※本稿は、2024年に開催されたAI for Good Global Summit 2024での「Innovate for impact: The winning AI use cases (Workshop)」というワークショップを要約したものです。
1. はじめに
1.1 ワークショップの背景と目的
2024年6月13日、「Innovate for impact: The winning AI use cases」ワークショップが開催されました。このワークショップは、ITUのAI for Goodイニシアチブの一環として実施されました。ワークショップの主な目的は、AIを活用して持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する革新的なユースケースを紹介し、議論することでした。
2024年2月に開始された「Innovate for impact」プロジェクトでは、38カ国から219件のユースケースの提出があり、35カ国から118名のスカラー応募がありました。この広範な参加は、AIを活用して社会に貢献しようとするグローバルな取り組みへの強い関心を示しています。
ワークショップでは、厳選された40件のユースケースが紹介され、医療、ファッション、農業、行政、交通、エネルギー、先端通信(6Gを含む)など、19の産業分野にわたる革新的なAIアプリケーションが展示されました。各ユースケースは、特定の問題に対するAIソリューションを提示し、データやAI手法、検証プロセス、パイロット計画、実世界での展開などについて詳細な情報を提供しました。
1.2 AI for Good Scholarsの紹介
ワークショップでは、13名のAI for Good Scholarsが選出され、彼らの研究成果や洞察が共有されました。選出されたスカラーたちは、多様な背景と専門知識を持つ国際的な顔ぶれとなりました。以下はその一部です:
- Afrah Hussein Seid - アディスアベバ科学技術大学の学生兼起業家(エチオピア)
- Emmanuel Kifalu Mkina - ドドマ大学のチューター助手(タンザニア)
- Emmanuel Othniel Eggah - WINESTグループの研究者(ナイジェリア)
- Florence Upendo Rashidi - ドドマ大学の教授(タンザニア)
- Innocent Nzimenyera - グローバル・グリーン成長研究所(GGGI)のデータサイエンティスト(ルワンダ)
- Natalia Kusmirek - ウースター工科大学の学生(米国マサチューセッツ州)
- Prudhvi Krishna PAVULURI - SRM大学AP校の学部生(インド)
- Asrat Mulatu Beyene - アディスアベバ科学技術大学の准教授(エチオピア)
これらのスカラーたちは、ワークショップ期間中、自身の研究プロジェクトや、AIを活用した社会課題解決の可能性について発表を行いました。
ワークショップのモデレーターを務めたのは、独立研究コンサルタントのVishnu Ram OV氏です。Ram氏は、豊富な経験と専門知識を活かし、議論を進行しました。
このワークショップは、AIの技術的進歩と社会的影響を探求する場となり、参加者たちにAIの未来と持続可能な開発への貢献可能性について洞察を提供しました。
2. 開会の辞: ITU事務次長 Thomas Lamanauskas氏の挨2. 開会の辞: ITU事務次長 Thomas Lamanauskas氏の挨:#拶
私、Thomas Lamanauskas ITU事務次長として、このワークショップの開会の辞を述べさせていただきました。AI産業が世界中の経済と社会を再形成している現状を踏まえ、その影響力の広がりについて言及しました。医療、金融、小売、製造業、交通安全、環境保護など、AIの応用範囲が日々拡大していることを強調しました。
同時に、私たちが直面しているデジタル格差の拡大という課題にも触れ、ITUがAI for Goodなどのプラットフォームを通じて、AIアプリケーションに関するグローバルな知識交換を促進していることを説明しました。
AI for Goodグローバルサミットが、重要な開発優先事項にAIを活用するための行動を推進する国連の主要イニシアチブであることを強調し、今回のワークショップがギャップの特定、機会の把握、行動の触発を目的としていることを述べました。
「Innovate for impact」プロジェクトに対する中華人民共和国の支援に感謝の意を表し、38カ国から219件のユースケース提出と35カ国から118件のスカラー応用があったことを報告しました。この幅広い参加は、AIの力を全ての人々の利益のために活用しようというグローバルな取り組みを示すものだと評価しました。
今回のワークショップで発表される40の優れたユースケースについて言及し、これらが19の産業分野にわたる革新的なAIアプリケーションを代表していることを強調しました。各ユースケースが、重要な課題に対処し、国連の持続可能な開発目標の達成に向けたAIの貢献を示していると説明しました。
13名のAI for Goodスカラーの選出を祝福し、彼らがデジタル格差を埋め、AIのSDGsに関する将来の研究を形作る上で重要な役割を果たすことへの期待を表明しました。
最後に、このプロジェクトに関する初期報告書の発表を喜び、世界中からのさらなる協力と洞察、そしてSDGsの課題に取り組むための革新的なソリューションを期待していると述べました。
私は、ITUがAIの発展と社会への貢献に対して真摯に取り組んでいることを強調し、このワークショップがAIを通じて世界の課題解決を加速させるための重要な一歩であることを参加者の皆様に伝えました。
3. AIユースケースの概要
3.1 ユースケースの募集と選定
ITUは、AI for Goodイニシアチブの一環として、2024年2月に「Innovate for impact」プロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトは、AIを活用して持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献する革新的なユースケースを世界中から集めることを目的としていました。
プロジェクトは大きな反響を呼び、38カ国から219件のユースケースの提出がありました。また、35カ国から118件のスカラー応募がありました。この幅広い参加は、AIを活用して社会に貢献しようとするグローバルな取り組みへの強い関心を示しています。
3.2 選定されたユースケースの概要
厳正な審査の結果、40件のユースケースが選ばれました。これらのユースケースは、19の産業分野にわたる革新的なAIアプリケーションを代表しています。具体的には以下のような分野が含まれています:
- 医療・ヘルスケア
- ファッション
- 農業
- 行政
- 交通
- エネルギー
- 通信(6Gを含む)
各ユースケースは、特定の問題に対するAIソリューションを提示しています。それぞれのケースでは、以下の要素が詳細に説明されています:
- 使用されているデータの種類
- 適用されているAI手法
- 検証プロセス
- パイロット計画
- 実世界での展開状況
これらのユースケースは、AIが持続可能な開発にどのように貢献できるかを具体的に示すものとなっています。特に、SDGsの達成に向けたAIの貢献可能性を明確に示しています。
選ばれたユースケースの多くは、複数のSDGsに同時に貢献する可能性を持っています。例えば、医療分野のAIは「すべての人に健康と福祉を」(SDG3)に、農業分野のAIは「飢餓をゼロに」(SDG2)に貢献します。
これらのユースケースは、技術の可能性を示すだけでなく、実際の社会課題解決に向けた具体的な道筋を提示しています。次のセクションでは、これらのユースケースの中から特に注目すべきものをいくつか取り上げ、詳細に紹介していきます。
4. 主要なAIユースケース事例
4.1 UAEのYou.AE AIチャットボット:Muhammad Al Kamisによるプレゼンテーション(UAE電気通信・デジタル政府規制局)
私、Muhammad Al Kamisは、UAEの電気通信・デジタル政府規制局を代表して、You.AE AIチャットボットについてご紹介します。
You.AEは、UAEの政府ポータルに統合された知的エージェントで、カスタマーサービスを改善することを目的としています。このシステムは、自然言語処理と大規模言語モデルを活用して、ユーザーからの問い合わせに対して迅速かつ正確な回答を提供します。
You.AEの開発には、5つの重要な原則を適用しました:革新、統合、インパクト、改善、インスピレーションです。
You.AEの主な機能には以下が含まれます:
- UAEへの訪問者、居住者、市民向けの包括的な情報提供
- 多言語サポート(57言語以上)
- 音声認識と音声合成による対話機能
- 位置情報に基づくサービス
2023年6月の導入以来、You.AEは30万件以上の問い合わせを処理し、99.7%の顧客満足度を達成しました。また、従来のチャットボットと比較して高い採用率を示しており、回答の正確性と応答時間が約10%向上しています。
You.AEは、Gartner AI Innovation of 2023に認定されました。今後は、デジタルIDを活用したより個人化されたサービスの提供を計画しています。例えば、医療予約システムとの統合により、ユーザーは会話を通じて簡単に予約を行うことができるようになります。
4.2 アリババのLLMプロジェクト:Li Bingによるプレゼンテーション(アリババDAMO Academy言語技術研究所ディレクター)
私、Li Bingは、アリババDAMO Academy言語技術研究所のディレクターとして、私たちの最新のLLM(Large Language Model)プロジェクトについてお話しします。
世界には6,500以上の言語が存在しますが、すべての言語が平等に扱われているわけではありません。例えば、インドネシアだけでも約300の方言があります。グローバルなLLMモデルはこれらのマイナー言語を十分にサポートできていません。
私たちの実験では、ベトナム語、タイ語、日本語などの東南アジアの言語に対するLLMの性能を評価しました。その結果、タイ語と日本語では、GPT-4でさえ60%以下の精度しか達成できませんでした。
この課題に対処するため、私たちは東南アジア諸国の主要言語をサポートするSEA-LLMを開発しました。このモデルの開発には以下のステップを踏みました:
- 英語中心のオープンソースモデルから始め、語彙を東南アジア言語に拡張
- 大規模な東南アジアのテキストデータを用いた継続的な事前学習
- 事前学習とSFT(Supervised Fine-Tuning)のハイブリッドステージ
- 人間の指示を理解するためのSFT
- 人間の価値観に合わせるためのDPO(Direct Preference Optimization)
SEA-LLMの特筆すべき特徴は以下の通りです:
- 効率的な語彙設計:非ラテン言語の処理効率が最大9倍向上
- 東南アジア言語間の翻訳性能の向上
- 東南アジア言語に対するより安全な応答生成
現在、SEA-LLMの多くのバージョンをHugging Faceで公開しています。今後は、東南アジア言語のサポートをさらに強化し、シンガポール政府機関との協力も予定しています。
4.3 ハンガリーのグリーン成長シミュレーションツール:Lilibeth C. de la Cruzによるプレゼンテーション(グローバル・グリーン成長研究所)
私、Lilibeth C. de la Cruzは、グローバル・グリーン成長研究所(GGGI)を代表して、AI支援型グリーン成長シミュレーションツール(GGSI-AI)についてお話しします。
GGGIは、48の加盟国に様々な形で支援を提供しています。その一つが政策強化支援で、低排出開発戦略(LEDS)、国別貢献(NDC)、国家適応計画(NAP)などの規制枠組みの改善を支援しています。
私たちが直面している主な課題は、気候変動の緩和・適応措置から生じる副次的利益を正確に定量化することです。
GGSI-AIの開発は3つのフェーズで進めてきました:
フェーズ1(2020-2021):
- 4つの重要セクター(廃棄物、水、土地、エネルギー)のシステムダイナミクスモデルを開発
- エチオピアとブルキナファソで適用し、現在はスリランカのNAPにも適用中
フェーズ2:
- ハンガリー政府のNational Clean Development Strategy(NCDS)評価に適用
- 機械学習やAIベースのネットワーク分析を導入
フェーズ3(現在進行中):
- 気候変動対策が社会的包摂とジェンダー関連のSDGsに与える影響を評価
- AIベースのネットワーク分析とデータ分析をシステムダイナミクスモデルに統合
GGSI-AIの今後の展望として、2024年5月から7月にかけてAIベースの社会的包摂モデルを適用し、結果をITUと共有する予定です。また、2025年にはAIベースのジェンダーモデルを統合し、GGSI-AIの使用に関する能力構築を提供する計画です。
4.4 Infervisionの医療AI:Quan Chenによるプレゼンテーション(Infervision)
私、Quan Chenは、Infervisionを代表して、私たちの革新的な医療AI技術についてお話しします。Infervisionは、中国、米国、EU、英国、日本で規制当局の承認を取得した初めて、そして唯一の医療AI企業です。
Infervisionは2014年に設立され、シカゴ大学出身の創業者たちによって始められました。私たちは、病院の放射線科医と密接に協力しながらAI技術を共同開発してきました。
2018年には最初のアルゴリズムを開発し、その後、ベンチャーキャピタリストや顧客からの支援を得て、AIアルゴリズムを改良してきました。COVID-19パンデミックの初期段階では、PCR検査が利用できない状況下で、病院内の感染拡大を警告するAIアルゴリズムを開発しました。
現在、私たちのAIは放射線分野だけでなく、外科、がん検出、心血管疾患、筋骨格系疾患、感染症など、幅広い製品ポートフォリオをカバーしています。
私たちのAI技術は、「AIブレイン」と呼ばれる概念を中心に構築されています。このAIブレインは、スクリーニングの初期段階から、手術前後のケア、フォローアップまで、患者の全ケアサイクルをサポートします。
具体的な成功事例として以下が挙げられます:
- 肺がんスクリーニングで、放射線科医全員が見逃した悪性腫瘍をAIが検出
- COVID-19患者の妊婦のリンパ腫を早期発見し、緊急帝王切開と生検を実施
- 腎臓移植手術前に、AIが右腎臓の早期分岐を発見し、左腎臓への変更を提案
私たちの目標は、トップレベルの病院で得られた専門知識を、リモートな地域を含む世界中の人々が享受できるようにすることです。
4.5 マレーシアの泥炭地管理システム:Adzuani Saliwahによるプレゼンテーション(マレーシア・プトラ大学)
私、Adzuani Saliwahは、マレーシア・プトラ大学を代表して、マレーシア、ブルネイ、インドネシアのネットゼロに向けた泥炭林コミュニティネットワークについてお話しします。
2019年、マレーシア、インドネシア、ブルネイで越境ヘイズ(煙害)が発生しました。これらの主な要因の一つが泥炭地林火災です。泥炭地林火災は、環境、健康、経済に大きな影響を与えます。
これらの課題に対応するため、私たちは技術ベースの泥炭地管理システム「NetPeat」を開発しました。NetPeatは、地上センサーと気象センサーの2種類のセンサーを配置し、機械学習で分析して潜在的な森林火災を予測します。
このシステムは、マレーシア、インドネシア、ブルネイの3カ国の泥炭地林に導入されています。2020年1月からの導入後、以下の成果が得られています:
- モニタリング対象区画での火災発生なし
- LoRaおよび4G LTEを使用した遠隔地でのIoTシステムの成功的な運用
- 消防・救助局との協力により、年間約150万リンギットの消火費用削減
今後の展望として、以下を計画しています:
- より多くのセンサーを使用したビジュアルIoTの拡張
- CO2排出量モニタリングのためのガスセンサーの導入
- 地理空間情報システム(GIS)の活用による火災危険度評価システムの改善
このプロジェクトは、AIとIoTを活用して環境保護と災害防止を実現する例です。今後は、アジア地域以外への展開も視野に入れています。
4.6 中国電信のネットワークLLM:Amin Liによるプレゼンテーション(中国電信)
私、Amin Liは中国電信を代表して、クラウドネットワーキングを可能にする大規模ネットワークモデルの革新的な実践についてお話しします。
中国電信のAI開発戦略は5つの主要コンポーネントで構成されています:インテリジェントコンピューティングクラウド、汎用大規模モデル、データ基盤、内部大規模モデル、産業向け複数の大規模モデルです。
現在、中国電信はクラウドネットワークのインテリジェント運用のために3つの基盤を確立しています:アプリケーション基盤、能力基盤、データ基盤です。
昨年9月に正式にリリースしたネットワーク大規模モデルは、世界初の正式なネットワーク大規模モデルです。このモデルは、ネットワークの計画、構築、保守、最適化、運用という5つのシナリオで適用可能です。
ネットワーク大規模モデルには3つの重要な機能があります:知識の拡張、運用支援、AIエージェントです。
現在、15万人以上のユーザーがこのモデルを使用しており、1日あたりのアクティブユーザー数は4万人を超えています。これにより、ネットワークの保守効率とユーザー体験が大幅に向上しました。
中国電信は、「最高の体験、最高のサービス、最高の運用」という3つのビジョンの実現に向けて努力しています。2025年までにレベル4に達することを進化目標としています。
将来的に、ネットワーク大規模モデルは、インフラの品質とR&D能力の向上を通じて、国連のSDGライトの達成に向けた基盤を築くことを目指しています。
中国電信は、ネットワーク大規模モデルのイノベーションに参加し、エコシステムを共に構築するために、より多くの業界のカスタマーやパートナーを歓迎します。
4.7 長安汽車の自動運転安全プラットフォーム:Luo Yungangによるプレゼンテーション(長安汽車)
私、Luo Yungangは長安汽車を代表して、インテリジェント自動車統合安全・セキュリティサービスプラットフォームについてお話しします。
自動運転システムの安全性は、知覚の安全性と判断の安全性という2つの柱に支えられています。データセキュリティも同様に重要です。
我々のプラットフォームでは、これらの問題に以下のようなアプローチで対処しています:
- 知覚安全性:敵対的サンプル生成を通じてアルゴリズムの頑健性を強化
- 判断安全性:人間の運転戦略と強化学習技術に基づいて、自然な敵対的シミュレーションシナリオを生成
- データセキュリティ:連合学習、差分プライバシー、準同型暗号を使用
今後の展望として、以下を計画しています:
- 敵対的サンプル生成能力の向上
- 自然な敵対的シナリオ生成モデルの強化
- 自動運転検証シナリオのための企業間連合学習共有スキームの提供
我々は引き続きSDG目標3と11に貢献し、インテリジェント安全保証能力に関する年次ワークショップの開催を計画しています。また、国際的なチームとの協力にも積極的です。
4.8 ナイジェリアの6G標準化支援システム:Emmanuel Oel Egarによるプレゼンテーション(WINESTグループ、ナイジェリア)
私、Emmanuel Oel Egarは、WINESTグループを代表して、アフリカの貢献者のための6G標準障壁を減らすためのAIの使用についてお話しします。
我々のユースケースは、発展途上国と先進国の間の知識格差を埋めるためにAIチャットボットを使用します。これは、ITUフォーカスグループやその他の標準材料から学習したデータを使用してトレーニングされたテキストからテキストへの生成モデルです。
現在、我々はITU資料や他の標準資料からのテキストデータを使用しています。これらのデータをPDFから生のテキストデータに変換し、自然言語処理を行っています。現在、アノテーションと検証のプロセスを進めています。
また、このチャットボットをトレーニングするためのモデルトレーニングノートブックも開発中です。
今後の計画として、このソリューションの動作を説明するデモの作成や、ITUのBSGイニシアチブへの貢献を予定しています。また、ワークショップの開催や、この解決策を一緒に構築するための協力も計画しています。
4.9 トルコの災害対応用ドローンネットワーク:Burcu Bilginによるプレゼンテーション(イスタンブール工科大学)
私、Burcu Bilginは、イスタンブール工科大学を代表して、効率的な災害対応のためのスマートUAV(無人航空機)ネットワークについてお話しします。
昨年、トルコで大規模な地震が発生し、広範囲に影響を与えました。このような大規模災害時には、物流と通信の二つのインフラが非常に重要です。
UAVは、このような状況下でシームレスな通信サービスを提供するための有望な技術ですが、課題もあります。現在の状況を理解し、UAVを最適化できるスマート管理モジュールが必要です。
イスタンブール工科大学(ITU)は現在、UAVの展開、経路選択、調整のための強化学習ソリューションに取り組んでいます。
このプロジェクトは、国連のSDGsと直接的に関連しています。
私たちは、トルコの大手モバイルオペレーターであるTurkcellと協力してこのプロジェクトを進めています。
現在取り組んでいるユースケースでは、データ収集と通信、そして学習の側面を考慮に入れています。
今後の計画として、モデルの開発はもちろんのこと、ITUの自然災害管理のためのAIイニシアチブとユースケースの結果を共有することを予定しています。また、シミュレーション環境をオープンソースで公開する計画もあります。
4.10 Tata Elxsiの6Gネットワークオーケストレーション:Ramesh Ramananによるプレゼンテーション(Tata Elxsi)
私、Ramesh Ramananは、Tata Elxsiのプリンシパルアーキテクトとして、6G以降のネットワークオーケストレーションと安全なネットワーク運用のための機械学習と人工知能ソリューション「Neuron」についてお話しします。
現在、先進国と発展途上国の間には著しい接続性の格差があります。この格差の根本的な原因は、コストの障壁と専門知識の障壁です。
Neuronは、これら両方の障壁に対処する単一のプラットフォームです。Neuronは、サービスとスライスに対応する自然言語インターフェースを提供し、デジタルツインを使用してユースケースをテストおよび検証します。
さらに、トラフィックのセキュリティ異常を分析し、アプリストアの概念を導入しています。
Neuronは、「ソーシャルクレジット」という新しい概念を提案し、投資とデータコストの間に明確なリンクを確立します。
我々は、この技術をバルセロナのMobile World Congressでデモンストレーションし、今日ここで発表しています。今後もこの取り組みを継続し、最終的にはITUへの貢献を目指しています。
この取り組みはTata Elxsiから始まりましたが、グローバルな働きかけを行っています。技術、規制、学術のいずれの観点からも興味のある方は、ぜひ私たちにご連絡ください。
4.11 恒瑞の腫瘍治療用ナノナイフ技術:Chen Bingによるプレゼンテーション(恒瑞生物技術有限公司)
私、Chen Bingは恒瑞生物技術有限公司を代表して、ナノ秒パルスとAIの融合による腫瘍アブレーション分野における精密医療イノベーションについてお話しします。
がんは人類の健康にとって大きな脅威です。毎日約5万人ががんと診断され、約7万人ががんで亡くなっています。がん治療には4つの方法があります:手術、放射線療法、化学療法、そして最小侵襲手術です。
従来の最小侵襲手術技術には欠点がありました。これらの問題に対処するため、我々は「ナノナイフ」と呼ばれる新しい技術を開発しました。
ナノナイフは、超高電圧パルス電場技術を採用し、適応インピーダンス制御と適応ECG制御の中核特許を保有しています。
ナノナイフは、超音波またはCTを通じてプローブを標的腫瘍部位に正確に誘導し、ナノ秒レベルのパルスを送出して1万ボルト以上の高電圧電場を形成します。これにより、腫瘍細胞の内部構造を破壊し、核を損傷させ、腫瘍細胞のアポトーシスを引き起こします。
我々の技術は中国と米国の両方で重要な製品となっており、最近、米国FDAからブレークスルーデバイス認証を取得しました。
これらの課題に対処するため、我々は手術の前、最中、後の3つの段階でAI技術を導入しています。具体的には以下の3つの段階があります:
- インテリジェント画像処理
- 手術計画
- インテリジェント手術
将来的には、診断から治療まで全自動のシステムを作成することを目指しています。
このプロジェクトは、グローバルな持続可能な開発に3つの面で貢献すると考えています:
- グローバルな健康と福祉の向上
- 革新的技術を低資源の人々や地域に拡大し、社会的平等を改善
- 医療イノベーションとインフラ開発の促進
4.12 タンザニアの公共調達モニタリングシステム:Florence Upendo Rashidiによるプレゼンテーション(ドドマ大学)
私、Florence Upendo Rashidiは、ドドマ大学を代表して、タンザニアにおける公共調達とプロジェクトモニタリングの透明性と説明責任を向上させるための人工知能を活用したシステムの開発についてお話しします。
このユースケースは、ドドマ大学、ダルエスサラーム大学、そしてタンザニアの汚職防止・対策局(PCCB)との共同プロジェクトです。
タンザニアの調達とプロジェクトモニタリングは、透明性と説明責任の欠如という課題に直面しています。
我々のプロジェクトは、SDG9、SDG11、SDG16に沿っています。
我々は、AIと機械学習を活用した反腐敗ツールを開発しています。これにより、入札プロセス中に異常を検出することができます。
我々のソリューションの主な機能は以下の通りです:
- テキスト生成
- テキスト分類
- 異常検出
- マルチモーダル分析
- モデルトレーニングと微調整
このAIモデルの利点には以下が含まれます:
- 調達プロセスとプロジェクト実行のリアルタイムモニタリング
- 事前の腐敗検出システム
- リソース配分の改善
- ステークホルダーの権限強化
将来的には、より広範な領域でモデルの能力を拡張し、より多くのデータを収集する予定です。
我々は、ITU AI for Goodと連携して社会的影響のためのAI研究を開始し、トレーニングセッションや啓発キャンペーンを計画しています。
4.13 北京服装学院のAIファッションデザイン:Zhe Yuによるプレゼンテーション(北京服装学院)
私、Zhe Yuは北京服装学院を代表して、生成AIを活用したファッションデザインについてお話しします。
今回、2023年AI Couture シリーズ「Exquisite Wonderland」をフィーチャーした初のニューヨークAIファッションウィークのハイライトをご紹介します。このショーケースでは、中国の青と白の磁器文化遺産を西洋的な美学と融合させました。
我々の目標は、新しい技術を使用してファッションのデザイン方法を変革し、デザインをより速く、無駄を減らし、ファッション産業におけるサステナブルな実践をサポートすることです。
AIを使用することで、デザイナーは実際のサンプルを作る必要がなく、最終的な衣服がどのように見えるかを素早く確認することができます。
我々のデザインは、特にSDG12とSDG9の国連持続可能な開発目標をサポートしています。
我々は、AIプロセスと従来のプロセスを比較しました。主な違いは、我々のAIプロセスが完全にデジタルであり、正確な変更とカスタムデザインを迅速に行えることです。
今後の取り組みとして、新しいデザインの開発と「Exquisite Wonderland」シリーズの拡張に焦点を当てる予定です。
技術の使用に関しては、AI生成デザイン、3Dモデリングソフトウェアを使用したデジタルでのデザインの精緻化と可視化、AIデジタルデザインから作成された最終的な物理的衣服を示しています。
我々の目標は、AIアルゴリズムを改善し、より良いパターン認識モデルを開発し、様々な素材にまたがる実際のデザインのための新しいツールを作成することです。
また、バーチャルトライオン機能を備えたオンラインプラットフォームを作成する予定です。
我々は、ファッション企業やデザイナー、技術プロバイダーとパートナーシップを組み、業界をデジタルで持続可能な未来に向けて推進していきます。
4.14 レノボのブラジル手話翻訳システム:Hildeberto Mendonça Lima Júniorによるプレゼンテーション(レノボ・ブラジル)
私、Hildeberto Mendonça Lima Júniorは、レノボ・ブラジルを代表して、Libras(ブラジル手話)プロジェクトについてお話しします。
ブラジルでは、230万人がLibrasを使ってコミュニケーションを取っています。世界中では約5億人が手話を使用しています。
私たちは4年前、AIを使ってLibrasとポルトガル語の間のシームレスな翻訳を行うソリューションを構築し始めました。
このモデルをトレーニングするために、23,000時間以上の動画を記録しました。そして、3D畳み込みニューラルネットワーク、動的時間歪み、そして独自に開発した時間歪みメカニズムをテストしました。
さらに、ポルトガル語の一般的なLLMと、オープンソースの音声コーディングライブラリを組み合わせて使用しました。
また、AIによって作成された人間ベースのアバターを開発しました。
このシステムでは、ポルトガル語のテキストを入力したり話したりすると、手話を生成します。反対に、手話を認識して、AIモデルを使ってポルトガル語に変換することもできます。
私たちの計画では、今年中にレノボのPCサービスサポートにこのシステムを導入する予定です。
今後の協力については、他の国や組織と協力して、他の言語でもこのソリューションを構築することを計画しています。
4.15 カンボジアの点字翻訳システム:Shadia Baroudによるプレゼンテーション(カンボジア・デジタル技術アカデミー)
私、Shadia Baroudは、カンボジア・デジタル技術アカデミーを代表して、カンボジアの視覚障害者のためのカンバ点字機械翻訳プロジェクトについてお話しします。
カンボジアでは、視覚障害者が教育リソースの不足により大きな課題に直面しています。
私たちのプロジェクトは、特にSDG4とSDG10に焦点を当てています。
カンバ点字は、クメール語の特性に適応させた独特の点字システムです。
カンボジア・デジタル技術アカデミーは、統計的モデルを利用したベースライン機械翻訳システムを開発しました。このシステムは、カンボジア語からカンバ点字への翻訳で85%のBLEUスコア、カンバ点字からカンボジア語への翻訳で70%のスコアを達成しました。
このソリューションは、オープンソースで公的にアクセス可能なように設計されています。
今後の計画としては、システムの改善、データセットの拡張、モバイルおよびウェブアプリケーションの開発、教育者や学生向けのワークショップの実施を考えています。
私たちの取り組みは、様々な組織との研究や協力によってサポートされています。
4.16 インドの農業支援AIチャットボット:Prudhvi Krishna Pavuluriによるプレゼンテーション(SRM大学)
私、Prudhvi Krishna Pavuluriは、SRM大学とOMX Technocraft Solutionsを代表して、農家向けAIベースチャットボットについてお話しします。
インドの農業セクターは、多岐にわたる課題に直面しています。
私たちのソリューションは、これらのSDGsに対応することを目指しています:SDG2、SDG3、SDG6、SDG9、SDG12、SDG15。
私たちの解決策は、農家向けAIベースチャットボットです。
チャットボットの構築には、様々なデータの収集が含まれます。
チャットボットは、農家の質問に対して、土壌分析、地理的位置、水の利用可能性を分析し、適切な作物の提案を行います。また、農業普及所の情報提供や、トレーニングの勧めも行います。
現在の作業状況としては、データの収集と統合・標準化、XGBoostモデルの構築、ユーザーフレンドリーなインターフェースの開発を進めています。
将来の作業として、土地画像の分析、土壌肥沃度予測、AIチャットボットとの対話アルゴリズムの改善を計画しています。また、ITU自律ネットワークフォーカスグループへの貢献も予定しています。
5. パネルディスカッション
5.1 スカラーたちの経験や学び
パネルディスカッションでは、AI for Good Scholarsたちが自身の経験や学びについて語りました。モデレーターのVishnu Ram OV氏の質問に対し、スカラーたちは以下のような意見を述べました。
Innocent Nzimenyera氏(グローバル・グリーン成長研究所のデータサイエンティスト): 「このプロジェクトは挑戦的でしたが、同時に非常に有益でした。短期間で多くのユースケースを分析する必要がありました。シーケンス図の設計は難しかったですが、ユースケースをより深く理解するのに役立ちました。私の背景から最も興味深かったのは、グリーン成長シミュレーションツールです。気候変動は世界的な問題であり、このツールがその解決に貢献できると考えています。」
Natalia Kusmirek氏(ウースター工科大学の学生): 「ファッション業界におけるAIの応用は非常に興味深い経験でした。特に、時差の問題や、自分で学ぶ必要があった部分が挑戦的でした。シーケンス図の作成は大きなステップでした。将来的には、このプロジェクトをアプリやウェブサイト上の3Dモデルとして展開できる可能性があると考えています。」
Afrah Hussein Seid氏(アディスアベバ科学技術大学の学生兼起業家): 「私にとって最も興味深かったのは、医療分野での大規模言語モデルの応用です。このプロジェクトは、私に多くの知識と経験をもたらしました。」
Asrat Mulatu Beyene准教授(アディスアベバ科学技術大学): 「このプロジェクトは学生たちに実践的な問題解決の機会を提供しました。しかし、学生たちは多くの課題に直面しています。カリキュラムの負担が大きく、このような追加プロジェクトに取り組む時間を見つけるのは難しいです。それでも、Afrahのような学生たちは素晴らしい成果を上げています。」
Florence Upendo Rashidi教授(ドドマ大学): 「このプロジェクトを通じて、AIが政府の透明性と説明責任を向上させる可能性を見出しました。特に、公共調達の分野でAIを活用することで、腐敗を事前に検出し、リソースの効率的な使用を促進できる可能性があります。」
Emmanuel Kifalu Mkina氏(ドドマ大学のチューター助手): 「学生たちは、このプロジェクトに非常に興味を持っています。多くの学生がAIユースケースやスカラーシッププログラムに応募しました。彼らは様々なユースケースに非常に専念し、献身的に取り組んでいます。」
5.2 プロジェクト実施における課題と解決策
スカラーたちは、プロジェクト実施における主な課題として以下の点を挙げました:
- データの可用性と品質:特に発展途上国では、必要なデータが存在しないか、アクセスが制限されていることがあります。
- 技術的な専門知識の不足:特定の技術や手法に関する専門知識が不足していることが課題となっています。
- 資金とリソースの制約:多くのプロジェクトが十分な資金やコンピューティングリソースの不足に直面しています。
- 時差の問題:国際的なコラボレーションにおいて、時差が効果的なコミュニケーションの障害となっています。
- 学生の時間管理:カリキュラムの負担が大きく、追加プロジェクトに取り組む時間を見つけるのが難しい状況があります。
これらの課題に対して、スカラーたちは以下のような解決策や対応を行っています:
- オープンデータの活用:テランガナ州やAg Marketなどのオープンデータソースを積極的に利用しています。
- オンラインリソースを使用した自己学習:必要な技術や知識を独自に学習し、課題に対応しています。
- 国際的な協力関係の構築:他国の研究者や機関との協力を通じて、知識やリソースの共有を行っています。
- 効果的なコミュニケーション方法の確立:時差を考慮したミーティングスケジュールの設定や、非同期コミュニケーションツールの活用を行っています。
- 学生への適切なサポートと指導の提供:教員が学生を積極的に支援し、プロジェクトと学業のバランスを取るよう指導しています。
これらの解決策を通じて、スカラーたちはプロジェクトの課題を克服し、成果を上げることができました。特に、データの問題に関しては、利用可能なオープンデータを最大限に活用し、技術的な課題については自己学習を積極的に行うことで対応しています。また、国際的な協力を通じて、リソースや知識の共有を促進し、プロジェクトの質を向上させています。
時差の問題に関しては、効果的なコミュニケーション方法を確立することで対応し、学生の時間管理の問題については、教員からの適切なサポートと指導が重要な役割を果たしています。
これらの経験は、今後のAI for Goodプログラムの改善や、より効果的なサポート提供のための貴重な情報源となっています。スカラーたちの取り組みは、AIが社会的課題の解決にどのように貢献できるかを示す具体的な例となり、今後のAI for Good イニシアチブの方向性を示唆するものとなりました。
6. GSMAによる新興国AIユースケース分析:Daniel Tricarioによるプレゼンテーション(GSMA)
私、Daniel Tricarioは、GSMAを代表して、新興国におけるAIの持続可能な開発への貢献について、特にアフリカを中心とした調査結果をお話しします。
GSMAは、モバイル業界のグローバルな協会として、1000以上の企業を代表しています。私たちは、主にモバイルオペレーターだけでなく、テクノロジーベンダー、ネットワークプロバイダー、ソフトウェア企業など、モバイルエコシステム全体の企業と協力しています。
私たちの調査は、AIが低・中所得国の開発にどのように貢献できるかを理解するための基礎的な研究です。特に、アフリカに焦点を当て、ナイジェリア、ケニア、南アフリカの3カ国を中心に詳細な調査を行いました。
この調査のために、私たちは独自のフレームワークを開発しました。このフレームワークは、AIイノベーションの3つの基本的な要素である「データ」「コンピューティング」「スキル」に焦点を当てています。
私たちの調査では、各国のAIエコシステムの詳細なマッピングを行いました。私たちは民間セクターの組織ですが、この調査では政府や公共セクターの役割、市民社会、NGOなど、AIエコシステムに関わるすべてのアクターを考慮に入れています。
私たちの調査では、特に農業、エネルギー、気候変動という3つの相互に関連する分野に焦点を当てました。ケニア、ナイジェリア、南アフリカの3カ国を対象に、これら3つの分野でのAIアプリケーションを調査したところ、100近くの具体的なアプリケーションを特定しました。
興味深いことに、私たちが発見したソリューションの98%は従来の予測AIでした。生成AIも登場しつつありますが、まだ非常に新しい技術です。特にアフリカでは、データの不足が生成AIの開発における大きな課題となっています。
農業分野では、情報、投入財、市場へのアクセス不足や、経済的・気候的ショックへの脆弱性といった課題に対して、AIが活用されています。主要なユースケースとしては、作物管理、精密農業、農業向けデジタル金融サービスなどが挙げられます。
気候変動対策の分野では、情報やリソースへのアクセス不足、適応・レジリエンス・緩和戦略の課題、気候変動と人間活動による自然資源への脅威といった問題に対して、AIが活用されています。主要なユースケースとしては、気象・気候予報、早期警戒システム、自然資源管理などがあります。
エネルギー分野では、3つの対象市場で約43%の人々が電力にアクセスできていないという課題があります。また、送電網の過負荷や老朽化したインフラも問題となっています。これらの課題に対して、AIを活用したよりインテリジェントなスマートエネルギー管理、予測型の機器保守ソリューション、スマートメータリングツール、エネルギー消費を最適化するためのセンサーなどの開発が進められています。
私たちの調査結果は、行動指向の研究として位置づけられています。2025年の初めから、スタートアップ企業がAIを活用して影響力のあるユースケースを開発することを支援するためのイノベーションファンドを立ち上げる予定です。これにより、研究だけでなく、現場での実践的な取り組みも支援していきます。
この調査を通じて、アフリカにおけるAIの活用が急速に進んでいること、そして持続可能な開発目標の達成に向けて大きな可能性を秘めていることが明らかになりました。GSMAは、これらの課題に取り組みながら、AIの力を活用して持続可能な開発を推進していくことを目指しています。
7. 閉会の辞:CIC副会長 余晓晖氏の総括
私、余晓晖は中国情報通信研究院(CAICT)の副院長として、このワークショップの閉会の辞を述べさせていただきます。
本日のワークショップにご参加いただいた皆様に心からの感謝を申し上げます。AI for Goodの下で、多くの印象的なAIアプリケーションについて議論し、いくつかのSDGsに取り組むことができました。AI for Good Scholarsの皆様、そして様々な国や組織からの参加者の皆様の貢献に感謝申し上げます。
このワークショップは、グローバルなビジョンを結集し、協力の力を示すものとなりました。各ユースケースは、AIテクノロジーの革新的な応用を記録し、複雑なSDGsの問題を解決するためにAIをどのように活用できるかについて、深い洞察を提供しています。
スマートファクトリーから従来のデジタルサービスまで、技術は日常生活のあらゆる分野に浸透しています。気候変動、健康危機、資源の不平等な分配など、グローバルな課題に対して、AIは私たちをサポートする強力なツールとなります。
AIの応用は、教育の公平性の促進、医療診断の最適化、エネルギー利用の効率化、環境保護の推進など、多くの分野で進展を見せています。これらの取り組みは、人類社会のより繁栄し、公平で持続可能な未来への道を開くものです。
我々は、7月に上海で開催される世界人工知能大会で、本日議論されたユースケースの完全版を発表する予定です。このレポートは、AIの開発を推進し、社会の各セクターがAIをより良く理解し、活用して実際の問題を解決するための貴重な提案とガイドラインを提供するものと確信しています。
AIの発展の過程において、誰もが参加者であり、同時に受益者でもあります。私たちが力を合わせてAIの力を活用し、より良い未来を切り開き、調和のとれた進歩的で協力的な世界を創造することを願っています。
最後に、本日のワークショップ「Innovate for impact: The winning AI use cases」の閉会を宣言させていただきます。7月に上海で開催される世界人工知能大会でのAI for Globalフォーラムでお会いできることを楽しみにしております。皆様のご参加を心よりお待ちしております。
8. 今後の展望
8.1 7月の上海世界AIカンファレンスでの完全版報告書発表
7月に上海で開催される世界人工知能大会において、今回議論されたユースケースの完全版報告書が発表される予定です。この報告書は、AIの開発を推進し、社会の各セクターがAIをより良く理解し、実際の問題解決に活用するための貴重な提案とガイドラインを提供するものとなります。
8.2 AIの社会貢献に向けた継続的な取り組み
本ワークショップは、AIの社会貢献に向けた継続的な取り組みの一環として位置付けられています。AIの発展の過程において、誰もが参加者であり、同時に受益者でもあります。私たちが力を合わせてAIの力を活用し、より良い未来を切り開き、調和のとれた進歩的で協力的な世界を創造することが期待されています。
今後も、AIの社会貢献を促進するための取り組みが継続されます。特に、発展途上国におけるAI導入支援や、地域特有の課題に対するAIソリューションの開発に焦点が当てられる可能性があります。また、AI for Good Scholarsプログラムの継続や拡大も検討されるかもしれません。
さらに、AIの倫理的・社会的影響についての研究や、AIの健全な発展と社会実装を支援する政策フレームワークの構築も重要な課題となるでしょう。
これらの取り組みを通じて、AIの社会貢献の可能性をさらに拡大し、より良い未来の創造に向けて継続的に努力していくことが期待されます。AI for Goodイニシアチブは、技術の進歩と社会の発展の橋渡し役として、今後も重要な役割を果たしていくでしょう。
9. 結論
本ワークショップ「Innovate for impact: The winning AI use cases」の主要な成果と、AIの持続可能な開発への貢献可能性について、以下にまとめます。
9.1 ワークショップの主要な成果
- 多様なAIユースケースの共有: 40件の革新的なAIユースケースが紹介され、医療、農業、環境保護、交通、通信など、19の産業分野にわたるAIの応用可能性が示されました。
- 国際的な協力の促進: 38カ国から219件のユースケース提出があり、35カ国から118件のスカラー応募がありました。この幅広い参加は、AIの社会貢献に向けた国際的な関心と協力の高まりを示しています。
- AI for Good Scholarsの活躍: 13名のAI for Good Scholarsが選出され、彼らの新鮮な視点と専門知識が、AIの社会的影響と将来の可能性についての理解を深めるのに貢献しました。
- 実践的な知見の共有: パネルディスカッションを通じて、AIプロジェクトの実施における課題と解決策について、実践的な知見が共有されました。
- 新興国におけるAI活用の可能性: GSMAによる調査結果の共有により、アフリカを中心とした新興国におけるAI活用の現状と可能性が明らかになりました。
- 今後の展望の明確化: 7月の上海世界AIカンファレンスでの完全版報告書発表の予定が示されました。
9.2 AIの持続可能な開発への貢献可能性
- SDGsへの直接的貢献: 紹介されたユースケースの多くが、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に直接的に貢献するものでした。
- 効率性と精度の向上: AIの活用により、様々な分野で効率性と精度が向上することが示されました。
- 包括的な発展の促進: 手話翻訳や点字翻訳などのAIアプリケーションは、障害者や少数言語話者などのマイノリティグループの包摂を促進します。
- 新興国でのAI活用: 新興国におけるAI活用の可能性が示されました。
- クロスセクター的アプローチの促進: AIの応用が多岐にわたることで、異なるセクター間の協力が促進される可能性があります。
本ワークショップは、AIが持続可能な開発に大きく貢献する可能性を持つことを示しました。今後、AIの社会貢献をさらに促進するためには、継続的な研究開発、国際協力、そして適切な政策フレームワークの構築が不可欠です。AI for Goodイニシアチブは、これらの取り組みを推進し、AIの力を活用してより良い未来を創造するための重要な役割を果たしていくことが期待されます。