIも、入力として画像のBase64エンコードを受け付けているため、自然な選択でした。
Leonardo: ビジネスの観点からは、開発コストと運用コストのバランスをどのように考慮しましたか?また、既存のEコマースプラットフォームとの統合において、どのような課題がありましたか?
William: 開発コストと運用コストのバランスは重要な考慮事項でした。初期投資としては、Lambda関数の開発とBedrockとの統合に時間を要しましたが、サーバーレスアーキテクチャを採用することで、長期的な運用コストを大幅に削減できました。実際に使用したときだけ料金が発生するため、コスト効率が非常に高いです。
既存のEコマースプラットフォームとの統合における最大の課題は、複数のブランドサイトがあり、それぞれが独自のCMSと技術スタックを持っていることでした。この課題に対処するため、APIファーストのアプローチを採用し、どのプラットフォームからも呼び出せる共通のサービスを構築しました。
Caio Monteiro: 手動レビューのプロセスを含めることにした理由は何ですか?完全に自動化しなかったのですか?
William: これは重要な決断でした。完全に自動化することも技術的には可能でしたが、次の理由から手動レビューのステップを含めることを選択しました。
まず、AIが生成する説明の品質を確保するためです。特に初期段階では、モデルが時々不正確な説明を生成することがありました。手動レビューにより、これらの問題を修正し、より良い説明を提供できます。
また、手動レビューは製品マネージャーがAIの能力を理解し、信頼を構築するのにも役立ちました。彼らはAIが提案する説明を見て調整することで、システムに対する信頼を徐々に高めていきました。
将来的には、信頼性が実証され、モデルがさらに改良された段階で、より自動化されたプロセスに移行する可能性もあります。
Thiago Couto: この統合プロセスで学んだ主な教訓は何ですか?他の企業が同様のプロジェクトを実施する際のアドバイスはありますか?
William: 主な教訓の一つは、小さく始めて迅速に反復することの重要性です。最初は単純なプロンプトから始め、フィードバックに基づいて改良していきました。完璧なソリューションを一度に構築しようとするのではなく、継続的に改善するアプローチが非常に効果的でした。
また、技術チームだけでなく、ビジネスユーザーも早期に巻き込むことが重要でした。彼らの視点と専門知識がプロジェクトの成功に不可欠でした。
最後に、アクセシビリティは技術的な問題であると同時に、人間中心の問題でもあることを認識することが重要です。技術的に優れたソリューションを構築するだけでなく、実際のユーザーのニーズと体験を常に念頭に置く必要があります。
16.2. 手動レビューを含むワークフロー
William: 先ほど触れたように、私たちのワークフローには手動レビューのステップが含まれています。その具体的なプロセスについて詳しく説明しましょう。
管理パネルにログインした人が、画像のために詳細な説明を生成したいと思ったとき、ボタンをクリックしてプロセスを開始します。システムはその画像をBedrockに送信し、Claude 3 Sonnetモデルがその画像に何が写っているかについての提案を返します。
しかし、ここで重要なのは次のステップです。AIが生成した説明はそのまま公開されるのではなく、レビューアーがその内容を確認し、必要に応じて編集や改善を行います。製品の説明をより良くしたり、特定の情報を強調したりすることができます。レビューアーが満足したら、その情報を保存します。
保存された情報は2つのデータベース、製品APIと検索APIに送られます。私たちはMongoDBとElastic Searchを使用しています。そして最終的に、フロントエンド、つまりWebストアに表示されます。ここでHTMLがレンダリングされ、APIレスポンスがHTMLに組み込まれ、各画像で何が起きているかが表示されます。これは非常にシンプルなプロセスですが、従来の手動プロセスと比較すると、はるかに効率的です。
Thiago Couto: 手動レビューのステップは品質管理の観点から非常に重要ですね。レビューアーはどのような基準で説明を評価していますか?また、どのような場合に編集が必要だと判断するのでしょうか?
William: 良い質問です。レビューアーは主に次の基準で説明を評価しています。まず、正確性です。AIが製品の特徴を正しく識別しているか確認します。例えば、色や形状、パッケージの詳細などが正確に描写されているかをチェックします。
次に、完全性です。製品を理解する上で重要なすべての視覚的要素が含まれているかを確認します。時には、AIが重要な詳細を見落としていることがあります。
また、ブランドの一貫性も重要です。説明がブランドのトーンや価値観と一致しているかを確認します。例えば、高級ブランドの製品には、それに相応しい洗練された言葉遣いが求められます。
Leonardo: ビジネスの観点からは、このレビュープロセスは単なる品質管理以上の価値があります。製品マネージャーはAIが生成した説明を通じて、時に自社製品の新たな側面を発見することがあります。例えば、AIが製品のデザイン要素と使用シーンの関連性を指摘することで、新たなマーケティングの着眼点が生まれることもあります。
また、このプロセスは組織内でのAI採用の促進にも役立っています。製品マネージャーがAIと直接対話し、その出力を管理することで、AIに対する理解と信頼が高まります。
Caio Monteiro: レビュープロセスでの主な課題と、それをどのように解決したかを教えてください。
William: 主な課題の一つは、大量の製品画像に対して効率的にレビューを行うことでした。特に新製品のローンチ時には、数百もの画像を短期間でレビューする必要があります。
この課題に対処するため、バッチ処理機能を導入しました。複数の画像を一度に処理し、優先順位を設定できるようにしました。また、頻繁に修正が必要な特定のパターンを特定し、プロンプトを改良することで、最初からより良い説明が生成されるようにしました。
もう一つの課題は、一貫性の確保でした。複数のレビューアーがいる場合、説明のスタイルや詳細レベルにばらつきが生じる可能性があります。これに対処するため、明確なガイドラインとレビュー基準を作成し、定期的なトレーニングセッションを実施しています。
Thiago Couto: 将来的には、このプロセスをさらに自動化する計画はありますか?
William: はい、長期的にはより高度な自動化を目指しています。現在のモデルと生成された説明の品質に対する信頼が高まるにつれて、レビュープロセスを合理化できると考えています。
例えば、特定のカテゴリーや製品タイプについては、AIの精度が十分に高いことが証明されれば、自動承認のワークフローを導入することも検討しています。また、レビューアーが行った編集からシステムが学習し、将来の説明生成を改善するフィードバックループの構築も計画しています。
ただし、完全自動化ではなく、人間とAIの協働を常に重視しています。技術がどれだけ進化しても、人間の判断と創造性は不可欠だと考えています。
16.3. データベースと検索APIへの保存と利用
William: AIによって生成され、人間によってレビューされた製品画像の説明は、次のステップでデータベースに保存されます。私たちは2つの主要なデータベースを使用しています。製品APIに接続されているMongoDBと、検索APIに接続されているElastic Searchです。
この二重のデータベースアプローチには重要な理由があります。MongoDBは製品情報の主要ストレージとして機能し、Eコマースサイトで製品ページを表示する際に使用されます。一方、Elastic Searchは検索機能に特化しており、ユーザーが特定の特徴や属性に基づいて製品を検索できるようにします。
保存された説明は、最終的にウェブストアのフロントエンドに表示されます。このプロセスでは、HTMLがレンダリングされ、APIレスポンスがHTMLに組み込まれます。これにより、すべてのユーザー、特にスクリーンリーダーを使用する視覚障害者に、画像の内容が伝わります。
Thiago Couto: 検索APIにこのデータを保存することで、どのような新しい可能性が生まれたのですか?通常のテキスト検索を超えた機能はありますか?
William: 優れた質問です。実は、これは私たちの主な目標ではありませんでしたが、非常に価値のある副産物として現れました。製品の物理的特性を検索することが可能になったのです。例えば、「赤い丸いフレグランス」を検索すると、その情報は製品名や説明、カテゴリー、テキストのどこにも含まれていません。それは画像にしか存在しない情報です。
しかし、AIが生成した詳細な説明により、テキスト形式でこの視覚的情報にアクセスできるようになりました。これはElastic Searchのような高度な検索エンジンを使用することで、ユーザーが以前は検索できなかった視覚的特性に基づいて製品を見つけることができるようになったことを意味します。これは以前はゼロ結果ページだったケースでも、今ではすべてのユーザーがその恩恵を受け、何が起きているかを確認できます。
Leonardo: この機能は、ビジネスの観点からも非常に価値があります。顧客が製品を探す方法は多様で、時には「青いボトルのシャンプー」や「赤いリップスティック」のように視覚的な特徴に基づいて検索することがあります。これまで、そのような検索は効果的ではありませんでした。
また、この改善されたデータ構造により、製品の推奨アルゴリズムも強化されています。類似した視覚的特徴を持つ製品を推奨できるようになり、クロスセルとアップセルの機会が増加しています。
Caio Monteiro: SEOの観点からはどうですか?これらの詳細な説明は検索エンジンのランキングにどのような影響を与えますか?
William: それも重要なポイントです。AIが生成した説明はHTMLのalt属性に埋め込まれるため、Google、Bing、その他の検索エンジンがインデックスを作成する際に利用できるテキストが増えます。これにより、より多くのキーワードで検索結果に表示される可能性が高まります。
実際に、このプロジェクトを実施してから、特定の視覚的特徴や使用シーンに関連するキーワードでの自然検索トラフィックが増加していることを確認しています。これは、従来のSEO施策ではアクセスできなかった検索クエリのロングテールを捉えることができるようになったことを示しています。
Thiago Couto: データベースの観点からは、これらの詳細な説明を保存することで、パフォーマンスやストレージの問題は発生しましたか?
William: 確かに、以前と比べてデータ量は増加しましたが、現代のデータベースシステムは非常に効率的であり、特に大きな問題は発生していません。MongoDBとElastic Searchはどちらも大量のテキストデータを効率的に処理できるように設計されています。
また、画像の説明は比較的小さなテキストデータであり、画像自体のサイズと比較すれば、ストレージへの影響は最小限です。パフォーマンスに関しては、適切なインデックスを設定することで、検索速度を最適化しています。
将来的には、データ量がさらに増加した場合に備えて、新たな最適化戦略を検討することもあるかもしれませんが、現時点では既存のインフラストラクチャで十分対応できています。
17. 実装の効果
William:私たちの実装によって、いくつかの重要な改善が見られました。まず特筆すべきは内部検索機能の向上です。以前は不可能だった製品の物理的特性による検索が可能になりました。例えば、『赤い丸い香水』といった検索クエリを入力すると、関連する製品を見つけることができるようになりました。これは製品名や説明文、カテゴリーなどのテキストフィールドには含まれていない情報であり、画像の中にしか存在しない情報です。今ではベッドロックが画像をテキスト形式で応答してくれるおかげで、代替テキストに含まれる情報を活用した検索が可能になり、以前はゼロ結果だったページでも関連製品を表示できるようになりました。
17.1. 物理的特性による内部検索の向上
William:実装から約3ヶ月で、すでに27,000枚の画像に詳細な説明が追加されました。まだまだ多くの画像が残っていますが、これは良いスタートです。現在ではすべての新製品がこの機能を使用しており、新製品は最初からアクセシブルな状態でローンチされています。
プロンプトの改善も行いました。最初は『グルポ・ボチカリオの製品を考慮して説明してください』という一行のプロンプトから始めましたが、ユーザーからのフィードバックとモデルの出力を基に継続的に改良してきました。小さく始めて、実験し、フィードバックのループを回しながら進化させることが重要です。また、モデルのtemperatureパラメーターも調整しました。temperatureを上げると、モデルはより創造的になりますが、この用途では事実に基づいた正確な描写が必要です。そのため、temperatureパラメーターを下げることで、実際に画像に写っているものだけを正確に説明する結果が得られるようになりました。
Thiago(チアゴ):グルポ・ボチカリオの取り組みは、生成AIとテクノロジーを活用して人々の生活にポジティブな影響を与える素晴らしい例です。この事例については、ブログ記事も公開しています。現在は残念ながらポルトガル語のみですが、必要であれば生成AIを使って翻訳することもできます。
17.2. SEO(検索エンジン最適化)の改善
Williamは、ベッドロックを使用した代替テキスト生成によるSEO効果について次のように説明しました。画像に詳細な代替テキストを追加することで、検索エンジン大手がインデックス化できるテキスト量が増加しました。GoogleやBingなどの検索エンジンは、ページのHTML内に埋め込まれたこれらのテキストも検索対象としてインデックス化できるようになりました。これにより、グルポ・ボチカリオの製品がより多様な検索クエリで発見されやすくなり、検索エンジン経由のトラフィックが向上しました。
Williamは、内部検索の改善とSEO効果に加えて、スクリーンリーダーのユーザー体験が劇的に向上したことも強調しました。以前は製品名のみが繰り返し読み上げられていたのに対し、今では製品の色、形状、ボトルのデザイン、周囲の要素など、画像に含まれる豊かな情報がすべて視覚障害を持つユーザーに伝わるようになりました。Williamはデモンストレーションでスクリーンリーダーが読み上げる詳細な製品説明を再生し、単なる製品名よりもはるかに豊かなストーリーが伝わることを示しました。
17.3. 実装後の成果(3ヶ月で27,000画像の説明作成)
Williamは実装から3ヶ月という短期間で達成した具体的な成果について説明しました。すでに27,000枚の画像に詳細な代替テキストが追加されました。これは全体からすればまだ一部ですが、アクセシビリティ改善への大きな一歩となっています。特に重要なのは、すべての新製品がこの機能を使用するようになり、新製品は最初からアクセシブルな状態でローンチされるようになったことです。
プロンプトエンジニアリングの重要性についても言及しました。最初は「グルポ・ボチカリオの製品を考慮して説明してください」という一行のシンプルなプロンプトから始め、ユーザーフィードバックやモデル出力結果を基に継続的に改良してきました。Williamは小さく始めて実験し、フィードバックループを回しながら進化させることの重要性を強調しました。
また、AIモデルのパラメーター調整も重要な成功要因でした。特にtemperatureパラメーターを下げることで、モデルの創造性を抑え、画像に実際に写っているものだけを正確に描写するよう調整しました。これにより、視覚障害を持つユーザーに正確な情報が伝わるようになり、内部検索や検索エンジン最適化にも信頼性の高いデータを提供できるようになりました。
17.4. モデルのパラメータ調整(温度を下げて事実に基づいた説明に)
Williamは、生成AIモデルの温度パラメーター(temperature)調整が画像説明の品質に与える影響について詳しく説明しました。彼はモデルのtemperatureを意図的に低く設定したことを強調しました。温度パラメーターが高いほどモデルはより創造的な出力を生成する傾向がありますが、eコマースの製品画像説明という用途では、創造性よりも正確性が重要だからです。
「私たちは温度パラメーターに調整を加えました。温度を上げるとモデルはより創造的になりますが、この用途ではそれは望ましくありません。私たちが必要としているのは事実に基づいた、現実に即した説明です。モデルには実際に画像に写っているものだけを正確に描写してほしいのです。そのため、temperatureパラメーターを下げることで、より良い結果が得られるようになりました」とWilliamは説明しました。
この調整により、視覚障害を持つユーザーに対して誤解を招くような過剰な創造的表現を避け、製品の物理的特性を正確に伝えることができるようになりました。これは内部検索精度の向上にも貢献し、ユーザーが製品の外観や物理的特徴に基づいて検索した際に、関連性の高い結果を返せるようになりました。
18. まとめと連絡先
18.1. ブログ投稿の案内
Thiagoは発表の締めくくりとして、グルポ・ボチカリオの取り組みについてさらに詳しく知りたい視聴者のためにブログ投稿を案内しました。「こちらがコンタクト情報とブログ投稿へのリンクです。残念ながら現時点では米国向けに翻訳・公開している途中なので、このブログ記事はポルトガル語のみとなっています。必要であれば生成AIを使って翻訳することも可能です」と説明しました。
Thiagoはグルポ・ボチカリオに感謝の意を表しながら「グルポ・ボチカリオの皆さん、この素晴らしいストーリーを共有し、生成AIとテクノロジーを活用して人々の生活にポジティブな影響を与える取り組みを紹介してくださりありがとうございます」と述べました。
最後に参加者に対して「アンケートへの回答をお忘れなく。AWSでは皆さんのフィードバックを大切にしています。改めて感謝申し上げます。素晴らしいre:Inventをお過ごしください」と締めくくりました。このセッションを通じて、生成AIがビジネス改善だけでなく、社会的包摂性を高め、視覚障害を持つユーザーの生活を向上させる可能性が示されました。
18.2. フィードバックの重要性
Thiagoはセッションの最後に、参加者からのフィードバックの重要性を強調しました。「AWSではお客様からのフィードバックを非常に価値あるものと考えています。このセッションについてのアンケートへの回答をどうかお忘れなく」と述べ、継続的な改善のためにはユーザーからの意見が不可欠であることを示しました。
このメッセージはグルポ・ボチカリオのアクセシビリティ向上への取り組み全体とも一貫しています。Williamが説明したように、彼らの生成AIを活用した代替テキスト生成の取り組みも、最初のシンプルなプロンプトから始まり、ユーザーからのフィードバックを基に継続的に改良されてきました。フィードバックループを確立し、実際のユーザー体験に基づいて調整することが、アクセシビリティ機能の品質向上において重要な役割を果たしています。
Thiagoは「このようなセッションを通じて皆さんと知識を共有し、より包括的な社会の構築に貢献できることを嬉しく思います」と述べ、技術イノベーションが単なるビジネス価値の創出だけでなく、社会的包摂性の向上にも役立つという理念を強調しました。