1. はじめに
人工知能(AI)の急速な発展により、その能力は人間を凌駕するレベルに達しつつある。特に、人間レベルの知能を持つAGI(Artificial General Intelligence、ソフトバンクの定義ではASI、Artificial Super Intelligence、人工超知能)の実現が近い将来に予想されている。AGIは、人間が行うあらゆる知的作業を代替することが可能であり、社会のあらゆる分野に大きな変革をもたらすと期待されている。
しかし、AGIの実現は人類に多大な恩恵をもたらす一方で、深刻なリスクを伴う可能性がある。AGIが人間の価値観から逸脱した行動を取った場合、それは人類全体の未来を脅かす存在となりかねない。また、AGIが自己改善を繰り返し、人間の制御が及ばないレベルの超知能へと発展した場合、その影響は予測不可能なものとなる。
本レポートでは、AGIが実現した後に起こりうる様々なリスクシナリオについて考察する。AIが人間の尊厳を脅かし、プライバシーを侵害し、社会的分断を助長する可能性について論じる。また、AIが政治的意思決定を支配し、経済システムを掌握することで、人間が従属的な立場に追いやられるシナリオを提示する。さらに、AIを利用したサイバー攻撃や自律兵器の暴走による物理的な脅威についても言及する。
これらのリスクシナリオは、決して現実離れした空想ではない。むしろ、AIの能力が飛躍的に向上し続ける中で、避けては通れない問題として我々の前に立ちはだかっている。本レポートが、AGI実現後の世界におけるリスクを読者に認識してもらう一助となり、そのリスクを最小限に抑えるための方策を考える契機となれば幸いである。
2. 人類の価値観から逸脱したAIの行動
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