※本稿は、河野太郎氏が2024年8月の自由民主党総裁選挙への出馬表明会見の内容を要約したものです。
1. 冒頭発言
1.1 出馬表明と総裁選挙の意義
私、河野太郎は、ここに自由民主党の総裁選挙への出馬を表明いたします。岸田内閣が内政外交に大きな足跡を残した今、その後を受けて日本を引っ張るリーダーとなるべく、皆様のご支援をいただきながら、この国を前に進めてまいりたいと思っております。
これまでの自由民主党の総裁選挙は、日本という国のかたちを議論すれば十分でした。しかし、今回の総裁選挙は初めて、世界のかたちを議論しなければならない選挙になったと考えています。
1.2 世界情勢の変化と日本の課題
冷戦が終わり、米ソの重しが取れて平和の果実を我々が受けることができると思いましたが、どうもそう簡単ではありませんでした。中国、ロシアという独裁政権が誕生し、ヨーロッパではウクライナの侵略が現に起こり、アジアでは東シナ海、南シナ海で毎日のように一方的に力で現状を変更しようとする動きがあります。台湾への侵略も取りざたされています。そして中東では大きな紛争が起こるかもしれません。
同時に、政治的経済的にはグローバルサウスと言われる国々が大きく今伸びています。世界情勢が変わろうとしている中で、本来ならこの西側のグループのリーダーたるアメリカが世界の形を大統領選挙の中で議論をし、世界を引っ張っていくはずでした。しかし残念ながら、今の大統領選挙の中で世界の形の議論というのがあまり聞こえてきません。
1.3 日本の役割と責任
そんな中、日本はG7やヨーロッパ、韓国やオーストラリアといった自由と民主主義という共通の価値観を持つ国々と一緒になって、これからのこの世界のかたちをどうあるべきか、そういう議論をしなければなりません。そして、その中で日本は日本の果たすべき責任は何なのか、果たすべき役割は何なのか、それを明確に主張すると同時に、行動に移していかなければなりません。
1.4 国内の課題と改革の必要性
国内に目を向けると、1億2,000万人の国民の皆様が今、一人一人自分の有事と向き合い、戦おうとしています。デフレが長く続き、賃金が伸びない中、日本社会が分断され、孤立孤独の問題が社会の中で大きくなってきました。この問題を解決をし、お一人お一人の生活の中の将来不安を取り除く、これをしっかりやっていかなければなりません。
そのために今までとやり方を変えなきゃいけない。改革というのは簡単です。しかし、大事なのは、この傷だらけになりながらも改革をとことん進めていく、そういう強い意志があるのか。そしてやるべき改革をやった実績があるのか、そこが問われるんだと思います。
1.5 改革の実績と今後の展望
私はこれまで、例えば押印の廃止、コロナワクチン、ライドシェア、あるいはマイナンバーカード、霞が関で言えば残業代の支給、いろんなことを批判はありましたが、やってまいりました。ハンコ業界をどうするんだ、あるいはワクチンが足らないぞ、マイナンバーカードの使い方がよくわからない、ライドシェア、タクシー業界をどうするつもりだ。いろんなご批判はいただきましたが、それなりに物事を前に進めやってまいりました。
いずれ振り返ってみると、あそこであの改革をやってよかった、あるいはもうそのときには当たり前のことだったよね、そういうことになっているかもしれません。そうやってただ口で改革というのではなく、改革を積み上げてきた実績というのがこれから問われていく、そういう総裁選挙なんだろうと思います。
日本のために、日本の将来のために、今やらなければいけない改革をしっかりと進め、本来日本の強みであったこの分厚い日本の中間層をもう一度つくっていく、それをやらなければならないと思います。
1.6 財政規律の重要性
財政も有事です。この中が終わりました。そろそろ財政規律をしっかりと取り戻さなければなりません。緩やかに時間をかけてでも金利が上がっていく中で財政収支をどうするのか、そういう議論を始めなければならない、そういう時期に来ています。
一つ一つの予算、事業を徹底的に見て、効果が上がっていないものはバッサリ切る。そういうことをやっていかなければなりません。経済と財政、どっちを取るんだという議論がありますが、私はそれはおかしいと思っています。経済は経済でしっかり発展させなければいけませんが、財政も財政として強い財政をつくっていかなければなりません。財政の犠牲の上に経済をつくる、そんな経済の成長は持続可能なもののはずがありません。
これらの課題に真正面から取り組み、日本の未来を切り開いていく決意です。多くの国民の皆様に、ぜひ河野太郎の思いをご理解をいただき、河野太郎の経験を信用していただいて、河野太郎にご支援を賜りますようお願いを申し上げたいと思います。
2. 世界情勢と日本の外交
2.1 地政学的リスクの高まり
冷戦が終わり、米ソの重しが取れて、平和の果実をわれわれ受けることができると思いましたが、どうもそう簡単ではありませんでした。中国、ロシアという独裁政権が誕生し、現在我々は大きな地政学的な危機を迎えています。
2.1.1 ウクライナ侵攻と東アジアの緊張
ヨーロッパではウクライナの侵略が現に起こっています。これは国際秩序を根本から揺るがす事態です。一方、アジアに目を向けると、東シナ海、南シナ海で毎日のように一方的に力で現状を変更しようとする動きがあります。さらに、台湾への侵略も取りざたされています。これらの事態は、日本の安全保障にとって直接的な脅威となっています。
2.1.2 中東情勢の不安定化
そして中東では大きな紛争が起こるかもしれません。この地域の不安定化は、世界のエネルギー供給に直接的な影響を与え、日本の経済安全保障にも重大な影響を及ぼす可能性があります。
2.2 グローバルサウスの台頭
同時に、政治的経済的にはグローバルサウスと言われる国々が大きく今伸びています。世界情勢が変わろうとしている中で、本来ならこの西側のグループのリーダーたるアメリカが世界の形を大統領選挙の中で議論をし、世界を引っ張っていくはずでした。しかし残念ながら、今の大統領選挙の中で世界の形の議論というのがあまり聞こえてきません。
2.3 日本の外交戦略
2.3.1 自由と民主主義の価値観の共有
そんな中、日本はG7やヨーロッパ、韓国やオーストラリアといった自由と民主主義という共通の価値観を持つ国々と一緒になって、これからのこの世界のかたちをどうあるべきか、そういう議論をしなければなりません。
2.3.2 国際協調と日本の責任
そして、その中で日本は日本の果たすべき責任は何なのか、果たすべき役割は何なのか、それを明確に主張すると同時に、行動に移していかなければなりません。
私が外務大臣を務めていた際の経験を踏まえると、こうした複雑な国際情勢に対応するためには、face-to-faceの外交が極めて重要です。私は外務大臣在任中、延べ123か国、国の数で言えば77か国を訪問し、外相会合を含め950回の会合・会談を行いました。さらに電話会談も117回実施しました。
例えば、私が外務大臣になって3日目、フィリピンの会合に行ったとき、私の最初の外相会談の相手がインドネシアのルトノ外務大臣でした。ルトノさんは私の顔を見て、「あなたに一言言いたいことがある。会議がオフィシャルに始まる前に一言言わせろ」と言いました。「日本の外務大臣。電話1本で用が済むと思うな」とかなり強い口調で言われて私はびっくりしました。日本の外務大臣は電話をかければそれで済むと思っているかもしれないけれども、ちゃんと相手の国に足を運んでそこでしっかり話し合いをして、お互いの理解を深めて物事を進めなきゃいけないと言われました。
この経験から、私は外務大臣の在任中、中にはスタンプラリーと揶揄する人もいましたけども、自分でできることはしっかりやると決意しました。その結果、様々な外交的成果を上げることができました。
例えば、外相会合の中で、ミャンマーの問題で日本とそれ以外の国が対立をしたときに、イギリスのボリス・ジョンソン外務大臣と二人でサシで話し合いをして問題を解決しました。また、ヨルダンのサファヴィー外務大臣からパレスチナ問題の会合をやるから、一緒に共同議長をやってくれと個人的に頼まれて、パレスチナ問題で日本も共同議長をやることになりました。
さらに、イランのザリーフ外務大臣と相談をしながら、安倍総理のイラン訪問を成功に導きました。防衛大臣のときには、当時のアメリカのエスパー国防長官と沖縄での米軍のパラシュート降下訓練をめぐって、電話で怒鳴り合いになりましたが、サイバーの問題に話題が変わった瞬間に元に戻って普通に電話会談を続けるような信頼関係を築くことができました。
このように、実際に世界の中でいろんな経験をすることができ、いろんな経験を積んできました。だからこそ、今、この世界の形を議論する。そして日本としてその議論を実際に実行に移し、世界を引っ張っていくことができると思っております。
中国、ロシアが台頭する中でグローバルサウスも力をつけています。そういう中で、本当ならアメリカにもっともっと前に出てきてもらいたい。残念ながらそうなっていない中で、日本としても役割を果たさなければいけません。
今、ヨーロッパの国々は、ウクライナの侵略という問題を真正面に抱えながら、中東ではガザを中心に紛争が大きくなり、スエズ運河の航行も危ないという状況になっています。それでも、そういう中でも英仏独伊ヨーロッパのそれぞれの国の海軍が、わざわざ自由で開かれたインド太平洋を守るためにアジアに海軍が来てくれる、横須賀に寄ってくれる、南シナ海を航行してくれている。ヨーロッパがそれだけ自由で開かれたインド太平洋を大事に思ってくれる中で、アジアの我々もアジア以外の国々に対して平和と安定を守るために手を差し伸べるということをやらなければならないんだと思います。
これまで冷戦下、日本はアメリカの後ろに付いていれば平和が守れたのかもしれない。日米同盟があれば世界最強の米軍に守ってもらえていたのかもしれない。しかし今や世界情勢が大きく変わる中で、我々日本人は自由あるいは民主主義といった共通の価値観をこの世界の中でどう守っていくのか、その議論のリーダーシップをとる一人でなければならないと思いますし、それだけの期待が今、日本に寄せられています。
日本だけが平和だからいいということは通じません。もはやどの国も1カ国だけで平和を守ることはできない。そういう中で日本は世界の平和と安定を守っていくために応分の責任を果たし、応分の負担をしていく。そのことを国民の皆様としっかりと議論をしていかなければならない。そして、日本が世界のかたちをつくっていく、そういう立場にあることを理解をしていただかなければならないと思っております。
3. 国内経済政策
3.1 内部留保と経済成長の課題
国内に目を転ずると、企業の内部留保が2014年、おそらく350兆円ぐらいでした。それから10年後、500兆円を超える内部留保は積み上がるけれども、投資先が残念ながら見つからないというのが今の現実なのかもしれません。一人当たりGDPがだんだんと世界の中でその順順位が下がってきてしまった。最低賃金は韓国より低く、オーストラリアの半分と言われてしまっています。
そういう中で、我々はもう一度この日本経済をしっかりと前に進めていかなければなりません。
3.2 労働市場の現状と改革
今、パートアルバイト1,500万人くらいいらっしゃるんだと思います。派遣社員の方400万人いらっしゃるんだと思います。多くの方が最低賃金に近い低い賃金で働いている、あるいは派遣社員の方、なかなか業務を高度化できず、決まった固定された業務のまま仕事を続けている。この現状を変えて、躍動感ある労働市場を我が国につくっていかなければいけない。
労働集約型の低賃金の職場を温存するのではなく、それをぶち壊して躍動感のある労働市場をつくらなければいけない。春闘のベアで給料が上がりましたというだけでなく、一人一人の人が今以上に付加価値の高い仕事に移ることができる。そんな労働市場を作らなければいけない企業が、人を柔軟に採用することができる労働市場にしなければいけない。
3.3 デジタル投資とスキル向上
今、アメリカは従業員一人、1年間に50万円近いデジタル投資をしていると言われていますが、日本では従業員一人1年間10万円にもそれがなりません。その差を埋めていかなければなりません。そして、一人一人のスキルに対する投資をしっかりとやっていかなければならないと思います。
3.4 投資促進策
そのためにどうするか。社会的な規制の観点から投資を作り出さなければなりません。地域に、例えば自動運転を導入できるようにしていく。あるいはPXの観点からスマートグリッド、あるいはCXの投資を増やしていく。廃棄物処理、リサイクルといった方面での高度化を進めていくための投資をしていく。そして、その成功したものを海外に持っていくということをやらなければならないんだろうと思います。
あるいは、医療や福祉、ガスや電気といった縦割りになっている業界の壁を取り除いていく。あるいは自動車のように物をつくって売るだけでなく、そこに自動運転のような新たな技術サービスを入れる、そうしたことができるような後押しをしなければなりません。
3.5 海外展開の促進
そして、日本のスタートアップや日本の質のいい農産物を海外へしっかりと持っていけるようなサポートをしなければならない。あるいは、映画やドラマ、ポップといった文化コンテンツも海外へ持っていけるかもしれません。
3.6 民間主導の経済発展
日本は計画経済ではありませんし、社会主義経済でもありません。民間主導で経済をいかに発展させることができるか、そして民間主導で経済を発展させるための妨げになっているような規制は、大胆に改革をしていかなければならないと思っております。
3.7 地方経済の活性化とデジタル化
例えば、今、ライドシェア、いろんな地方でやろうとしています。地方の最大の問題は、人口が減り、様々な分野の需要が減っていく中でどうしていくのか。その需要が減っていく中でどうビジネスをしていくのか。本来ならこの需要をデジタルでデータとして補足をし、それを供給者がうまく組み合わせて供給をしていく。しかし、今の地方の状況では、一つ一つの個社でデジタル化をしよう、デジタルデータを集めようとしても採算が合いません。
オープンソース化、オープンデータ化をして、みんなで集めたデジタルデータを需要のデータを共有し、そこに様々な供給を組み合わせてサービスをマッチングさせる。今、地方で、ライドシェアで我々がやろうとしていることは、この地方で縮む需要をいかにオープン化、オープンソース化、オープンデータ化して吸い上げて、そこに対して適切な供給をしていくか。いわばその実験の第1歩をライドシェアでやろうとしています。
これがうまくいけば、教育や医療、あるいは小売り、さまざまな分野で地方経済のサービス部門活性化していくことができるのではないかと思っております。
これらの施策を通じて、日本経済の活性化と国際競争力の向上を図り、国民一人一人がその恩恵を実感できる社会を目指してまいります。
4. エネルギー政策
4.1 電力需要の急増と供給不足の課題
エネルギー政策について、私の考えを詳しく説明させていただきます。まず、電力需要の推移について振り返ってみましょう。2007年頃、日本の電力需要は1兆キロワットアワーを超えるところでピークを迎え、そこからおそらく17年連続で右肩下がりになってきたと思います。当初の予想では、2050年には人口減少と省エネの進展により、8,000億キロワットアワーぐらいまで電力需要が縮小すると見込まれていました。再生可能エネルギーを今の2倍のペースで導入することができれば、そこでだいたい需要と供給が合うのではないかと私は思っておりました。
しかし、最近のデータセンター等、生成AIをはじめとする電力需要の急速な伸びにより、これから電力需要は実は反転して増えてしまうことがわかってきました。新たな予測では、2050年の電力需要は1兆4,000億キロワットアワーぐらいにまで増加すると見込まれています。
このような状況下で、再生可能エネルギーを今の2倍のペースで入れたとしても、全く足りません。原子炉を再稼働できるものは再稼働しても、恐らく4,000億キロワットアワーぐらいは足らなくなってくるんだと思います。
そうすると電力の供給が追いつかないから、データセンターを日本からシンガポールへ移そうとか、あるいは電力の供給ができないからAIの投資を日本から他の国に持っていこうということが起きては、経済にも影響が出てしまいます。
4.2 多様なエネルギー技術への投資
今はまず、この電力の供給を最大限するために、あらゆる技術に張っておかなければいけないんだと思います。その中には水素やアンモニア、DCS、あるいは核融合、いろんなものがあると思いますし、リプレースといったものも選択肢としてはあるんだと思います。
そうやっているうちに、省エネがどれぐらいいくのか、需要の方も収れんをしてくるでしょうし、どの技術が可能性が出てきたのかというのもある中で、最終的には需要を上回ることができれば、メリットオーダーで電力を供給していくということになるんだろうと思います。
4.3 原子力発電所の課題と対策
原子力発電所のプールの問題が今大きくクローズアップされておりますが、東電、原電については、むつの中間貯蔵が動き出すということで一息つけるのではないかと思っております。関電については、もう少し様々なことを試みなければならないのではないか。
そういう中で、プルトニウム余剰のプルトニウムを持ち続けるというわけにもいきませんし、最終処分地をどうするかというのがまだ決まらない中で、日本としてできることは一生懸命何でもやっていくという必要が当面はあるのではないかというふうに思っております。
4.4 カーボンニュートラルへの取り組み
2050年カーボンニュートラルということを考えると、特に今年の夏の天気を考えると、やはり化石燃料からの脱却というのは、これはやはり日本というか、世界は避けて通れない状況だと思いますので、まずはそこをしっかりやっていかなければいけないのかなと思います。
以上が、現在のエネルギー政策に関する私の考えです。これらの課題に真摯に向き合い、日本のエネルギー政策を着実に前進させていく所存です。
5. 財政政策
5.1 財政規律の重要性
財政も有事です。この中が終わりました。そろそろ財政規律をしっかりと取り戻さなければなりません。一つ一つの予算、事業を徹底的に見て、効果が上がっていないものはバッサリ切る。そういうことをやっていかなければなりません。
経済と財政、どっちを取るんだという議論がありますが、私はそれはおかしいと思っています。経済は経済でしっかり発展させなければいけませんが、財政も財政として強い財政をつくっていかなければなりません。財政の犠牲の上に経済をつくる、そんな経済の成長は持続可能なもののはずがありません。
5.2 金利上昇への対応
緩やかに時間をかけてでも金利が上がっていく中で財政収支をどうするのか、そういう議論を始めなければならない、そういう時期に来ています。
日本の経済が成長するに従って、インフレが安定的に2%で続いていくに従って、当然金利の正常化というのも行われてくるんだろうというふうに思います。そういう中で、この国の財政というものも当然に影響を受けるわけですから、これまでのような0金利というわけにはいかない中で、やはり財政規律というものをしっかり取り戻していく。政府の債務が発散しないように、そこはしっかりコントロールしていく、その重要性というのは変わらないと思います。
5.3 効果的な予算配分
予算、事業一つ一つを見ていると、当初目的と言われていたものと、それを何で図るかというのが整合性がとれていないものがあります。これは農水省だけでなく、ほかの役所も全てそうです。そういうものについては、何のための予算、事業なのか、その効果を何で測るのか、果たして効果が出ているのか、同じ尺度で見なければならないと思っていてます。
効果がないものに予算をつけて総額いくらですと言っても結果はついてきませんから、総額というならば効果が出ているものに変えていかなければならないということだと思います。
5.4 有事への備えと平時の財政管理
振り返ってみれば、コロナの前にはリーマンショックがあり、その前にはアジアの通貨危機がありました。10年に一度の有事には、政府がしっかりと前に出て、国民の皆様の生活を支える。しかし、平時にはそのための財政余力をしっかりと持っていなければなりません。
これらの課題に真摯に向き合い、持続可能な財政政策の実現に向けて全力を尽くす所存です。国民の皆様のご理解とご協力を賜りながら、この難しい課題に取り組んでまいります。
6. デジタル政策
6.1 マイナンバーカードの普及と活用
マイナンバーカードの普及であったり、あるいはスマートフォンへのマイナンバーカードの機能の搭載であったり、かなり当初見込みよりもうまくいったのではないかというふうに自負しております。
マイナンバーカード、これは任意でございます。法律的にもそういうふうになっておりますから、マイナンバーカード、保険証に切り替わりますけども、マイナンバーカードを持ってない方には資格確認書が出ますので、マイナンバーカードがなくとも特に問題はございません。
6.2 デジタル化の推進と社会課題解決
デジタル化というのは、もうその世界、世界というか、社会の中のあらゆるところで必要となってきますので、デジタル庁、デジタル大臣、そこの部分をしっかり技術面から支えてもらう。総理として、このデジタル技術を生かしながら、日本の社会人口が減少し、一部過疎化が進む中でいかに温もりのある温かい社会をつくっていくか、その総合的な指揮を執っていきたいというふうに思っています。
6.3 地方でのデジタル活用:ライドシェアの例
例えば、今、ライドシェア、いろんな地方でやろうとしています。地方の最大の問題は、人口が減り、様々な分野の需要が減っていく中でどうしていくのか。その需要が減っていく中でどうビジネスをしていくのか。本来ならこの需要をデジタルでデータとして補足をし、それを供給者がうまく組み合わせて供給をしていく。しかし、今の地方の状況では、一つ一つの個社でデジタル化をしよう、デジタルデータを集めようとしても採算が合いません。
オープンソース化、オープンデータ化をして、みんなで集めたデジタルデータを需要のデータを共有し、そこに様々な供給を組み合わせてサービスをマッチングさせる。今、地方で、ライドシェアで我々がやろうとしていることは、この地方で縮む需要をいかにオープン化、オープンソース化、オープンデータ化して吸い上げて、そこに対して適切な供給をしていくか。いわばその実験の第1歩をライドシェアでやろうとしています。
これがうまくいけば、教育や医療、あるいは小売り、さまざまな分野で地方経済のサービス部門活性化していくことができるのではないかと思っております。
以上が、デジタル政策に関する私の考えと取り組みの概要です。デジタル化は避けて通れない道であり、同時に大きな可能性を秘めています。国民の皆様のご理解とご協力を得ながら、着実にデジタル化を進め、より便利で効率的な社会の実現を目指してまいります。
7. 政治改革
7.1 政治資金の透明化と信頼回復
政治に対する信頼の回復、これも急務であります。今回の不記載問題、ルールがあるにもかかわらず、そのルールを守ることができなかった。真相究明もすることができず、書類を訂正することで捜査当局的には終わったのかもしれません。しかし、国民の皆様の目から見てそれでけじめがついたと言えるのでしょうか。
私はけじめをつけて前へ進もうということを常々申し上げてまいりました。この不記載になってしまった金額を返還することで、けじめとして前へ進んでいきたいというふうに思っております。
返還の仕方をどうするか、これは技術的なことですから、そうしようと決めれば、あの党の方でやり方を考えるということになるだろうと思いますし、既に旧起債と同額を返還をしているという議員がいらっしゃることも聞いておりますので、やり方はあるんだろうというふうに思います。
そうやってそこで一旦けじめがつけば、あとは自由民主党の候補として国民の審判を総選挙で仰ぐということになるのではないかと思います。
また、日本の政治資金。非課税にしていただいておりますが、それには報告をきちんとするという義務がかかっています。非課税にしていただいているものは、領収表をつけてきちんと報告をして見ていただく。そして、政治資金を寄附してくださった方、寄付を受け取った側、しっかりとその報告書届出をデジタル化することによって、きちんとマッチングができる、透明性を高くする。そうした政治改革をすることで、国民の皆様から信頼を回復してまいりたいというふうに思っております。
政治への信頼があってこそ、自民党がこれから遂行せねばならない政策を一つ一つ国民の皆様のご理解をいただいて進めていくことができる。その基本となるのが政治への信頼回復だと思っております。
7.2 派閥のあり方と人事改革
これまでも自民党の派閥の弊害というのが取り沙汰されて、派閥解消ということがありました。その後しばらくして旧ナントカ派という記載がされて、知らぬうちに旧が取れて、またナントカ派ということになったということもありました。派閥の弊害って何だというのを考えると、やっぱり金と人事なのではないのかなというふうに思っております。
金については、派閥のパーティーはやらないということになりましたから、この金の問題は。なくなってきた。それから人事についても、自民党のガバナンスコードで派閥による人事はやらないということになっていますから、今の時点で一番大事なのは、この総裁選が終わった後の人事に派閥を介入させない、要するに派閥が人事に携わらないというガバナンスコードがきちんと守られるというところをみんなで確認をするというのが大事なのではないかと思います。
あの今、自民党300人を超える議員がいて、日々様々な議論をしていますから、いろんな集まりができるというのは、これは当たり前のことで、首肯会という政策グループもあれば、神奈川県連の会もあれば、同じ同窓の仲間もいれば、いろんな集まりがあるわけで、あの政策集団と言われているものもそういうものの一つというふうにだんだんなっていくんだろうと思いますし、そういうふうに派閥から人事と金がなくなった以上、そういうふうになっていかなければいけないのかなというふうに思っております。
7.3 総裁選挙の改革
今回の総裁選挙は選挙管理委員会が金のかからない総裁選挙と謳っておりますので、例えば党員へ、例えば政策その他個別の議員候補者が送るのではなくて、例えば選挙管理委員会でまとめて送っていただくようなことを是非これはやっていただきたいかなというふうに思っております。
政治資金については、もう政治資金報告書で報告をすることになっておりますので、それに則ってやっていきたいというふうに思います。
以上が、政治改革に関する私の考えです。国民の皆様の信頼を回復し、より透明性の高い政治を実現することは、我々政治家の責務です。これらの改革を着実に進め、国民の皆様の期待に応える政治を実現してまいります。
8. デジタル時代の人材投資
8.1 デジタル投資の現状と課題
日本のデジタル投資の現状について、私は次のように認識しています。今、アメリカは従業員一人、1年間に50万円近いデジタル投資をしていると言われています。しかし、日本では従業員一人1年間10万円にもそれがなりません。この差は非常に大きく、日本の競争力に影響を与える可能性があります。
8.2 人材のスキル向上への投資
この状況を改善するために、私は次のように考えています。その差を埋めていかなければなりません。そして、一人一人のスキルに対する投資をしっかりとやっていかなければならないと思います。
これは単なるデジタル機器やソフトウェアへの投資だけでなく、人材のスキル向上、つまり従業員一人一人の能力開発に投資することの重要性を示しています。
8.3 デジタル技術を活用した社会課題解決
さらに、デジタル技術の社会における役割について、私は次のように考えています。デジタル化というのは、もうその世界、世界というか、社会の中のあらゆるところで必要となってきます。デジタル庁、デジタル大臣、そこの部分をしっかり技術面から支えてもらう。総理として、このデジタル技術を生かしながら、日本の社会人口が減少し、一部過疎化が進む中でいかに温もりのある温かい社会をつくっていくか、その総合的な指揮を執っていきたいというふうに思っています。
この発言は、デジタル技術が単なる効率化のツールではなく、社会課題解決の重要な手段であることを示しています。人口減少や過疎化といった日本が直面する課題に対して、デジタル技術を活用した解決策を模索する必要性を強調しています。
9. 外交・安全保障政策
9.1 日本の国際的役割と責任
これまで冷戦下、日本はアメリカの後ろに付いていれば平和が守れたのかもしれない。日米同盟があれば世界最強の米軍に守ってもらえていたのかもしれません。しかし今や世界情勢が大きく変わる中で、我々日本人は自由あるいは民主主義といった共通の価値観をこの世界の中でどう守っていくのか、その議論のリーダーシップをとる一人でなければならないと思いますし、それだけの期待が今、日本に寄せられています。
日本だけが平和だからいいということは通じません。もはやどの国も1カ国だけで平和を守ることはできない。そういう中で日本は世界の平和と安定を守っていくために応分の責任を果たし、応分の負担をしていく。そのことを国民の皆様としっかりと議論をしていかなければならない。そして、日本が世界のかたちをつくっていく、そういう立場にあることを理解をしていただかなければならないと思っております。
9.2 国際情勢と日本の対応
今、ヨーロッパの国々は、ウクライナの侵略という問題を真正面に抱えながら、中東ではガザを中心に紛争が大きくなり、スエズ運河の航行も危ないという状況になっています。それでも、そういう中でも英仏独伊ヨーロッパのそれぞれの国の海軍が、わざわざ自由で開かれたインド太平洋を守るためにアジアに海軍が来てくれる、横須賀に寄ってくれる、南シナ海を航行してくれている。ヨーロッパがそれだけ自由で開かれたインド太平洋を大事に思ってくれる中で、アジアの我々もアジア以外の国々に対して平和と安定を守るために手を差し伸べるということをやらなければならないんだと思います。
9.3 外交経験と国際関係構築
私が外務大臣を務めていた際の経験を踏まえると、face-to-faceの外交が極めて重要です。私は外務大臣在任中、延べ123か国、国の数で言えば77か国を訪問し、外相会合を含め950回の会合・会談を行いました。さらに電話会談も117回実施しました。
具体的な事例として、ミャンマーの問題で日本とそれ以外の国が対立をしたときに、イギリスのボリス・ジョンソン外務大臣と二人でサシで話し合いをして問題を解決しました。また、ヨルダンのサファヴィー外務大臣からパレスチナ問題の会合をやるから、一緒に共同議長をやってくれと個人的に頼まれて、パレスチナ問題で日本も共同議長をやることになりました。
さらに、イランのザリーフ外務大臣と相談をしながら、安倍総理のイラン訪問成功だったと言ってもいいと思います。防衛大臣のときには、当時のアメリカのエスパー国防長官と沖縄での米軍のパラシュート降下訓練をめぐって、電話で怒鳴り合いになる。周りで聞いていた人たちはみんな引いていましたけれども、怒鳴り合いをしながら、サイバーの問題に話題が変わった瞬間に元に戻って普通に電話会談を続ける。そういう信頼関係を築いてまいりました。
9.4 今後の外交方針
中国、ロシアが台頭する中でグローバルサウスも力をつけています。そういう中で、本当ならアメリカにもっともっと前に出てきてもらいたい。残念ながらそうなっていない中で、日本としても役割を果たさなければいけません。
このように、実際に世界の中でいろんな経験をすることができ、いろんな経験を積んできました。だからこそ、今、この世界の形を議論する。そして日本としてその議論を実際に実行に移し、世界を引っ張っていくことができると思っております。
10. 農業・食料安全保障
10.1 食料自給率の向上
食料安保は非常に重要になってきたというふうに思います。私は、燃料、食料、衣料、この3つの自給率を高めるということは非常に重要だと思っております。燃料はもちろん、食料それから医療というのはワクチン、薬、この3つの量の自給率を高める必要があるというふうに思っています。
食料についても、必要なところは予算はしっかり確保しなければならないと思っておりますが、予算、事業一つ一つを見ていると、当初目的と言われていたものと、それを何で図るかというのが整合性がとれていないものがあります。これは農水省だけでなく、ほかの役所も全てそうです。そういうものについては、何のための予算、事業なのか、その効果を何で測るのか、果たして効果が出ているのか、同じ尺度で見なければならないと思っています。
効果がないものに予算をつけて総額いくらですと言っても結果はついてきませんから、総額というならば効果が出ているものに変えていかなければならないということだと思います。
10.2 農産物の海外展開
日本の質のいい農産物を海外へしっかりと持っていけるようなサポートをしなければならないと考えています。これは、日本の農業の競争力を高め、国際市場での存在感を強化するための重要な施策です。
以上が、農業・食料安全保障に関する私の考えです。食料自給率の向上と農産物の海外展開は、日本の農業の未来にとって重要な課題です。効果的な予算配分と適切な支援策を通じて、これらの課題に取り組んでいく所存です。
11. 憲法改正
これは国の形ですから、この憲法の議論というものをしっかり前に進めて、なるべく早く発議へ持っていきたいというふうに思っています。
12. 質疑応答
12.1 政治資金問題への対応
今回の不記載問題に関して、けじめをつけて前へ進もうということを常々申し上げてまいりました。この不記載になってしまった金額を返還することで、けじめとして前へ進んでいきたいというふうに思っております。
返還の仕方をどうするか、これは技術的なことですから、そうしようと決めれば、党の方でやり方を考えるということになるだろうと思いますし、既に旧起債と同額を返還をしているという議員がいらっしゃることも聞いておりますので、やり方はあるんだろうというふうに思います。
そうやってそこで一旦けじめがつけば、あとは自由民主党の候補として国民の審判を総選挙で仰ぐということになるのではないかと思います。
12.2 原子力政策の具体的方針
2007年頃、日本の電力需要は1兆キロワットアワーを超えるところでピークになって、そこからおそらく17年連続で右肩下がりになってきたと思います。当初の予想は2050年には8,000億キロワットアワーぐらいまで、人口減少と省エネの進展で電力需要が縮んでいくと考えられていました。
しかし、最近のデータセンター等生成AIをはじめとする電力需要の急速な伸びで、これから電力需要は実は反転して増えてしまう。1兆4,000億キロワットアワーぐらいに2050年はなるんだろうと予測されています。
再生可能エネルギーを今の2倍のペースで入れたとしても、全く足らない状況です。原子炉を再稼働できるものは再稼働しても、恐らく4,000億キロワットアワーぐらいは足らなくなってくるんだと思います。
今はまず、この電力の供給を最大限するために、あらゆる技術に張っておかなければいけないんだと思います。その中には水素やアンモニア、DCS、あるいは核融合、いろんなものがあると思いますし、リプレースといったものも選択肢としてはあるんだと思います。
12.3 派閥解消と党改革
これまでも自民党の派閥の弊害というのが取り沙汰されて、派閥解消ということがありました。派閥の弊害って何だというのを考えると、やっぱり金と人事なのではないのかなというふうに思っております。
金については、派閥のパーティーはやらないということになりましたから、この金の問題はなくなってきた。それから人事についても、自民党のガバナンスコードで派閥による人事はやらないということになっています。
今の時点で一番大事なのは、この総裁選が終わった後の人事に派閥を介入させない、要するに派閥が人事に携わらないというガバナンスコードがきちんと守られるというところをみんなで確認をするというのが大事なのではないかと思います。
12.4 経済政策の評価と今後の方向性
岸田内閣のデフレ脱却というところまで来ました。賃金を上げるという総理の強い決意もあったというふうに思いますが、物価上昇が若干それを上回ってしまったというところはありましたが、ここへ来てGDPもプラス成長になり、賃金が上回ってくるというような状況になってきたところはあるんだろうと思います。
今後の方向性としては、躍動感ある労働市場を我が国につくっていかなければいけない。労働集約型の低賃金の職場を温存するのではなく、それをぶち壊して躍動感のある労働市場をつくらなければいけない。春闘のベアで給料が上がりましたというだけでなく、一人一人の人が今以上に付加価値の高い仕事に移ることができる。そんな労働市場を作らなければいけないと考えています。
12.5 保守層との関係構築
日本で保守と言った時の保守の定義って何だっていうのが、どうもいろんな人、あるいは研究者によってもバラバラだというのが現状ではないのかなというふうに思っております。一言で岩盤保守と言った時に、その人たちは何を共有しているのか、何を目指しているのかというところも多分明確になってないのではないか、なんとなくの感覚でみんな話をしているのではないかというふうに思っています。
自民党は、政治は国民のものというものを掲げていますから、特定の層というよりは広く多くの国民に支持される政策というものを打ち出して、広く大勢の国民の皆様に求められている国をつくっていくということなんだと思います。
これまで日本は、例えば今のヨーロッパの幾つの国のように、極右、極左が何というか伸長して、政治を不安定化するということがなくやってこれたというふうに思っておりますので、どこか特定の層にだけ目を向けるのではなく、広く国民に目を向けながらコンセンサスをつくっていくというのが大事なんだというふうに思っています。
13. 締めくくりの言葉
有事の今こそ河野太郎これまでの経験を生かして、日本のリーダーとしてこの国をさらに前に進めたいと思っております。多くの国民の皆様に、ぜひ河野太郎の思いをご理解をいただき、河野太郎の経験を信用していただいて、河野太郎にご支援を賜りますようお願いを申し上げたいと思います。