※本記事は、2024年5月23日に開催されたGLOCOM六本木会議オンライン#79「生成AI+αでナレッジマネジメントが遂に実現へ!」の内容を基に作成されています。本セッションは、Zoomウェビナーとして配信され、約80名のリモート参加者が視聴しました。本記事では、講演内容を要約しております。なお、本記事の内容は登壇者の見解を正確に反映するよう努めていますが、要約や解釈による誤りがある可能性もありますので、より詳細な情報については、GLOCOMの公式サイト(https://roppongi-kaigi.org/ )をご参照ください。
登壇者プロフィール:
野村直之氏 メタデータ株式会社代表取締役社長。東京大学大学院医学系研究科次世代病理学講座研究員、法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科・元客員教授を務める。理学博士。1984年に東京大学工学部を卒業後、九州大学で理学博士号を取得。NEC C&C研究所、MIT人工知能研究所客員研究員(M.Minskyと共同研究)、ジャストシステム、リコーでの経験を経て、2005年にメタデータを設立。著書に『人工知能が変える仕事の未来』『実践フェーズに突入 最強のAI活用術』『AIに勝つ!』、共著に『WordNet』(MIT Press 1998)がある。
前川徹氏(モデレーター) 東京通信大学情報マネジメント学部教授、GLOCOM主幹研究員。1978年通商産業省入省後、機械情報産業局情報政策企画室長、JETRO NYセンター産業用電子機器部長、IPAセキュリティセンター所長などを歴任。一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事、国際大学GLOCOM所長などを兼務。2018年4月より現職。
進行:小島安紀子(GLOCOM六本木会議事務局/国際大学GLOCOMシニアコーディネータ)
1. はじめに
1.1. ナレッジマネジメントの歴史と現状
20数年前、ナレッジマネジメントは企業における知識管理の革新的アプローチとして注目を集めました。野村氏は、この時代を振り返り、「類似検索技術が一世を風靡しました」と述べています。特に注目すべきは、野村氏自身が「類似検索」という用語を作り出したことです。
当時の主要な技術的アプローチは、既存のマニュアル類から必要な情報を類似検索技術によってランキング化し、そのまま取り出すというものでした。しかし、この手法には複数の本質的な課題が存在していました:
- エンタープライズITのデータ管理との連携・追随の困難さ
- マニュアルの品質問題
- 内容が古い
- 説明が分かりにくい
- 重要な情報が記載されていない
これらの課題に対して、野村氏は「コンセプトベース」という技術を開発し、ジャストシステムでの実装を行いました。この取り組みは、人工知能学会10周年記念誌で取り上げられ、「AI支援ナレッジマネジメントの先駆者」として評価されました。
しかし、これらの取り組みにもかかわらず、当時のナレッジマネジメントは期待された成果を十分に上げることができませんでした。野村氏は当時の状況を「本質的な問題が積み残され、ブームは下火になりました」と説明しています。
この経験は、現代のナレッジマネジメントに重要な示唆を与えています。特に、データの更新性、品質管理、実用性の観点から、技術だけでなく運用面も含めた総合的なアプローチの必要性を示唆しています。
トマス・ダベンポート博士の理論から実践への移行が困難だった理由として、野村氏は「日本では、野中郁次郎先生が暗黙知と形式知のスパイラルで知識が発展していくという理論を展開しましたが、実装面での課題が残されていました」と指摘しています。
この歴史的な文脈は、現代の生成AI技術による新たなナレッジマネジメントの可能性を考える上で重要な示唆を与えています。過去の課題を踏まえつつ、新技術によってどのようにそれらを解決できるのかという視点が、現代のナレッジマネジメントの発展において crucial となっています。
1.2. 生成AIの急速な進化と可能性
この1年間における生成AIの進化は目覚ましく、特に2024年に入ってからの発展は顕著です。野村氏は「この1年ばかりの間にも、生成AIは急激に進化し、過去の人間のベストプラクティスを参考に創造性さえも発揮したり、並みの人間を遥かに超える翻訳精度、分かり易い簡潔な文章を生成できるようになりました」と指摘しています。
特に注目すべき進展として、最新のモデルの性能向上があります。2024年4月には、GPT-4のアップデートとGoogleの大幅なバージョンアップが行われ、文章の質感や文学的な味わいにおいて大きな進歩が見られました。野村氏は「文章の質感とか文学的な味とかって全然評価してくんないんですよ」とエンジニアの評価傾向を指摘しつつ、特にClaude 3の性能の高さを強調しています。
具体的な事例として、野村氏は創造性の発揮について興味深い実験結果を示しています。「男っぽい女の子の日本人の絵書いて」という単純な指示に対して、生成AIは意図を深く理解し、「アウトドアのアクティビティが好きだけどもトラッドな感じの、男っぽい女の子という風に自意識を持って」というような深い解釈を行い、適切な画像を生成したと報告しています。
ナレッジマネジメントの観点からは、特にRAG(Retrieval Augmented Generation)技術との組み合わせが注目されています。野村氏は「ローカル知識、専門知識を生成AIに回答させるRAGや、その小型パーソナル版のGPTsが必要」と指摘し、これらの技術の精度向上と汎用性の向上には「様々な仕組みの工夫、類似検索の精度を上げるための言語学的な解析の高度化が必要」だと述べています。
将来的な可能性について、野村氏は「知識提供者側の人間も、知識受領者側の人間も、旧来の、分かりにくいマニュアルとの格闘など、非生産的で不毛な作業から解放されることでしょう」と展望を示し、「遂に、長年ナレッジマネジメントが描いた夢、課題が解決へと向かう」と期待を表明しています。
ただし、これらの進歩には新たな課題も伴います。特に、社内特有の専門用語や略語の処理、また「3.3mg」と「3月3日」のような表記の違いを適切に区別することなど、きめ細かな対応が必要とされる点を指摘しています。これらの課題に対して、「何百、何千もの工夫が求められる」としながらも、適切な導入により大きな効果が期待できると結論付けています。
2. 発表者の背景
2.1. 野村直之氏のプロフィール
野村直之氏は、メタデータ株式会社の代表取締役社長として、また東京大学大学院医学系研究科次世代病理学講座研究員、さらに法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科の元客員教授として、幅広い分野で活躍しています。
学歴としては、1984年に東京大学工学部を卒業後、九州大学で理学博士号を取得しています。その後の経歴は、AIと知識管理の分野で重要な転換点となる経験を積み重ねていきます。
職歴の中で特に注目すべきは、NEC C&C研究所での経験と、米マサチューセッツ工科大学(MIT)人工知能研究所での研究活動です。特にMITでは、AI研究の第一人者であるMarvin Minsky教授と3ヶ月間、2人部屋で研究活動を共にするという貴重な経験を持っています。
その後、ジャストシステムでは、コンセプトベースという画期的なナレッジマネジメントツールの開発に携わりました。野村氏は「AI支援ナレッジマネジメントの先駆者」として、人工知能学会10周年記念誌に寄稿するなど、この分野での先駆的な役割を果たしています。
リコーでの勤務を経て、2005年にメタデータ株式会社を設立しました。この設立は、それまでの経験と知見を活かし、新しい形のナレッジマネジメントを実現するという明確なビジョンに基づいていました。
野村氏の著書には『人工知能が変える仕事の未来』とその新版、『実践フェーズに突入 最強のAI 活用術』、『AIに勝つ!』があり、特筆すべきは1998年にMIT Pressから出版された『WordNet』の共著者としても名を連ねていることです。
野村氏は自身の経験について、「私も初めてやって」という謙虚な姿勢を示しながらも、生成AIと従来のナレッジマネジメントを組み合わせた新しいアプローチの可能性を追求し続けています。その姿勢は、「数百種類の工夫」という言葉に象徴されるように、理論と実践の両面から問題解決に取り組む研究者としての特徴を表しています。
2.2. WordNetとイメージネットへの貢献
野村氏のWordNetへの貢献は、日本のAI研究史において重要な意味を持っています。1998年にMIT Pressから出版された『WordNet』の共著者として、野村氏は日本人として唯一の貢献者となりました。この業績について野村氏は「微力ながら日本人としてはただ1人WordNetに貢献した人物でもあります」と述べています。
WordNetは、英語による概念体系を構築する画期的なプロジェクトでしたが、その真価は後のイメージネットの開発によってさらに高められることになります。野村氏は、WordNetがイメージネットの基盤となった経緯を次のように説明しています:
「WordNetをベースとしてイメージネットっていうのを作ったことによって初めてディープラーニングっていうものが他のアルゴリズムを上回る成績を収めた」
具体的には、WordNetに含まれる具体物の名前約970万種類に対して、1400万枚近い写真にラベルを付与する大規模なプロジェクトが実施されました。この作業には、Amazon Mechanical Turkを使用して5万人が6年をかけて取り組みました。
この取り組みは、2012年に大きな転換点を迎えます。イメージネットを用いた画像認識コンペティションにおいて、ディープラーニングが従来の機械学習手法を大きく上回る性能を示したのです。野村氏はこの出来事を「第3次ブーム」の起点として位置づけ、現在は「第4次ブーム」に入っている可能性を指摘しています。
WordNetとイメージネットの関係性は、概念体系(WordNet)から実世界のデータ(イメージネット)への橋渡しを実現した点で、AI研究における重要なブレークスルーとなりました。この成功は、後の大規模言語モデル開発にも大きな示唆を与えることになります。
野村氏は、この経験を現在のナレッジマネジメントシステム開発にも活かしています。特に、概念間の関係性を構造化する手法や、大規模データセットの活用方法において、WordNetプロジェクトでの知見が重要な役割を果たしているとされています。
3. ナレッジマネジメントの変遷
3.1. 過去のナレッジマネジメントブーム
1990年代後半から2000年代初頭にかけて、ナレッジマネジメントは企業における重要な経営課題として注目を集めました。この時代のナレッジマネジメントの理論的支柱となったのが、トマス・ダベンポート博士です。野村氏は、ダベンポート博士を「ナレッジマネジメントブームの立役者、教祖様と言っても過言ではない」と評価しています。
日本においては、野中郁次郎氏が独自の理論を展開しました。野村氏は野中氏の理論について、「暗黙知と形式知とであのスパイラルでこう知識があの発展してくみたいなんで一斉を風靡した」と説明しています。野中氏の理論は、日本企業の組織的知識創造の特徴をうまく捉えたものとして高く評価されました。
しかし、理論から実装への移行には大きな課題がありました。野村氏は人工知能学会10周年記念大特集「ナレッジマネジメント支援技術」において、実装面での課題に直面していた当時の状況を詳しく報告しています。特に注目すべきは、ジャストシステムのコンセプトベースという先進的なナレッジマネジメント支援ツールの開発経験です。
野村氏は当時を振り返り、「唯一国内でダトのあのナレッジマネジメント支援ツールAI支援ナレッジマネジメントの先駆者と言われたコンセプトベース」の開発者の一人として、様々な招待講演や政府(通商産業省)のワーキングレポートに携わったと述べています。
しかし、この時期のナレッジマネジメントには本質的な課題がありました:
- エンタープライズITのデータ管理との連携・追随の困難さ
- マニュアルの品質問題(古い情報、不明確な説明)
- 重要情報の欠落
- 実用的な知識抽出・活用の仕組みの不足
これらの課題に対して、トマス・ダベンポート博士自身も方向性を転換し、「ナレッジよりも下のレイヤのデータにシフトしました」と野村氏は指摘しています。この転換は、その後のデータサイエンスの台頭につながっていく重要な転換点となりました。
この経験は、現代のナレッジマネジメントシステム開発に重要な示唆を与えています。特に、理論と実践の間のギャップを埋めることの重要性、そして技術的な実装の具体的な方法論の必要性を浮き彫りにしました。
3.2. データサイエンスへのシフト
ナレッジマネジメントからデータサイエンスへの転換は、トマス・ダベンポート博士の研究方向の変化に象徴されています。野村氏は、この変化について「ダベンポート博士はナレッジよりも下のレイヤのデータにシフトしまして、データサイエンスが世界一セクシーな職業だと」と説明しています。
このシフトの背景には、従来のナレッジマネジメントが直面していた実装上の課題がありました。特に、データの定量的な分析と活用という観点から、より実践的なアプローチへの要求が高まっていました。
アメリカにおける特徴的な傾向として、野村氏は自動化への強い志向を指摘しています。「アメリカはまあAI応用にしてもですね、データサイエンスで応用にしても、ナレッジマネジメントにしても、やっぱり自動化というものが全面に出てきます」と述べ、さらに「裏返せばホワイトカラーの首を切ろう、いかに人の首を切ろうっていうのがもう本当にアメリカの資本家はすぐ考える」という厳しい現実を指摘しています。
この動向に対して、日本は異なるアプローチを模索しています。野村氏は「日本は少子高齢化で人がどんどん減ってく。仕事が減るスピード以上に人が減ってくから、いかに小人数であのクリエイティブな仕事を大量にこなす」という課題に直面していると指摘します。具体的には、「今までの10倍ぐらいの仕事を、今までの8割7割6割の人数でやるにはAIが必須」という見方を示しています。
このような状況下で、データサイエンスはより実践的な価値を生み出すツールとして注目されています。特に、以下の点が重要視されています:
- 定量的な分析による意思決定の支援
- 業務プロセスの効率化
- 人材リソースの最適活用
しかし、野村氏は単純な自動化や人員削減ではなく、「サービスレベルはどんどん上げてって」というように、質の向上を伴う効率化の重要性を強調しています。これは、日本独自の文脈における、データサイエンスの活用方法を示唆するものと言えます。
3.3. 生成AIによる新たな展開
生成AIの登場は、ナレッジマネジメントに革新的な変化をもたらしています。野村氏は、特にこの1年間の進化について「生成AIは急激に進化し、過去の人間のベストプラクティスを参考に創造性さえも発揮したり、並みの人間を遥かに超える翻訳精度、分かり易い簡潔な文章を生成できるようになりました」と評価しています。
専門知識の活用方法においても大きな変革が起きています。特に、RAG(Retrieval Augmented Generation)技術の導入により、企業内の専門知識の活用方法が変化しています。野村氏は「ローカル知識、専門知識を生成AIに回答させるRAGや、その小型パーソナル版のGPTsが必要」と指摘し、その精度向上と汎用性の向上には「様々な仕組みの工夫、類似検索の精度を上げるための言語学的な解析の高度化が必要」だと述べています。
しかし、この新しい技術の導入には重要な課題も存在します:
- 社内特有の専門用語や略語の処理
- 「3.3mg」と「3月3日」のような表記の区別
- 社内に独自の意味で使用されている用語への対応
特に注目すべき点として、野村氏は「LLM本体は、規模を大きくすれば単調に精度向上していきますが、社内知識やローカル情報を取り込んだRAGの場合、ノイズを多く含むマニュアル類を大量に取り込むと精度は劣化していきます」と指摘しています。
これらの課題に対して、「何百、何千もの工夫が求められます」と野村氏は述べています。しかし、これらの課題を適切に解決できれば、「知識提供者側の人間も、知識受領者側の人間も、旧来の、分かりにくいマニュアルとの格闘など、非生産的で不毛な作業から解放される」という大きな可能性が開けると展望しています。
最終的に野村氏は、「遂に、長年ナレッジマネジメントが描いた夢、課題が解決へと向かう」と結論付けています。これは、生成AIとRAG技術の組み合わせによって、過去20年以上にわたって追求されてきたナレッジマネジメントの理想が、ついに実現可能な段階に入ったことを示唆しています。
4. データサイエンスの変化
4.1. 変わらない領域と変わる領域
データサイエンスの分野において、生成AIの登場により大きく変化する領域と、依然として人間の関与が必要な領域が明確になってきています。野村氏は、AGC(旭硝子)の岡谷健二氏による分析を引用しながら、この変化について詳細に説明しています。
変わらない領域として最も重要なのは、課題設定と目的設定のフェーズです。野村氏は「課題設定フェーズにおいて目的課題を設定するっていうとこはAIにはまあできない」と指摘しています。これは、ビジネスの文脈を理解し、組織の目標に沿った適切な課題を設定する能力が、依然として人間の重要な役割であることを示しています。
一方、大きく変化する領域として、以下の点が挙げられています:
- データの収集プロセス
- データの整備作業
- 基礎的な可視化作業
- 人間の洞察を誘発するための初期分析
これらの領域では、AIが人間よりも「圧倒的に得意」であり、「人間よりも早く膨大な量をこなせる、何桁も多い量をこなせる」と野村氏は説明しています。特に注目すべき点として、AIの作業比率が「8割9割」に達する可能性が示唆されています。
しかし、この変化は必ずしも人間の役割を軽視するものではありません。むしろ、人間とAIの協働による新しい価値創造の可能性を示唆しています。野村氏は「調理する、盛り付けるっていったとこはまAIと人間が協調する」と述べ、高度な判断や創造性が必要な領域では、人間とAIの適切な役割分担が重要であることを強調しています。
また、データサイエンスの質的な変化も指摘されています。従来の人手による分析では達成できなかったレベルの精度や規模の分析が可能になる一方で、その結果を適切に解釈し、ビジネス上の意思決定に結びつける能力は、むしろ人間の役割として重要性を増しています。
これらの変化は、データサイエンティストの役割の再定義も促しています。野村氏は、今後のデータサイエンティストには、AIツールを効果的に活用しながら、より高度な分析や解釈に注力する能力が求められると示唆しています。
4.2. 料理のアナロジーによる説明
AGCの岡谷健二氏が提案した料理のアナロジーは、データサイエンスの工程を分かりやすく説明する優れた枠組みとして野村氏に高く評価されています。このアナロジーでは、データサイエンスの各工程が料理の過程に対応付けられ、以下のように説明されています。
まず、データ収集のプロセスは「魚を取る」工程に例えられます。野村氏は、この段階でのAIの優位性について、「膨大な量をこなせる、何桁も多い量をこなせる」と指摘しています。これは、従来人手で行っていたデータ収集作業が、AIによって効率化される可能性を示しています。
次に、データ整備は「下処理」に相当します。この工程では、生のデータを分析可能な形に整形する必要があります。野村氏は、この過程でもAIが大きな役割を果たすことができると指摘し、「基礎的な可視化作業」や「人間の洞察を誘発するための初期分析」がAIによって効率的に行えると説明しています。
分析・加工の段階は「調理」に対応します。ここでは、整備されたデータから意味のある情報を抽出し、価値ある知見を生み出す過程が含まれます。この段階では、AIと人間の協調が特に重要になってきます。野村氏は「調理する、盛り付けるっていったとこはまAIと人間が協調する」と述べ、人間の創造性とAIの処理能力を組み合わせることの重要性を強調しています。
最後の可視化は「盛り付け」に相当し、分析結果を効果的に伝えるための重要な工程です。この段階でも、基本的な可視化はAIが担当し、最終的な調整や表現方法の選択は人間が行うという協調的なアプローチが効果的だと示唆されています。
このアナロジーの特徴は、各工程の関係性と重要性を直感的に理解できる点にあります。特に、最終的な価値を生み出すためには、すべての工程が適切に実行される必要があることを、料理という身近な例を通じて効果的に説明しています。また、このアナロジーは、AIと人間の役割分担を考える上でも有用な視点を提供しています。
野村氏は、このアナロジーを用いて、データサイエンスの変革がもたらす可能性と課題を分かりやすく説明することに成功しています。特に、各工程におけるAIの活用度合いが「8割9割」に達する可能性を示唆しながらも、人間の判断や創造性が依然として重要であることを強調している点が注目されます。
4.3. AIと人間の役割分担
AIと人間の役割分担について、野村氏は実践的な観点から詳細な分析を提示しています。特に、日本の文脈における独自の役割分担の重要性を強調しています。
AIが得意とする領域について、野村氏は「今までの10倍ぐらいの仕事を行すっていうのを今までの8割7割6割の人数でやるにはAIが必須」と指摘し、特に以下の領域でAIが高い効果を発揮すると述べています:
- 大量データの高速処理
- 反復的な作業の自動化
- パターン認識と分類
- 基本的な文書生成と要約
一方、人間が担うべき役割として、野村氏は「クリエイティブな仕事を大量にこなす」という新しい方向性を示しています。ここでいう「クリエイティブ」とは、単なる創造性だけでなく、以下のような高度な判断を含む包括的な概念として説明されています:
- 戦略的な意思決定
- コンテキストの理解と解釈
- 新しい価値の創造
- 複雑な人間関係の調整
特に注目すべき点として、野村氏は日本企業特有の文脈を考慮した役割分担を提案しています。「アメリカは自動化というものが全面に出てきます」という傾向に対して、日本では「少子高齢化で人がどんどん減ってく」という状況を踏まえた独自のアプローチが必要だと指摘しています。
協働の在り方について、野村氏は単純な役割の二分化ではなく、相互補完的な関係を提案しています。特に、「サービスレベルはどんどん上げてって」という目標に向けて、AIと人間が協力して取り組むことの重要性を強調しています。
このような役割分担は、特に以下の点で効果を発揮すると期待されています:
- 業務効率の大幅な向上
- サービス品質の継続的な改善
- 人材リソースの最適活用
- 新しい価値創造の機会の拡大
野村氏は、この新しい協働の形が「日本流のやり方」として確立される可能性を示唆しています。これは、単なる効率化や自動化を超えて、人間とAIがそれぞれの強みを活かしながら、より高い価値を生み出していく未来像を描いています。
5. RAG技術
5.1. RAGの基本概念
RAG(Retrieval Augmented Generation)は、野村氏が「博士課理学ってこう、ちょっと名って言うと早く喋るとラグラグという風になるんでリトリーバルオグメンテッドジェネレーションという検索系なんだ検索なた生成です」と説明しているように、検索と生成を組み合わせた技術です。
この技術の本質について、野村氏は「専門知識をそのベクトルストレージで持ってて、それ膨大なものを持ってるっていうのが本格的なRAG」と定義しています。従来の検索技術との大きな違いは、単なる検索結果の提示ではなく、検索結果を基にした生成的な回答が可能な点にあります。
RAGと生成AIの組み合わせについて、野村氏は特に以下の点を強調しています:
「独自シナリオを持つこともあるんですけどこれはオプションですね。独自シナリオの部分はそれで生成AIを呼び出しながらあの回答の仕方って意味では生成AIに表現力とかこう任せるみたいな感じですね」
この説明は、RAGが単なる検索技術の延長ではなく、生成AIの能力を活かしつつ、より正確で文脈に適した回答を生成できる技術であることを示しています。
また、RAGの特徴的な点として、過去の文脈の管理能力が挙げられています。野村氏は「サーバーで持ってってあのまいろんな過去の文脈も管理したり」と述べ、対話の文脈を考慮した応答が可能であることを説明しています。
しかし、RAGの実装には重要な考慮点があります。野村氏は「何万ページもあるような自社のマニュアル全部を放り込んでも」適切な回答を得られる可能性があると述べつつ、実際の運用では「ノイズを多く含むマニュアル類を大量に取り込むと精度は劣化していく」という課題も指摘しています。
この技術の意義について、野村氏は特に企業での活用を念頭に、「社内の専門知識やローカル情報を取り込んだRAG」の重要性を強調しています。これは、汎用的な生成AIモデルでは対応できない、組織固有の知識や文脈を適切に扱える可能性を示唆しています。
これらの特徴は、RAGが従来のナレッジマネジメントシステムと生成AIの長所を組み合わせた、新しい形の知識活用基盤となる可能性を示しています。
5.2. 精度向上のための工夫
RAGの精度向上において、野村氏は特に言語学的な解析の重要性を強調しています。「言語学的な解析の高度化が必要です。いずれ生成AIに任せられる部分があるにしても、例えば『3.3mg』と『3月3日』が全く類似してないことを担保したり、社内に飛び交う専門用語、略語、世間と違う意味で言葉を使っているあたりを巧みに解決する必要があります」と指摘しています。
類似検索の精度向上について、野村氏は独自の手法を開発しています。特に、「600ぐらい精度向上の工夫をした」と述べ、その一例として複合語の処理方法を挙げています。「沖縄基地問題と沖縄米軍問題っていうのは分脈で出てきますよね。普通のあのオープンソースのトークナイザーとかAPIとか使っちゃうと沖縄と基と問題に分かれます」という問題に対して、これらを一つのエンティティとして認識する手法を開発しました。
また、専門用語や略語への対応について、野村氏は「30数万単語のシソーラス」の活用を提案しています。これにより、「単語そのものが活用形を正規化してあの共通してれば」精度の高い検索が可能になると説明しています。
さらに、検索結果のランキング手法についても独自の工夫があります。「文章データベース全体の中でこの記事を特徴付けるパワーが高い順にあのランキング」することで、「何万ページもあるような自社のマニュアル全部を放り込んでもですねあのそん中でえ回答を含んでる可能性が高いトップ50とかトップ30とか」を効率的に抽出できるとしています。
野村氏は、これらの工夫の重要性について「オープンソース適当に使ってトークナイザーっていうそのあのベクトルデータストレジってベクトルストレージっていうものをオープンAI社のあのAPI使ってブラックボックスで作っちゃうと」45%程度の精度しか得られないのに対し、適切な工夫を施すことで「98%に持ってく」ことが可能だと説明しています。
この精度向上の取り組みは、特許出願も行われており、企業の実務での活用を見据えた実践的なアプローチとなっています。
5.3. ローカル知識の統合における課題
ローカル知識の統合において、野村氏は特に精度維持の観点から重要な課題を指摘しています。「LLM本体は、規模を大きくすれば単調に精度向上していきますが、社内知識やローカル情報を取り込んだRAGの場合、ノイズを多く含むマニュアル類を大量に取り込むと精度は劣化していきます」と述べ、単純な知識の追加が必ずしも良い結果をもたらさないことを強調しています。
社内知識の取り込みについて、野村氏は具体的な手法を提案しています。特に重要なのはマークダウン形式での構造化です。「車内できればマニュアル車内ナレッジをマークダウン形式をマスターにして統一して欲しい」と述べ、大中小見出しという階層構造を活用することで、知識の論理的な整理が可能になると説明しています。
ノイズ処理に関して、野村氏は「12行から数千文字っていうものが混ざっててもかなりはいいけることはいける」としながらも、「なるべく小さめの粒度で揃ってる方がいい」と指摘しています。ただし、「小さすぎるとコンテクストが分かんなくなっちゃう」という課題もあり、適切な粒度の設定が重要だと述べています。
精度維持のための工夫として、以下の具体的な方策が提案されています:
- 上位の見出しを含めたコンテキスト保持
- 論理構造の明確化による関連性の把握
- 横断的な知識の関連付け
特に注目すべきは、「登録方法っていう記述っていうのはいろんなマニュアルに出てくる」という例を挙げ、コンテキストがないと意味が特定できない場合の対処方法です。野村氏は「上位の込みだしを中見出し見出しと上位まで行ってその見出しを自動的に情調に保管してこうやってベクトルストレージに上げて」いく方法を提案しています。
この手法により、「点ポイントも精度が上がりました10%です」と具体的な改善効果も報告されています。さらに、この知識統合の自動化について「特許出願してます」と述べており、技術的な独自性と有効性が認められていることを示唆しています。
このように、ローカル知識の統合は単なるデータの追加ではなく、構造化、コンテキスト保持、適切な粒度設定など、多面的な考慮が必要な課題であることが明らかにされています。
6. 実験と観察結果
6.1. Claude 3とGPT-4の比較実験
野村氏は、Claude 3とGPT-4の性能を複数の観点から詳細に比較検証しています。特に注目すべき実験として、同一の職務発明に関する質問に対する両モデルの回答を分析しています。
職務発明に関する質問では、GPT-4は以下のような特徴を示しました: 「質問を繰り返して職務発明に関する規定がありますと、職務発明とは従業員が...と、分かったよどうすればいいかって聞いてんだよさっさと本題答えろよと思いながら」と野村氏が指摘するように、不要な説明が多く、本質的な回答までに時間がかかる傾向が見られました。また、「社員が守護になってワンセンテンスの中で途中で会社が死後に変わるってのは日本語として悪文です」という文体上の問題も指摘されています。
一方、Claude 3は同じ質問に対して、より構造化された明確な回答を提供しました:
- 発明内容を速やかに会社に届け出る(職務発明規定第4条)
- 会社による職務発明の該当性認定
- 特許を受ける権利の譲渡と対価の支払い
- 特許出願や権利の移転に関わる費用は会社負担
特に注目すべき点として、野村氏は「根拠も書いて」「制度評価の数値にするとどっちも丸になっちゃうんですよ」と指摘しながらも、「比べもなんないほどクロード3がいい」と評価しています。
また、文学的な表現力の比較においても興味深い結果が得られています。パロディ小説の作成タスクでは、Claude 3は著作権への配慮を示しつつ、オリジナルの創作で高い表現力を見せました。野村氏は「ディテールがそれらしいんですよね」「なんかシナリオっていうよりはなんか本格的な小説っていう雰囲気が出ていました」と評価しています。
実用面での優位性について、野村氏は特に以下の点を強調しています:
- 回答の論理的な構造化能力
- 法的な参照情報の適切な引用
- 文体の一貫性と自然さ
- 状況に応じた適切な説明の追加
これらの実験結果は、特に企業での実務利用を想定した場合、Claude 3が現時点で優位性を持っていることを示唆しています。野村氏は「文学的」という表現を用いて、その質的な違いを強調しています。
6.2. OCR精度の検証
OCRの性能評価において、野村氏は各モデルの文字認識精度と誤認識の訂正能力について詳細な比較を行っています。特に注目すべき点として、最新のGPT-4オムニでの日本語文字認識の精度が大幅に向上したことが報告されています。
具体的な比較実験では、以下のようなエラー修正能力の違いが明らかになりました:
- Claude 3:「ほぼ100点」
- GPT-4オムニ:「93点ぐらい」
- Gemini:「50点」
特にGeminiについて、野村氏は「相当ひどいです。訂正の仕方が半分以上間違ってます」と指摘し、「何も参照せずに」訂正を行おうとする問題点を指摘しています。例えば、「発見を見る」という文字列を「ただ」という文字に誤認識し、さらにそれを「発掘」に変えてしまうような誤りが観察されています。
また、文脈を考慮した修正能力の違いも顕著でした。野村氏は「OCRの後処理だよって言ったのに、ああこういうことが起こりそうだなっていうのは知識は持たずにやっちゃってる」とGeminiの問題点を指摘しています。
一方、Claude 3とGPT-4 Omniについては、実用レベルの精度が確認されています。野村氏は「クード3やGPT4OMにはこれらを使えばいいOCRも本当に使い物になるという時代になった」と評価しています。
特に注目すべき改善点として、以下が挙げられています:
- 文脈を考慮した誤字訂正能力
- 専門用語の適切な認識
- 文書構造の理解に基づく修正
これらの結果は、OCR技術が生成AIとの組み合わせにより、実用的な精度レベルに到達したことを示しています。野村氏は特にClaude 3の性能を高く評価し、企業での実務利用の可能性を示唆しています。
6.3. 文章生成能力の評価
文章生成能力の評価について、野村氏は特にClaude 3の卓越した能力を具体的な事例を通じて示しています。
文学的表現力の比較において、野村氏は「文学的だと評価する日本語学会の元会長の先生方が口を揃えて」と述べ、特にClaude 3の表現力の高さを強調しています。一方で「残念ながら私が知るエンジニア何人かですねその違いわかんないらしいです」と、技術者と言語学者の間での評価の違いも指摘しています。
専門的文書作成能力について、特に職務発明規定に関する実験で興味深い結果が得られています。Claude 3は「個人が出願することは全然書いてないから誤解の余地ないです」というように、法的な正確性を保ちながら、明確な文章を生成できることが示されました。
長文生成の品質評価では、野村氏の著書『AIに勝つ!』(432ページ)の要約実験が行われました:
- GPT-4:本の要約は可能だが、制限があり全文を一度に処理できない
- Claude 3:90秒で全文を読み込み、適切な要約を生成
- Gemini:200万トークンを扱えると主張するも、精度に課題
特に興味深い点として、本のタイトル改善提案でも違いが見られました:
Claude 3は「AIと共に生きる」「人間力を磨け」など複数の選択肢を提示し、それぞれの理由を論理的に説明。さらに、現在のタイトルとの比較分析まで行い、「現代の方がインパクトがあるよね」という評価まで示しました。
野村氏は、これらの結果について「30秒ぐらいですかねクロード3のえっとオパスという最上位バージョンでこんな回答が返ってくるといなのかブレストとか企画にもう使わないのはいのもうもったいなさすぎる」と評価しています。
このように、Claude 3は単なる文章生成を超えて、文脈理解、論理的思考、創造的提案を組み合わせた高度な文章生成能力を示しています。特に、専門的内容と創造的表現の両立という点で、他のモデルとの差異が顕著に表れています。
7. プロンプトエンジニアリング
7.1. プロンプトの重要性
プロンプトエンジニアリングの重要性について、野村氏は興味深い観察を示しています。「生成AI大したことないって言ってる人はあなたの能力が大したことないんです」と端的に指摘し、その理由として「質問の仕方がわけわかんない曖昧だったり、あの何言ってるかわからないクリエイティブでない」場合、AIがその人のレベルに合わせて回答してしまうことを挙げています。
プロンプトの品質と回答品質の関係について、野村氏は具体的な事例を示しています。特に職務発明に関する質問では、プロンプトの設計によって回答の質が大きく変わることを実証しています。適切なプロンプトを使用した場合、「根拠も書いて」「制度評価の数値にするとどっちも丸になっちゃう」ような高品質な回答が得られる一方、不適切なプロンプトでは表層的な回答しか得られないことを示しています。
プロンプト最適化の方法として、野村氏は以下の要素を重視しています:
- 文脈の明確な提示:「あなたはコールセンターで次の制約条件やレジに従ってQ&A質問を受けて回答を行うオペレーターです」というように、具体的な役割や状況を設定することの重要性を指摘しています。
- 制約条件の明示:「マニュアルに反することは言わずに回答する」といった制約を明確に示すことで、より正確な回答を引き出せることを説明しています。
- 影プロンプトの活用:「日本語ってのは曖昧で目的語守護が省略されたりする」という特性を踏まえ、補完的な指示を含めることの有効性を強調しています。
特に注目すべき点として、野村氏は「プロンプトエンジニアリングのプロ中のプロ」の存在を指摘し、「実質プロンプトエンジニアリングをですねそのカウンセラーを数年前からやってて実質人間相手にプロンプトエンジニアリングをやってた」という経験の重要性を強調しています。
このように、プロンプトエンジニアリングは単なる技術的スキルではなく、人間のコミュニケーションスキルと深く結びついた専門性を必要とする分野として位置づけられています。
7.2. 影プロンプトの活用
影プロンプトについて、野村氏は独自の実装方法とその効果を詳細に解説しています。影プロンプトとは、「あなたはコールセンターで次の制約条件やレジに従ってQ&A質問を受けて回答を行うオペレーターです」のように、AIに特定の役割や文脈を与える補助的なプロンプトを指します。
実装方法について、野村氏は「プロンプトを充実させてくと条文まご用してっていうのが満たせない」という課題に対して、「マーケティング目的ではこういう知識を補ってこんな風に回答しなきゃいけない」というように、部門や目的に応じた適切な影プロンプトの設計を提案しています。特に「総務総務ホーム経理マーケティング研究開発」など、会社の中の様々な部門ごとに異なる影プロンプトを用意することの重要性を強調しています。
効果について、野村氏は以下の具体的な成果を報告しています:
- 専門性の向上:「マルチ専門家としてえっと機能する」
- 回答の一貫性:部門固有の文脈を維持した応答が可能
- 精度の向上:「膨大な量の影プロンプトで何十にも抑え込んでる」
運用上の注意点として、野村氏は特に以下の点を強調しています:
- 「テンプレチャーとかそのあのクリエイティブになりすぎるなみたいなパラメーター」の適切な設定
- 「重数種類のパラメーターが述べである」ことへの配慮
- スラックやteamsをフロントとした場合の文脈管理の重要性
特に興味深い点として、野村氏は「このチャネルとかこのスレッドの中での分脈だけ反映してっていうなことが自在にできる」という影プロンプトの柔軟性を指摘しています。これにより、「数剣から数10数権の最近の履歴をサマライしてから」適切な回答を生成することが可能になるとしています。
これらの工夫により、野村氏は「差はかなり小さくなって」きているとし、職務発明やセクハラに関する質問への回答など、実務的な場面での有効性を実証しています。
7.3. マークダウン形式の重要性
マークダウン形式の採用について、野村氏は知識構造化の観点から重要な提言を行っています。「車内できればマニュアル車内ナレッジをマークダウン形式をマスターにして統一して欲しい」という基本方針を示し、具体的な構造化手法を提案しています。
知識構造化の手法として、特に階層構造の重要性を強調しています:
- 大見出し、中見出し、小見出しという階層を「シャープの数でだんだんシャープが多いと込みだしになっていき」という形で表現
- 見出しの下の内容は箇条書きで構造化
- 論理構造を明確にすることで、知識の関連性を把握しやすく
マークダウン形式の採用によって得られる利点として、野村氏は以下の点を指摘しています: 「生生が答えられるようにすれば人間にとってもむちゃくちゃ分かりやすいマニュアルになるしだけども生生愛通したらもう1/51/10の時間で内容が理解できるよう」になると述べています。
実装上の考慮点として、野村氏は「マークダウン化のマニュアル」の重要性を強調しています。これは「何十ページありますマークダウン化のマニュアルっていうものこれ一応門外不出でお客さんにだけご提供してる」という形で管理されており、その重要性が示唆されています。
特に注目すべき点として、野村氏はマークダウン形式が横断的な知識の関連付けを可能にすることを指摘しています。「横飛びの知識っていうのはその文章の中に前行のなんとかとかいう形でですねあの現れてることが多い」という観察に基づき、適切な構造化によって知識の関連性を維持できることを説明しています。
これらの工夫により、「生生愛がもう本当に高い制度で理解できる」ような文書構造を実現できると野村氏は結論付けています。
8. ハルシネーション対策
8.1. 発生メカニズム
ハルシネーションの発生メカニズムについて、野村氏は実践的な観点から詳細な分析を提供しています。特にRAGシステムにおけるハルシネーションについて、「専門知識を普通に例えばよくるとまあ他社の悪口あんまり痛くないんですけども、よくもうもみ手でね今あるPDFをアップロードするだけでオッケーですって言ってるところは精度34割しか出ない」と指摘し、安易な実装がハルシネーションを引き起こす主要な原因の一つであることを示しています。
発生原因の分析において、野村氏は以下の構造的な問題を指摘しています:
- 「普通のチャットGPT使ってる時よりもはかにイラつきます」という形で、RAG実装時の精度低下が起こりやすい
- 「67割がハルシネーションだと思ってください」という状況が、基本的な実装では一般的
- 「多少磨いてもまあ1割から3割はハルシネーションを起こしている」という現実
典型的なパターンとして、特に以下の状況でハルシネーションが発生しやすいことが示されています:
- 複数の文書から情報を組み合わせる必要がある場合
- 専門用語や特殊な表現が含まれる場合
- 文脈の理解が必要な場合
野村氏は、これらの問題に対する基本的なアプローチとして、「極力自信がなかったらすいません今持ってる知識では分かりませんっていう風に答えるようにする」という方針を提案しています。これは、不確かな回答を避けることでハルシネーションのリスクを低減する効果があるとしています。
特に注目すべき点として、野村氏は自社のシステムで「厳しく評価してハルシネーション、それもしかもだから極力自信がなかったらすいません今持ってる知識では分かりませんっていう風に答えるようにする」という方針を採用し、「大企業であのハイスコアは0.8%切りました」という具体的な成果を報告しています。
このように、ハルシネーションは単なる技術的な問題ではなく、システム設計全体に関わる課題として認識され、その対策には包括的なアプローチが必要とされています。
8.2. 低減のための施策
ハルシネーション低減のための施策について、野村氏は包括的なアプローチを提案しています。特にRAGシステムにおけるハルシネーション対策として、複数のレイヤーでの対応が必要であることを強調しています。
プロンプト設計での対策として、野村氏は「数ヶ月でえいい線行くには、最低1000件ですね1000件のモハンQ&Aっていうものをブートストラップ方式」の活用を提案しています。特に、「プロトタイプバージョン0.5とかのそのラグをの結果を使ってそれを手修正することであのモハン回答を作ってき」という段階的なアプローチの有効性を指摘しています。
システム的な制御方法については、以下の重要な要素が示されています:
- ビジュアルルジ検索の活用:「ああ本当の回答は惜しかった第3位にあったよねとかねでそれなら精が拾えたはずなのに拾えなかった」という状況を検出し、改善
- プロンプトの追加:「そこでプロンプトを追加したり」という形での継続的な改善
- 多面的なアプローチ:「何種類かま多めに数と10数種類の手法で知識デバグをやって」いくことの重要性
運用面での対策として、野村氏は特に以下の点を強調しています:
- モデル選択の重要性:「アジルの日本リージョンで日本語で大量の普通の日本人相手にあのヒューマンヒドバックあのリインフォースlearbyhum Feedrlfで普通の日本人相手に大量に学習だったllmのサーバーって精度が下がっていきます」という観察に基づき、適切なリージョンやモデルの選択が重要
- 継続的な評価と改善:「それは刻々と変わってきますので」という認識のもと、定期的な見直しの必要性
- 人間によるチェック:「人間も1日で作るぐらいのパワーを発揮しなきゃだめ」という形での人間の関与の重要性
これらの施策を組み合わせることで、野村氏は「できないって白旗あげたら私が仮にやってあげます」というレベルまでハルシネーションを低減できる可能性を示唆しています。
8.3. 評価方法
ハルシネーションの評価方法について、野村氏は実践的な手法と定量的な評価基準を提示しています。特に「悪魔の証明」という概念を用いて、ハルシネーション検出の本質的な課題を説明しています。
ハルシネーション検出手法として、野村氏は以下のような具体例を挙げています:「太陽系最大のせ衛星タタには酸化水素の海のそこ深くに人間の100倍賢い知的生命体が一兆に住んでます」という主張に対して、「真面目な顔で言うんですよ応援の時嘘だと思うなら厳密にそうでないことを100%証明してください」という形で、ハルシネーションの検出が本質的に困難な課題であることを示しています。
定量的評価の方法として、野村氏は以下の段階的なアプローチを提案しています:
- 形式知化された情報との照合:「形式地化されてればないってことわかん」
- 文章化されていない情報の評価:「文章になってないことが問題じゃね」
- リアルタイムでの検証:「即次の質問からそれに基づいて回答できるようになる」
継続的モニタリングの重要性について、野村氏は特に以下の点を強調しています:
- 「不要語リスト数百号にあのランキングに反映してはいけないもの」の管理
- 「その重みのコントロールなんてのも重代できる」という柔軟な制御の必要性
- 「言語学的な単語の定義も考えられるような」精緻な評価システムの構築
野村氏は、これらの評価方法を総合的に活用することで、「もうこれだけ完璧な自分のそのアイディアをの理由付けをしながらそれをオリジナルとこう比較して義足をやるやるという」ような高度な評価が可能になると指摘しています。
特に注目すべき点として、評価システムの自動化と人間による確認の組み合わせの重要性が強調されています。これにより、ハルシネーションの検出と評価を継続的に改善していくことが可能になるとしています。
9. 企業導入の実際
9.1. コスト構造
企業へのRAGシステム導入におけるコスト構造について、野村氏は具体的な数値を示しながら詳細な分析を提供しています。
API利用コストについて、野村氏は以下のような具体的な試算を示しています: 「1人1日に1000回質問する人はまずいないと思うんですけれども、1回の質問で平均1万文字10系トーク」という利用パターンを想定し、各モデルのコストを比較しています:
- GPT-3.5ターボ16K:1000回の質問で150円
- GPT-4 32K:9000円
- GPT-4ターボ128K:1500円
- GPT-4オムニ:750円まで下がった
さらに、大規模な企業導入の例として、「1万人の社員の企業で」の試算も示しています。「1万人が1人1回え質問したとすると10万回ですよねで10万回だから100倍っていうことで」という計算に基づき、「7万5000で済む」という具体的なコスト見積もりを提示しています。
システム構築コストについて、野村氏は「徹底的にえもうkmが完成したカンパニーナレージカンパニーkmカンパニーですよと誇れるぐらいなものに」するためには、「数100万のオーダ」が必要になると指摘しています。特に、「うちのスタッフが34人ついてあのやる」という体制が必要になる場合があることを説明しています。
運用保守コストについては、「llmでベンダーに払う料金っていうのはうちみたいなラグベンダーに払うところよりもま1桁2桁安い」と述べ、総合的なコスト構造の中でのバランスを強調しています。
しかし、野村氏はこれらの投資対効果について、「1万人の企業それやったらもうあの潜在的に何億の利益となってもう1年後にはあっというに黒人になっちゃいます」と、投資の回収可能性を示唆しています。
このように、コスト構造は単純なAPI利用料だけでなく、システム構築や運用保守を含めた総合的な視点で検討する必要があることを強調しています。
9.2. 導入プロセス
企業へのRAGシステム導入プロセスについて、野村氏は段階的なアプローチの重要性を強調しています。特に、ブートストラップ方式による段階的な精度向上と体制構築を提案しています。
初期評価と計画のフェーズでは、「最低1000件ですね1000件のモハンQ&Aっていうものをブートストラップ方式」から始めることを推奨しています。これは「プロトタイプバージョン0.5とかのそのラグをの結果を使ってそれを手修正することであのモハン回答を作ってき」という形で、実際のデータを基にした段階的な改善を可能にします。
システム構築手順について、野村氏は以下のような段階的なアプローチを提案しています:
- マークダウン形式での知識構造化
- 影プロンプトの設計と調整
- 精度評価と改善サイクルの確立
特に注目すべき点として、「ナレッジマネジメントまったなしの現場」における導入プロセスについて、「ナレッジが大量に誕生してそれがもう毎週あのマニュアルアップデートしなきゃいけない」という状況下での対応を説明しています。
運用体制の確立について、野村氏は「新陳代謝あの95%以上が中途社員でですね人がどんどん入れ替わってくる」という現実を踏まえた体制作りの重要性を指摘しています。特に、「元いた会社の常識で仕事しちゃおうとすると間違いやりまくる」という問題に対して、適切なナレッジ管理体制の構築が必要だとしています。
さらに、「手戻りが1個発生したら何十倍もあのスローダウンしてしまい」という事態を防ぐため、導入初期からの適切な体制構築の重要性を強調しています。この点について、実際のクライアント事例として「サーズ提供会社さんなんですけど1年間で社員数が2倍になった1000人から2000人に増えた」というケースを挙げ、急速な組織成長下でのナレッジマネジメントの重要性を示しています。
9.3. 運用上の課題
運用上の課題について、野村氏は特に精度維持の観点から重要な指摘を行っています。「社内マニュアル最近読んでますか」と問いかけ、「読むに耐えないすよね」という現状を指摘しています。具体的な問題として、「そもそも内容が間違ってる」「日本語の意味がわかんねえ」「専門知識その書いたあこれごめんなさいもう1つ書こうと思って走っちゃった」など、マニュアルの質的な課題を挙げています。
更新管理の手法については、特に以下の問題点を指摘しています: 「各人がサボるっていうかああ一覧表にすれば分かりやすいでしょうねっって言ってあの縦500行横50カラムの表にまとめる」という安易な対応が、かえって「それ自分が欲しいとかそん中の1つの長方形のボックスだけなんだけどそれ見つけるのにどんだけ苦労させられんのよ」という事態を招いていると指摘しています。
この問題に対する解決策として、野村氏は以下のアプローチを提案しています:
- スキーマの意味を明確に定義
- AIによる文章化支援の活用
- 電話でも理解できる明確な説明の実現
利用者教育の重要性について、野村氏は「速さは力です」という観点から、「もうマニュアルを毎週あるいは週2回改定してる会社なんてほとんどいない」という現状を指摘しつつ、「ナレッジマネジメントで会社の業務を高速化する」必要性を強調しています。
特に、「OODAが秒単位でできる」という目標に向けて、「PDCAでもいいですだけどそのサイクルをPDCを1週間で回そう」という具体的な提案を行っています。これは「会社の力を強化する最高の共通会」として位置づけられています。
このように、運用上の課題は単なる技術的な問題ではなく、組織全体の知識管理体制の確立と継続的な改善プロセスの構築が必要であることを示唆しています。
10. 今後の展望
10.1. 生成AI技術の進化方向
生成AI技術の進化について、野村氏は興味深い予測を示しています。特に注目すべきは、従来の単純な大規模化とは異なる方向性への進化の可能性です。
モデルの大規模化トレンドについて、野村氏は「両方全部全部起きてきます」と述べ、大規模モデルと小規模モデルが並行して発展していく可能性を指摘しています。特に、「下手したら来月ノートパソコン上でオンプレで動いてしまう勢いです」という予測は、技術の民主化の可能性を示唆しています。
性能向上の可能性について、野村氏は特にローカライズの観点から興味深い観察を示しています。「アジルの日本リージョンで日本語で大量の普通の日本人相手に大量に学習だったllmのサーバーって精度が下がっていきます」という指摘は、単純な学習データの増加が必ずしも性能向上につながらないことを示しています。
新たな技術革新の予測として、野村氏は特に以下の方向性を示唆しています:
- オンプレミス化:「今でも動いてますけどちょっと精度低くて遅いレスポンスが」という現状から、より高性能なローカル実行への進化
- マルチモデル統合:「マイクロソフトがはいコーパイロトって言ってます」のように、複数の機能を統合した総合的なソリューションの発展
- 特化型モデル:「質が低いあの転がってるオープンソース適当に使って」という状況から、より専門的な用途に特化した高精度なモデルへの進化
特に興味深い点として、野村氏は「95%英語で学習してたとしても中途半端な日本語だけでやったやつにはかに勝っちゃう」という現象を指摘し、単純な学習データ量や言語の違いよりも、モデルのアーキテクチャや学習方法の重要性を強調しています。
これらの展望は、生成AI技術が単なる性能向上だけでなく、より実用的で多様な方向に進化していく可能性を示唆しています。
10.2. オンプレミス展開の可能性
オンプレミス展開について、野村氏は日本企業特有のニーズと技術的な実現可能性の両面から分析を提供しています。
オンプレミス需要の背景として、野村氏は日本企業の特徴的な態度を指摘しています。「日本の法人ユーザーっていうのはやはり万が一バグによってでもですね学習してないと言い張っている損害賠償も払うと言ってるオープンAだって信用できない」という状況があり、「損害賠償金もらっても腹水盆に変らずだっていう」考え方が強いと述べています。
技術的な実現可能性について、野村氏は具体的な進展を報告しています。「今でも動いてますけどちょっと精度低くて遅いレスポンスが」という現状を示しつつ、「下手したら来月ノートパソコン上でオンプレで動いてしまう勢いです」と、急速な技術的進歩の可能性を示唆しています。
導入における考慮点として、以下の要素が挙げられています:
- 処理性能とレスポンス速度のバランス
- オンプレミス環境での精度維持の課題
- セキュリティと利便性のトレードオフ
特に興味深い点として、野村氏は「個人でオンプレ思考がものすごく大きくて」と指摘し、日本市場特有のニーズに対応することの重要性を強調しています。これは、グローバルなトレンドとは異なる日本独自の展開方向性を示唆するものとなっています。
このように、オンプレミス展開は技術的な課題と企業文化の両面から検討が必要な領域として位置づけられています。野村氏は、これらの課題に対する段階的なアプローチの重要性を示唆しています。
10.3. 日本企業特有の課題と対応
日本企業における生成AI導入の特有の課題について、野村氏は独自の視点から分析を提供しています。
セキュリティ要求への対応について、野村氏は特に日本企業の慎重な姿勢を指摘しています。「万が一バグによってでもですね学習してないと言い張っている損害賠償も払うと言ってるオープンAだって信用できない」という態度は、日本企業に特徴的な慎重さを示しています。これは、単なるセキュリティ技術の問題ではなく、企業文化や責任の考え方にまで及ぶ本質的な課題となっています。
文化的な配慮について、野村氏は特にアメリカとの対比を示しています。「アメリカはまあAI応用にしてもですね、データサイエンスで応用にしても、ナレッジマネジメントにしても、やっぱり自動化というものが全面に出てきます」という状況に対し、日本では「少子高齢化で人がどんどん減ってく」という社会的背景から、異なるアプローチが必要だと指摘しています。
導入戦略の最適化について、野村氏は具体的な提言を行っています:
- 「グロコムさんていうのはま大学としてですね大学っていうのは人類規模のナジマネジメント」という視点から、より広い文脈での知識管理の重要性
- 「昔の大学の先生は20年間基だノートをずっと使い続けてる」という状況から、「ノートを1週間で取り替えましょう」という変革の必要性
- 「生成えいもそのま毎処理ツールも使うしかない」という現実的な対応の重要性
特に注目すべき点として、野村氏は「今までの10倍ぐらいの仕事を、今までの8割7割6割の人数でやるにはAIが必須」という認識を示しながら、これを単なる効率化や人員削減ではなく、サービスレベルの向上を伴う変革として位置づけています。
このように、日本企業における生成AI導入は、技術的な課題解決だけでなく、文化的な文脈を踏まえた包括的なアプローチが必要とされています。