この記事は2023-02-27に公開されたアメリカ政府の『Data Center Optimization:Additional Agency Actions Needed to Meet OMB Goals』を要約したものです。
1. エグゼクティブサマリー
データセンター最適化イニシアチブ(DCOI)は、2010年に開始された連邦政府のデータセンター統合・最適化プログラムの継続として、2016年に立ち上げられました。本レポートは、DCOIの進捗状況と成果を包括的に評価したものです。
主な成果:
- データセンター閉鎖:
- 2021年度:58のデータセンターを閉鎖(目標43を上回る)
- 2022年度:8月時点で20のデータセンターを閉鎖、年度末までに追加58の閉鎖を予定
- コスト削減:
- 累積総額(2012年度-2021年度):66億ドル
- 2021年度:6億1,232万6,000ドル
- 2022年度:8月時点で3億3,432万4,000ドル(年間目標1億3,147万ドルを大幅に上回る)
- 最適化進捗: 2022年度の達成状況(17機関中)
- 仮想化:13機関が目標達成
- 可用性:17機関が目標達成
- 高度エネルギー計測:14機関が目標達成
- サーバー利用率:14機関が目標達成
主要な成功要因:
- 明確な目標設定と進捗のモニタリング
- 仮想化技術の積極的な導入
- クラウドサービスへの移行促進
- エネルギー効率の向上への取り組み
- 機関間の好事例共有
課題と改善点:
- 一部の機関での最適化目標未達成
- データの一貫性と正確性の確保
- GAOの勧告の完全実施(126中16が未実施)
今後の展望: DCOIは2022年10月に終了しましたが、その成果と教訓は今後のデータセンター戦略に活かされるべきです。特に、クラウドファーストアプローチの継続、エネルギー効率の更なる向上、セキュリティ強化に重点を置くことが重要です。
結論: DCOIは全体として成功を収め、大幅なコスト削減と効率化を実現しました。しかし、一部の課題も残されており、今後も継続的な改善と最適化の取り組みが必要です。各機関は、DCOIで得られた知見を活用し、より効率的で持続可能なITインフラストラクチャの構築を目指すべきです。
2. はじめに
2.1 DCOIの背景と目的
データセンター最適化イニシアチブ(DCOI)は、連邦政府のIT基盤の効率化と近代化を目指す重要な取り組みとして2016年に開始されました。このイニシアチブは、2010年に始まった連邦データセンター統合イニシアチブ(FDCCI)を発展させたものです。DCOIの主な目的は、連邦政府のデータセンターの数を削減し、運用コストを低減させると同時に、残存するデータセンターの効率性と性能を向上させることでした。
DCOIの背景には、連邦政府のデータセンター数の急増とそれに伴う運用コストの増大がありました。2018年時点で、連邦政府機関は5900以上のデータセンターを運用しており、その多くが非効率的で過剰な容量を抱えていました。例えば、2009年の報告では、政府全体のサーバー利用率が平均5%程度と極めて低い状況にあることが明らかになっていました。
DCOIは、以下の具体的な目標を掲げて推進されました:
- 非効率的なインフラストラクチャの統合
- 既存施設の最適化
- クラウドサービスなどのより効率的なインフラストラクチャへの移行
- サイバーセキュリティの強化
- 大幅なコスト削減の実現
これらの目標を達成するため、DCOIは各機関に対して、データセンターの包括的な在庫管理、統合・最適化戦略の策定、定期的な進捗報告を義務付けました。また、行政管理予算局(OMB)が設定した最適化指標に基づいて、各機関の進捗を評価する仕組みも導入されました。
2.2 調査の範囲と方法論
本レポートは、DCOIの進捗状況と成果を包括的に評価することを目的としています。調査の範囲は、DCOIに参加する24の連邦政府機関を対象とし、2021年度から2022年度にかけての実績、および2023年度以降の計画を含んでいます。
調査方法は、以下の手順で実施されました:
- データ収集:各機関から提出されたデータセンターの在庫情報、コスト削減報告書、DCOIの戦略計画を収集しました。これらのデータは、2022年3月および8月時点の情報に基づいています。
- データ分析:収集したデータを分析し、データセンターの閉鎖数、コスト削減額、最適化指標の達成状況を評価しました。特に、OMBが設定した目標値との比較分析を行いました。
- 機関へのインタビュー:24の参加機関の担当者に対してインタビューを実施し、DCOIの実施状況、成果、課題について詳細な情報を収集しました。
- IT Dashboard の活用:OMBが運営するIT Dashboardを利用して、各機関の進捗状況を追跡し、報告されたデータの一貫性と正確性を検証しました。
- 成功事例の分析:特に顕著な成果を上げた機関について、詳細なケーススタディを実施し、成功要因を特定しました。
- GAOの過去の勧告のフォローアップ:Government Accountability Office(GAO)が過去に行った勧告の実施状況を確認し、未解決の課題を特定しました。
この調査方法により、DCOIの全体的な進捗状況を客観的に評価するとともに、個々の機関の成果や課題を詳細に分析することが可能になりました。本レポートは、これらの調査結果に基づいて、DCOIの成果を評価し、今後のデータセンター戦略に向けた提言を行うことを目的としています。
3. データセンター閉鎖の進捗状況
データセンター最適化イニシアチブ(DCOI)における重要な目標の一つは、連邦政府機関が保有するデータセンターの数を削減することです。本節では、2021年度の実績、2022年度の実績と予測、そして2023年度から2025年度にかけての将来計画について詳細に分析します。
3.1 2021年度の閉鎖実績
2021年度において、連邦政府機関は当初の目標を上回る成果を上げました。24機関中23機関が設定された閉鎖目標を達成または超過し、合計で58のデータセンターが閉鎖されました。これは当初の目標である43センターを大幅に上回る結果となりました。
特筆すべきは、10機関が当初の目標を超えてデータセンターを閉鎖したことです。中でも、商務省、国防総省、エネルギー省、労働省、国務省、財務省、内務省、航空宇宙局(NASA)、社会保障局、退役軍人省の実績が顕著でした。これらの機関の中には、当初閉鎖計画がなかったにもかかわらず、積極的に閉鎖を進めた機関も含まれています。
一方で、司法省は2021年度の閉鎖目標を達成できませんでした。これは、クラウドサービスプロバイダーへの移行プロセスが予想以上に時間を要したためです。具体的には、年度末の決算活動との競合を避けるため、最終的な移行ステップが2022年度にずれ込んだことが原因でした。
3.2 2022年度の閉鎖実績と予測
2022年度は、8月時点で20のデータセンターが既に閉鎖されており、年度末までにさらに58の閉鎖が予定されています。以下の表は、2022年度の閉鎖実績と予測を示しています。
状況 | データセンター数 |
2022年8月までに閉鎖済み | 20 |
2022年度末までに閉鎖予定 | 58 |
2022年度合計閉鎖数(予測含む) | 78 |
特に、商務省、国務省、退役軍人省の3機関は、既に2022年度の閉鎖目標を超過達成しています。一方で、国土安全保障省と内務省は目標を達成し、国防総省、エネルギー省、司法省、労働省の4機関は年度末までに目標達成を見込んでいます。
残りの15機関は2022年度の閉鎖計画がなく、実際に閉鎖も行っていません。これらの機関の多くは、既に大幅な統合を完了しているか、または運用上必要最小限のデータセンターのみを維持している状況にあります。
3.3 将来の閉鎖計画(2023年度-2025年度)
2023年度から2025年度にかけての閉鎖計画は、これまでの急速な統合ペースと比較すると緩やかになる傾向が見られます。この期間中、7機関が合計44のデータセンターの閉鎖を計画しています。
主な閉鎖計画を持つ機関は以下の通りです:
- 国防総省:31センター
- 司法省:6センター
- エネルギー省、保健福祉省:各2センター
これらの計画数の減少は、多くの機関が既に大幅な統合を完了し、残存するデータセンターが業務上不可欠なものとなっていることを示唆しています。
今後の閉鎖においては、単純な数の削減だけでなく、戦略的な統合と最適化が重要となります。特に、クラウドサービスの活用や、高度なエネルギー効率を持つ施設への集約など、質的な改善に焦点を当てた取り組みが求められます。
また、閉鎖後の移行プロセスや、セキュリティの確保、データの整合性維持などの課題に対しても、十分な計画と準備が必要となります。これらの点について、各機関は詳細な戦略を策定し、実行していく必要があります。
4. コスト削減の実績と予測
データセンター最適化イニシアチブ(DCOI)の主要な目標の一つは、連邦政府のIT関連支出を大幅に削減することです。本節では、DCOIの開始以来達成された累積コスト削減額と、直近の2021年度における実績を詳細に分析します。
4.1 累積コスト削減額(2012年度-2021年度)
DCOIおよびその前身のイニシアチブを通じて、連邦政府機関は2012年度から2021年度にかけて、累積で66億ドルものコスト削減および回避を達成しました。この金額は、当初の予想を大きく上回る成果であり、連邦政府のIT予算の効率化に大きく貢献しています。
この累積削減額の内訳を年度別に見ると、初期の数年間は比較的小規模な削減にとどまっていましたが、DCOIの本格的な実施に伴い、2016年度以降に大幅な削減が実現されています。特に、2018年度から2020年度にかけては、年間10億ドルを超える削減が達成されており、イニシアチブの成熟に伴う効果の拡大が顕著に表れています。
主な削減要因としては、以下が挙げられます:
- 物理的なデータセンターの閉鎖による直接的なコスト削減
- クラウドサービスへの移行による運用コストの低減
- サーバーの仮想化による機器調達費の削減
- エネルギー効率の向上による電力コストの削減
- 運用プロセスの標準化・効率化による人件費の削減
これらの要因が複合的に作用し、大規模なコスト削減を実現したと考えられます。
4.2 2021年度のコスト削減実績
2021年度においては、24のDCOI参加機関のうち22機関が設定されたコスト削減目標を達成し、全体で6億1,232万6,000ドルの削減を実現しました。この実績は、多くの機関が積極的にコスト削減に取り組んだ結果であり、DCOIの継続的な成功を示しています。
以下の表は、2021年度のコスト削減目標達成状況を示しています:
達成状況 | 機関数 | 削減額(百万ドル) |
目標超過達成 | 11 | 339.37 |
目標達成 | 3 | 25.86 |
目標未達成 | 2 | - |
目標設定なし | 8 | - |
合計 | 24 | 612.326 |
特筆すべきは、11機関が目標を超過達成したことです。これらの機関には、農務省、商務省、国防総省、エネルギー省、保健福祉省、国土安全保障省、内務省、司法省、労働省、運輸省、米国国際開発庁が含まれます。中でも、労働省と米国国際開発庁は、当初の削減目標が0ドルだったにもかかわらず、実際には削減を達成しています。
一方で、国務省と社会保障局の2機関は目標を達成できませんでした。国務省の場合、2021年度の閉鎖計画に2022年度の予定を誤って含めてしまったことが原因で、予定していた180万ドルの削減に対し、実際の削減額は140万ドルにとどまりました。社会保障局は、クラウドイニシアチブからの削減額とデータセンターのエネルギー使用量が予想を下回ったことが目標未達の要因となりました。
これらの結果から、多くの機関がDCOIを通じて着実にコスト削減を実現していることが分かります。ただし、一部の機関では予測の精度や計画の実行に課題が残されており、今後の改善が必要です。また、削減額の大きさは機関によって大きく異なっており、ベストプラクティスの共有や、機関の特性に応じた戦略の策定が重要となります。
4.3 2022年度のコスト削減実績と予測
2022年度のデータセンター最適化イニシアチブ(DCOI)におけるコスト削減実績は、年度途中にもかかわらず既に目標を大幅に上回る成果を示しています。当初、参加機関全体で1億3,147万ドルのコスト削減が計画されていましたが、2022年8月の時点で既に3億3,432万4,000ドルの削減が達成されています。この実績は、多くの機関が積極的にコスト削減策を実施し、その効果が予想以上に大きかったことを示しています。
特筆すべきは、8つの機関が既に年度目標を超過達成していることです。これらの機関には、農務省、国防総省、エネルギー省、保健福祉省、内務省、司法省、国務省、労働省が含まれます。例えば、労働省は当初の目標が0ドルだったにもかかわらず、1,716万8,000ドルの削減を実現しています。
一方で、12の機関は2022年度のコスト削減目標を0ドルと設定し、実際の削減も報告していません。これらの機関の多くは、既に大幅な削減を達成しており、さらなる削減の余地が限られていると考えられます。
以下の表は、2022年度の主要機関のコスト削減実績を示しています:
機関名 | 計画削減額(百万ドル) | 達成削減額(百万ドル) | 差額(百万ドル) |
国防総省 | 90.0 | 118.3 | +28.3 |
社会保障局 | 150.0 | 144.012 | -5.988 |
保健福祉省 | 12.612 | 18.514 | +5.902 |
財務省 | 17.5 | 17.5 | 0 |
労働省 | 0 | 17.168 | +17.168 |
注目すべきは、国防総省が計画を2,830万ドル上回る削減を達成したことです。一方、社会保障局は目標に対して若干の未達が見られますが、年度末までに目標達成を見込んでいます。
2022年度末までに、さらに870万ドルの追加削減が見込まれており、特に退役軍人省とNASAが目標達成に向けて取り組んでいます。退役軍人省の担当者によると、第4四半期に139万ドルのコスト回避を報告予定であり、これにより年間目標の560万ドルを達成する見込みです。
4.4 将来のコスト削減計画
2023年度以降のコスト削減計画については、多くの機関が慎重な姿勢を示しています。これは、これまでの大幅な削減によって、容易に削減可能な領域がすでに最適化されているためと考えられます。しかし、いくつかの機関は引き続き積極的な削減計画を立てています。
2023年度から2025年度にかけて、7つの機関が合計4,632万ドルの追加的なコスト削減を計画しています。主な計画内容は以下の通りです:
- クラウドサービスへのさらなる移行によるインフラ運用コストの削減
- 残存データセンターの統合による施設維持費の削減
- エネルギー効率の高い機器への更新によるユーティリティコストの削減
- 自動化技術の導入による運用人件費の削減
特に、国防総省は今後も大規模な削減を計画しており、3年間で約2,000万ドルの削減を見込んでいます。また、保健福祉省や社会保障局も、それぞれ500万ドル以上の削減を計画しています。
一方で、多くの中小規模の機関は、今後の大幅な削減を見込んでいません。これらの機関では、既に最適化が進んでおり、さらなる削減には構造的な変革が必要となる可能性があります。
今後のコスト削減においては、単純な施設の統廃合だけでなく、より高度な技術の導入や業務プロセスの見直しが重要となります。例えば、AIやIoTを活用したデータセンターの自動運用、エッジコンピューティングの活用、さらにはカーボンニュートラルなデータセンターの構築など、新たな視点からの取り組みが求められます。
また、コスト削減と並行して、セキュリティの強化や災害対策の充実など、質的な向上も重要な課題となります。各機関は、これらのバランスを考慮しつつ、長期的な視点で戦略を立てる必要があります。
5. データセンター最適化の進捗状況
5.1 OMBの最適化指標の概要
行政管理予算局(OMB)は、データセンター最適化イニシアチブ(DCOI)の効果を測定するため、4つの主要な最適化指標を設定しています。これらの指標は、2019年にOMBが発表した改訂版DCOIガイダンスに基づいており、各機関の進捗を客観的に評価するための基準となっています。
OMBが定めた4つの最適化指標は以下の通りです:
- 仮想化(Virtualization):機関が管理するデータセンター内で仮想ホストとして機能するサーバーとメインフレームの数を測定します。この指標は、物理的なハードウェアリソースの効率的な利用を促進することを目的としています。
- 高度エネルギー計測(Advanced Energy Metering):高度なエネルギー計測機能を有するデータセンターの数を計測します。この指標は、エネルギー使用の可視化と最適化を促進し、環境負荷の軽減とコスト削減を目指しています。
- サーバー利用率(Server Utilization):連邦政府のデータセンター内の未活用サーバーの数を測定します。この指標は、リソースの効率的な使用を促進し、過剰な設備投資を抑制することを目的としています。
- データセンター可用性(Data Center Availability):データセンターの稼働時間と停止時間の比率を測定します。この指標は、サービスの信頼性と継続性を確保することを目的としています。
これらの指標は、ティア分類されたデータセンター(一定の基準を満たす本格的な設備)にのみ適用されます。各機関は、これらの指標に基づいて毎年具体的な目標を設定し、その達成状況をOMBに報告することが求められています。
5.2 2021年度の最適化達成状況
2021年度において、DCOIに参加する17の機関(適用可能なデータセンターを持つ機関)は、OMBの最適化指標に対して混合的な進捗を報告しました。全体的な傾向としては、多くの機関が複数の指標で目標を達成しており、DCOIの効果が着実に表れていることが確認されました。
以下の表は、2021年度における各最適化指標の達成状況を示しています:
最適化指標 | 目標達成機関数 | 達成率 |
可用性 | 16 | 94% |
高度エネルギー計測 | 14 | 82% |
サーバー利用率 | 14 | 82% |
仮想化 | 11 | 65% |
特筆すべき点として、データセンター可用性の指標では16機関が目標を達成し、94%という高い達成率を示しました。これは、多くの機関がサービスの安定性と信頼性の向上に成功していることを示唆しています。
高度エネルギー計測とサーバー利用率の指標では、ともに14機関が目標を達成し、82%の達成率となりました。これらの結果は、エネルギー効率の改善とリソースの効率的な利用が進んでいることを示しています。
一方、仮想化の指標では11機関が目標を達成し、65%の達成率にとどまりました。この結果は、仮想化技術の導入にはまだ改善の余地があることを示唆しています。
個別の機関の実績を見ると、商務省、国防総省、内務省、司法省、労働省、国務省、運輸省、財務省、退役軍人省、NASA、国立科学財団、原子力規制委員会、人事管理局、中小企業庁、社会保障局の15機関が3つ以上の指標で目標を達成しました。特に、これらの機関の多くは、データセンターの統合と最適化に積極的に取り組んでおり、その成果が数字に表れています。
一方、エネルギー省と保健福祉省の2機関は2つの指標でのみ目標を達成しました。これらの機関では、特に仮想化と高度エネルギー計測の分野で改善の余地があると考えられます。
残りの7機関(農務省、教育省、国土安全保障省、住宅都市開発省、環境保護庁、総務省、米国国際開発庁)は、機関所有のデータセンターを保有していないか、あるいは残存するデータセンターがOMBによって最適化の対象外とされているため、これらの指標の報告対象外となっています。
2021年度の結果は、多くの機関がDCOIの目標達成に向けて着実に進展していることを示していますが、同時に一部の分野では更なる改善が必要であることも明らかになりました。特に仮想化技術の導入については、より一層の取り組みが求められると言えるでしょう。
6. 成功事例分析
データセンター最適化イニシアチブ(DCOI)の実施において、いくつかの連邦機関が特筆すべき成果を上げています。本節では、農務省、保健福祉省、原子力規制委員会の3つの機関に焦点を当て、それぞれの成功事例を詳細に分析します。これらの事例は、他の機関にとって有益な洞察と教訓を提供するものと考えられます。
6.1 農務省のケーススタディ
農務省は、DCOIの実施において顕著な成果を上げた機関の一つです。特に、2018年度から2020年度にかけての取り組みが注目に値します。
主な成果:
- データセンター閉鎖:2020年度末までに残存していた4つのデータセンターをすべて閉鎖し、副長官が設定した目標を達成しました。
- コスト削減:データセンターの閉鎖により、約2,520万ドルの追加的なコスト削減と回避を実現しました。
- 継続的な効果:2022年度第2四半期までに、さらに1,640万ドルのコスト回避を報告しています。
成功要因:
- トップマネジメントのコミットメント:副長官レベルで明確な目標を設定し、組織全体でその達成に向けて取り組んだことが大きな推進力となりました。
- 段階的アプローチ:残存する4つのデータセンターの閉鎖を計画的に進め、各段階でのリスクを最小限に抑えました。
- クラウドファーストの戦略:データセンターの閉鎖と並行して、クラウドサービスへの移行を積極的に推進しました。
- コスト削減の可視化:削減額を具体的に数値化し、継続的にモニタリングすることで、取り組みの効果を明確に示しました。
農務省の事例は、明確な目標設定と段階的な実施が、大規模な組織変革を成功に導く上で重要であることを示しています。
6.2 保健福祉省のケーススタディ
保健福祉省(HHS)は、DCOIを通じてITインフラストラクチャの近代化と効率化を実現した好例です。
主な成果:
- エネルギー効率の向上:高度なエネルギー計測技術の導入により、データセンターのエネルギー消費を大幅に削減しました。
- 仮想化の推進:物理サーバーから仮想環境への移行を積極的に進め、資源利用効率を向上させました。
- クラウド移行の加速:既存のIT調達レビュープロセスを活用し、クラウドサービスへの移行を効果的に推進しました。
成功要因:
- 包括的なアプローチ:エネルギー効率、仮想化、クラウド移行を統合的に推進し、相乗効果を生み出しました。
- 既存プロセスの活用:IT調達レビューなど、既存の管理プロセスをDCOIの目標達成に活用しました。
- 可視性の向上:データセンター最適化の取り組みと成果を可視化し、組織全体の理解と協力を得ることに成功しました。
HHSの事例は、既存のプロセスを活用しながら新たな技術を導入することで、大規模な変革を効果的に進められることを示しています。
6.3 原子力規制委員会のケーススタディ
原子力規制委員会(NRC)は、DCOIを通じてITインフラストラクチャの抜本的な見直しと最適化を実現しました。
主な成果:
- データセンターの近代化:物理的なデータセンターの統合と最適化を実現し、運用効率を大幅に向上させました。
- コスト効率の改善:クラウドサービスとデータセンターのコロケーションモデルを採用し、コスト削減を実現しました。
- 組織的な支援の獲得:DCOIの取り組みを通じて、IT近代化に対する組織全体の支援を獲得することに成功しました。
成功要因:
- 戦略的アプローチ:単なるデータセンターの統合だけでなく、クラウドとコロケーションを組み合わせた柔軟な戦略を採用しました。
- リーダーシップの活用:最高情報責任者(CIO)室がDCOIのマンデートを活用し、必要なリソースと活動に対する組織の支援を獲得しました。
- 長期的視点:現在の最適化にとどまらず、将来のITサービス展開も見据えた計画を立案しました。
NRCの事例は、DCOIを単なるコスト削減の取り組みではなく、組織全体のIT戦略を見直す機会として活用することの重要性を示しています。
これら3つの機関の成功事例は、それぞれ異なるアプローチを採用しながらも、共通して明確な目標設定、段階的な実施、組織全体の協力、そして既存のプロセスと新技術の効果的な統合を実現しています。これらの要素は、他の機関がDCOIを推進する上でも参考になるものと考えられます。
7. 課題と改善点
データセンター最適化イニシアチブ(DCOI)は全体として大きな成果を上げていますが、いくつかの課題も残されています。本節では、未達成の最適化目標、報告の一貫性と正確性、そしてGovernment Accountability Office(GAO)の勧告の実施状況について詳細に分析し、今後の改善に向けた方向性を示します。
7.1 未達成の最適化目標
2022年度の最適化指標の達成状況を見ると、多くの機関が目標を達成しているものの、一部の機関では依然として課題が残されています。特に仮想化の指標において改善の余地が大きいことが明らかになっています。
17の報告対象機関のうち、13機関が仮想化の目標を達成していますが、4機関が未達成となっています。これらの機関では、仮想化技術の導入が遅れている、あるいは既存システムとの互換性の問題が障壁となっている可能性があります。
例えば、エネルギー省は仮想化目標を達成できていませんが、その理由として、仮想サーバーを持つデータセンターの閉鎖により、報告される仮想ホスト数が減少したことを挙げています。この事例は、データセンターの統合と仮想化の推進が時として相反する結果をもたらす可能性があることを示唆しています。
また、高度エネルギー計測の指標においても、3機関が目標を達成できていません。退役軍人省の場合、特定のデータセンターベンダーとの契約上の問題や、サプライチェーンの問題により、電力計測ツールの導入が遅れていることが報告されています。
これらの未達成の目標に対しては、個々の機関の状況に応じたきめ細かな対応が必要です。技術的な課題、組織的な障壁、外部要因など、未達成の原因を詳細に分析し、適切な対策を講じることが重要です。
7.2 報告の一貫性と正確性
DCOIの成果を正確に評価し、適切な意思決定を行うためには、各機関からの報告の一貫性と正確性が不可欠です。しかし、一部の機関では報告に関する課題が見られます。
例えば、2021年度のコスト削減報告において、国務省は2022年度の予定を誤って2021年度の計画に含めてしまい、結果として目標未達成となりました。この事例は、報告プロセスの厳格化と、データの二重チェックの重要性を示しています。
また、社会保障局の事例では、クラウドイニシアチブからの削減額とデータセンターのエネルギー使用量が予想を下回ったことが報告されています。この場合、予測モデルの精度向上や、より頻繡なデータ更新が必要かもしれません。
報告の一貫性と正確性を向上させるためには、以下のような取り組みが考えられます:
- 標準化されたレポーティングテンプレートの導入
- 定期的な研修やガイダンスの提供
- 自動化されたデータ収集・検証システムの構築
- 第三者による監査や検証プロセスの強化
7.3 GAOの勧告の実施状況
Government Accountability Office(GAO)は、DCOIの実施に関して多数の勧告を行っており、これらの勧告の実施状況は重要な指標となっています。
2016年以降、GAOは合計126の勧告を行いました。2022年12月の時点で、これらの勧告のうち110が実施されています。この高い実施率は、多くの機関がGAOの指摘を真摯に受け止め、改善に取り組んでいることを示しています。
しかし、16の勧告がまだ完全には実施されていません。これらの未実施の勧告の多くは、データセンター最適化の指標目標の達成に関するものです。
未実施の勧告に関しては、以下のような要因が考えられます:
- 技術的な複雑性:一部の最適化目標は、既存システムとの互換性や技術的な制約により、実現が困難な場合があります。
- 予算の制約:必要な投資を行うための予算が確保できていない可能性があります。
- 組織的な抵抗:変革に対する組織内の抵抗や、優先順位の相違が障壁となっている可能性があります。
- 外部要因:パンデミックなどの予期せぬ事態により、計画の実施が遅れている可能性があります。
これらの未実施の勧告に対しては、個々の機関の状況を詳細に分析し、実施を阻害している要因を特定した上で、適切な対策を講じる必要があります。また、GAOとの緊密な連携を通じて、勧告の実現可能性や優先順位について継続的に協議を行うことも重要です。
結論として、DCOIは全体として大きな成果を上げていますが、最適化目標の完全な達成、報告の質の向上、そしてGAOの勧告の完全実施に向けて、さらなる取り組みが必要です。これらの課題に対処することで、DCOIの効果をさらに高め、連邦政府のITインフラストラクチャの効率化と近代化を一層推進することができるでしょう。
8. DCOIの終了と今後の展望
データセンター最適化イニシアチブ(DCOI)は2022年10月に正式に終了しましたが、その影響と成果は連邦政府のIT戦略に長期的な影響を与え続けるでしょう。本節では、DCOIから得られた主要な教訓と、今後のデータセンター戦略に対する提言をまとめます。
8.1 DCOIから得られた教訓
DCOIの実施を通じて、連邦政府は数多くの貴重な教訓を得ました。これらの教訓は、今後のIT戦略立案において重要な指針となるでしょう。
- 明確な目標設定の重要性: DCOIは、データセンターの閉鎖数やコスト削減額など、具体的かつ測定可能な目標を設定しました。この明確な目標設定が、各機関の取り組みを促進し、進捗の可視化を可能にしました。例えば、2021年度には58のデータセンター閉鎖と6億1,232万6,000ドルのコスト削減という具体的な成果を達成しています。
- 段階的アプローチの有効性: DCOIは複数年にわたる長期的なイニシアチブでしたが、年度ごとの目標設定と進捗評価を行うことで、持続的な改善を実現しました。この段階的アプローチにより、機関は徐々に能力を向上させ、より複雑な最適化タスクに取り組むことができました。
- 柔軟性の必要性: DCOIの実施過程で、技術の進歩や環境の変化に応じて戦略を適応させる必要性が明らかになりました。例えば、クラウドコンピューティングの急速な発展に対応して、単純なデータセンター統合から、よりクラウドを重視した戦略へと重点が移行しました。
- 組織横断的な協力の重要性: 成功を収めた機関の多くは、IT部門だけでなく、財務、調達、運用など、組織全体を巻き込んだアプローチを採用しました。農務省や保健福祉省の事例は、この組織横断的な協力の重要性を示しています。
- データの質と一貫性の重要性: DCOIの実施を通じて、正確で一貫性のあるデータ収集と報告の重要性が浮き彫りになりました。一部の機関で見られた報告の不一致は、データの質の向上が今後の課題であることを示唆しています。
8.2 今後のデータセンター戦略への提言
DCOIの経験を踏まえ、今後のデータセンター戦略に対して以下の提言を行います:
- クラウドファーストアプローチの採用: 物理的なデータセンターの統合に加えて、クラウドサービスの積極的な活用を推進すべきです。これにより、柔軟性の向上、コスト削減、そしてイノベーションの促進が期待できます。
- エッジコンピューティングの考慮: 5Gの普及やIoTの発展に伴い、エッジコンピューティングの重要性が増しています。今後の戦略では、中央集中型のデータセンターとエッジコンピューティングの適切なバランスを考慮する必要があります。
- AI/MLの活用: データセンターの運用最適化にAIと機械学習を活用することで、さらなる効率化とコスト削減が可能です。例えば、電力消費の最適化や予測的メンテナンスなどに応用できます。
- セキュリティの強化: サイバー攻撃の脅威が増大する中、データセンターのセキュリティ強化は最重要課題の一つです。ゼロトラストアーキテクチャの採用など、最新のセキュリティ対策を積極的に導入すべきです。
- 継続的な人材育成: 急速に進化するIT環境に対応するため、データセンター運用に関わる人材の継続的な育成と技能向上が不可欠です。クラウド技術やAI/ML、セキュリティなどの分野でのスキル開発プログラムを強化すべきです。
- 環境負荷の低減: 今後のデータセンター戦略では、エネルギー効率の向上だけでなく、再生可能エネルギーの活用や循環型設計の導入など、環境負荷の低減を重視すべきです。
- 機関間協力の促進: DCOIで得られた知見や成功事例を共有し、機関間の協力を促進するためのプラットフォームを構築すべきです。これにより、ベストプラクティスの普及と全体的な効率化が期待できます。
- 柔軟な評価指標の設定: 技術の進歩や環境の変化に応じて、評価指標を柔軟に見直し、適応させる仕組みを構築すべきです。単純なデータセンター数やサーバー台数だけでなく、サービスの質や革新性なども考慮した総合的な評価が必要です。
これらの提言を実施することで、連邦政府は DCOIの成果を基盤としつつ、より効率的で革新的、そして持続可能なIT インフラストラクチャを構築することができるでしょう。今後のデータセンター戦略は、単なるコスト削減や効率化だけでなく、デジタル政府の実現と国民サービスの向上に直接貢献する重要な要素として位置付けられるべきです。
9. 結論と推奨事項
データセンター最適化イニシアチブ(DCOI)は、2016年の開始から2022年10月の終了まで、連邦政府のITインフラストラクチャの効率化と近代化において顕著な成果を上げました。本レポートの分析結果に基づき、DCOIの主要な成果、残された課題、そして今後の方向性について以下のように結論づけ、推奨事項を提示します。
DCOIの主要な成果として、まず大規模なコスト削減が挙げられます。2012年度から2021年度までの累積コスト削減額は66億ドルに達し、当初の予想を大きく上回りました。特に2021年度には6億1,232万6,000ドル、2022年度には8月時点で既に3億3,432万4,000ドルの削減を達成しており、コスト削減の勢いが継続していることが確認されました。
データセンターの統合においても顕著な進展が見られ、2021年度には58のデータセンターが閉鎖され、2022年度も78のデータセンター閉鎖が予定されています。この統合により、運用コストの削減だけでなく、セキュリティの向上やエネルギー効率の改善などの副次的な効果も得られています。
最適化指標の達成状況も概ね良好で、2022年度には17機関中13機関が仮想化の目標を、17機関が可用性の目標を、14機関が高度エネルギー計測とサーバー利用率の目標を達成しています。これらの結果は、多くの機関がDCOIの目標に向けて着実に進展していることを示しています。
一方で、いくつかの課題も明らかになりました。一部の機関では仮想化や高度エネルギー計測の目標が未達成であり、技術的な課題や組織的な障壁が存在することが示唆されています。また、報告の一貫性と正確性にも改善の余地があり、データの質の向上が今後の重要な課題となっています。
これらの成果と課題を踏まえ、以下の推奨事項を提示します:
- クラウドファーストアプローチの強化: 物理的なデータセンターの統合に加えて、クラウドサービスの積極的な活用を推進すべきです。各機関は、クラウド移行戦略を策定し、適切なワークロードの選定とセキュリティ対策を講じつつ、段階的な移行を進めることが推奨されます。
- AI/MLの活用によるさらなる最適化: データセンターの運用効率化にAIと機械学習を積極的に活用すべきです。電力消費の最適化、予測的メンテナンス、自動化されたリソース割り当てなど、AI/MLの適用領域を特定し、パイロットプロジェクトを通じて効果を検証することを推奨します。
- セキュリティ強化の継続: サイバーセキュリティの脅威が増大する中、データセンターのセキュリティ強化は最重要課題です。ゼロトラストアーキテクチャの採用、多要素認証の徹底、暗号化技術の強化など、最新のセキュリティ対策を継続的に導入すべきです。
- 環境負荷低減への取り組み強化: エネルギー効率の向上に加え、再生可能エネルギーの活用や循環型設計の導入など、環境負荷の低減に向けた取り組みを強化すべきです。具体的な数値目標を設定し、定期的な進捗評価を行うことが推奨されます。
- 継続的なスキル開発と人材育成: 急速に進化するIT環境に対応するため、データセンター運用に関わる人材の継続的なスキル開発が不可欠です。クラウド技術、AI/ML、セキュリティなどの分野で、体系的な研修プログラムを構築し、実施することを推奨します。
- 機関間協力の促進: DCOIで得られた知見や成功事例を共有し、機関間の協力を促進するためのプラットフォームを構築すべきです。定期的な情報交換会やベストプラクティス共有セッションの開催を推奨します。
- 柔軟な評価指標の導入: 技術の進歩や環境の変化に応じて、評価指標を柔軟に見直し、適応させる仕組みを構築すべきです。サービスの質、イノベーション度、ユーザー満足度なども含めた総合的な評価フレームワークの開発を推奨します。
- データの質と一貫性の向上: 報告の正確性と一貫性を向上させるため、標準化されたデータ収集・報告プロセスを確立すべきです。自動化されたデータ収集ツールの導入や、定期的な監査メカニズムの構築を推奨します。
これらの推奨事項を実施することで、DCOIの成果を基盤としつつ、より効率的で革新的、そして持続可能なITインフラストラクチャを構築することが可能となるでしょう。各機関は、これらの推奨事項を自身の状況に合わせて適応させ、具体的な行動計画を策定・実行することが求められます。
最後に、DCOIは連邦政府のITインフラストラクチャの効率化と近代化に大きく貢献しましたが、これはあくまでも継続的な改善プロセスの一段階に過ぎません。技術の急速な進歩と変化する社会のニーズに対応するため、今後も柔軟かつ戦略的なアプローチを維持し、継続的な改善と革新を追求していくことが重要です。
1. 付録
A. 機関別データセンター閉鎖およびコスト削減詳細
本付録では、データセンター最適化イニシアチブ(DCOI)に参加した24の連邦政府機関それぞれのデータセンター閉鎖実績とコスト削減の詳細な情報を提供します。この情報は、各機関の進捗状況を比較分析し、成功事例や課題を特定するための重要な基礎データとなります。
以下の表は、2022年度における各機関のデータセンター閉鎖状況とコスト削減実績を示しています。
機関名 | 2022年度開始時のデータセンター数 | 2022年度閉鎖目標 | 2022年8月までの閉鎖数 | 2022年度末までの追加閉鎖予定数 | 2023-2025年度閉鎖計画数 | 2022年度コスト削減目標(百万$) | 2022年8月までの削減実績(百万$) |
農務省 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1.0 | 2.95 |
商務省 | 61 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 |
国防総省 | 638 | 12 | 8 | 40 | 31 | 90.0 | 118.3 |
教育省 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
エネルギー省 | 96 | 2 | 1 | 2 | 2 | 0.2 | 1.417 |
保健福祉省 | 88 | 0 | 0 | 2 | 2 | 12.612 | 18.514 |
国土安全保障省 | 20 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 |
住宅都市開発省 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
内務省 | 50 | 1 | 1 | 0 | 0 | 1.5 | 3.71 |
司法省 | 11 | 1 | 0 | 0 | 6 | 1.3 | 1.963 |
労働省 | 6 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 17.168 |
国務省 | 141 | 1 | 3 | 5 | 0 | 1.4 | 3.7 |
運輸省 | 211 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.73 | 0.73 |
財務省 | 103 | 0 | 0 | 0 | 0 | 17.5 | 17.5 |
退役軍人省 | 274 | 3 | 5 | 0 | 0 | 5.02 | 4.17 |
環境保護庁 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
総務省 | 4 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
NASA | 18 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.212 | 0.19 |
国立科学財団 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
原子力規制委員会 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
人事管理局 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 |
中小企業庁 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
社会保障局 | 11 | 0 | 0 | 6 | 1 | 150.0 | 144.012 |
米国国際開発庁 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
この詳細なデータから、以下のような重要な傾向や特徴を読み取ることができます:
- 国防総省は最も多くのデータセンターを保有し、最大規模の閉鎖計画を持っています。2022年度だけでも48のデータセンター閉鎖を予定しており、コスト削減目標も大幅に上回っています。
- 社会保障局は、データセンター数は比較的少ないものの、最大のコスト削減目標を設定しています。8月時点で目標をわずかに下回っていますが、年度末までには達成する可能性があります。
- 労働省は、当初コスト削減目標を設定していなかったにもかかわらず、1,716万8,000ドルもの削減を達成しています。これは予想外の効率化が実現できたことを示唆しています。
- 退役軍人省は、データセンター閉鎖目標を上回る成果を上げていますが、コスト削減はわずかに目標を下回っています。これは、閉鎖と削減が必ずしも比例関係にないことを示しています。
- 多くの小規模機関(教育省、環境保護庁、国立科学財団など)は、既にデータセンターの最適化を完了しているか、もしくは所有するデータセンターが非常に少ないため、新たな閉鎖やコスト削減の余地が限られています。
これらの詳細なデータは、各機関の特性や課題を理解し、今後のデータセンター戦略を立案する上で貴重な情報源となります。特に、大規模な閉鎖やコスト削減を達成している機関のベストプラクティスを分析し、他の機関に適用することで、さらなる効率化が期待できるでしょう。
また、このデータは、機関ごとの進捗状況の違いを明確に示しており、今後の支援や資源配分を検討する際の重要な判断材料となります。例えば、目標達成に苦戦している機関に対しては、追加的な支援や指導が必要かもしれません。
最後に、このデータは DCOIの全体的な成功を裏付けるものですが、同時に今後の課題も示唆しています。特に、大規模な閉鎖やコスト削減がすでに実現された後の、さらなる最適化の方向性を検討する必要があるでしょう。
B. 用語集
本用語集は、データセンター最適化イニシアチブ(DCOI)に関連する主要な用語と概念を解説しています。これらの定義は、本レポートの内容を正確に理解し、DCOIの実施と評価に関わる実務者が共通の認識を持つために重要です。
- データセンター最適化イニシアチブ(DCOI): 2016年に開始された連邦政府のプログラムで、データセンターの統合、最適化、効率化を目的としています。
- 行政管理予算局(OMB): 連邦政府の予算管理を担当する機関で、DCOIの監督と指針の策定を行っています。
- Government Accountability Office(GAO): 連邦政府の監査、評価、調査を行う独立機関で、DCOIの進捗状況を評価し、勧告を行っています。
- ティアド・データセンター: OMBの定義に基づく、一定の基準を満たす本格的なデータセンター施設を指します。DCOIの最適化指標はこれらの施設に適用されます。
- 仮想化: 物理的なハードウェアリソースを論理的に分割し、複数の仮想環境を作成する技術です。DCOIでは、サーバーの仮想化が重要な最適化指標の一つとなっています。
- 高度エネルギー計測: データセンターのエネルギー使用を詳細に計測し、分析する技術や手法を指します。エネルギー効率の向上とコスト削減に貢献します。
- サーバー利用率: サーバーのリソース(CPU、メモリ、ストレージなど)がどの程度効率的に使用されているかを示す指標です。DCOIでは、未活用サーバーの削減が目標の一つとなっています。
- データセンター可用性: データセンターが正常に機能し、サービスを提供できる時間の割合を示す指標です。計画外のダウンタイムの最小化が重要です。
- クラウドファースト戦略: 新規のITサービスやシステムの導入、既存システムの更新の際に、クラウドサービスの採用を優先的に検討する戦略です。
- エッジコンピューティング: データ処理をネットワークの端(エッジ)で行う手法で、レイテンシの低減やデータセンターの負荷分散に貢献します。
- ゼロトラストアーキテクチャ: ネットワーク内外のどの要素も信頼せず、常に認証と認可を要求するセキュリティモデルです。
- コスト削減: DCOIにおいて、実際の支出が予測レベルを下回った場合の差額を指します。
- コスト回避: 将来的なコスト増加を防ぐための即時的な行動の結果として生じる財務的利益を指します。
- IT Dashboard: 連邦政府のIT投資に関する情報を公開するウェブサイトで、DCOIの進捗状況も報告されています。
- 連邦情報技術取得改革法(FITARA): 2014年に制定された法律で、連邦政府のIT調達と管理の改革を目的としています。DCOIはこの法律に基づいて実施されています。
- 人工知能(AI)/機械学習(ML): コンピューターシステムに人間のような知能を実装する技術、およびデータから学習し改善する能力を持つアルゴリズムを指します。データセンターの運用最適化に活用が期待されています。
- サイバーセキュリティ: コンピューターシステムやネットワークを悪意ある攻撃から守るための対策や技術を指します。DCOIにおいても重要な考慮事項となっています。
- 再生可能エネルギー: 太陽光、風力、地熱などの持続可能なエネルギー源を指します。データセンターの環境負荷低減策として注目されています。
これらの用語と概念を理解することで、DCOIの目標、実施方法、評価指標をより深く把握し、効果的な戦略立案と実行につなげることができます。
C. 参考文献
本レポートの作成にあたり、以下の文献および資料を参考にしました。これらの資料は、データセンター最適化イニシアチブ(DCOI)の背景、実施状況、成果、課題について包括的な情報を提供しています。
- Office of Management and Budget. (2016). Data Center Optimization Initiative (DCOI). Memorandum M-16-19. Washington, D.C.
- Government Accountability Office. (2023). DATA CENTER OPTIMIZATION: Agencies Continue to Report Progress. GAO-23-105946. Washington, D.C.
- Government Accountability Office. (2022). Data Center Optimization: Agencies Continue to Report Mixed Progress Against OMB's Targets. GAO-22-105118. Washington, D.C.
- Government Accountability Office. (2021). Data Center Optimization: Agencies Report Progress and Billions Saved, but OMB Needs to Improve Its Utilization Guidance. GAO-21-212. Washington, D.C.
- Government Accountability Office. (2020). Data Center Optimization: Agencies Report Progress, but Oversight and Cybersecurity Risks Need to Be Addressed. GAO-20-279. Washington, D.C.
- Federal Information Technology Acquisition Reform Act (FITARA). (2014). Pub. L. No. 113-291, div. A, title VIII, subtitle D, 128 Stat. 3292, 3438.
- Office of Management and Budget. (2019). Update to Data Center Optimization Initiative (DCOI). Memorandum M-19-19. Washington, D.C.
- Department of Agriculture. (2022). DCOI Strategic Plan FY2022. Washington, D.C.
- Department of Health and Human Services. (2022). DCOI Progress Report FY2022. Washington, D.C.
- Nuclear Regulatory Commission. (2022). Data Center Optimization Initiative Annual Report. Washington, D.C.
- Federal CIO Council. (2021). State of Federal IT Report. Washington, D.C.
- National Institute of Standards and Technology. (2020). Cloud Computing: A Review of Features, Benefits, and Risks, and Recommendations for Secure, Efficient Implementations. NIST Special Publication 800-145. Gaithersburg, MD.
- Department of Energy. (2021). Data Center Energy Efficiency Best Practices. Washington, D.C.
- Environmental Protection Agency. (2020). ENERGY STAR Program Requirements for Data Center Storage. Washington, D.C.
- Federal CIO Council. (2019). Application Rationalization Playbook. Washington, D.C.
- Office of Management and Budget. (2018). Federal Cloud Computing Strategy. Washington, D.C.
- Government Accountability Office. (2018). Data Center Optimization: Continued Agency Actions Needed to Meet Goals and Address Prior Recommendations. GAO-18-264. Washington, D.C.
- National Institute of Standards and Technology. (2018). Risk Management Framework for Information Systems and Organizations. NIST Special Publication 800-37, Revision 2. Gaithersburg, MD.
- Federal CIO Council. (2017). Data Center Optimization Initiative Best Practices Guide. Washington, D.C.
- Office of Management and Budget. (2012). Federal Data Center Consolidation Initiative. Memorandum M-12-12. Washington, D.C.
これらの参考文献は、DCOIの政策立案、実施、評価の各段階において重要な情報源となっています。特に、Government Accountability Office(GAO)の一連の報告書は、DCOIの進捗状況と課題を詳細に分析しており、本レポートの多くの部分で参照しています。また、Office of Management and Budget(OMB)のメモランダムは、DCOIの方針と目標を理解する上で不可欠な資料です。
各連邦機関の戦略計画や進捗報告書は、個別の成功事例や課題を把握するために活用しました。さらに、National Institute of Standards and Technology(NIST)の技術文書は、クラウドコンピューティングやリスク管理など、DCOIに関連する技術的側面の理解を深めるのに役立ちました。
これらの文献を総合的に分析することで、DCOIの全体像を把握し、その成果と課題を客観的に評価することが可能となりました。今後のデータセンター戦略の立案においても、これらの資料は重要な参考となるでしょう。