※本稿は、岸田文雄首相の2024年8月の自由民主党総裁選挙への不出馬表明会見の内容を要約したものです。
1. はじめに
1.1 外交日程の一区切りと総裁選への動き
昨日、モンゴルのオユンエルデネ首相との電話会談を行いました。これをもって、この夏の外交日程に一区切りをつけることができました。お盆が明ければ、いよいよ秋の総裁選挙に向けた動きが本格化することになります。
1.2 自民党の変革と総裁選の重要性
今回の総裁選挙では、自民党が変わる姿、新生自民党を国民の前にしっかりと示すことが必要です。そのためには、透明で開かれた選挙、そして何よりも自由闊達な論戦が重要です。
1.3 総裁選不出馬の決断
自民党が変わることを示す最も分かりやすい最初の一歩は、私が身を引くことであります。私は来たる総裁選には出馬いたしません。総裁選を通じて選ばれた新たなリーダーを1兵卒として支えていくことに徹してまいります。
1.4 これまでの取り組みと成果
総理総裁としての3年間、30年続いたデフレ経済に終止符を打つため、新しい資本主義のもと、賃上げと投資促進のアニマルスピリッツを官民連携で復活させる取り組みを行ってきました。AI時代における電力需要の大幅増加やGXに対応するため、カーボンプライシング、GX経済移行債の導入、原発再稼働、新型革新炉の設置などエネルギー政策を転換しました。
待ったなしの少子化に対応するために236兆円の大規模な少子化対策を実行し、国際社会の複雑化困難化に対応して、5年で43兆円の防衛力を抜本的に強化しました。
外交面では、強固な日米関係を基礎に、G7広島サミットの開催、NATO首脳会合やキャンプデービッドでの首脳会合への出席などを通じて、分断が進む国際社会において、協調に向けた国際的な議論をリードしてきました。また、日韓関係の改善、グローバルサウスとの関係強化など、外交を多角的に展開してきました。
多くの皆様のご協力によって大きな成果を上げることができたと自負しております。
1.5 政治への信頼回復の必要性
他方で、この間、旧統一教会をめぐる問題や派閥の政治資金パーティーをめぐる政治とカネの問題など、国民の政治不信を招く事態が相次いで生じました。私としては、被害者救済法の成立や政治資金規正法の改正など、課題への対応や再発防止策を講じることが、総理総裁としての私の責任であるという思いで、国民を裏切ることがないよう信念を持って臨んでまいりました。
特に政治とカネの問題をめぐっては、派閥解消、政倫審出席、パーティー券購入の公開上限引き下げなどの判断についてご批判もいただきましたが、国民の信頼あってこその政治であり、政治改革を前に進めるとの強い思いを持って、国民の方を向いて重い決断をさせていただきました。
2. 自身の決断:総裁選不出馬の理由
2.1 自民党が変わる姿を示す必要性
今回の総裁選挙では、自民党が変わる姿、新生自民党を国民の前にしっかりと示すことが必要です。この間、旧統一教会をめぐる問題や派閥の政治資金パーティーをめぐる政治とカネの問題など、国民の政治不信を招く事態が相次いで生じました。私としては、被害者救済法の成立や政治資金規正法の改正など、課題への対応や再発防止策を講じることが、総理総裁としての私の責任であるという思いで、国民を裏切ることがないよう信念を持って臨んでまいりました。
2.2 透明で開かれた選挙の重要性
そのためには、透明で開かれた選挙、そして何よりも自由闊達な論戦が重要です。特に政治とカネの問題をめぐっては、派閥解消、政倫審出席、パーティー券購入の公開上限引き下げなどの判断についてご批判もいただきましたが、国民の信頼あってこその政治であり、政治改革を前に進めるとの強い思いを持って、国民の方を向いて重い決断をさせていただきました。
2.3 身を引くことが最初の一歩
自民党が変わることを示す最も分かりやすい最初の一歩は、私が身を引くことであります。私は来たる総裁選には出馬いたしません。残されたのは自民党トップとしての責任です。もとより、所属議員が起こした重大な事態について、組織の長として責任を取ることにいささかの躊躇もありません。
今回の事案が発生した当初から思い定め、心に期してきたところであり、当面の外交日程に一区切りがついたこの時点で、私が身を引くことでけじめをつけ、総裁選に向かっていきたいと考えています。
総裁選を通じて選ばれた新たなリーダーを1兵卒として支えていくことに徹してまいります。日本が直面する内外の難局は本当に厳しい状況です。今般の総裁選挙では、我こそはと思う方は積極的に手を挙げて、真剣勝負の議論を戦わせてほしいと思っています。
3. 取り組んできた政策と成果
3.1 新しい資本主義の推進
総理総裁としての3年間、30年続いたデフレ経済に終止符を打つこと、そのために新しい資本主義のもと、賃上げと投資促進のアニマルスピリッツを官民連携で復活させることに取り組んでまいりました。
具体的には、AI時代における電力需要の大幅増加やGXに対応するために、カーボンプライシング、GX経済移行債の導入、原発再稼働、新型革新炉の設置などエネルギー政策を転換しました。これらの政策は、新しい資本主義の理念に基づく具体的な取り組みの一環です。
また、待ったなしの少子化に対応するために236兆円の大規模な少子化対策を実行しました。この対策は、将来の労働力確保と同時に、子育て世代の経済的負担を軽減し、消費を促進する効果も期待しています。
さらに、国際社会の複雑化困難化に対応して、5年で43兆円の防衛力を抜本的に強化しました。この施策は、安全保障の強化と同時に、防衛関連産業への投資促進にもつながると考えています。
これらの政策を通じて、賃上げと投資促進のアニマルスピリッツを官民連携で復活させることを目指してきました。その結果、実質賃金が実質的にプラスに転じるなど、一定の成果が現れ始めています。
しかし、まだ道半ばであり、新しい資本主義の理念のもと、持続的な経済成長と分配の好循環を実現するためには、引き続き官民一体となった取り組みが必要です。私は、残された任期中もこの方針を堅持し、日本経済の再生に全力を尽くす所存です。
3.2 エネルギー政策の転換
私の内閣では、AI時代における電力需要の大幅増加やGX(グリーントランスフォーメーション)に対応するため、エネルギー政策の転換に取り組んでまいりました。具体的には、以下の施策を実施しています。
原発再稼働と新型革新炉設置への取り組み
原子力発電所の再稼働と新型革新炉の設置を進めています。これは、エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立を図るための重要な施策です。安全性を最優先としつつ、原子力発電の活用を進めています。
カーボンプライシングとGX経済移行債の導入
脱炭素社会の実現に向けて、カーボンプライシングの導入を決定しました。また、GX経済移行債の導入も決定しています。これは、脱炭素化に向けた投資を促進するための新たな国債です。
これらのエネルギー政策の転換は、日本のエネルギー安全保障を強化し、同時に環境負荷を低減させるための重要な取り組みです。今後も、安全性、安定供給、経済性、環境適合性のバランスを取りながら、持続可能なエネルギー政策を推進してまいります。
3.3 少子化対策
236兆円規模の対策実行
待ったなしの少子化に対応するために、236兆円の大規模な少子化対策を実行しました。この対策は、日本の将来を左右する重要な投資です。少子化は日本社会の根幹を揺るがす問題であり、経済成長の阻害要因ともなりかねません。そのため、子育て世代への支援を強化し、出生率の向上を目指すとともに、子どもたちの健やかな成長を支える環境整備に力を入れています。
3.4 防衛力の抜本的強化
5年で43兆円の防衛費増額
国際社会の複雑化困難化に対応して、5年で43兆円の防衛力を抜本的に強化しました。この増額は、日本の安全保障環境が厳しさを増す中で、国民の生命と財産を守るために不可欠な投資です。
これらの少子化対策と防衛力強化は、日本の未来を守り、持続可能な社会を実現するための重要な施策です。少子化対策によって日本の人口動態を改善し、同時に強固な防衛力によって国の安全を確保することで、日本の長期的な繁栄と安定を実現することを目指しています。
3.5 外交での成果
私の内閣では、強固な日米関係を基礎に、外交を多角的に展開してまいりました。国際社会が分断の危機に直面する中で、協調に向けた国際的な議論をリードすることに注力してきました。以下、主な成果についてご説明いたします。
G7広島サミットの開催
G7広島サミットを開催し、国際社会における日本の立場を強化しました。この会合を通じて、世界の主要国との連携を深め、国際的な課題に対する日本の貢献を示すことができました。
NATO首脳会合とキャンプデービッド首脳会合への出席
NATO首脳会合やキャンプデービッドでの首脳会合に出席し、日本の立場を主張するとともに、国際的な議論をリードしてきました。これらの会合への参加は、日本の国際的プレゼンスを高める重要な機会となりました。
日韓関係の改善
日韓関係の改善に取り組み、両国間の懸案事項の解決に向けて前進しました。戦略的利益を共有する隣国として、協力関係を強化しています。
グローバルサウスとの関係強化
グローバルサウス、特に発展途上国や新興国との関係強化にも力を入れてきました。これらの国々との協力関係を深めることで、国際社会における日本の影響力を拡大しています。
これらの外交成果は、国際社会における日本の地位向上と影響力の拡大につながっています。今後も、地球規模の課題に対して、日本がリーダーシップを発揮し、国際社会の平和と繁栄に貢献していく所存です。
4. 政治への信頼回復に向けた私の取り組み
この間、旧統一教会をめぐる問題や派閥の政治資金パーティーをめぐる政治とカネの問題など、国民の政治不信を招く事態が相次いで生じました。これらの問題は、我が国の政治の根幹を揺るがす重大な課題であり、早急な対応が必要でした。
私としては、被害者救済法の成立や政治資金規正法の改正など、課題への対応や再発防止策を講じることが、総理総裁としての私の責任であるという強い思いで臨んでまいりました。国民を裏切ることがないよう、信念を持って取り組んできたところです。
4.1 政治とカネの問題への取り組み
特に政治とカネの問題をめぐっては、具体的かつ踏み込んだ対策を講じました。まず、派閥解消を決断しました。長年続いてきた自民党の派閥政治に終止符を打つことで、政治の透明性を高めることを目指しました。
次に、政治倫理審査会(政倫審)への出席を義務付けました。これにより、政治家の説明責任を強化し、国民の皆様に対してより開かれた政治を実現しようと努めました。
さらに、パーティー券購入の公開上限引き下げを実施しました。これは、政治資金の流れをより透明化し、国民の皆様に政治とカネの関係をより明確に示すための措置です。
これらの判断についてはご批判もいただきましたが、国民の信頼あってこその政治であり、政治改革を前に進めるとの強い思いを持って、国民の方を向いて重い決断をさせていただきました。
4.2 今後の展望と責任の取り方
残されたのは自民党トップとしての責任です。もとより、所属議員が起こした重大な事態について、組織の長として責任を取ることにいささかの躊躇もありません。
今回の事案が発生した当初から、責任の取り方について思いを巡らせてきました。当面の外交日程に一区切りがついたこの時点で、私が身を引くことでけじめをつけ、総裁選に向かっていきたいと考えています。
政治改革、政治資金規正法改正で残された検討項目について早期に結論を得ていくことが重要です。そのため、政治刷新本部に新たなワーキンググループを設けるよう指示を出したところです。このワーキンググループでは、さらなる政治改革の具体策について議論を重ねていく予定です。
私は、自らの政治人生、そして政治生命を賭けて、1兵卒として引き続きこうした課題に取り組んでまいります。政治への信頼回復は一朝一夕には成し遂げられませんが、一つ一つ着実に改革を進めていくことで、より透明で信頼される政治の実現を目指してまいります。
5. 残された任期中に取り組むべき課題
5.1 GDP600兆円の実現に向けた経済政策
私には政治家岸田文雄として引き続き取り組まなければならない課題があります。30年続いたコストカット型、縮小均衡型、そしてデフレ型経済からの脱却を確かなものとするためには、新しい資本主義の下での取り組みを強化し、賃上げや投資増の流れを加速することで、GDP600兆円を確実なものとしなければなりません。
この目標を達成するためには、具体的な施策の実行が不可欠です。賃上げの促進や生産性向上のための投資を促進する支援策を強化していく必要があります。また、イノベーションの促進も重要です。これらの施策を通じて、持続的な経済成長を実現し、GDP600兆円という目標の達成を目指します。
5.2 第7次エネルギー基本計画の策定
エネルギー政策については、原発の再稼働、新型革新炉の設置を含めたエネルギー政策についても、電力自由化が進む中で、いかに電力投資資金を確保するか、電力安全保障と脱炭素化をいかに両立させるか、第7次エネルギー基本計画の下で方向性を確かなものとしていかなければなりません。
具体的には、安全性を最優先としつつ、既存の原子力発電所の再稼働を進めるとともに、新型革新炉の開発と設置を推進します。また、再生可能エネルギーの更なる導入拡大や、水素やアンモニアなどの次世代エネルギーの開発と実用化にも取り組みます。
これらの施策を総合的に推進することで、エネルギーの安定供給、経済性、環境適合性を同時に実現する方針を堅持しつつ、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた道筋を示してまいります。
これらの経済政策とエネルギー政策は、日本の将来を左右する重要な課題です。残された任期中、これらの課題に全力で取り組み、具体的な成果を上げることで、次の政権にしっかりとバトンを渡していく所存です。
5.3 外交課題への取り組み
外交においては、ウクライナ侵略から3年、核による威嚇、そして核使用の可能性すら指摘される中、唯一の戦争被爆国として、平和国家日本として、終結に向けてリーダーシップを発揮しなければなりません。この点については、国際社会の中で日本の立場を明確に示し、平和的解決に向けた外交努力を続けていく所存です。
日韓関係の正常化
来年は日韓国交正常化60年の節目の年です。日韓関係の正常化を1層確かなものとしなければなりません。これまでの両国間の懸案事項の解決に向けた取り組みを基盤に、さらなる関係強化を図っていきます。経済、文化、安全保障など、多岐にわたる分野で協力を深化させ、両国の利益につながる関係構築を目指します。
日中関係の発展
戦略的互恵関係に基づいた日中関係の発展にも注力します。両国間には様々な課題がありますが、対話を通じてこれらの課題に取り組み、地域の安定と繁栄に寄与する建設的な関係を築いていきたいと考えています。
日朝関係の改善
拉致問題の解決を含む日朝関係の改善も進めていく必要があります。拉致問題は我が国の主権と国民の生命に関わる重大な問題であり、その解決なくして日朝国交正常化はありえません。引き続き、拉致被害者全員の帰国実現に向けて全力を尽くしてまいります。
北東アジア外交の推進
「遠くの親戚より近くの他人」というように、北東アジアの近隣外交を前に進めていかなければなりません。日韓、日中、日朝関係を含む北東アジア地域の安定と繁栄は、日本の国益に直結する重要な課題です。各国との対話を重視しつつ、地域の平和と安定に貢献する外交を展開してまいります。
これらの外交課題に取り組むことで、国際社会における日本の地位を向上させ、同時に国民の安全と繁栄を確保することを目指します。残された任期中、これらの課題に全力で取り組み、次の政権にしっかりとバトンを渡せるよう努めてまいります。
5.4 憲法改正への具体的な取り組み
自衛隊明記と緊急事態条項の条文化
憲法改正については、自衛隊の明記と緊急事態条項について条文の形で詰め、初の発議までつなげていかなければなりません。すでに緊急事態条項については、条文化の作業を進めています。また自衛隊の明記については、今月末までにこの論点整理を衆参で取りまとめるよう指示を出しています。これらの取り組みを着実に実行してまいります。
5.5 政治改革の継続
政治改革、政治資金規正法改正で残された検討項目について早期に結論を得ていかなければなりません。それに、政治刷新本部に新たなワーキンググループを設けるよう指示を出したところです。
私の政治人生、そして政治生命を賭けて、1兵卒として引き続きこうした課題に取り組んでまいります。まずは、9月までの任期中、総理総裁としての私の責任において、できるところまで最大限進めていきます。
6. 新総裁への期待と私の役割
6.1 自由闊達な論戦の重要性
日本が直面する内外の難局は本当に厳しい状況です。今般の総裁選挙では、我こそはと思う方は積極的に手を挙げて、真剣勝負の議論を戦わせてほしいと思っています。これは、自民党が変わる姿を国民の皆様に示すための重要な機会です。候補者それぞれが自身のビジョンや政策を明確に示し、建設的な議論を展開することで、自民党の将来像や日本の進むべき方向性を国民の皆様に提示することができると考えています。
6.2 ノーサイドの精神とドリームチームの結成
そして新総裁が選ばれた後はノーサイドです。主流派も反主流派もなく、新総裁のもとで一致団結し、政策力実行力に基づいた真のドリームチームを作ってもらいたいと思います。党内の分断を乗り越え、全ての人材を最大限に活用することが、自民党の力を最大化し、国民の期待に応える政治を実現する鍵となります。
6.3 国民の共感を得られる政治の実現
そして何よりも大切なことは、国民の共感を得られる政治を実現することにあります。新総裁には、この点を十分に認識し、国民目線での政策立案と実行を期待しています。国民の皆様の声に耳を傾け、真に国民のための政治を展開していくことが求められます。
それができる総裁かどうか、私自身も自分の1票をしっかり見定めて投じていきたいと思っています。新総裁の選出に当たっては、単なる人気や派閥の論理ではなく、真に日本のために貢献できる人物を選ぶことが重要です。私も一党員として、慎重に判断し、投票に臨む所存です。
6.4 1兵卒としての私の決意
もとより私には政治家岸田文雄として引き続き取り組まなければならない課題があります。新しい総裁のもとでも、これらの課題に真摯に取り組み、日本の未来のために全力を尽くしてまいります。特に、経済政策やエネルギー政策、外交・安全保障政策など、重要な課題については、これまでの経験を活かしながら、新総裁を支える形で貢献していきたいと考えています。
1兵卒として、これらの課題に取り組み続ける決意です。私の政治人生、そして政治生命を賭けて、引き続きこうした課題に取り組んでまいります。新しい自民党のもと、日本がさらなる発展を遂げ、国民の皆様が幸せを実感できる社会の実現に向けて、私も一党員として、そして一政治家として、全力を尽くしてまいります。
7. 総裁選不出馬の決断プロセス
7.1 政治と金の問題への対応と責任の認識
今回、政治と金をめぐる問題が発生してから、トップとしての責任のあり方については思いを巡らせてきました。そして、国会最終盤、政治資金規正法の改正なども実現をしたわけでありますが、やはりこの政治と金の問題は大変重要な問題であり、誠心誠意取り組んだつもりであります。
7.2 政策課題への取り組みと成果の整理
政治家としてやりたかったこと、そしてやるべきこと、これを今一度しっかりと整理をし、そして方向性を示す。それだけは、ちょうど総裁選挙から撤退するに当たっても、しっかりと示していく。そういった政治家の意地みたいなものはありました。
ですから、この国会が閉幕してから、先送りできない課題について取り組み、結果を出していくことに専念をしていく、こういったことを申し上げてきました。この1カ月半を振り返りましても、実質賃金が実質的にプラスに転じる、あるいは最低賃金も過去最大の上げ幅を実現する、酷暑を乗り切りのための経済対策、物価高対策、こういったものを示させていただきました。
さらには、旧優生保護法における対応、直接の謝罪ですとか、女性機関のこの主張を撤回するなどの取り組み、さらには佐渡金山の世界遺産への登録、NATOサミットへの出席、PALM展の開催、そして憲法改正に向けても党内の議論を整理して前に進めていく、こういったことを行ってまいりました。
7.3 最終決断のプロセス
自分自身、今日まで取り組んできた政策課題における成果、これは大きなものがあったと自負しておりますが、それらについても改めて最後にこの整理をし、今後の方向性についてしっかりお示していく。これだけはやった上で今回の出馬表明をしたいということを強く思ってきました。
いわば政治家としてのこの意地をしっかり示した上で、これから先を考えた場合に、自民党の信頼回復のためには身を引かなければいけないということで今回の決断をした、こういったことであります。
ぜひしっかりとした総裁選挙をやってもらい、そして選ばれた総裁は、今度こそオール自民党でドリームチームをつくって、この信頼回復に向けてしっかりと取り組んでもらいたいと思います。そのための決断でありたいと私は思っています。
タイミングということについては、今言ったような思いで取り組んだ上で今日に至った、こういったことであります。色々な方々の考え方はお伺いいたしました。しかし、私自身、最後は自分で決定する、これは当然のことであります。私自身が決定をいたしました。
8. 支持率低迷と政治への信頼回復
8.1 政策実行と信頼回復の両立
支持率高い低いについて何か申し上げるつもりはありません。しかし、政治課題において結論を出すということは大事だと思いますが、一方で政治と金の問題、政治の信頼の問題、これも大変大きな課題であるということを改めて感じています。
ですから、政策を進めるためにも信頼回復に努めなければならない、このように感じて、その第1歩として私自身の身の処し方を決断した、こういったことであります。
8.2 政治への信頼回復に向けた取り組みと反省
この間、旧統一教会をめぐる問題や派閥の政治資金パーティーをめぐる政治とカネの問題など、国民の政治不信を招く事態が相次いで生じました。私としては、被害者救済法の成立や政治資金規正法の改正など、課題への対応や再発防止策を講じることが、総理総裁としての私の責任であるという思いで、国民を裏切ることがないよう信念を持って臨んでまいりました。
特に政治とカネの問題をめぐっては、派閥解消、政倫審出席、パーティー券購入の公開上限引き下げなどの判断についてご批判もいただきましたが、国民の信頼あってこその政治であり、政治改革を前に進めるとの強い思いを持って、国民の方を向いて重い決断をさせていただきました。
残されたのは自民党トップとしての責任です。もとより、所属議員が起こした重大な事態について、組織の長として責任を取ることにいささかの躊躇もありません。
8.3 今後の政治への思いと決意
今回の事案が発生した当初から思い定め、心に期してきたところであり、当面の外交日程に一区切りがついたこの時点で、私が身を引くことでけじめをつけ、総裁選に向かっていきたいと考えています。
私の政治人生、そして政治生命を賭けて、1兵卒として引き続きこうした課題に取り組んでまいります。まずは、9月までの任期中、総理総裁としての私の責任において、できるところまで最大限進めていきます。そして、今後とも総理総裁として、能登半島地震からの復旧復興や南海トラフ地震や台風などへの災害対策をはじめ、最後の1日まで政策実行に専心あたってまいります。
9. おわりに
9.1 最後の1日まで全力を尽くす決意
私の政治人生、そして政治生命を賭けて、1兵卒として引き続きこうした課題に取り組んでまいります。まずは、9月までの任期中、総理総裁としての私の責任において、できるところまで最大限進めていきます。
具体的には、これまで取り組んできた経済政策、エネルギー政策、外交政策などの重要課題について、さらなる進展を図ってまいります。特に、新しい資本主義の推進、GDPの目標達成、エネルギー基本計画の策定、憲法改正に向けた取り組みなど、残された時間で可能な限り前進させたいと考えています。
そして、今後とも総理総裁として、能登半島地震からの復旧復興や南海トラフ地震や台風などへの災害対策をはじめ、最後の1日まで政策実行に専心あたってまいります。災害対策は国民の生命と財産を守る上で最重要課題であり、全力で取り組む所存です。