※本レポートは、2024年10月31日から2024年11月5日まで情勢を国民民主党の動きを中心にまとめています。 本レポートは、動画の内容を要約・構造化したものです。できる限り正確な内容の反映に努めていますが、要約や解釈による誤りがある可能性があります。より詳細な文脈や完全な情報については、オリジナルの動画をご視聴ください。また、本レポートで示される見解や政策提案は、収録時点(2024年)のものであることにご留意ください。
玉木雄一郎氏は、1969年香川生まれ。東京大学卒業後、大蔵省に入省。1997年ハーバード大学大学院(ケネディスクール)修了。2009年に衆議院議員に初当選。希望の党代表を経て2018年に国民民主党代表に就任。
1. 政治的状況
1.1 ハングパーラメントの現状と意義
現在の日本政治は、ハングパーラメント(宙づり国会)という状況に直面しています。これは比例代表制を採用しているヨーロッパでは一般的な現象です。どの政党も単独過半数を取れない状況で、様々な意見を聞きながら合意形成をしていく必要があります。ヨーロッパでは数ヶ月かけて連立政権を作ったり、連立政権の外から協力を得るなど、多様な形態があります。
私も役人時代によく経験しましたが、これまでの日本では、自民党と公明党さえ押さえておけば過半数が確保できました。そのため、政策は最初に自民党の部会に諮られ、自民党という私的な組織と公明党の了承さえ得られれば、国会に提出されても実質的な審議は形骸化していました。いわゆる「事前審査制」により、公の議場である国会の外で実質的な政策決定が行われていたのです。
しかし、今回の選挙結果により、この状況が大きく変容しつつあります。どの政党も単独過半数を持たない中で、新たなルールメイキングの仕組みを模索している段階です。私はこれをポジティブに捉えています。なぜなら、我々野党に投票してくれた国民の意思も民意の一部であり、そうした多様な民意をしっかりと受け止めて合意形成していくことが、民主主義の本来あるべき姿だからです。
時に面倒に感じられるかもしれませんが、単に与党の了承だけで物事が決まってしまう状況よりも、議論の深みが出てくると考えています。これは与党にも変化をもたらしましたが、同時に野党にも変化と責任を求めることになりました。野党も単に反対するだけでなく、建設的な議論への参加と提案が求められているのです。
この変化は、多様な民意を反映させる新しい政治の形を作り出す機会となっています。我々国民民主党が「対決より解決」「政策本位」を掲げて4倍の議席を増やすことができたのも、このような新しい政治の形を求める国民の期待の表れだと考えています。今、世界中で政治の分断が進み、より極端な主張をしなければ票が取れないという風潮がある中で、私たちは中道路線を正面から訴え続けました。その結果、議席を増やすことができたのは、世界的に見ても珍しい現象であり、建設的な議論を求める国民の意思の表れだと確信しています。
1.2 各政党との政策協議アプローチ
我々は、選挙で約束した政策を実現するために、各党と距離を置きながら協議を行っていく方針です。政策本位で行動することを基本姿勢としています。各党にご協力いただけるのであれば、そのご協力いただいた範囲の中でこちらもきちんと協力をして、お返しをするという考え方です。
特に重要なのは、案件ごとの協議という方針です。自民党から成長会長同士の会議体を設けたいという提案がありましたが、我々はそれを受け入れず、案件ごとに対応していく方針を示し、ご理解いただきました。これは、包括的な協議や連携の枠組みではなく、一つ一つの政策について、その内容に応じて協議していくということです。
例えば、我々は有権者から手取りを増やしてほしい、減税や社会保険料の軽減、ガソリン値下げ、電気値下げといったことを求められています。こういったことができるのであれば協力しますが、できないのであれば、それ相応の対応をせざるを得ません。特に103万円の壁の引き上げを含めた手取りを増やす政策については、是非与党また政府においても実現できるように取り組んでいただきたいと考えています。
2020年に国民民主党が発足した時、私たちは二つの政治姿勢を掲げました。一つは「選挙を政治家の就職活動にしない」ということです。選挙で当選することだけを目的とするなら、今の選挙制度上は与党であれ野党であれ、大きな政党に所属した方が有利です。しかし、我々は国民に向き合う政治を実現したいと考え、政策や国民生活を重視する人だけに残ってもらうことにしました。結果として15人しか残りませんでしたが、これは一種の覚悟の表れでした。
二つ目は「対決より解決」です。これは綺麗事に聞こえるかもしれません。確かに、政治と行政の関係がおかしいと指摘することは重要です。しかし、指摘した以上は、どう変えるのかという代替案を右手に持って、週刊誌を左手に持つような対立的な政治ではなく、建設的な解決策を提示していく政治を目指しています。
選挙という最大の民主主義のプロセスを経て表出した民意を、いかに政策に反映させていくか。これは行政の立場から見ても無視できない課題です。長年硬直化した政治と行政の関係に、良い意味での揺らぎを作っていけるかが問われています。政治と行政の新しい関係構築に向けて、建設的な対話を進めていく必要があります。
1.3 若年層からの支持分析
今回の選挙結果で特筆すべきは、20代・30代における我々の支持率の高さです。20代では自民党を超えて第1位となりました。これは若者や現役世代の不安の現れだと私は考えています。どの政党にも投票先を見出せない中で、私たちが「若者潰すな」というメッセージを最初に掲げたことが評価されたのだと思います。
日本記者クラブの会見でも、「若者潰すな」というのが今回の選挙で最も伝えたいメッセージだと明言しました。確かにこれには反発もありましたが、これまで若者や現役世代の声に正面から向き合う政治が不在だったことへの危機感が、我々への期待につながったのだと考えています。
選挙戦では、60代以上からの支持はほとんど得られないことを覚悟の上で、あえて若者・現役世代に焦点を当てた政策を打ち出しました。確かに若年層の投票率は依然として低いのですが、私たちは党内で合意の上、この路線で行くことを決めました。これは1955年以来の政治の在り方を変えるきっかけにしたいという思いの表れでもあります。
よく国債発行が高齢者に対する負担になると言われますが、これは正しくありません。むしろ、何か負担が必要になった際には、常に保険料負担という形で若年層に負担を寄せてきました。その結果、若者の手取りが増えず、頑張りが報われない状況が続いています。せっかく賃金が上がっても手元に残らないため、消費が増えない。最近の若者が車を買わないと言われますが、実際には買えないのです。
ブラウン大学の教授は、日本のこの財政状況を「財政的児童虐待」と呼びました。これは、生まれながらにしてデフォルトで負担が多い状況を指しています。このような状況を変えない限り、この国で生まれて頑張ろうという若者に、本当の意味で「頑張れ」という声をかけることはできません。
この問題の背景には、投票に行く高齢者向けの政策が優先される政治の構造があります。しかし、我々は2020年の国民民主党発足時から、選挙を政治家の就職活動にしないという方針を掲げ、政策本位の政治を目指してきました。社会保険料負担の偏在やステルス増税の問題に正面から向き合い、世代間格差の是正に取り組んでいくことが、今後の日本経済の発展には不可欠だと考えています。
我々の「対決より解決」「政策本位」という姿勢への評価は、特に若い世代から支持を得ています。世界的に見ても、政治の分断が進み、より極端な主張をしなければ票が取れないという傾向がある中で、中道路線を掲げて議席を4倍に増やすことができたのは、極めて特異な現象です。これは、若者たちが建設的な政策議論を求めているという証左でもあります。
1.4 55年体制からの転換
私は、この55年体制という従来の政治の在り方を変えるきっかけにしたいと考えています。これまでのような単なる右と左、赤組白組、東軍西軍というような二項対立的な枠組みの中で妥協を見出すのではなく、ヨーロッパ型の多様な民意を反映する政治への転換を目指しています。実は、現行の制度自体がそれを目指しているにもかかわらず、無理やり二大政治の枠組みに押し込めてきた面があります。
最大の障壁は財務省です。役所の中で最も強い財務省との関係をどう再構築していくかが課題です。本来、政治というのは行政に対して異なるメッセージや意思を反映させる役割を持っています。しかし、長期政権の下で政治と霞が関があまりにも一体化してしまい、新しい知恵が入ってこない状況になっています。
選挙という最大の民主主義のプロセスを経て表出した民意を、いかに政策に反映させていくか。これは行政の立場から見ても無視できない課題です。長年硬直化した政治と行政の関係に、良い意味での揺らぎを作っていけるかが問われています。政治と行政の新しい関係構築に向けて、建設的な対話を進めていく必要があります。
従来の政策決定プロセスは、自民党と公明党の合意さえ得られれば法案が通過する仕組みでした。私も役人時代を経験しましたが、まず自民党の部会に法案を諮り、自民党と公明党の承認を得れば、その後の国会審議は形式的なものとなっていました。このような事前審査制度により、本来公の場である国会での実質的な議論が形骸化し、政策決定が私的な組織の中で行われていたのです。
今回の選挙結果により、この構造に大きな変化が生まれています。我々野党に投票してくれた国民の意思も、等しく尊重されるべき民意です。多様な民意をしっかりと受け止め、合意形成を図っていく新しい政策決定プロセスが求められています。この変化は、野党側にも大きな責任を課すことになりました。単に議席を増やしたからといって、法案を止めるという対決姿勢では国民の信頼は得られません。野党側にもこれまで以上に建設的な議論への参加が求められています。
我々国民民主党が「対決より解決」「政策本位」を掲げて4倍の議席を増やすことができたのは、このような建設的な姿勢を評価してくれた国民がいるからです。今、世界中で政治の分断が進み、より極端な主張をしなければ票が取れないという風潮がある中で、私たちは中道路線、対決より解決、政策本位という立場を正面から訴え続けました。その結果、議席を増やすことができたのは、世界的に見ても珍しい現象だと考えています。これは、建設的な議論を求める国民の意思の表れであり、今後の政策決定プロセスにおいても、この建設的な姿勢を維持しながら議論に参加していきたいと考えています。
2. 経済政策パッケージ
2.1 基礎控除引き上げ(103万円の壁対策)
民間の努力で賃上げが行われても、それが実際の手取りの増加につながっていないという現状があります。その理由は、税金が高く、社会保険料も高いためです。その結果、手元に残るお金はあまり変わらず、消費に回らない。企業がいくら良い商品を作っても売れず、業績が上がらないため、次の賃上げの原資が生まれないという悪循環に陥っています。
103万円の壁に着目したのは、全国を回る中で大学生からの切実な声を聞いたためです。年末の繁忙期に向けて、カラオケ店などのアルバイト学生も店長も、もっと働きたい、もっと働いてほしいというニーズがあるにもかかわらず、103万円の壁によって就労が制限されています。103万円を超えると税金がかかり始め、さらに扶養から外れることで親の税負担も増えるため、収入を抑制せざるを得ない状況です。
今回の基礎控除引き上げ提案の根拠は、過去29年間の最低賃金の伸び率に基づいています。1995年以来、最低賃金が1.73倍に上昇しているにもかかわらず、基礎控除は据え置かれてきました。最低賃金を1500円に引き上げても、103万円の壁があると結局働く時間を1/3減らすしかありません。そこで、最低賃金の上昇率1.73倍に合わせて、基礎控除も178万円まで引き上げることを提案しています。
財務省からは高所得者優遇ではないかという指摘がありますが、年収1000万円の人の減税額は年間22万円(減税率2.2%)であるのに対し、200万円の人では8.6万円(減税率4.5%)となり、所得に占める減税比率は所得の低い人ほど大きくなります。
基礎控除は、2019年まで所得制限がなく、憲法25条に規定される「健康で文化的な最低限の暮らし」を保障するための仕組みでした。30年ぶりに物価が上昇し、賃金も上がり始め、日経平均も4万円を超えるなど、経済環境が大きく変化している今こそ、この凍結された制度を見直すべき時期に来ています。
財源については、今年の税収は財務省予想の69兆円を大きく超えて75兆円以上になると見込んでいます。また、国債費の利払いの計算時に必ず0.8ポイント(8-9兆円相当)上乗せして予算編成されており、この余剰分を活用することで、8兆円から9兆円程度の財源は確保可能です。
さらに、経済効果として、これまで働くことを10月で抑えていた人が12月まで1年間しっかり働けるようになります。今まで閉めなければならなかったお店が開けることができるようになって売上が立ち、法人税収も増え、消費税収も増えるのです。単なる減収効果だけでなく、社会的な意義や経済全体への波及効果を総合的に見て考えていく必要があります。
2.2 消費税の時限的減税
国民民主党の経済政策の大きな柱は、物価上昇率プラス2%程度の名目賃金上昇率、言い換えれば実質賃金が安定的にプラスになるまで積極財政と金融緩和を実施することです。なぜ2%かというと、30年間デフレが続いてきたため、やや加熱気味になるくらいまで経済を押し上げる必要があると考えているからです。これはいわゆる「ハイプレッシャーエコノミー(高圧経済)」を目指す考え方で、2016年当時のイエレンFRB議長の論文を参考に、我々の経済政策の体系を組み立てています。
実際、2023年8月の消費支出は前年同月比-1.99%と落ち込み、実質賃金も6-7月にボーナスでプラスになったものの、8月にはまたマイナスに転じています。一方で、国の税収は前年同月比25.8%も増加しています。インフレや円安、賃上げの時期には、国民の所得上昇率以上に税収の上昇率が高くなる傾向があり、その差が広がりすぎているため、適切に国民に還元して手取りを増やし、経済の好循環を作り出す必要があります。
消費税に関しては、実質賃金が6-7月にプラスになり、8月に一時的に落ち込んだものの、この傾向が定着すれば減税は不要になると考えています。しかし、もし今この瞬間に政権を任せていただいたとすれば、1年程度の消費税減税は必要だと判断します。具体的には、全ての品目を軽減税率の対象とし、その税率を5%にする法案を提出することを考えています。
値札の変更が現場の負担になるという指摘がありますが、前回8%から10%に引き上げた際に消費税法が改正され、消費税は実質的に法人税の一種となっています。つまり、事業者が納税する際の計算で、売上を課税標準とする第二法人税となっているのです。そのため、表示価格は据え置いたまま、納税時の計算を5%で行えばよく、実務上の対応は容易になっています。
また、物価上昇は消費税率の引き上げと同様の効果を持ちます。例えば、1,000円の商品が2,000円になった場合、消費税額は100円から200円に増加します。物価上昇により、商品自体は何も変わっていないにもかかわらず、税収は増加するのです。このように税収が加速度的に増加する効果があるため、その一部を還元することは理にかなっていると考えます。
ただし、消費税は安定財源であり、その取り扱いには慎重な判断が必要です。今後の経済状況を見ながら、実質賃金の動向を注視しつつ、減税の実施時期や期間を決定していく必要があります。また、これまでコロナ対策として提案してきた政策ではありますが、目標が達成されるまでは一貫して主張を続けていく考えです。
2.3 エネルギーコスト対策
現在のガソリン税における暫定税率、現在は「当分の間税率」と呼ばれていますが、これは1974年に「2年間だけ」という約束で始まった制度です。道路整備のための目的税として導入され、その使途も道路に限定されていましたが、50年近くが経過した今では、使途も不明確になり、本来の趣旨から大きく乖離しています。
税の論理からすれば、この暫定税率はすでに廃止すべき段階にきています。仮に、カーボンニュートラルのための財源として活用するのであれば、今度は炭素付加金などの議論の中で、新たな制度設計をすべきです。税の制度として、一度導入した税を、そのまま他の目的に流用することは適切ではありません。
特に問題なのは、二重課税の存在です。頭の良い財務省でさえ、この二重課税について合理的な説明ができないのが現状です。「海外でもやっていますから」という説明は、まるで「みんな赤信号でも渡っていますから」というような論理であり、唯一、合理的な説明ができない部分です。
現在、この問題に対処するため、補助金による対応を行っていますが、これまでに約11兆円もの資金を投入しています。補助金は市場の価格形成を歪める効果があり、特に175円という特定価格をペッグして補助金額を調整する現在の方式は、市場メカニズムを著しく歪めています。むしろ、25-10円の減税を行い、その中で需給により価格が決まっていく方が望ましいと考えています。
財務省からは「一度下げた税率は戻せない」という指摘がありますが、補助金だって一度始めたものは簡単には止められません。であれば、少なくとも現在の補助金を減税に振り替えることを検討すべきです。これは財源的には同じことであり、市場メカニズムを歪めない点でより良い政策だと考えています。
電気代に関しては、最近の値上がりの実態は、電気代そのものではなく、再エネ賦課金の上昇によるものです。確かに再生可能エネルギーを推進するための制度ですが、再分配の観点から見ると、所得の少ない人々からも徴収して、設置余力のある裕福な事業者に分配される結果となっています。また、最近では山肌を削ってまで太陽光発電を設置するなど、環境保護の名目で逆に環境を破壊する事例も出てきています。
太陽光パネルの価格も下がってきており、市場メカニズムだけで回せる段階に来ているため、賦課金による支援の必要性を見直す時期に来ています。このように、エネルギーコスト対策では、単なる価格抑制だけでなく、市場原理を尊重しつつ、制度の歪みを正していく必要があります。
2.4 社会保険料の負担軽減
現在、約6.8兆円に達している現役世代の保険料の半分以上は、自分たちの医療費のためではなく、後期高齢者医療制度への拠出金として使われています。市町村国民健康保険も、他の民間保険制度から前期調整金を受け取りながら、さらに後期高齢者医療制度への拠出を行うという複雑な構造になっています。特に組合健保では、約7兆円の保険料収入のうち、前期高齢者医療制度と後期高齢者医療制度への拠出が3.4兆円を占め、実際の給付費を上回る状況となっています。
このような制度になった背景には、保険の基本的な仕組みの誤った適用があります。通常、保険とは様々なリスクを持つ人々をプールして、少しずつお金を集め、リスクが顕在化した人に給付する仕組みです。しかし、後期高齢者医療制度は、誰もが年を取れば医療費が必要になるという確実性の高いリスクを対象としており、そもそも保険制度として成立する前提を欠いています。
そのため、後期高齢者医療制度には現在でも公費が半分投入されていますが、これをさらに拡大し、社会保険料による負担を抑制していく必要があります。同時に、後期高齢者の中でも現役並みかそれ以上の経済力がある人々も存在するため、年齢ではなく負担能力に応じた負担の在り方に変えていく必要があります。
具体的には、現在原則1割となっている75歳以上の自己負担を、全高齢者と同様に原則2割とし、現役並みの所得がある方(全体の約2割)については3割負担をお願いしています。ただし、「現役並み」の判断基準として、年金や就労所得に加えて、金融所得や金融資産も考慮に入れるべきです。これにはマイナンバーによる資産把握の仕組みが必要ですが、高齢者でも負担能力のある方には応分の負担をお願いしないと、若い世代に全ての負担が集中してしまいます。
財源については、公費で賄う部分を拡大する必要がありますが、その財源として所得課税の強化は現役世代への負担増加につながるため避けるべきです。消費税か資産課税による対応が望ましく、特に超富裕層への資産課税強化を検討しています。ただし、これは金融資産形成の推進とのバランスを取る必要があり、慎重な制度設計が求められます。
このように、世代間の支え合いを基本としつつも、世代内での支え合いの機能も強化し、少子高齢化時代に適した社会保険制度を構築していく必要があります。特に、後期高齢者医療制度の改革は、単なる負担の付け替えではなく、負担能力に応じた公平な制度設計を目指すものでなければなりません。
3. 世代間格差への取り組み
3.1 教育国債の構想
最近、ある税理士の方から相談を受けた事例が、現在の日本が直面している構造的な問題を象徴的に示しています。98歳のお父さんから76歳の息子への4億円の相続案件でした。これは、後期高齢者の中でお金がぐるぐる回っているだけで、消費性向の低い世代間での資産移転に過ぎません。
この状況に対応するため、私は教育国債という新しい構想を提案しています。現在、日本の個人金融資産は2000兆円、不動産を含めると4000兆円に達しており、その多くが65歳以上の高齢者に集中しています。この資産を持っておられる高齢者に個人国債を購入していただき、そのお金を若年層に回していく仕組みを作りたいと考えています。
ただし、使途を人的投資経費、具体的には子育て、教育、科学技術といった分野に限定し、国債のESG版のような形で設計します。これらの分野への投資は、将来の税収増加や潜在成長率の向上につながるため、投資的経費として位置づけることができます。
相続税制との連携も検討しており、この教育国債の購入に対して相続税上の優遇措置を設けることも一案です。日本人の意識は高く、優遇措置の有無にかかわらず、数兆円規模の需要が見込めると考えています。
このような教育国債の発行は、単なる国債発行とは異なります。給付的な社会保障に対する赤字国債発行には反対ですが、教育や子育て、科学技術といった分野は、財政法第4条の公債発行対象経費として正面から認めるべきです。そうでなければ、適切なマネジメントができません。
特に、今後20年間は65歳以上人口が増加し続け、2042年頃からようやく減少に転じるという人口動態を考えると、支える側と支えられる側の極端な不均衡が生じる期間を乗り切るための新しい仕組みが必要です。教育国債は、その一つの解決策として、次の世代に新しいシステムを引き継ぐための橋渡しの役割を果たすことができると考えています。
私たちは2042年問題を見据え、世代間の資産移転を通じて教育投資を促進する仕組みを構築する必要があります。今後の日本社会において、人的投資は最も重要な経済成長のドライバーとなります。教育国債は、その実現のための具体的な金融スキームとして提案しているものです。
3.2 教育投資の経済効果分析
教育投資の効果を適切に評価するためには、経済学者との協力のもと、人的投資が国家の経済成長や税収にどのような影響を与えるのかについての詳細なデータ分析が必要です。人工問題研究所の調査によると、第3子の出産を諦める理由の大半が経済的理由によるものです。しかし、一人の人間が生涯で稼ぐ所得は、サラリーマンでも2億から2.5億円に達し、そのうち約5000万円が税金として、同程度の額が社会保険料として国に納められます。現在の国民負担率が48%程度であることを考えると、一人の人材を育成することは、将来的な税収確保の観点からも重要な投資となります。
具体的な試算では、1人の人材を育成するために5000万円の投資を行ったとしても、20-30年後には1億円の税収として回収できる計算になります。さらに言えば、1億円の投資であっても、その金額は確実に国に還元されることになります。これは、公共事業への投資乗数効果と比較しても、特に就学前教育への投資効果が高いという研究結果も出ています。
民間企業でも、柳正憲氏がCFOを務めていた時代に、社内の人材研修投資がROEなどの企業業績指標にどのようにプラスの影響を与えるかを数値で示し、それがハーバードビジネススクールでも取り上げられた実績があります。この民間での実践例を参考に、公的部門においても人的投資の効果を定量的に示していく必要があります。
そのためには、人々の生涯にわたる追跡データが必要です。アメリカのように0歳から75歳くらいまでの長期的なデータを収集・分析することで、例えば何歳での教育投資が45歳時点の税収にどのように貢献するのかといった、具体的な相関関係を明らかにすることができます。特に、修学前教育が将来の就業率や生活保護受給率にどのような影響を与えるのかといった分析は、政策の優先順位を決める上で重要な指標となります。
このような経済学的な積み上げを行うことで、教育投資を単なる支出ではなく、将来の経済成長と税収確保のための戦略的投資として位置づけることができます。特に、教育投資による税収増加効果を具体的に示すことができれば、教育国債の発行などの政策についても、より建設的な議論が可能になると考えています。
このように、人的投資の効果を定量的に示し、その重要性を明確にすることは、世代間格差の是正や持続可能な社会保障制度の構築にとって不可欠です。特に就学前教育への投資は、その後の人生における様々な成果に大きな影響を与えることが実証されており、優先的に取り組むべき政策課題となっています。
3.3 教育支援体制の整備
私は教育支援について、まず3歳から義務教育を開始することを提案しています。現在、待機児童問題が解消されているのは、国が責任を持って対応しているからです。同様に、3歳からの早期教育においても、全ての日本の子どもたちに良質な教育を提供する必要があります。
高校までの教育については、修学旅行費や給食費を含めた完全無償化を目指しています。ただし、単なる無償化ではなく、教育の質の確保が重要です。特に私立学校については、ある程度の競争原理を残すことが必要だと考えています。これは、良い教育を提供しようとする学校側のインセンティブを維持するためです。
仮に単純な無償化を行えば、生徒さえ集めれば国から支援が得られるという状況が生まれ、教育の質の低下を招く恐れがあります。自民党から共産党まで、すべての政党が教育無償化を掲げていますが、私はこれに反対の立場です。質の議論なしに、ただ無償化すればよいというものではありません。教育機関がレジャーランド化することは避けなければなりません。
大学教育については、全員が4年制大学に進学する必要はないと考えています。高校までの完全無償化とは異なり、大学への支援は需要側、つまり学生への支援に重点を置くべきです。具体的には、所得の高い世帯の学生向け給付型奨学金を財政的理由で制限している現状を改め、教育国債を活用して支援を拡充すべきです。
加えて、卒業後の返済免除制度の導入も検討しています。例えば、教員になった場合は奨学金の全額免除を行うなど、社会的に重要な職業への誘導策としても活用できます。ただし、大学進学支援だけでは不十分です。高校卒業後すぐに就職する若者や、中学校を出て働く人々のためにも、30歳以下の所得税・住民税免除など、多様なキャリアパスを支援する施策が必要です。
このように、ドイツのマイスター制度なども参考にしながら、4年制大学だけでなく、アートや技能など、様々な分野での才能を発揮できる多様な教育支援体制を整備することが重要です。ただし、どのような教育形態であっても、質の高い教育を提供することは絶対に譲れない条件です。そのためには、教育機関への適切な評価制度の導入や、教員の質の向上に向けた支援も合わせて実施していく必要があります。
3.4 デジタル教育の推進
私は教育の質を向上させるための革新的な提案として、教え方コンテストの実施を提案しています。例えば、小学校5年生の理科を最も上手に教える先生を選び、その授業を全て動画として記録し、文部科学省のホームページにアップロードするというものです。これにより、小学校1年生から中学校3年生までの全ての授業を、優れた教育コンテンツとしてデジタル化することができます。
このシステムは、不登校の生徒やコロナ禍で学校に行けない状況、災害時などの緊急事態に対応できる教育インフラとなります。学校の設備は依然として必要ですが、これらのデジタルコンテンツはティーチングアシスタントのような補助的な役割を果たすことができます。
さらに、生徒が一度に全ての教材を見て、義務教育課程を1年で終わらせるような柔軟な学習も可能になります。その後、アメリカやシンガポール、カナダなどで学ぶことも選択肢として広がります。また、理解が遅れている生徒や学習につまずいている生徒のために、AIを活用してデータを収集・分析し、よくあるつまずきポイント(例えば分数の割り算など)に対する効果的な学習方法を提供することも可能です。
このような取り組みは、実は中国ですでに実践されています。2800の郷を通じて、都市部の優秀な教師による授業動画を農村部に配信し、現地の教師がその動画と宿題をリンクさせたり、集中できない生徒に個別指導を行ったりする形で活用しています。その結果、教育成績の大幅な向上が実証されています。
私はこのアイデアを7年前から提唱しており、中国共産党がこの考えを取り入れた可能性もあります。しかし、重要なのは誰が先に始めたかではなく、教育の質を向上させる効果が実証されているという事実です。教え方が下手な教員や、聞いているだけで眠くなるような大学教授もいる中で、優れた教育者の指導力を最大限に活用し、すべての生徒に質の高い教育を提供することが重要です。YouTubeなどのプラットフォームを活用することで、子どもたちの頭に入りやすい形で教育コンテンツを提供することが可能になります。
このように、デジタル技術を活用することで、教育の質の向上と機会の平等を同時に実現することができます。また、個々の生徒の学習進度や理解度に応じた個別最適化された教育を提供することも可能になります。これは、従来の一斉授業では実現できなかった教育の新しい形を示すものです。
4. 政治改革とガバナンス
4.1 政治資金規制
我々国民民主党は、政治と金の問題について、以下の3つの改革を早急に実施するよう求めています。第一に政務活動費の廃止、第二に文通費については全面公開と残額の国庫返納、そして第三に改正政治資金規制法の中に不足で盛り込まれた第三者機関の速やかな設置です。これらは臨時国会で決めるべき喫緊の課題だと考えています。
立憲民主党との会談でも、政治と金の問題については、年内に決着をつけていこうという点で認識が一致しました。今回の衆議院選挙で示された民意は、この政治と金の問題にしっかりと決着をつけて欲しいということであり、野党間でも協力して、年内に決着ができるように必要に応じて改正政治資金規制法の再改正などを行い、自民党に迫っていく必要があります。
特に改正政治資金規制法の不足の中に検討事項として入っている第三者機関の設置は、我々が従来から求めている重要な改革です。これを実施しないと、結局何をやってもお手盛りの批判から逃れることはできません。政治とお金に関わるルールは、自分たちプレイヤーがルールを決めるのではなく、やはり第三者がしっかりと意見をまとめていただいて、これをやれという第三者の意見を提出していただく仕組みが重要です。
維新の会との会談でも、この点について提案し、持ち帰って検討するという前向きな回答を得ています。我々としては、かなり権限の大きい、政治に関するルールの設定から、自らのチェック、そして問題があるところに対してフラッグを立てるなど、そういった独立性の強い客観的な機関を作ることを提案しています。
このように、政治資金規制の改革は、単なる規制強化ではなく、政治への信頼回復のための本質的な制度改革として位置づけています。与野党の問題ではなく、全ての政治家に関わる問題として捉え、国民の信頼を取り戻すための具体的な方策を提示していく必要があります。第三者機関の設置は、その核となる改革であり、政治と金の問題に関する恒久的な解決策として推進していきたいと考えています。
4.2 国会改革の推進
現在、我々は野党と与党が一体となった国会改革を推進しています。維新の会との幹事長・国対委員長会談でも確認しましたが、この国会改革は、ずっと我が党と維新が力を入れてきた分野です。野党が伸長する政治勢力となった今こそ、しっかりと国会改革を実行していく必要があります。
特に重要なのは、本来、国会が国民の代表がしっかりと議論をする場として、また議論を通じて合意点を見出していく場として機能することです。そして、国会が憲法の定める最高機関としての役割を十分に果たせるよう、制度改革を進めていく必要があります。
具体的な改革として、特別委員会のあり方の見直しを検討しています。基本的には、全ての特別委員会を一旦リセットして、本当に必要なものだけを設置し直すという考え方です。これまでの特別委員会は形骸化しているものも多く、実質的な審議の場として機能していないケースが見られます。
また、与党が割れている現状では、投資討論のあり方も見直す必要があります。これまでのように3分程度の形式的な討論では不十分です。毎週実施するという約束も含めて、より実質的な議論の場とするべきです。
この機会に、国会の人事についても改革を進めたいと考えています。現在のような与党優位の人事では、野党の役割が制限されてしまいます。野党第一党、第二党、第三党が揃って改革を求めることで、与党にも改革を迫ることができます。
国会改革は、単なる制度の変更ではありません。国会が本来の機能を取り戻し、国民の代表機関として実質的な議論と政策決定の場となるための本質的な改革です。今回の選挙結果により与党が過半数を割り、ハングパーラメントとなった状況は、むしろ国会改革を進める絶好の機会だと考えています。野党が一丸となって改革を推進し、より良い国会の実現を目指していきたいと考えています。
4.3 文書通信交通費の扱い
我々は文書通信交通費(文通費)について、全面公開と残額の国庫返納を強く求めています。既に国民民主党と維新の会の2党は文通費の公開を実施していますが、立憲民主党を含む他の政党にも同様の対応を求めています。野党第一党、第二党、第三党が揃って実施することで、与党にも改革を迫る力になると考えています。
特にフジテレビの番組での代表選挙討論会において、橋本氏が「来月から実施する」と発言し、他の候補者も同意したにもかかわらず、その約束が守られていない現状があります。公共の場で約束したことは実行に移すべきです。実際に、私どもと維新の会はすでに実践していますから、野党第一党である立憲民主党にも速やかな実施を求めています。
この文通費の改革は、政治と金をめぐる問題の一つの象徴的な課題です。特に年内には決着をつける必要があると考えています。そのためには、まず野党が率先して改革を実行し、その上で与党に対して改革を迫っていく必要があります。
現在の制度では使途の透明性が確保されておらず、国民の政治不信を招く一因となっています。我々は、支出の詳細を公開し、使用しなかった分は確実に国庫に返納する仕組みを確立すべきだと考えています。これは、政治資金の透明性確保という大きな枠組みの中で、具体的な一歩として位置づけられる改革です。
この改革は単なる透明性の確保だけでなく、政治家の説明責任を果たす機会としても重要です。我々は、政治と金の問題について、野党が一致して改革に取り組むことで、国民の信頼回復につなげていきたいと考えています。
4.4 第三者機関の設置提案
我々は、改正政治資金規制法の不足に盛り込まれた第三者機関について、かなり強力な権限を持つ独立機関として設置することを提案しています。具体的には、政治に関するルールの設定から、自らのチェック機能、そして問題のある部分に対してフラッグを立てるといった、独立性の強い客観的な監視機関としての役割を担わせたいと考えています。
政治とお金に関わるルールは、自分たちプレイヤーがルールを決めるのではなく、やはり第三者がしっかりと意見をまとめ、「これをやれ」という形で提言を行う仕組みが必要です。これは単なる諮問機関ではなく、実効性のある監視・監督機能を備えた組織として構想しています。
この機関には、政治資金の流れを常時モニタリングし、不適切な支出や疑わしい取引を発見した場合には、即座に調査を開始する権限を与えるべきだと考えています。また、政治資金規制のルール作りにおいても、各政党や政治家から独立した立場で、より透明性の高い制度設計を提言できる権限が必要です。
維新の会との会談でも、このような強力な独立機関の設置について提案し、前向きな検討をいただくことができました。政治改革の実効性を確保するためには、このような第三者機関の存在が不可欠です。現在の政治と金をめぐる様々な問題に対して、恒久的な解決策を提供できる制度として、早急に設置を進めていく必要があります。
我々は、この第三者機関の権限設計において、単なる助言機関や諮問機関ではなく、実質的な監視・監督機能を持つ組織として位置づけることを重視しています。これにより、政治資金の透明性確保と、政治への信頼回復を実現していきたいと考えています。
5. 与野党関係の再構築
5.1 「部分連合」という表現への見解
最近、メディアで「部分連合」という言葉が頻繁に使用されていますが、私はこの表現に違和感を持っています。私は24年間この世界にいて、古川国対委員長はもっと長いのですが、このような言葉を聞いたことがありません。立憲民主党の国対委員長もこのような言葉は聞いたことがないと言っています。
この「部分連合」という言葉の定義を示していただきたいと思います。どういう定義で見出しを取っているのでしょうか。元々私の理解では、福田内閣の時の大平正芳幹事長が、当時の野党だった公明党や民社党に対して呼びかけた際に使った言葉が語源だと思うのですが、そもそも「部分連合」という言葉自体が正しいのか、定義されているのでしょうか。
定義のないものに対して、「部分連合ではない」と言われても、答えようがありません。我々はあくまでも、これもずっと政策ごとに対応してきます。政策本位です。政策ごとにはどの党とでも協力していく、これは今年の2月の党大会で決めた方針通りです。今までもそうでしたし、これからもそうです。それを突然「部分連合」と呼ばれても、枠組みを作っているのはこちら側ではありません。
確かに、連立というのは内閣に閣僚を出すことで、閣外協力は閣僚を内閣に出すわけではないけれども政策協定を結んで与党に協力をすることです。しかし、「部分連合」の定義はどこで決まっているのでしょうか。
この古い時代の言葉は使わない方がいいのではないでしょうか。何か新しい言葉を我々も考えたいと思います。ステレオタイプのイメージだけが広がっていくような気がします。我々としては案件ごとに、政策ごとにきちんと議論を行い、実現可能な政策から着実に進めていきたいと考えています。
5.2 政策協議の進め方
私たちは、選挙で約束した政策を実現するために、各党と案件ごとに協議を行っていく方針です。自民党からは成長会長同士の会議体を設置したいという提案がありましたが、我々はそれを受け入れず、案件ごとに対応していくことを提案し、了解をいただきました。
協議の進め方としては、まず政策ごとに協議の場を設定し、具体的な内容について詰めていきます。例えば、税制改正は11月から2月の頭くらいまでに決まってしまいますので、はっきり言って11月は勝負だと考えています。まずは補正予算の議論が中心となりますが、同時並行で税制改正についての方向性も見えないと、補正予算への賛成も難しくなってきます。
我々は、税制改正について党内で合意の上、可能なものと時間のかかるものを区分けして取り組んでいます。すぐにやるもの、半年以内にやるもの、1年以内にやるもの、2-3年くらいかけてやるものと、うまく分けていく必要があります。それぞれの政策について、実現可能性と緊急性を考慮しながら、優先順位をつけて協議を進めていきます。
例えば、103万円の壁を上げていくことと、ガソリンの減税は私は急ぐべきだと考えています。消費税の減税については、実質賃金の伸びをよく見る必要がありますが、景気対策として掲げていますので、やるなら国債発行も割り切って実施する必要があります。
重要なのは、政策の一つ一つについて、財源や実施時期、効果などを具体的に示しながら、建設的な議論を積み重ねていくことです。我々は選挙を政治家の就職活動にしないという方針を掲げ、政策や国民生活を重視する政治を目指しています。
合意形成においては、与野党の対立軸を作ることではなく、実現可能な政策から着実に進めていくことを重視しています。ただし、我々の重要政策について理解が得られない場合は、当然協力することはできません。その場合、与党が過半数に届いていない以上、予算も法律も通らないことになります。このように、政策本位の姿勢を貫きながら、現実的な合意形成を目指していきます。
5.3 党首会談の調整
自民党とは、11月9日以降に条件が整えば石破総裁との党首会談を行うことで合意しました。公明党の代表も11月9日に決まると聞いていますので、その後で党首会談が行われることになります。連立パートナーである公明党の代表が決まる前に、自民党との党首会談を実施することは難しいと考えています。
また、野田民主党代表からも党首会談の申し入れをいただいています。明日立憲民主党と幹事長・国対委員長会談がありますから、そういった会談を経て、条件が整うのであれば党首会談を行いたいと考えています。
会談の内容については、政策全般について幅広く意見交換を行う予定です。ただし、特に立憲民主党との関係では、連合からも要請されている基本政策の一致について議論する必要があります。具体的には、原発を含むエネルギー政策、外交安全保障、憲法について、ある程度一致できるような協議を行うことが重要です。
政権を一緒にして主犯指名に書いてくれとか、あるいは選挙調整するということになると、やはりその基本政策なくしてはやれませんということは、もう何ヶ月も何年も言ってきているわけです。それが未だに実現しないのは課題です。
我々は政策本位の立場から、政策協議はどの党とも行います。しかし、政権を本当に野党でまとめて取るというお考えを野党大としてお持ちになるのであれば、そこの難しいところを避けて通らずに、やはり党内でしっかりまとめてくださいということを申し上げています。その上で我々としっかり議論しませんかということを提案しています。
基本政策は時間がかかるから脇において、とりあえず主犯指名すれば良い、基本政策は時間がかかるから脇において、とりあえず選挙調整すれば良いというやり方を続けてきたから、今の様な野党をまとめられない状況になっているのです。我々は政策にこだわってできた政党ですし、ブレずに貫いてきたから、その政策を捨ててまでなにかをすることはしません。我々も政策のためになっているし、国民のためになっているわけです。選挙のためになっているわけではないのです。
5.4 野党間の連携方針
連合からは、泉体制の時から、原発を含むエネルギー政策、外交安全保障、憲法、そして経済政策の4つについて一定の合意を得るよう要請を受けています。我々は経済政策以外の3つ、つまり外交安保と原発を含むエネルギー政策、憲法について、ある程度一致できるような協議を行いませんかと提案しています。政権を一緒にして主犯指名に書いてくれとか、選挙調整するということになれば、やはりこの基本政策での一致なしにはできません。
これは私たちが何ヶ月も、何年も言い続けてきたことですが、未だに実現していません。常に「基本政策は時間がかかるから脇に置いて、とりあえず主犯指名を」とか「基本政策は時間がかかるから脇に置いて、とりあえず選挙調整を」といったことを続けてきたから、今の様な野党をまとめられない状況になっているのです。
我々は自民党とも立憲民主党とも、政策本位で協議は行います。我々の政策が実現できるのであれば協力はしますが、基本政策で一致できない状況で、選挙のためだけの協力はしません。我々は政策にこだわってできた政党ですし、それをブレずに貫いてきました。この政策へのこだわりは、政策のためであり、国民のためであって、選挙のためではありません。
立憲民主党との関係でも、政策特に共通政策の協議ならもういつでもやります。党首会談でもいつでもやります。ただし、そういうことが党として受け入れられるのかどうか、そこをまず幹事長レベルでも確認してもらいたいと思います。
特に厳しいところ、難しいところに踏み込んで政策の協議をするということを覚悟を決めていただけるのであれば、いつでも私は党首会談を行いたいと思います。しかし、ただ単に選挙のための連携や、表面的な協力関係では意味がありません。我々は政策本位の立場を貫き、建設的な野党としての役割を果たしていく考えです。